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待っててほしい
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ザゴルノ・ズラバフ新基地建設計画を知ってから1ヶ月。熟考するフランツ。いよいよトルーデに相談します。
【 報 連 相 】は大事ですが…
========
「 ────遊びだったの……?」
夕食後。トルーデの居室。
真っ青な顔のトルーデと、オロオロするフランツ。
「…ねえフランツ、まさかとは思うけど、あんなに愛し合ってずっと一緒だって言ってたのに、私とのことは……遊びだったの?」
「いやいやいや なんでそうなる?とにかく落ち着いて俺の話を聞いてくれ 、なっ?トルーデ────」
「答えて」
必死で宥めようとするフランツ。
さて なぜこんな愁嘆場、修羅場になっているのかというと…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
時間を少し遡ります ────
「 ────…なん…だって?フランツ…もう一度言ってくれないか…?」
「今の商会からの出向って形で、ザゴルノ・ズラバフ新基地の現場で働こうかと思ってるんだ 商会長には了承は貰ってある」
「 …新基地の話は知っているが、なぜフランツが行く話になる?このまま王都の商会で働き続ければいいじゃないか」
「今の商会には良くしてもらってるし不満なんか無いよ ただ、新たに出来る新基地のことと、従事しながら専門技術を身に付けられることを知った時、その現場で働きたいと猛烈に思ったんだ」
フランツの心の中
(どこかで、いつも「このままでいいのか」という自分の声がしていた。ケストナー家の離れに住まわせてもらい、職場まで紹介してもらい、意識不明になった俺をお屋敷で看病してもらい…甘えすぎではないかと。そしてトルーデと愛し合う仲になった。おそらくこの先、俺は形式的にどこかの貴族の養子にされて彼女との婚姻に至るんだろう。もちろんトルーデのことは本気で愛してる。でも、このままでいいのだろうか…?)
トルーデが悲痛な声で
「 ────…私とは…遊びだったのか…?フランツ、君は…実は軽い男だったのか?」
なんて言うもんだからフランツは速攻で否定した。
「そんなわけないだろ!」
「あんな遠い所!離ればなれになるじゃないか…嫌だ」
「俺だって離れたくないよ でも ────…トルーデにも王都での軍務があるだろう?階級が上がったばかりじゃないか」
「それはそうだが、そういうことを言ってるんじゃなくて…」
「俺は、『辞めてくれ』なんて言えない」
「…話をすり替えてないか?なぜもっと早くに私に言わなかったんだ?」
「今こうして言ってるじゃないか」
「決める前にだよ」
「…大事なことだから話してるのに、聞く耳を持たないのはトルーデのほうじゃないか 離れたくないのは俺も一緒だよ。でもやってみたいことが出来たんだ。応援してはくれないのか?
トルーデ、君は自分のことばかりだな。
俺に王都にいて欲しい?俺は自分のやりたいことも我慢して、か?」
トルーデがハッとする。
「……『我慢』?」
「俺だって君とは離れたくない。だけど1年間の期間限定だって言ってるだろう?別れるって言ってるわけじゃないんだ」
「 ─────…トルーデにもこの家にもこんだけ世話になっといて いまさらなんだけど、俺はここの家に世話になり過ぎだと思うんだ」
「そんなこと…!」
「俺もさ、キリのいい所で自分で探せば良かったんだよな でも居心地のいいここに落ち着いてしまった…
親族でもないただの居候なのにな……トルーデ、君とのことは本気だ。だけど、居候の身で、君とこのまま結婚するのはどうかと思う」
「居候だなんて!フランツは毎月お金も入れてくれてるじゃないか ────」
「あれも、揉めたよな 【要る要らない】で…。でも受け取ってくれないと、逆にこっちの心の負担になってた」
「負担…」
「俺は別に卑屈になってるわけじゃないんだ ────…ただ、俺は思ったんだ…ものすごく忙しい現場で働きたい!そして技術を身に付けたい、って」
「 ────」
「一年向こうでがむしゃらに働いて、王都に帰ってくるよ…そしてトルーデ、君を必ず迎えに来る」
「 ────」
「お願いだ 一年、待っててくれないか?」
「いや…だ…嫌だ…なんなんださっきから聞いてれば…!勝手なことばかり…やっとフランツが振り向いてくれたと思ったのに…両思いになれたのに…『ザゴルノ・ズラバフで働くから一年待っててくれ』だと?ふざけるな」
「トルーデ…?」
「もしかして…フランツは、別れたいの?これ、遠回しにフラれてるの?」
「!違う」
「だって…っ!おかしいじゃないか、こんなの」
「だから一年だけ待っててくれって…」
フランツは、遂に泣き出したトルーデの肩を両手で掴んで顔を覗き込む。首を横に振るトルーデ。
騒ぎを聞きつけて執事のエトムントやメイドのオルガ達がやってきた。トルーデもフランツもかなり大声になっていたようだ。
「どうなさったのです」
「…いくらフランツ様でも私たちのお嬢様を泣かせるなんて」
「許しませんよ」
両手を組んでボキボキ指を鳴らすメイド2人。怖い目をした執事、チームワーク怖い。
「ちょ 待った待った…誤解!誤解だって……」
(トルーデだけじゃなくて屋敷の皆に説明が必要だった)という事実に、改めて気付くフランツであった……。
ーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
【 報 連 相 】は大事ですが…
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「 ────遊びだったの……?」
夕食後。トルーデの居室。
真っ青な顔のトルーデと、オロオロするフランツ。
「…ねえフランツ、まさかとは思うけど、あんなに愛し合ってずっと一緒だって言ってたのに、私とのことは……遊びだったの?」
「いやいやいや なんでそうなる?とにかく落ち着いて俺の話を聞いてくれ 、なっ?トルーデ────」
「答えて」
必死で宥めようとするフランツ。
さて なぜこんな愁嘆場、修羅場になっているのかというと…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
時間を少し遡ります ────
「 ────…なん…だって?フランツ…もう一度言ってくれないか…?」
「今の商会からの出向って形で、ザゴルノ・ズラバフ新基地の現場で働こうかと思ってるんだ 商会長には了承は貰ってある」
「 …新基地の話は知っているが、なぜフランツが行く話になる?このまま王都の商会で働き続ければいいじゃないか」
「今の商会には良くしてもらってるし不満なんか無いよ ただ、新たに出来る新基地のことと、従事しながら専門技術を身に付けられることを知った時、その現場で働きたいと猛烈に思ったんだ」
フランツの心の中
(どこかで、いつも「このままでいいのか」という自分の声がしていた。ケストナー家の離れに住まわせてもらい、職場まで紹介してもらい、意識不明になった俺をお屋敷で看病してもらい…甘えすぎではないかと。そしてトルーデと愛し合う仲になった。おそらくこの先、俺は形式的にどこかの貴族の養子にされて彼女との婚姻に至るんだろう。もちろんトルーデのことは本気で愛してる。でも、このままでいいのだろうか…?)
トルーデが悲痛な声で
「 ────…私とは…遊びだったのか…?フランツ、君は…実は軽い男だったのか?」
なんて言うもんだからフランツは速攻で否定した。
「そんなわけないだろ!」
「あんな遠い所!離ればなれになるじゃないか…嫌だ」
「俺だって離れたくないよ でも ────…トルーデにも王都での軍務があるだろう?階級が上がったばかりじゃないか」
「それはそうだが、そういうことを言ってるんじゃなくて…」
「俺は、『辞めてくれ』なんて言えない」
「…話をすり替えてないか?なぜもっと早くに私に言わなかったんだ?」
「今こうして言ってるじゃないか」
「決める前にだよ」
「…大事なことだから話してるのに、聞く耳を持たないのはトルーデのほうじゃないか 離れたくないのは俺も一緒だよ。でもやってみたいことが出来たんだ。応援してはくれないのか?
トルーデ、君は自分のことばかりだな。
俺に王都にいて欲しい?俺は自分のやりたいことも我慢して、か?」
トルーデがハッとする。
「……『我慢』?」
「俺だって君とは離れたくない。だけど1年間の期間限定だって言ってるだろう?別れるって言ってるわけじゃないんだ」
「 ─────…トルーデにもこの家にもこんだけ世話になっといて いまさらなんだけど、俺はここの家に世話になり過ぎだと思うんだ」
「そんなこと…!」
「俺もさ、キリのいい所で自分で探せば良かったんだよな でも居心地のいいここに落ち着いてしまった…
親族でもないただの居候なのにな……トルーデ、君とのことは本気だ。だけど、居候の身で、君とこのまま結婚するのはどうかと思う」
「居候だなんて!フランツは毎月お金も入れてくれてるじゃないか ────」
「あれも、揉めたよな 【要る要らない】で…。でも受け取ってくれないと、逆にこっちの心の負担になってた」
「負担…」
「俺は別に卑屈になってるわけじゃないんだ ────…ただ、俺は思ったんだ…ものすごく忙しい現場で働きたい!そして技術を身に付けたい、って」
「 ────」
「一年向こうでがむしゃらに働いて、王都に帰ってくるよ…そしてトルーデ、君を必ず迎えに来る」
「 ────」
「お願いだ 一年、待っててくれないか?」
「いや…だ…嫌だ…なんなんださっきから聞いてれば…!勝手なことばかり…やっとフランツが振り向いてくれたと思ったのに…両思いになれたのに…『ザゴルノ・ズラバフで働くから一年待っててくれ』だと?ふざけるな」
「トルーデ…?」
「もしかして…フランツは、別れたいの?これ、遠回しにフラれてるの?」
「!違う」
「だって…っ!おかしいじゃないか、こんなの」
「だから一年だけ待っててくれって…」
フランツは、遂に泣き出したトルーデの肩を両手で掴んで顔を覗き込む。首を横に振るトルーデ。
騒ぎを聞きつけて執事のエトムントやメイドのオルガ達がやってきた。トルーデもフランツもかなり大声になっていたようだ。
「どうなさったのです」
「…いくらフランツ様でも私たちのお嬢様を泣かせるなんて」
「許しませんよ」
両手を組んでボキボキ指を鳴らすメイド2人。怖い目をした執事、チームワーク怖い。
「ちょ 待った待った…誤解!誤解だって……」
(トルーデだけじゃなくて屋敷の皆に説明が必要だった)という事実に、改めて気付くフランツであった……。
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お読みいただきありがとうございます。
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2月3日にアルファポリス様連載分を完結致しました。お読みいただいた皆様、お気に入り登録して下さった皆様、本当にありがとうございます!誠に勝手ながら作者都合で感想欄は閉じております。誤字脱字等が一部にあり大変申し訳ございません。随時直していきます。小説家になろう様にも投稿しております。 https://ncode.syosetu.com/n1893ha/アルファポリス様投稿分とは細部で違いがあります。大筋は変わりません。
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