サランヘヨと言わせて！？〜残念女子とアイドルの留学物語〜

運命的な運命の出会い

言葉の意味

　※文化の違いを演出するため過剰な表現をしている場合がありますがフィクションです。ご注意下さい。

　※以下鉤括弧の説明
「」・・・通常の会話(聞こえている音のままの状態。必要に応じて訳文有り)（美華の発音は日本語訛りがひどいためカタカナ。）
『』・・・意志疎通がとれている会話
（）・・・訳文
【】・・・日本語以外の言語で会話。美華は聞き取れない。



「シクロは〝うるさい〝って意味だよ。何で？また韓国ドラマ？どうせ日本語で見てるんでしょ？それは、勉強にならないから！素直に中国語を勉強しなさい！ワーストプリンセス！」

彼女のお説教メッセージは、一切目に入らず

　うるさい

ここだけが脳裏に焼きついた。

うるさい

だとぉぉ？！？
まあ、確かに声の大きな私が悪いけど・・・。
あんな優しい顔見せて、韓国語がどうせ聞き取れないと思って、裏で文句を言ってたの？
ちょっと性悪。

イケメンの隣人が入居してきたと思って少し舞い上がってしまった・・・。　

イケメン信じるべからずっ！！女子のバイバルだね！

隣人とは挨拶くらいの付き合いにしておこう。
きっと同じ学校の生徒だろうから会ってしまうかもしれないし。

私はそのままドラマ視聴を続けた。







　2012年9月1日

　2学年目が始まる新学期の1日目。
　中国の大学は、春スタートではなく秋スタートなのだ。

　ラッキーでキム・テグンをひと目拝めるかも！？そんな淡い期待を持ちながら、メイクをしたらひどく、濃くなった。
細いヒールをカツカツと鳴らしながら、登校すると、私の教室のある2階は廊下が人集りでお祭り騒ぎのよう。2年1組の入口ドア前に至っては人混みで入れそうにもない。

え、も、もしかして、この人の量、まさか？！？

興奮して、脚がもたついた瞬間！！

ツルン！バタンっ！

私は、一人でコケてしまった。

「イッタ」

周りの人は教室内に夢中で私に気付かない。

良かったあ～。こんな何も無い所でコケた姿恥ずかしすぎるよ。

この学校の床のタイルって、すごくツルツルしていて、とても滑る。
雨の日なんて最悪だし、今日みたいなヒールを履いてきた日は慎重に歩かないといけない。

こんな小さな部分でもカルチャーショックを感じながら、上半身を起こす。

日本の大学で簡単に滑るような、床にしている学校なんて絶対にないだろう！

上海に来てから気付いたけど、日本ってどんなものでも、安全面や利用者の気持ちを考慮して、作られている。

そんな事、日本にいた時は考えたことがなかった。
でも、今は床の素材一つで、日本の素晴らしさを感じる事が出来る。

日本はモノづくりに匠の精神を持っているんだ。だからこだわりを捨てずに便利な物ができて来たんだ。
　
何で日本が素晴らしいんだろう。そんなことも日本にいたら絶対考えられなかった。

そんな日本に帰りたい。はあ～日本に帰りたい。ママやパパに会いたい。日本が恋しいよぉ～。


え？突然何の話をしているんだ。って？まず、そんな滑りやすいような、細いヒールで学校に来るなって？
仰る通りですが、つい・・・。

いやちょっと期待しちゃうでしょう！！心無しかこの人集りの女の子たちもオシャレしているような気もするしっ！


でも、まさか、同じクラス・・・・？？

座り込みながら、人集りの韓国人たちを見上げていると、聞き覚えのある声がした。

「美華！！！そんなとこで、座り込んでどうした？大丈夫？」


ベリーショートなデニムスカートが、私の目の間に現れた。

同級生の夏海だ！

彼女の手を借りながら、立ち上がる。

そのまま彼女は汗ぐっしょりの手で私の手を握りしめる。

「ややややばいよ！キム・テグンが！うちのクラスに転入してきた！！」

人の言葉はものすごい力を持っている。

口に出されることで実感を持つものだ。

「は、は、ハイヒール履いてきてよかったああああ！」

「いや、どういう感想！？」
アッシュグレーのロングヘアーを揺らして、夏海が大笑いした。