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夢魔は語る②
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「むま…むま、夢魔?…??」思考が追いつかない。
「お前は、あの爬虫類みたいな帝国人にここに飛ばされてきたのさ。あやつとはまだ短い付き合いだが、時々厄介な人間をここに送り込んでくる…そう、お前みたいな異世界からの転生者とか、な」
そのユキヒコ ────ではなく『リヒャルト』は、指をパチンと鳴らすと、別の姿に変わった。
今度は妖艶な女の姿に。「夢魔ってのは、時たま人間界にも行くんだよ。サキュバスやインキュバスに変身して。ただし生殖能力は無い」
あっけに取られていると パチン。また指を鳴らす音。
今度は金髪長髪の若い男の姿に変わった。トルーデの髪色と長さに似てはいるがアゴが割れてて口ヒゲがある。
「おっと 間違えた、お前が今気になってるあいつは女だったな。いつも男の格好はしてるが。ーーこの姿もなかなかイケてるだろ?」
そう言ってニヤニヤ笑う夢魔・リヒャルトに、『コイツわざとやったな…』と思いイラッとする。
「俺は、俺は ────、死んだのか?ここは、そういう場所なのか?」
リヒャルトはその問いにはすぐ答えず、指をパチン、パチンと鳴らす。
前世の日本。ビル群と遠くに小さく見える富士山。古代ローマのような光景、ドラゴンが飛び、ドワーフやホビットがいる世界。そして今世の俺が生きる世界。故郷の街、王都…。
最後にまた、真っ暗な空の、河辺の元の風景に戻る。
「あの三途の河とやらは、お前の前世の記憶から引っ張り出して再現してみたが、お気に召さなかったか?」
「 ────…あれを渡ったらもう戻ってこれないって言われてるからな…」
「すまんすまん 悪戯が過ぎたか」
謝ってる様子皆無で、リヒャルトは再び語り始める。
「ここは…言うなればすべての境目だ。彼岸と此岸。違う世界と世界の境目。異世界と現実の境目。時と空間の狭間。
ありとあらゆる世界の狭間に存在する緩衝地帯のようなもの。
俺様に接触してきた人間どもは、単に夢魔の次元と呼んでいる。管理者だしな。その呼称も決して間違いではない。ただ、ヒトが考える想像のずっと上を行く。ーーーああ、宇宙とかいうやつも、ここの端っこだぞ。
人が夜見る夢の中ってのは実は、人間すべての共通空間でもある。
夢は時に荒唐無稽で、ファンタジーも真っ青の展開だろ?
夢にも種類があって、心象風景と、そいつ自身の想像と、昼間の記憶の固定の機能もあるか ────…まあ夢も色々さ。ここに飛んできて見てるのが残りの三分の一ぐらいってとこか…ここも複層的だ。この次元の世界の構造は、とてもいま説明しきれんがな」
にまり、と口角を上げてリヒャルトは笑う。
「ああ、お前はまだ死んではいないぞ?ただ、このままここにいたら、おまえさんのカラダのほうは、次第に朽ちていくだろうな いくら魔法でケアしてても」
「なんだそりゃ…結局死ぬんじゃねえか!」わけの分からない怒りが込み上げてきた。
はっはっはっ、と快活そうに夢魔は笑い
「ヒトの子よ、人間よ、お前がここに来たことには理由があり意味がある。お前は確かにあの男によってここに送り込まれたが、それはすべて『導き』なのだよ」と厳かに告げた。
「 ────は?…導き?」
「どうだ、言ってることは実に偉そうで、さしずめお前の前世の、【カミ】のようだろう?実はな、カミとやらと悪魔や夢魔は時々入れ替わるものなのだよ 退屈するからな ハハハハハ!」
なんか夢魔リヒャルトが無茶苦茶なこと言ってる。前世では「神も仏もない」っていう表現があったけど…。
「お前をここに放り込んできたウベルは、単にお前が転生者で厄介だから俺様に丸投げしてきたようだが…
まあ、あのウベルとお前とは奇縁があるようだぞ?…いかなクセ者といえども、所詮は人間よのう…
ーー…いいか、お前はお前で、ここでの役目を果たすんだ、フランツ・ヴェルテ ────もとい、ユキヒコよ」
パチン。リヒャルトが指を鳴らすと、リヒャルトが消えて、見知らぬ小さな子どもが目の前に出現した。
その子どもはキョトンとしている。どうやらこの子はリヒャルトが変身したわけではないようだ。
リヒャルトの声だけがあたりに響く。《そのガキの願いを聞いてやれ》
「お前は、あの爬虫類みたいな帝国人にここに飛ばされてきたのさ。あやつとはまだ短い付き合いだが、時々厄介な人間をここに送り込んでくる…そう、お前みたいな異世界からの転生者とか、な」
そのユキヒコ ────ではなく『リヒャルト』は、指をパチンと鳴らすと、別の姿に変わった。
今度は妖艶な女の姿に。「夢魔ってのは、時たま人間界にも行くんだよ。サキュバスやインキュバスに変身して。ただし生殖能力は無い」
あっけに取られていると パチン。また指を鳴らす音。
今度は金髪長髪の若い男の姿に変わった。トルーデの髪色と長さに似てはいるがアゴが割れてて口ヒゲがある。
「おっと 間違えた、お前が今気になってるあいつは女だったな。いつも男の格好はしてるが。ーーこの姿もなかなかイケてるだろ?」
そう言ってニヤニヤ笑う夢魔・リヒャルトに、『コイツわざとやったな…』と思いイラッとする。
「俺は、俺は ────、死んだのか?ここは、そういう場所なのか?」
リヒャルトはその問いにはすぐ答えず、指をパチン、パチンと鳴らす。
前世の日本。ビル群と遠くに小さく見える富士山。古代ローマのような光景、ドラゴンが飛び、ドワーフやホビットがいる世界。そして今世の俺が生きる世界。故郷の街、王都…。
最後にまた、真っ暗な空の、河辺の元の風景に戻る。
「あの三途の河とやらは、お前の前世の記憶から引っ張り出して再現してみたが、お気に召さなかったか?」
「 ────…あれを渡ったらもう戻ってこれないって言われてるからな…」
「すまんすまん 悪戯が過ぎたか」
謝ってる様子皆無で、リヒャルトは再び語り始める。
「ここは…言うなればすべての境目だ。彼岸と此岸。違う世界と世界の境目。異世界と現実の境目。時と空間の狭間。
ありとあらゆる世界の狭間に存在する緩衝地帯のようなもの。
俺様に接触してきた人間どもは、単に夢魔の次元と呼んでいる。管理者だしな。その呼称も決して間違いではない。ただ、ヒトが考える想像のずっと上を行く。ーーーああ、宇宙とかいうやつも、ここの端っこだぞ。
人が夜見る夢の中ってのは実は、人間すべての共通空間でもある。
夢は時に荒唐無稽で、ファンタジーも真っ青の展開だろ?
夢にも種類があって、心象風景と、そいつ自身の想像と、昼間の記憶の固定の機能もあるか ────…まあ夢も色々さ。ここに飛んできて見てるのが残りの三分の一ぐらいってとこか…ここも複層的だ。この次元の世界の構造は、とてもいま説明しきれんがな」
にまり、と口角を上げてリヒャルトは笑う。
「ああ、お前はまだ死んではいないぞ?ただ、このままここにいたら、おまえさんのカラダのほうは、次第に朽ちていくだろうな いくら魔法でケアしてても」
「なんだそりゃ…結局死ぬんじゃねえか!」わけの分からない怒りが込み上げてきた。
はっはっはっ、と快活そうに夢魔は笑い
「ヒトの子よ、人間よ、お前がここに来たことには理由があり意味がある。お前は確かにあの男によってここに送り込まれたが、それはすべて『導き』なのだよ」と厳かに告げた。
「 ────は?…導き?」
「どうだ、言ってることは実に偉そうで、さしずめお前の前世の、【カミ】のようだろう?実はな、カミとやらと悪魔や夢魔は時々入れ替わるものなのだよ 退屈するからな ハハハハハ!」
なんか夢魔リヒャルトが無茶苦茶なこと言ってる。前世では「神も仏もない」っていう表現があったけど…。
「お前をここに放り込んできたウベルは、単にお前が転生者で厄介だから俺様に丸投げしてきたようだが…
まあ、あのウベルとお前とは奇縁があるようだぞ?…いかなクセ者といえども、所詮は人間よのう…
ーー…いいか、お前はお前で、ここでの役目を果たすんだ、フランツ・ヴェルテ ────もとい、ユキヒコよ」
パチン。リヒャルトが指を鳴らすと、リヒャルトが消えて、見知らぬ小さな子どもが目の前に出現した。
その子どもはキョトンとしている。どうやらこの子はリヒャルトが変身したわけではないようだ。
リヒャルトの声だけがあたりに響く。《そのガキの願いを聞いてやれ》
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