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第26章 巨星は墜ち
第26章-④ シュウェリーン教会の会見
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ミネルヴァ暦1398年4月16日朝。
帝都ヴェルダンディ中心街にあるシュウェリーン教会では、教国軍と合衆国軍の幹部、帝国の大臣や将軍が集まって、降伏意思を正式に伝える文書の手交と非公式の会見が予定されている。非公式、というのはつまり、この場に参加できる合衆国側のメンバーが軍人のみで文民が不在であり、公式の声明発表や具体的な条約策定準備などが進められないためである。事実だけを見れば、帝国を降伏に至らしめた当事者は教国軍であり、合衆国軍は9割方その尻馬に乗っただけであるから、戦後処理に関しては教国のクイーン・エスメラルダの一存で進めてもよさそうなところだが、国際協調を重視した彼女の意向で、そのような形式をとった。すでに対帝国戦線の完全終結を見越したオクシアナ合衆国大統領アーサー・ブラッドリーがこちらへ向かっており、戦後処理はその到着後にクイーン並びに帝国の現指導部らと三者会談の上で進められることになるであろう。それまでは、何もかもが暫定的な処置ということになる。
参会者のうち、最後に到着したのは元帝国の将たるリヒテンシュタイン中将であり、彼はクイーンに請うて近衛兵団の一部を借用し、不眠不休で帝都の消火や治安維持活動に従事していた。彼は第四軍および第七軍の兵とともに難攻不落を謳われるベルヴェデーレ要塞をそっくり教国軍に明け渡した裏切り者という自覚があり、忸怩たる思いを帝都の安全確保という行動で解消したかったのであろう。一種の代償行為である。
ただし、それでもリヒテンシュタインにとってこの会見は針の筵であることに変わりない。彼はいささか奇妙なことに、教国軍の客将という資格においてこの会見に参加している。要するに勝者の立場にあるわけだが、これは少々、ずるい。この場は勝者である教国軍・合衆国軍の幹部が敗者である帝国の高官と会見をするわけだが、リヒテンシュタインはこの戦役を通して素直に考えてみると、明確に敗者の席に座るべきだろう。彼はキティホークでも、トリーゼンベルク地方でも負けた。今回はナッツァの会戦のあと、自らが守っていたベルヴェデーレ要塞をそっくり教国軍に献上した。そのような男が、この場では教国軍の一員として帝国の人々と相対している。
例えばユンカースやローゼンハイムは、ヒンデンブルク作戦で帝国の政権を打倒しようとし、その志が挫折するや、教国に亡命し、教国軍の協力者として見事な活躍を見せ、結果的にヘルムス体制を崩壊させることに成功した。その意味では初志を貫徹したわけで、彼ら自身の態度も実に堂々としたものである。堂々とできるのは、恥じ入るところが彼ら自身の美的価値観に照らして一点もないからだ。
一方、リヒテンシュタインには後悔こそないが、恥ずべき点がある。恐らくこの感情は、彼が死ぬまで、薄らぎこそすれ、消えることはないであろう。
リヒテンシュタインはひたすらに俯き、かつての僚友たちからの無言の指弾を避けようとした。
そのなかでまず進み出たのが、ヘルムス総統ののち帝国の全権を預かることとなったモルゲンシュテルン臨時首相である。彼はもともと高名な建築家として、帝都の拡大や都市計画などをヘルムスに提言する程度の役割だったが、次第に信任を得て、開戦後は兵站や物資調達を専門とする軍需大臣、さらに今回の地位を得ている。ヘルムスに最後まで仕え、デューリング宣伝大臣とともにその片腕と目されている人物だ。ただ、人物は清廉で知られている。ヘルムス支持の文官らのなかでは、ヘルムスの立身に協力し、プロパガンダという武器を利用して権力を奪取し、さらにその後の独裁と抑圧に主体的な役割を果たしたデューリングが悪玉とされているのに比して、独裁体制の確立後にあくまでその協力者として勤勉な実務家としての印象を残したモルゲンシュテルンは善玉として評価されることが多い。
この場でも、表情は神妙ながら、淡々と降伏の文書をクイーン、さらに合衆国軍モンロー大将に手交し、敗戦国の代表としての役割を完璧にこなしている。
クイーンが、今後の体制について整理をした。
「モルゲンシュテルン殿。この度はご協力、ありがとうございます。委細はブラッドリー大統領が到着しましたら改めてご相談したく思いますが、それまでは帝都の秩序は教国軍と合衆国軍が責任を持って維持します。帝国全土の地方行政も、少なくとも当面は治安維持を含めて、従来の体制を踏襲して行うのがよいかと思います。私たちは事態が落ち着いて、新政権が発足しましたら、この地を去ります。今回の戦いは、あくまで帝国との戦争を終わらせ、大陸に安定と調和を取り戻すためのものでした。今後はこの紛争を教訓とし、対等なよき隣人として手を携え、ともに歩んでいけたらうれしいです。しばらくは窮屈な思いをさせてしまうかもしれませんが、この国の行政に関する専門家として、諸々ご指導をお願いしますね」
モルゲンシュテルンは少し、意外そうな顔をしたが、すぐに目を伏せ、重々しく礼を述べた。そのほかの帝国の文武高官も、ほっと息をついた者が多かった。なるほど教国女王は聞きしにまさる名君らしい、と安堵したのであろう。
「モンロー大将、何かご意見やご異議ございませんか?」
一方、暗に発言を求められた合衆国軍代表のモンロー大将は、ぼそぼそとクイーンの発言に同意を示しただけであった。陣営を問わず、参会者の恐らく全員が、彼の態度や容儀に頼りなさや心細さを感じざるをえなかった。
合衆国軍の遠征軍司令官として今回の戦役に参加したモンロー将軍は、もともとは主として管理部門でキャリアを重ねてきた人物である。それだけに前線指揮にはあまり向いていないが、彼がこの任務を与えられたのは、従来その地位にあったグラント大将、ケネディ大将といった司令官が相次いで大病を患い、戦略の権威で実質的に遠征軍を束ねていたフェアファックス中将も先の戦いで負った傷が完治しておらず、また遠征軍内部でもウェルズ中将が叛逆の罪に問われるなど不祥事がいくつか発覚して、軍の重鎮である彼が指導力を発揮することを期待されたからである。大統領は彼自身の軍事的才幹よりもむしろ、フェアファックスの後継候補である幾人かの幕僚を中心に組まれた参謀チームの切れ味に大きな望みを持っていたのだが、ほとんどの作戦段階で意見がまとまらず、モンローも決断を欠いて、このため合衆国軍の動きは当初から鈍かった。結果的に、合衆国軍は帝国領の攻略作戦で主導権を発揮することができず、あらゆる局面で教国軍の後塵を拝することとなった。合衆国政府にとっても、実に不本意な戦争経過である。合衆国軍はスチムソン少将がこぼしたように風紀が乱れ士気も落ちて、数が多いという以外は軍団としての機能はきわめて低かった。ときに教国軍の足手まといになることさえあった。
まずまず、無能と言っていい。
裏面の事情を言うと、合衆国大統領アーサー・ブラッドリーが帝国の降伏を聞く前から慌てたように自ら首都を発し帝都ヴェルダンディを目指したのも、モンローの無能に端を発する合衆国軍の機能不全に危機感を抱き、作戦全体に果たした役割の軽重によることなく帝国の戦後統治について教国側と等しく発言権を確保するための政治的思惑によっている。
少し横道に逸れてしまった。
モルゲンシュテルンのあと、軍の最高位であるヒンケル国防軍最高司令部総長代理が呼ばれ、クイーンやモンローと対面した。彼は軍の指揮者として即刻、逮捕、投獄されるかと内心で恐れていたが、意外にも寛容な扱いで、軟禁のみで厳しい拘束はされないこととなった。
ヒンケルのあと、ケール内務相、コッホ外務相らが順に敗戦の弁を口にし、そのあとで第五軍司令官のツヴァイク中将と帝都防衛隊司令官のミュラー中将が並んで会談に臨んだ。彼らが服従の意と部下への寛大な処遇を希望すると、それまで目を伏せていたリヒテンシュタインが起立し、クイーンの前へと進み出て、片膝をついた。
「陛下。ささやかながら我が一命と引き換えに、両名の罪をお許しいただけますよう。両名は帝国の再建に必要な人物です。清廉にして高潔、有能にして有為。どうかご寛恕いただき、帝国の未来のためにお残しいただくようお願い申し上げます」
リヒテンシュタインが、まるで自らの言葉に酔ったように泣き出すと、ツヴァイクとミュラーも感涙し、ともにかばい合うような格好になった。三人とも、僚友の助命を願い、その願いが容れられるためならば不肖この命を捧げることも厭わぬ、と言っている。ドン・ジョヴァンニが予言したように、これはひとつの演劇だが、見ごたえがある、と感じた者が多いか、それとも人を感動させるには陳腐すぎる、と冷めた目で見る者が多かったか。
少なくともクイーンは、彼らの友情、と呼ぶにはやや過剰に熱っぽい気もするが、そうしたやりとりや人柄には率直に好感を持ったらしい。彼女は自らも立ち上がって彼らのひざまずくそばに近寄り、一人ひとりに呼びかけつつ手をとって、
「リヒテンシュタインさん、ツヴァイクさん、ミュラーさん、聞いてください。私たちは復讐者でも、征服者でもありません。行きがかり上、心ならずも貴国と戦争状態に陥ってしまいましたが、むやみに罪を問うことはいたしません。そもそもお三方に、どのような罪があるというのです。自らの責務に忠実であろうとし、それでも最後には苦渋を飲んででも人として正しいと信じる選択をされました。私は皆さんを誇りに思い、尊敬することはあっても、憎むことはありません。これからはよき隣人として、ともに平和を目指しましょう」
そう言うと、三名は再び人目をはばからず泣いた。この演劇に満足したドン・ジョヴァンニが指笛を吹くと、それを合図に拍手と喝采が教会内に響いた。
が、この会見の一番のクライマックスはその直後に訪れた。一方の演者はクイーン、もう一方は特務機関長クリューガー中将と、同工作課課長フィッシャー大佐である。
彼らを冷然と見下しつつ、クイーンは一つの問題提起を行った。それまでときに穏やかで、ときににこやかに、ときにいたわり深い表情を見せたクイーンが一転、厳しく容赦のない顔つきになっている。その様子だけで、満堂は一転して水を打ったような静けさに包まれた。
「お二方にお尋ねしたいことがあります。この戦争は、なぜかくも醜く悲惨な様相になってしまったのでしょうか」
クイーンは返答を待たず続けた。
「それはヘルムス総統が人としての道を完全に見失い、ハーゲン博士やあなたたちのような人面獣心の者たちがそれに媚びへつらって、内は自らを支える人民を抑圧し、糧として食いつぶし、外は名誉ある待遇をすべき捕虜を虐殺し、天然痘に感染させた者を兵器として利用した。そうした卑劣で獣にも劣る行いの数々が、この戦いをより醜く悲惨なものとしたのだと、私は思います」
帝国の文武高官たちの多くは、初めてクイーンの姿を目の当たりにしたとき、そのたたずまいに思わず息を呑んだ。これほど若く、柔和で、しかも美しい女性が、まるで虫も殺さぬ表情と態度でありながら、戦場では数万の兵を神業のごとき指揮能力をもって動かし、精強なる帝国軍を破壊し屈服させたことに驚嘆させられた。
しかも驚くべきことは、この王が、征服者ではなくよき隣人であることをいくつもの言動によって証明していることである。モルゲンシュテルンやツヴァイクらに対する物言いは、それこそ慈悲深き女神のように感じられた。
だが、彼女が単に、無条件で、常に慈悲深い女神ではないことは、クリューガーらに対する接し方で明らかとなった。つい先ほどまで寛容な君主であった彼女の口から、聞くに堪えない指弾と問罪の言葉が次々と発せられるに及んで、特に帝国の面々は次第にうなだれ、背中が丸まり、肩が小さくすくんでゆくのを自覚せざるをえなかった。特務機関や憲兵隊は、帝国の内外に対する非道な行為に確かに主体的な役割を担ったが、それは帝国の幹部の誰にとっても、まったく責任のない出来事とは言えない。
当事者であるクリューガー、フィッシャーは、心当たりがむしろ数えきれないほどあるだけに、生きた心地がしない。青ざめて、ひざまずいている。
「ただ、あなた方を裁くのは私でもなければ、合衆国政府でもありません。今回の戦争を引き起こしたこと、その戦争において犯した犯罪、そして自国民に対する迫害や虐待の罪。これらはすべて、我々が去ったあとに、帝国の人々の手によって裁かれるべき問題です。それまでは我々があなた方の身柄を適切な待遇によってお預かりします。たとえ本意ではなくとも。それこそが私たちの誇りであり、名誉であり、私たちとあなた方とを明確に区別する本質そのものなのです」
クリューガーらは返す言葉の一言としてなく、自らの運命のその先に待ち受ける絶望に恐れおののいた。泣きわめくことも、命乞いをすることもなかったのは、これも彼ら自身の行いに対する因果であろうとの思いがあったのかもしれない。
クイーンのすさまじい言葉に、教会は人いきれがするほどの群衆がおりながら、誰もが音を立てることを恐れるように静まり返っている。誰かが生唾を飲む音を鳴らし、それが教会内に響いた。
クイーンが着席し、彼女は合衆国軍との共催による会見という形式を保つため、再びモンロー大将に確認を求めた。
「モンロー大将、それでよろしいでしょうか」
「えぇ、よろしいかと思います」
モンローの覇気に著しく欠けた声に、満座のなかからいくつかの嘲笑やため息が漏れた。どうもこの場には、役者としての実力に明らかな不足がある者がいるらしい。
会見はさらに幾人かの重要人物たちを経て無事に締めくくられた。すでに昼下がりの刻限になっている。
クイーンは息をつく暇もなく、帝都市街を巡察し、一部ながら損壊した民家や公共の施設について、自ら補償や修復の指図を行った。また市中で略奪や暴行などの罪を犯した教国兵について、前もって軍規に定めた通りに処断するむね通達し、翌日には公開処刑とすることを発表した。処刑方法は近代的なギロチンではなく、苦痛が大きく宣伝効果も高い磔刑である。
余談であるが、ギロチンはミネルヴァ暦13世紀から14世紀にかけて発明された処刑道具である。それまでの処刑は絞首や斧による斬首が主流であったが、失敗することも多く、囚人の苦痛や恐怖も小さくはなかった。そのため旧コーンウォリス公国でより人道的な処刑道具として開発されたのが、別名をギロチンと称する断頭台であった。ギロチンは正確かつ確実に囚人を死に至らしめることが可能で、しかも物理的な苦しみや痛みは皆無と言っていい。公開処刑にはより合理的な方法であるとして、大陸の西側諸国を中心に急速に普及していった。
一方、磔はむしろ前時代的、古典的、あるいは古代的な処刑方法で、今日ではほとんど見られない。だが囚人が十字架に打ちつけられた姿で高く掲げられ、苦悶の表情を浮かべ、許しを乞い、やがて息も絶え絶えになっていく様子は、宣伝として抜群の効果がある。宣伝したいのは、教国軍は帝国人民を害する軍ではなく、むしろ守るために存在する軍であり、その理念に背く者はかくも冷酷な方法によって処断される、ということである。
帝都民のなかには磔刑の生々しさと痛々しさに顔をしかめる者もあったが、ほとんどは同胞をむやみに傷つけた者たちへの報復であるということで溜飲を下げ、喝采の声を上げた。
こうした振舞いの甲斐あって、帝都は数日のうちに落ち着きを取り戻し、さらに教国軍と合衆国軍による生活物資の開放もあって、民衆は安心して家から離れ、通りに出られるようになった。教国軍による一時的な支配を歓迎する声まで聞かれるようになり、早くも寛容な占領政策が奏功しているようにも見える。
首都が敵国の軍隊によって占領されながら、わずか数日で日常を取り戻したというのは、歴史上、きわめて類例が少ないように思われる。
あとは、この平穏を維持しつつブラッドリー大統領の到着を待つのみである。
帝都ヴェルダンディ中心街にあるシュウェリーン教会では、教国軍と合衆国軍の幹部、帝国の大臣や将軍が集まって、降伏意思を正式に伝える文書の手交と非公式の会見が予定されている。非公式、というのはつまり、この場に参加できる合衆国側のメンバーが軍人のみで文民が不在であり、公式の声明発表や具体的な条約策定準備などが進められないためである。事実だけを見れば、帝国を降伏に至らしめた当事者は教国軍であり、合衆国軍は9割方その尻馬に乗っただけであるから、戦後処理に関しては教国のクイーン・エスメラルダの一存で進めてもよさそうなところだが、国際協調を重視した彼女の意向で、そのような形式をとった。すでに対帝国戦線の完全終結を見越したオクシアナ合衆国大統領アーサー・ブラッドリーがこちらへ向かっており、戦後処理はその到着後にクイーン並びに帝国の現指導部らと三者会談の上で進められることになるであろう。それまでは、何もかもが暫定的な処置ということになる。
参会者のうち、最後に到着したのは元帝国の将たるリヒテンシュタイン中将であり、彼はクイーンに請うて近衛兵団の一部を借用し、不眠不休で帝都の消火や治安維持活動に従事していた。彼は第四軍および第七軍の兵とともに難攻不落を謳われるベルヴェデーレ要塞をそっくり教国軍に明け渡した裏切り者という自覚があり、忸怩たる思いを帝都の安全確保という行動で解消したかったのであろう。一種の代償行為である。
ただし、それでもリヒテンシュタインにとってこの会見は針の筵であることに変わりない。彼はいささか奇妙なことに、教国軍の客将という資格においてこの会見に参加している。要するに勝者の立場にあるわけだが、これは少々、ずるい。この場は勝者である教国軍・合衆国軍の幹部が敗者である帝国の高官と会見をするわけだが、リヒテンシュタインはこの戦役を通して素直に考えてみると、明確に敗者の席に座るべきだろう。彼はキティホークでも、トリーゼンベルク地方でも負けた。今回はナッツァの会戦のあと、自らが守っていたベルヴェデーレ要塞をそっくり教国軍に献上した。そのような男が、この場では教国軍の一員として帝国の人々と相対している。
例えばユンカースやローゼンハイムは、ヒンデンブルク作戦で帝国の政権を打倒しようとし、その志が挫折するや、教国に亡命し、教国軍の協力者として見事な活躍を見せ、結果的にヘルムス体制を崩壊させることに成功した。その意味では初志を貫徹したわけで、彼ら自身の態度も実に堂々としたものである。堂々とできるのは、恥じ入るところが彼ら自身の美的価値観に照らして一点もないからだ。
一方、リヒテンシュタインには後悔こそないが、恥ずべき点がある。恐らくこの感情は、彼が死ぬまで、薄らぎこそすれ、消えることはないであろう。
リヒテンシュタインはひたすらに俯き、かつての僚友たちからの無言の指弾を避けようとした。
そのなかでまず進み出たのが、ヘルムス総統ののち帝国の全権を預かることとなったモルゲンシュテルン臨時首相である。彼はもともと高名な建築家として、帝都の拡大や都市計画などをヘルムスに提言する程度の役割だったが、次第に信任を得て、開戦後は兵站や物資調達を専門とする軍需大臣、さらに今回の地位を得ている。ヘルムスに最後まで仕え、デューリング宣伝大臣とともにその片腕と目されている人物だ。ただ、人物は清廉で知られている。ヘルムス支持の文官らのなかでは、ヘルムスの立身に協力し、プロパガンダという武器を利用して権力を奪取し、さらにその後の独裁と抑圧に主体的な役割を果たしたデューリングが悪玉とされているのに比して、独裁体制の確立後にあくまでその協力者として勤勉な実務家としての印象を残したモルゲンシュテルンは善玉として評価されることが多い。
この場でも、表情は神妙ながら、淡々と降伏の文書をクイーン、さらに合衆国軍モンロー大将に手交し、敗戦国の代表としての役割を完璧にこなしている。
クイーンが、今後の体制について整理をした。
「モルゲンシュテルン殿。この度はご協力、ありがとうございます。委細はブラッドリー大統領が到着しましたら改めてご相談したく思いますが、それまでは帝都の秩序は教国軍と合衆国軍が責任を持って維持します。帝国全土の地方行政も、少なくとも当面は治安維持を含めて、従来の体制を踏襲して行うのがよいかと思います。私たちは事態が落ち着いて、新政権が発足しましたら、この地を去ります。今回の戦いは、あくまで帝国との戦争を終わらせ、大陸に安定と調和を取り戻すためのものでした。今後はこの紛争を教訓とし、対等なよき隣人として手を携え、ともに歩んでいけたらうれしいです。しばらくは窮屈な思いをさせてしまうかもしれませんが、この国の行政に関する専門家として、諸々ご指導をお願いしますね」
モルゲンシュテルンは少し、意外そうな顔をしたが、すぐに目を伏せ、重々しく礼を述べた。そのほかの帝国の文武高官も、ほっと息をついた者が多かった。なるほど教国女王は聞きしにまさる名君らしい、と安堵したのであろう。
「モンロー大将、何かご意見やご異議ございませんか?」
一方、暗に発言を求められた合衆国軍代表のモンロー大将は、ぼそぼそとクイーンの発言に同意を示しただけであった。陣営を問わず、参会者の恐らく全員が、彼の態度や容儀に頼りなさや心細さを感じざるをえなかった。
合衆国軍の遠征軍司令官として今回の戦役に参加したモンロー将軍は、もともとは主として管理部門でキャリアを重ねてきた人物である。それだけに前線指揮にはあまり向いていないが、彼がこの任務を与えられたのは、従来その地位にあったグラント大将、ケネディ大将といった司令官が相次いで大病を患い、戦略の権威で実質的に遠征軍を束ねていたフェアファックス中将も先の戦いで負った傷が完治しておらず、また遠征軍内部でもウェルズ中将が叛逆の罪に問われるなど不祥事がいくつか発覚して、軍の重鎮である彼が指導力を発揮することを期待されたからである。大統領は彼自身の軍事的才幹よりもむしろ、フェアファックスの後継候補である幾人かの幕僚を中心に組まれた参謀チームの切れ味に大きな望みを持っていたのだが、ほとんどの作戦段階で意見がまとまらず、モンローも決断を欠いて、このため合衆国軍の動きは当初から鈍かった。結果的に、合衆国軍は帝国領の攻略作戦で主導権を発揮することができず、あらゆる局面で教国軍の後塵を拝することとなった。合衆国政府にとっても、実に不本意な戦争経過である。合衆国軍はスチムソン少将がこぼしたように風紀が乱れ士気も落ちて、数が多いという以外は軍団としての機能はきわめて低かった。ときに教国軍の足手まといになることさえあった。
まずまず、無能と言っていい。
裏面の事情を言うと、合衆国大統領アーサー・ブラッドリーが帝国の降伏を聞く前から慌てたように自ら首都を発し帝都ヴェルダンディを目指したのも、モンローの無能に端を発する合衆国軍の機能不全に危機感を抱き、作戦全体に果たした役割の軽重によることなく帝国の戦後統治について教国側と等しく発言権を確保するための政治的思惑によっている。
少し横道に逸れてしまった。
モルゲンシュテルンのあと、軍の最高位であるヒンケル国防軍最高司令部総長代理が呼ばれ、クイーンやモンローと対面した。彼は軍の指揮者として即刻、逮捕、投獄されるかと内心で恐れていたが、意外にも寛容な扱いで、軟禁のみで厳しい拘束はされないこととなった。
ヒンケルのあと、ケール内務相、コッホ外務相らが順に敗戦の弁を口にし、そのあとで第五軍司令官のツヴァイク中将と帝都防衛隊司令官のミュラー中将が並んで会談に臨んだ。彼らが服従の意と部下への寛大な処遇を希望すると、それまで目を伏せていたリヒテンシュタインが起立し、クイーンの前へと進み出て、片膝をついた。
「陛下。ささやかながら我が一命と引き換えに、両名の罪をお許しいただけますよう。両名は帝国の再建に必要な人物です。清廉にして高潔、有能にして有為。どうかご寛恕いただき、帝国の未来のためにお残しいただくようお願い申し上げます」
リヒテンシュタインが、まるで自らの言葉に酔ったように泣き出すと、ツヴァイクとミュラーも感涙し、ともにかばい合うような格好になった。三人とも、僚友の助命を願い、その願いが容れられるためならば不肖この命を捧げることも厭わぬ、と言っている。ドン・ジョヴァンニが予言したように、これはひとつの演劇だが、見ごたえがある、と感じた者が多いか、それとも人を感動させるには陳腐すぎる、と冷めた目で見る者が多かったか。
少なくともクイーンは、彼らの友情、と呼ぶにはやや過剰に熱っぽい気もするが、そうしたやりとりや人柄には率直に好感を持ったらしい。彼女は自らも立ち上がって彼らのひざまずくそばに近寄り、一人ひとりに呼びかけつつ手をとって、
「リヒテンシュタインさん、ツヴァイクさん、ミュラーさん、聞いてください。私たちは復讐者でも、征服者でもありません。行きがかり上、心ならずも貴国と戦争状態に陥ってしまいましたが、むやみに罪を問うことはいたしません。そもそもお三方に、どのような罪があるというのです。自らの責務に忠実であろうとし、それでも最後には苦渋を飲んででも人として正しいと信じる選択をされました。私は皆さんを誇りに思い、尊敬することはあっても、憎むことはありません。これからはよき隣人として、ともに平和を目指しましょう」
そう言うと、三名は再び人目をはばからず泣いた。この演劇に満足したドン・ジョヴァンニが指笛を吹くと、それを合図に拍手と喝采が教会内に響いた。
が、この会見の一番のクライマックスはその直後に訪れた。一方の演者はクイーン、もう一方は特務機関長クリューガー中将と、同工作課課長フィッシャー大佐である。
彼らを冷然と見下しつつ、クイーンは一つの問題提起を行った。それまでときに穏やかで、ときににこやかに、ときにいたわり深い表情を見せたクイーンが一転、厳しく容赦のない顔つきになっている。その様子だけで、満堂は一転して水を打ったような静けさに包まれた。
「お二方にお尋ねしたいことがあります。この戦争は、なぜかくも醜く悲惨な様相になってしまったのでしょうか」
クイーンは返答を待たず続けた。
「それはヘルムス総統が人としての道を完全に見失い、ハーゲン博士やあなたたちのような人面獣心の者たちがそれに媚びへつらって、内は自らを支える人民を抑圧し、糧として食いつぶし、外は名誉ある待遇をすべき捕虜を虐殺し、天然痘に感染させた者を兵器として利用した。そうした卑劣で獣にも劣る行いの数々が、この戦いをより醜く悲惨なものとしたのだと、私は思います」
帝国の文武高官たちの多くは、初めてクイーンの姿を目の当たりにしたとき、そのたたずまいに思わず息を呑んだ。これほど若く、柔和で、しかも美しい女性が、まるで虫も殺さぬ表情と態度でありながら、戦場では数万の兵を神業のごとき指揮能力をもって動かし、精強なる帝国軍を破壊し屈服させたことに驚嘆させられた。
しかも驚くべきことは、この王が、征服者ではなくよき隣人であることをいくつもの言動によって証明していることである。モルゲンシュテルンやツヴァイクらに対する物言いは、それこそ慈悲深き女神のように感じられた。
だが、彼女が単に、無条件で、常に慈悲深い女神ではないことは、クリューガーらに対する接し方で明らかとなった。つい先ほどまで寛容な君主であった彼女の口から、聞くに堪えない指弾と問罪の言葉が次々と発せられるに及んで、特に帝国の面々は次第にうなだれ、背中が丸まり、肩が小さくすくんでゆくのを自覚せざるをえなかった。特務機関や憲兵隊は、帝国の内外に対する非道な行為に確かに主体的な役割を担ったが、それは帝国の幹部の誰にとっても、まったく責任のない出来事とは言えない。
当事者であるクリューガー、フィッシャーは、心当たりがむしろ数えきれないほどあるだけに、生きた心地がしない。青ざめて、ひざまずいている。
「ただ、あなた方を裁くのは私でもなければ、合衆国政府でもありません。今回の戦争を引き起こしたこと、その戦争において犯した犯罪、そして自国民に対する迫害や虐待の罪。これらはすべて、我々が去ったあとに、帝国の人々の手によって裁かれるべき問題です。それまでは我々があなた方の身柄を適切な待遇によってお預かりします。たとえ本意ではなくとも。それこそが私たちの誇りであり、名誉であり、私たちとあなた方とを明確に区別する本質そのものなのです」
クリューガーらは返す言葉の一言としてなく、自らの運命のその先に待ち受ける絶望に恐れおののいた。泣きわめくことも、命乞いをすることもなかったのは、これも彼ら自身の行いに対する因果であろうとの思いがあったのかもしれない。
クイーンのすさまじい言葉に、教会は人いきれがするほどの群衆がおりながら、誰もが音を立てることを恐れるように静まり返っている。誰かが生唾を飲む音を鳴らし、それが教会内に響いた。
クイーンが着席し、彼女は合衆国軍との共催による会見という形式を保つため、再びモンロー大将に確認を求めた。
「モンロー大将、それでよろしいでしょうか」
「えぇ、よろしいかと思います」
モンローの覇気に著しく欠けた声に、満座のなかからいくつかの嘲笑やため息が漏れた。どうもこの場には、役者としての実力に明らかな不足がある者がいるらしい。
会見はさらに幾人かの重要人物たちを経て無事に締めくくられた。すでに昼下がりの刻限になっている。
クイーンは息をつく暇もなく、帝都市街を巡察し、一部ながら損壊した民家や公共の施設について、自ら補償や修復の指図を行った。また市中で略奪や暴行などの罪を犯した教国兵について、前もって軍規に定めた通りに処断するむね通達し、翌日には公開処刑とすることを発表した。処刑方法は近代的なギロチンではなく、苦痛が大きく宣伝効果も高い磔刑である。
余談であるが、ギロチンはミネルヴァ暦13世紀から14世紀にかけて発明された処刑道具である。それまでの処刑は絞首や斧による斬首が主流であったが、失敗することも多く、囚人の苦痛や恐怖も小さくはなかった。そのため旧コーンウォリス公国でより人道的な処刑道具として開発されたのが、別名をギロチンと称する断頭台であった。ギロチンは正確かつ確実に囚人を死に至らしめることが可能で、しかも物理的な苦しみや痛みは皆無と言っていい。公開処刑にはより合理的な方法であるとして、大陸の西側諸国を中心に急速に普及していった。
一方、磔はむしろ前時代的、古典的、あるいは古代的な処刑方法で、今日ではほとんど見られない。だが囚人が十字架に打ちつけられた姿で高く掲げられ、苦悶の表情を浮かべ、許しを乞い、やがて息も絶え絶えになっていく様子は、宣伝として抜群の効果がある。宣伝したいのは、教国軍は帝国人民を害する軍ではなく、むしろ守るために存在する軍であり、その理念に背く者はかくも冷酷な方法によって処断される、ということである。
帝都民のなかには磔刑の生々しさと痛々しさに顔をしかめる者もあったが、ほとんどは同胞をむやみに傷つけた者たちへの報復であるということで溜飲を下げ、喝采の声を上げた。
こうした振舞いの甲斐あって、帝都は数日のうちに落ち着きを取り戻し、さらに教国軍と合衆国軍による生活物資の開放もあって、民衆は安心して家から離れ、通りに出られるようになった。教国軍による一時的な支配を歓迎する声まで聞かれるようになり、早くも寛容な占領政策が奏功しているようにも見える。
首都が敵国の軍隊によって占領されながら、わずか数日で日常を取り戻したというのは、歴史上、きわめて類例が少ないように思われる。
あとは、この平穏を維持しつつブラッドリー大統領の到着を待つのみである。
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