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眠り男、姫のキスで目覚める
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フランツの心の中
(────‥ん…なんかサワサワと顔がくすぐったい……なにか顔に当たる…ああ、いい香りがする…花の、香り?どこかで嗅いだことがある……あれっ …俺のくちびるになんかすごく柔らかいものが当たってる……この感触は……おや、雨……?…………雨にしてはやけに生温かい雨だぞ…)
⌘⌘⌘
その日、トルーデはひどく落胆していた。昨日、魔道士ターソ氏から言われた言葉が頭を離れない。
過去に同様の強制転移魔法にかけられた者はいたのか、その者達はどうなったか、と、聞き出したのだ。
ターソ魔道士が言うには、帝国で独自に進化を遂げた闇魔法は体系が違うのもあって王国側での解読は難しい面も多いとのこと。使えるルート全てを使い調べた限りにおいては、事態を打開出来るような方策は未だ見つかっていないということだった。
「楽観的なことは申しません」、と魔道士ターソは渋面で言った。
「何かのきっかけが有ればあるいは、とも思うのですが………それが皆目見当もつかないときてる。
────医療系魔道士が言うことじゃないかもしれませんが、私も…色々やり尽くしたので…後はもう神に祈りたい気分ですね……」
⌘⌘⌘
トルーデ(魔道士様も打つ手なしか……)
フランツの顔を見つめて、頰を指の背でそっと撫でたあと
フランツが眠るベッドの枕元の横に立ち、身体を曲げ覆い被さるようにして
トルーデは意識の無い彼のくちびるに、自分のくちびるを重ねた。
唇にキスをするのは今日がはじめてだ。頰や手は幾度もしてきたが。
当然ながら、フランツの反応は無く ────…トルーデは思った(…泣けてくる)
気がついたら、キスをしながら泣いていた。
ぽたぽたと涙が滴り落ちる。フランツの顔の上に。
(もっとこう…幸せな気分のはずだろう…好きな相手とのキスってやつは…)
その時、フランツの手がピクリと動き、持ち上がった。それに気付いたトルーデが、唇を離し長いキスを中断する。
フランツが目をゆっくりと開けた。
「 ────…!!!…フランツッ!」
なんということだろう、盤面はひっくり返った。
「フランツ様!」
ベッド脇で控えていた執事のエトムントが素早く部屋の外にいるペーターに指示を飛ばす。
「魔道士様と薬師様をすぐこちらの部屋に!」
「はっ」
「エプシュタイン様もだ!」
「はい!」
「ああ!フランツ!フランツフランツフランツ……」
トルーデは目が覚めたフランツの顔を何度も何度も手で挟んだり、手を握ったりしては確認を繰り返している。
「…ん…トルーデ…??俺…俺……」
まだぼうっとしているフランツは、トルーデを見、周りを見渡した。
「……こ…ここは……」
「 …屋敷だよ。10日間も意識が無かったんだ」
シルクシャツの袖で涙を拭いながらトルーデが答える。
(泣いてても、髪がぐしゃぐしゃでも、君は、君は、なんて可愛いんだ……)
トルーデの泣く姿を見たフランツが、笑顔を浮かべる。
「私が、分かるんだな?ほんとうに、戻ってきてくれたんだな?ああ、…フランツ ────!」
トルーデが横たわるフランツの手を両手で握り込んで、祈るポーズで額に付ける。
フランツはもう一方の手をゆっくり上げ、トルーデの髪にぎこちなく触れる。
ハッとして顔を上げたトルーデと見つめ合う。
「……会いたかった」
「フランツ……」
⌘⌘⌘
お読みいただきありがとうございます。
(────‥ん…なんかサワサワと顔がくすぐったい……なにか顔に当たる…ああ、いい香りがする…花の、香り?どこかで嗅いだことがある……あれっ …俺のくちびるになんかすごく柔らかいものが当たってる……この感触は……おや、雨……?…………雨にしてはやけに生温かい雨だぞ…)
⌘⌘⌘
その日、トルーデはひどく落胆していた。昨日、魔道士ターソ氏から言われた言葉が頭を離れない。
過去に同様の強制転移魔法にかけられた者はいたのか、その者達はどうなったか、と、聞き出したのだ。
ターソ魔道士が言うには、帝国で独自に進化を遂げた闇魔法は体系が違うのもあって王国側での解読は難しい面も多いとのこと。使えるルート全てを使い調べた限りにおいては、事態を打開出来るような方策は未だ見つかっていないということだった。
「楽観的なことは申しません」、と魔道士ターソは渋面で言った。
「何かのきっかけが有ればあるいは、とも思うのですが………それが皆目見当もつかないときてる。
────医療系魔道士が言うことじゃないかもしれませんが、私も…色々やり尽くしたので…後はもう神に祈りたい気分ですね……」
⌘⌘⌘
トルーデ(魔道士様も打つ手なしか……)
フランツの顔を見つめて、頰を指の背でそっと撫でたあと
フランツが眠るベッドの枕元の横に立ち、身体を曲げ覆い被さるようにして
トルーデは意識の無い彼のくちびるに、自分のくちびるを重ねた。
唇にキスをするのは今日がはじめてだ。頰や手は幾度もしてきたが。
当然ながら、フランツの反応は無く ────…トルーデは思った(…泣けてくる)
気がついたら、キスをしながら泣いていた。
ぽたぽたと涙が滴り落ちる。フランツの顔の上に。
(もっとこう…幸せな気分のはずだろう…好きな相手とのキスってやつは…)
その時、フランツの手がピクリと動き、持ち上がった。それに気付いたトルーデが、唇を離し長いキスを中断する。
フランツが目をゆっくりと開けた。
「 ────…!!!…フランツッ!」
なんということだろう、盤面はひっくり返った。
「フランツ様!」
ベッド脇で控えていた執事のエトムントが素早く部屋の外にいるペーターに指示を飛ばす。
「魔道士様と薬師様をすぐこちらの部屋に!」
「はっ」
「エプシュタイン様もだ!」
「はい!」
「ああ!フランツ!フランツフランツフランツ……」
トルーデは目が覚めたフランツの顔を何度も何度も手で挟んだり、手を握ったりしては確認を繰り返している。
「…ん…トルーデ…??俺…俺……」
まだぼうっとしているフランツは、トルーデを見、周りを見渡した。
「……こ…ここは……」
「 …屋敷だよ。10日間も意識が無かったんだ」
シルクシャツの袖で涙を拭いながらトルーデが答える。
(泣いてても、髪がぐしゃぐしゃでも、君は、君は、なんて可愛いんだ……)
トルーデの泣く姿を見たフランツが、笑顔を浮かべる。
「私が、分かるんだな?ほんとうに、戻ってきてくれたんだな?ああ、…フランツ ────!」
トルーデが横たわるフランツの手を両手で握り込んで、祈るポーズで額に付ける。
フランツはもう一方の手をゆっくり上げ、トルーデの髪にぎこちなく触れる。
ハッとして顔を上げたトルーデと見つめ合う。
「……会いたかった」
「フランツ……」
⌘⌘⌘
お読みいただきありがとうございます。
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2月3日にアルファポリス様連載分を完結致しました。お読みいただいた皆様、お気に入り登録して下さった皆様、本当にありがとうございます!誠に勝手ながら作者都合で感想欄は閉じております。誤字脱字等が一部にあり大変申し訳ございません。随時直していきます。小説家になろう様にも投稿しております。 https://ncode.syosetu.com/n1893ha/アルファポリス様投稿分とは細部で違いがあります。大筋は変わりません。
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