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ランナーズ・ハイ
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フランツの日常の一部分を切り取った回です
とある早朝。朝日は昇ったばかり。
近くにある元・軍の教練場は今は王国の一般国民にも解放されている。
中央に広い芝生スペースは楕円形で、その周りは走りやすいように固められていた。
(※ 陸上競技場っぽいです)
先の戦争の時
平民から徴兵されたニワカ兵士は、どこに行かされるか決まる前のわずかな期間、ここの軍事教練場で走り込みなどの鍛錬をさせられた。基礎体力の無い者も多かったからだ。
割と体力の要る仕事もしていたフランツには、走ることも鍛錬もそんなに苦ではなかったが、時計屋だったという若い男などはヘロヘロになっていた。
そんな想い出(?)の場所である元教練場を、フランツは走っていた。走り出してかれこれもう1時間以上になるだろうかーーー。
=====================
《フランツ視点》
(走る音)ザッザッザッザッザッザッザッザッザッ スー スー ハッハッ…
ここの公園にはまだ人の姿も無い。こんな早朝に走りに来てるバカは俺ぐらいなもんだ。
走る俺の意識はひどく澄んでいる。
自分の足音と呼吸、息づかいだけが自分の心に響く。
ドック…ドック…ドック… 心臓の鼓動、皮膚を撫でていく風、脚を前に出してただただ進む、走る自分。
自分の中に響くそれらをすべて受け止めて走る。
なぜだろう…ひとつひとつの音が妙にクッキリと感じる。身体は疲労している筈なのに、このままいつまでも走り続けられそうだ……。感じていた苦しさは何処へいった?
ああ…こういうの、なんていうんだったかな確か「ランナーズハイ」とか言うんだっけ。
ザッザッザッザッザッザッ
俺は走る自分の世界に囚とらわれそうになる感覚に陥った。でも気持ちいい…最高の気分、かもしれない…
==================
、と思っていたら自分以外の足音がする。あれ…誰か走ってる?カーブを曲がり、その人物の姿が見えた。長い髪を頭の上で無造作に団子状にまとめた運動着姿のトルーデだった。
ニヤリと笑い、俺を追い抜いていく。競争してるわけじゃないのになー、と思っていたら、ペースを落として俺の隣に並ぶ。
2人、その後30分ぐらい走っただろうか。
爽快な気分だ。さっきトルーデが走りに「加わって」いなかったら、どこかに精神が行ってしまっていたかもしれないな、などとちょっと考える。あるわけないか、んなこと。
街も目覚めてきたようで、遠くのざわめきがここの公園にも届く。
「あー、走った走った~… 今日の朝メシもうまいだろうな-」
足を止めて手の甲で汗をぬぐいながら俺がそう言うと
「うん 朝の空気は気持ちいいな」
と、トルーデがニッカリと笑った。
子供のような、屈託のない笑い。
俺は不覚にもその笑顔にドキッとした。
トルーデはどえらい美形で美人で、女性に言っていいか分からんけどなんつーかハンサムで…でもすごく可愛いんだよな。うん、可愛い。大事なことなので二度言いました。
俺はその顔に見とれてしばし惚ける。そうしていたらトルーデが道を先に行ってしまった。
「ちょ 待てよ…」
つい、どっかで聞いて頭の隅にあった言葉が出ちまった。
今沸き上がってきた感情が、どこから来たのか俺は戸惑う。
屋敷への道を小走りに駆けてゆく。
================
お読みいただきありがとうございます!
とある早朝。朝日は昇ったばかり。
近くにある元・軍の教練場は今は王国の一般国民にも解放されている。
中央に広い芝生スペースは楕円形で、その周りは走りやすいように固められていた。
(※ 陸上競技場っぽいです)
先の戦争の時
平民から徴兵されたニワカ兵士は、どこに行かされるか決まる前のわずかな期間、ここの軍事教練場で走り込みなどの鍛錬をさせられた。基礎体力の無い者も多かったからだ。
割と体力の要る仕事もしていたフランツには、走ることも鍛錬もそんなに苦ではなかったが、時計屋だったという若い男などはヘロヘロになっていた。
そんな想い出(?)の場所である元教練場を、フランツは走っていた。走り出してかれこれもう1時間以上になるだろうかーーー。
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《フランツ視点》
(走る音)ザッザッザッザッザッザッザッザッザッ スー スー ハッハッ…
ここの公園にはまだ人の姿も無い。こんな早朝に走りに来てるバカは俺ぐらいなもんだ。
走る俺の意識はひどく澄んでいる。
自分の足音と呼吸、息づかいだけが自分の心に響く。
ドック…ドック…ドック… 心臓の鼓動、皮膚を撫でていく風、脚を前に出してただただ進む、走る自分。
自分の中に響くそれらをすべて受け止めて走る。
なぜだろう…ひとつひとつの音が妙にクッキリと感じる。身体は疲労している筈なのに、このままいつまでも走り続けられそうだ……。感じていた苦しさは何処へいった?
ああ…こういうの、なんていうんだったかな確か「ランナーズハイ」とか言うんだっけ。
ザッザッザッザッザッザッ
俺は走る自分の世界に囚とらわれそうになる感覚に陥った。でも気持ちいい…最高の気分、かもしれない…
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、と思っていたら自分以外の足音がする。あれ…誰か走ってる?カーブを曲がり、その人物の姿が見えた。長い髪を頭の上で無造作に団子状にまとめた運動着姿のトルーデだった。
ニヤリと笑い、俺を追い抜いていく。競争してるわけじゃないのになー、と思っていたら、ペースを落として俺の隣に並ぶ。
2人、その後30分ぐらい走っただろうか。
爽快な気分だ。さっきトルーデが走りに「加わって」いなかったら、どこかに精神が行ってしまっていたかもしれないな、などとちょっと考える。あるわけないか、んなこと。
街も目覚めてきたようで、遠くのざわめきがここの公園にも届く。
「あー、走った走った~… 今日の朝メシもうまいだろうな-」
足を止めて手の甲で汗をぬぐいながら俺がそう言うと
「うん 朝の空気は気持ちいいな」
と、トルーデがニッカリと笑った。
子供のような、屈託のない笑い。
俺は不覚にもその笑顔にドキッとした。
トルーデはどえらい美形で美人で、女性に言っていいか分からんけどなんつーかハンサムで…でもすごく可愛いんだよな。うん、可愛い。大事なことなので二度言いました。
俺はその顔に見とれてしばし惚ける。そうしていたらトルーデが道を先に行ってしまった。
「ちょ 待てよ…」
つい、どっかで聞いて頭の隅にあった言葉が出ちまった。
今沸き上がってきた感情が、どこから来たのか俺は戸惑う。
屋敷への道を小走りに駆けてゆく。
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お読みいただきありがとうございます!
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