43 / 52
事件解決篇② 父子の物語
しおりを挟む
もじゃもじゃ頭の緑の眼の犯人=エデル・カウフマンとその周辺の家族関係についての回です。
※残酷な表現、暴力的な表現、幼児虐待、DV、二股などの描写があります。苦手な方はご注意下さい。
ーーーーー
【帝国の青蛇】の異名を持つ、帝国諜報機関の局長・魔術師でもあるウベル・シオドマクが
意識の無いエデルをさらってどこかへ消えていった。その背景。
◆
ウベルは実はエデルの実の父親だった。
25年前、エデルの母親・レギーナはワレスと結婚。二股相手ウベルとの間に出来た子を、王国軍人ワレスとの間の子として産んだ。
しかし結婚から3年後、元から良好とは言えなかった夫婦仲は、エデルの件も含めて複合的な要因から悪化、母親のレギーナは家を出て行ってしまった。
夫のワレスと、わずか3歳だったエデルを置いて。
レギーナとウベルは元々恋人同士だったが、気の多いレギーナが王国軍人ワレスを引っ掛けて、いい仲になり
そこに元恋人のウベルとの仲がまた復活して…という二股状態での妊娠、からのワレスとの結婚。
ワレスとの結婚とエデルの誕生は、(当然というべきか)ウベルには知らされず。(ウベルは後から知った)
レギーナ本人は「どっちの子か分からなかった」と。
しかし生まれてみれば完全にウベルの子。ワレスは、美人妻の本性に気付くも時すでに遅し。
ハクワリ戦争からの帰還兵でもあるワレス・カウフマンは、結婚して新たな生活が始まると思っていた。しかし掴んだと思った幸せはあっけなく瓦解した。
家庭が荒れていくのと同時に、戦争中の精神的外傷によるフラッシュバックがワレスを襲い、ワレスをさいなむ。
ワレスは、レギーナとエデルを殴った。レギーナはレギーナで、我が子の世話を放棄しがちになり更には虐待した。
たとえ血の繋がらない子供であろうとも、世話をし、愛することも出来る継父も世の中に大勢いるだろう。だがワレスという男はそうではなかった。
妻を殴り子を殴り、妻が捨てていった後もエデルを更に責め立て虐げた。
エデルは耐えているように見えた。だが、彼は他の方法を知らなかっただけだった。
なにしろ、生まれた時から、この暴力的な男を父として育ってきて「ちちおや」とはこういうものだという認識しかなかった。
やがてエデルは長じて、形だけの父親・ワレスを養うようになった。
エデルはなぜ、あんな最低な父親から逃げ出さなかったのだろう?
エデルは、何もかもを諦めてしまっていた。それが日常だった。父親から殴られる時は、頭の中で想像する ────自分の心を切り離すのだ。
母親に捨てられ、養父には虐待され、ロクに学校にも行ってない。この先の人生に、楽しみも夢も無い。かすかな光を感じるのは隣に住むマルファ姉さんとその母親のおばさんと触れ合う時だけ。
だがエデルは、マルファ姉さんたちのような「あったかい人たちの世界」は、自分の住む社会ではないと思っていた。彼女らと自分を、別の世界の住人だと認識していた。自分を大切にするという思考自体が生まれなかった。彼は、家族から大事にされたことがないから。マルファ姉さん達は別の世界の人たち。そこは、ついぞ最後まで交わらなかったのだ。
◆
母親との結婚当初は、もう少しマトモなところに住んでいたらしい。だが母親の家出後、貧民街に住むようになり、未来なんか見えなかった。食って寝て、ただ毎日をやり過ごし、いずれはここで死んでいくのだろうとエデルは思っていた。
この貧民街から出ていこうなどと考えず、また、そんな気力も、考える材料も、持ち合わせていなかった。
保護者たる者から、殴られたり蹴られたり無視され続けたりした者は、向上心や夢など、はなっから知らないのだ。
自己肯定感が育つ土壌が無い。
エデルは本人も知らないうちに、自分から自分を切り離す「解離」を行おこなっていたと思われる。
隣室のマルファが知っているのは、ろくでなしワレスが不在の時にエデルが物を壊して荒れて叫んでいる声と音。
数時間してからマルファが様子を見に行くと、エデルは放心していた。
マルファが知る限り、エデルが外で誰かを害したことはない。勤務先の店でもそうだ。
激昂することもなく、暴れることもなく、マルファの冗談に声をあげて笑い。
梱包の紐を切ったり色々便利なんだ、と言って小さなナイフを研いでいるエデルは、極めて平静な様子だった。
◆
24年間
実の父親、ウベルは息子の存在を知ってからは時折、息子エデルの様子をこっそりと見に王国に来ていた。
もちろんエデルを捨てていったレギーナの行き先も把握済みだ。ウベルにとっては元恋人だが、レギーナに対しては近年は何の感情も湧いてこない。
ただ、エデルを産んだ女というさめた認識だけ。
なぜあんな最低な女にあれほど入れ上げたのかウベル自身にも分からない。ちなみに当時調べたこともあったが「魅了」の魔法ではなかった。
レギーナに惹かれたのはウベル自身の感情だった。
まるで熱病のようだった。気まぐれなレギーナに翻弄され、「あなたって怖い顔してるけど、笑うと可愛いわ」などと言われ、その言葉にのぼせた若き日。
ワレスが、幼いエデルを虐待していたことは分かっていた。何度も何度も、エデルを救い出す…いや、「誘拐する」ことを考えた。
しかし、攫ってきたところでそれからどうするのだ?自分は諜報機関に所属し、自宅にはほとんど帰れない。世話も出来ない。
加えて、わが子というのは弱みにもなる。誰かが息子に危害を加えようとしたら?職場の同僚たちですら信用出来ない。王国からの間諜もいる。
あの養父のもとからエデルを救っても、その先の展望が見えなかった。
じゃあ、攫った後で良さそうな誰かか、孤児院に預けるしかないか…しかし攫ってきて孤児院に入れるって本末転倒じゃないか… などと色々考えていたところ、エデルの隣人のマルファという少女の一家がエデルを世話してくれるようになった。
マルファたちから世話されるエデルを見て、誘拐することは保留にした。
諜報機関の仕事のかたわら、たまに様子を見に来るだけという奇妙な習慣が出来た。
ウベルは、クズ親ワレスに対しては基本手出しをしなかった。ワレスは王国軍人だったが
実はとある事情から王国側の諜報機関の観察対象であった。ヘタに殺しでもしたら、帝国側の間諜たちが危機に陥る可能性もあった。
◆
息子であるエデルが殺人をおかしたのだと知った後は、流石のウベルも動揺した。
しかも殺したのは軍人。調べたらクズ親ワレスと誤認して刺したフシもある。ウベルは歯噛みした。 (────やはり子供の時に攫って、帝国の教会にでも預ければ良かったか…)
彼が、息子エデルのことを調べているうちに王国の軍犯罪捜査局に気付かれた。
(クソっ……今までボンクラ揃いだった捜査局の連中がっ…。どんな奴が…)
尾行とも呼べない稚拙な尾行は、おそらく新入りだろうと思われたがフランツの頭を覗いたウベルは驚愕した。
(コイツ…転生者か)
(転生者は厄介なんだよな……帝国にも何人か出現したが、持っている考えが危険思想だったり、突然に異能を発動するケースもあったりで)
そしてウベルは、《古い知り合い》の居る《夢魔の次元》に、フランツを飛ばした。
◇
いかに帝国諜報機関の人間といえども、追尾してくる人間を無闇矢鱈に皆殺しなどという派手な真似はしない。必要以上に耳目を引くのは得策とはいえない。
ウベルは、「とにかく今はこの異世界人を無力化するのが必要だ」と判断したのだった。
◇
《眠るエデル(25歳)のくるくるした髪を撫でるウベル》
(────…このくせ毛はレギーナ譲りだな。瞳の色は俺の家系特有の緑だ)
ウベルは長いこと諜報機関に属して生きてきた。孤独だとか淋しいとかそんな感傷的な思考は捨てた。
ただ、与えられたミッションをこなし、帝国を害するような要素は排除する。全体の利益、帝国の権威を守る。いずれは帝国が他国を圧倒する。自分はその大義の為の捨て石になってもいい。そのことに疑問を感じたことはなく、常に緊張と戦闘の中で生きてきたウベルのような人間には、むしろ駒であることのほうが楽なのは事実だった。
平和な国でなど生きられはしない。個人の、市民の、思考などとっくに放棄した。
だが今は、この息子の顔を飽かず眺めていたい。
一緒に暮らしたこともなければ、名乗ったこともない父親。
人生に「たら」「れば」は無い。だが、「今」はある。
そんなことを考えていたら
すううっとどこからともなく、リヒャルトが現れた。 ────そう、ここは【夢魔の次元】、【すべての世界の緩衝地帯】、【世界と世界の境目】でもある。
ニタリと笑って夢魔は言う。
「時間の概念なぞ無いここで、なにを下界みたいなことを考えてるんだ?」
======
お読みいただきありがとうございます。
※残酷な表現、暴力的な表現、幼児虐待、DV、二股などの描写があります。苦手な方はご注意下さい。
ーーーーー
【帝国の青蛇】の異名を持つ、帝国諜報機関の局長・魔術師でもあるウベル・シオドマクが
意識の無いエデルをさらってどこかへ消えていった。その背景。
◆
ウベルは実はエデルの実の父親だった。
25年前、エデルの母親・レギーナはワレスと結婚。二股相手ウベルとの間に出来た子を、王国軍人ワレスとの間の子として産んだ。
しかし結婚から3年後、元から良好とは言えなかった夫婦仲は、エデルの件も含めて複合的な要因から悪化、母親のレギーナは家を出て行ってしまった。
夫のワレスと、わずか3歳だったエデルを置いて。
レギーナとウベルは元々恋人同士だったが、気の多いレギーナが王国軍人ワレスを引っ掛けて、いい仲になり
そこに元恋人のウベルとの仲がまた復活して…という二股状態での妊娠、からのワレスとの結婚。
ワレスとの結婚とエデルの誕生は、(当然というべきか)ウベルには知らされず。(ウベルは後から知った)
レギーナ本人は「どっちの子か分からなかった」と。
しかし生まれてみれば完全にウベルの子。ワレスは、美人妻の本性に気付くも時すでに遅し。
ハクワリ戦争からの帰還兵でもあるワレス・カウフマンは、結婚して新たな生活が始まると思っていた。しかし掴んだと思った幸せはあっけなく瓦解した。
家庭が荒れていくのと同時に、戦争中の精神的外傷によるフラッシュバックがワレスを襲い、ワレスをさいなむ。
ワレスは、レギーナとエデルを殴った。レギーナはレギーナで、我が子の世話を放棄しがちになり更には虐待した。
たとえ血の繋がらない子供であろうとも、世話をし、愛することも出来る継父も世の中に大勢いるだろう。だがワレスという男はそうではなかった。
妻を殴り子を殴り、妻が捨てていった後もエデルを更に責め立て虐げた。
エデルは耐えているように見えた。だが、彼は他の方法を知らなかっただけだった。
なにしろ、生まれた時から、この暴力的な男を父として育ってきて「ちちおや」とはこういうものだという認識しかなかった。
やがてエデルは長じて、形だけの父親・ワレスを養うようになった。
エデルはなぜ、あんな最低な父親から逃げ出さなかったのだろう?
エデルは、何もかもを諦めてしまっていた。それが日常だった。父親から殴られる時は、頭の中で想像する ────自分の心を切り離すのだ。
母親に捨てられ、養父には虐待され、ロクに学校にも行ってない。この先の人生に、楽しみも夢も無い。かすかな光を感じるのは隣に住むマルファ姉さんとその母親のおばさんと触れ合う時だけ。
だがエデルは、マルファ姉さんたちのような「あったかい人たちの世界」は、自分の住む社会ではないと思っていた。彼女らと自分を、別の世界の住人だと認識していた。自分を大切にするという思考自体が生まれなかった。彼は、家族から大事にされたことがないから。マルファ姉さん達は別の世界の人たち。そこは、ついぞ最後まで交わらなかったのだ。
◆
母親との結婚当初は、もう少しマトモなところに住んでいたらしい。だが母親の家出後、貧民街に住むようになり、未来なんか見えなかった。食って寝て、ただ毎日をやり過ごし、いずれはここで死んでいくのだろうとエデルは思っていた。
この貧民街から出ていこうなどと考えず、また、そんな気力も、考える材料も、持ち合わせていなかった。
保護者たる者から、殴られたり蹴られたり無視され続けたりした者は、向上心や夢など、はなっから知らないのだ。
自己肯定感が育つ土壌が無い。
エデルは本人も知らないうちに、自分から自分を切り離す「解離」を行おこなっていたと思われる。
隣室のマルファが知っているのは、ろくでなしワレスが不在の時にエデルが物を壊して荒れて叫んでいる声と音。
数時間してからマルファが様子を見に行くと、エデルは放心していた。
マルファが知る限り、エデルが外で誰かを害したことはない。勤務先の店でもそうだ。
激昂することもなく、暴れることもなく、マルファの冗談に声をあげて笑い。
梱包の紐を切ったり色々便利なんだ、と言って小さなナイフを研いでいるエデルは、極めて平静な様子だった。
◆
24年間
実の父親、ウベルは息子の存在を知ってからは時折、息子エデルの様子をこっそりと見に王国に来ていた。
もちろんエデルを捨てていったレギーナの行き先も把握済みだ。ウベルにとっては元恋人だが、レギーナに対しては近年は何の感情も湧いてこない。
ただ、エデルを産んだ女というさめた認識だけ。
なぜあんな最低な女にあれほど入れ上げたのかウベル自身にも分からない。ちなみに当時調べたこともあったが「魅了」の魔法ではなかった。
レギーナに惹かれたのはウベル自身の感情だった。
まるで熱病のようだった。気まぐれなレギーナに翻弄され、「あなたって怖い顔してるけど、笑うと可愛いわ」などと言われ、その言葉にのぼせた若き日。
ワレスが、幼いエデルを虐待していたことは分かっていた。何度も何度も、エデルを救い出す…いや、「誘拐する」ことを考えた。
しかし、攫ってきたところでそれからどうするのだ?自分は諜報機関に所属し、自宅にはほとんど帰れない。世話も出来ない。
加えて、わが子というのは弱みにもなる。誰かが息子に危害を加えようとしたら?職場の同僚たちですら信用出来ない。王国からの間諜もいる。
あの養父のもとからエデルを救っても、その先の展望が見えなかった。
じゃあ、攫った後で良さそうな誰かか、孤児院に預けるしかないか…しかし攫ってきて孤児院に入れるって本末転倒じゃないか… などと色々考えていたところ、エデルの隣人のマルファという少女の一家がエデルを世話してくれるようになった。
マルファたちから世話されるエデルを見て、誘拐することは保留にした。
諜報機関の仕事のかたわら、たまに様子を見に来るだけという奇妙な習慣が出来た。
ウベルは、クズ親ワレスに対しては基本手出しをしなかった。ワレスは王国軍人だったが
実はとある事情から王国側の諜報機関の観察対象であった。ヘタに殺しでもしたら、帝国側の間諜たちが危機に陥る可能性もあった。
◆
息子であるエデルが殺人をおかしたのだと知った後は、流石のウベルも動揺した。
しかも殺したのは軍人。調べたらクズ親ワレスと誤認して刺したフシもある。ウベルは歯噛みした。 (────やはり子供の時に攫って、帝国の教会にでも預ければ良かったか…)
彼が、息子エデルのことを調べているうちに王国の軍犯罪捜査局に気付かれた。
(クソっ……今までボンクラ揃いだった捜査局の連中がっ…。どんな奴が…)
尾行とも呼べない稚拙な尾行は、おそらく新入りだろうと思われたがフランツの頭を覗いたウベルは驚愕した。
(コイツ…転生者か)
(転生者は厄介なんだよな……帝国にも何人か出現したが、持っている考えが危険思想だったり、突然に異能を発動するケースもあったりで)
そしてウベルは、《古い知り合い》の居る《夢魔の次元》に、フランツを飛ばした。
◇
いかに帝国諜報機関の人間といえども、追尾してくる人間を無闇矢鱈に皆殺しなどという派手な真似はしない。必要以上に耳目を引くのは得策とはいえない。
ウベルは、「とにかく今はこの異世界人を無力化するのが必要だ」と判断したのだった。
◇
《眠るエデル(25歳)のくるくるした髪を撫でるウベル》
(────…このくせ毛はレギーナ譲りだな。瞳の色は俺の家系特有の緑だ)
ウベルは長いこと諜報機関に属して生きてきた。孤独だとか淋しいとかそんな感傷的な思考は捨てた。
ただ、与えられたミッションをこなし、帝国を害するような要素は排除する。全体の利益、帝国の権威を守る。いずれは帝国が他国を圧倒する。自分はその大義の為の捨て石になってもいい。そのことに疑問を感じたことはなく、常に緊張と戦闘の中で生きてきたウベルのような人間には、むしろ駒であることのほうが楽なのは事実だった。
平和な国でなど生きられはしない。個人の、市民の、思考などとっくに放棄した。
だが今は、この息子の顔を飽かず眺めていたい。
一緒に暮らしたこともなければ、名乗ったこともない父親。
人生に「たら」「れば」は無い。だが、「今」はある。
そんなことを考えていたら
すううっとどこからともなく、リヒャルトが現れた。 ────そう、ここは【夢魔の次元】、【すべての世界の緩衝地帯】、【世界と世界の境目】でもある。
ニタリと笑って夢魔は言う。
「時間の概念なぞ無いここで、なにを下界みたいなことを考えてるんだ?」
======
お読みいただきありがとうございます。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。
石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。
ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。
ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。
母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる