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第三章 天涯孤独になりました
王宮へ
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王宮へ向かい、ミルドは一人馬を走らせていた。
目的は勿論、ルーチェの元へ行き、魔性の動きを封じる札を貰い受ける為だ。
最初は、部隊を二手に分けて行こうかと考えた。だが、結局ミルドは一人で帰還する選択をしたのだ。
幾ら魔性が介入してきたとはいえ、任務を遂行するまでは絶対に戻るなと厳命されている。それを破って戻るのだ。どんな罰が与えられるか、分かったものではない。
被害を被るなら最少人数が良い──そう考えた上での結論だった。
それに、無理だとしても、目当ての娘の居場所も同時進行で探さなくてはならない。魔性封じの札を手にしたところで、使う相手が見つからないのでは話にならない為、娘の居場所を探るべく部隊を残す必要があったのだ。
「たとえ見つけたとしても、絶対に手は出すなと言っては来たが……」
正直、不安しかなかった。
現にアランなどは、一度魔性に喧嘩を売っている。尤も、喧嘩にすらならず、あっという間にやられてしまったが。
下手に実力がある分アランはいらぬプライドばかり高いし、相手に勝ちさえすれば何をしても許されると思っている節がある。その考え方のせいで、過去何人かの騎士を再起不能にさせ、故に今まで王宮騎士に任命されることもなかった。
しかし、だが、しかしだ。
国王がルーチェに替わった途端、アランは王宮騎士へと抜擢された。
内面的にはとても騎士とは言えない男。だが、実力的には文句なしの男。
平和ボケした王宮騎士団が本来の仕事を熟すのであれば、確かにその実力は必要であるかもしれないと考え、同時に放置できない残虐性も感じたから、監視も含め副隊長に任命したが。
彼に部下を任せてその場を離れることに、酷く不安が募った。
魔性を見つけて、また無茶をしないだろうか。アラン一人で無茶をするならともかく、隊の人間を巻き込まないだろうか。自分の命令通りにするだろうか。
好戦的なアランのことだ。もし魔性を見つけたなら、リベンジとばかりに真っ先に向かって行くに違いない。それならそれで良いだろう。
問題は、その後だ。アラン一人がやられるのならば、まだいい。そんなのは自業自得だ。手を出すなという自分の命令を無視した結果がそれなら、仕方がないと思える。
だが、他の隊員を巻き込むのは違う。ただ懸命に王宮騎士としての任務を全うする為、死に物狂いで頑張ってきた他の隊員達を、アランの巻き添えになる形で犠牲にするのは忍びない。
だからできれば、アラン一人を王宮へと向かわせたかった。
しかし、それはそれでアランの横柄な態度でルーチェを怒らせ、永遠に戻って来ない可能性もあったから、仕方なくミルド自身が向かうことにしたのだ。
伝え方を考えなければ、ミルド自身の身も危うい。
自分がルーチェを怒らせ、帰らぬ人となっては意味がないのだ。その為、保険がわりにアランも共に王宮へと向かわせたかったが、当の本人に頑として固辞されてしまった。
「隊長も副隊長もいなくなったら、誰が残された隊員を率いるんです?」
と。確かにそれは正論であった為、言われてしまえばそれ以上何も言えなかった。
普段はそこまで利口な感じはしないのに、こんな時ばかり正論を言いやがって、と苛立ちを覚えつつ。
実力で副隊長に選ばれたと思っているアランや他の隊員に対し「お前に任せたら隊が全滅する危険性があるから」などとは、口が裂けても言えなかった。
「アラン……頼むから、私が帰るまで無茶をするなよ……」
どうか、私が戻るまで隊員が無事に生き残っていますように……。
神頼みなど、生まれてこの方したことのないミルドだったが、この時ばかりは何でも良いから縋りたかった。
馬に鞭打ち、限界の速度で走らせながら、ミルドはそう願うことしかできなかったのだ──。
目的は勿論、ルーチェの元へ行き、魔性の動きを封じる札を貰い受ける為だ。
最初は、部隊を二手に分けて行こうかと考えた。だが、結局ミルドは一人で帰還する選択をしたのだ。
幾ら魔性が介入してきたとはいえ、任務を遂行するまでは絶対に戻るなと厳命されている。それを破って戻るのだ。どんな罰が与えられるか、分かったものではない。
被害を被るなら最少人数が良い──そう考えた上での結論だった。
それに、無理だとしても、目当ての娘の居場所も同時進行で探さなくてはならない。魔性封じの札を手にしたところで、使う相手が見つからないのでは話にならない為、娘の居場所を探るべく部隊を残す必要があったのだ。
「たとえ見つけたとしても、絶対に手は出すなと言っては来たが……」
正直、不安しかなかった。
現にアランなどは、一度魔性に喧嘩を売っている。尤も、喧嘩にすらならず、あっという間にやられてしまったが。
下手に実力がある分アランはいらぬプライドばかり高いし、相手に勝ちさえすれば何をしても許されると思っている節がある。その考え方のせいで、過去何人かの騎士を再起不能にさせ、故に今まで王宮騎士に任命されることもなかった。
しかし、だが、しかしだ。
国王がルーチェに替わった途端、アランは王宮騎士へと抜擢された。
内面的にはとても騎士とは言えない男。だが、実力的には文句なしの男。
平和ボケした王宮騎士団が本来の仕事を熟すのであれば、確かにその実力は必要であるかもしれないと考え、同時に放置できない残虐性も感じたから、監視も含め副隊長に任命したが。
彼に部下を任せてその場を離れることに、酷く不安が募った。
魔性を見つけて、また無茶をしないだろうか。アラン一人で無茶をするならともかく、隊の人間を巻き込まないだろうか。自分の命令通りにするだろうか。
好戦的なアランのことだ。もし魔性を見つけたなら、リベンジとばかりに真っ先に向かって行くに違いない。それならそれで良いだろう。
問題は、その後だ。アラン一人がやられるのならば、まだいい。そんなのは自業自得だ。手を出すなという自分の命令を無視した結果がそれなら、仕方がないと思える。
だが、他の隊員を巻き込むのは違う。ただ懸命に王宮騎士としての任務を全うする為、死に物狂いで頑張ってきた他の隊員達を、アランの巻き添えになる形で犠牲にするのは忍びない。
だからできれば、アラン一人を王宮へと向かわせたかった。
しかし、それはそれでアランの横柄な態度でルーチェを怒らせ、永遠に戻って来ない可能性もあったから、仕方なくミルド自身が向かうことにしたのだ。
伝え方を考えなければ、ミルド自身の身も危うい。
自分がルーチェを怒らせ、帰らぬ人となっては意味がないのだ。その為、保険がわりにアランも共に王宮へと向かわせたかったが、当の本人に頑として固辞されてしまった。
「隊長も副隊長もいなくなったら、誰が残された隊員を率いるんです?」
と。確かにそれは正論であった為、言われてしまえばそれ以上何も言えなかった。
普段はそこまで利口な感じはしないのに、こんな時ばかり正論を言いやがって、と苛立ちを覚えつつ。
実力で副隊長に選ばれたと思っているアランや他の隊員に対し「お前に任せたら隊が全滅する危険性があるから」などとは、口が裂けても言えなかった。
「アラン……頼むから、私が帰るまで無茶をするなよ……」
どうか、私が戻るまで隊員が無事に生き残っていますように……。
神頼みなど、生まれてこの方したことのないミルドだったが、この時ばかりは何でも良いから縋りたかった。
馬に鞭打ち、限界の速度で走らせながら、ミルドはそう願うことしかできなかったのだ──。
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