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元妻が現れた
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フランツが居候してるお屋敷に、突然訪ねてきたイレーネ(別れた妻)。なにやらとっても困っているようで……
※ フランツ視点
=================
赤ん坊(ルディという名の男の子)を抱いてやってきた元妻の説明によると……
イレーネと『デキて』から実家の男爵家とは絶縁状態だったというあのガベーレという男は、教会からの離婚完了通知を見て、子供のこともあってイレーネとちゃんと結婚しようと思い立ったらしく
(平民と貴族の婚姻は可能。)
知人を通じて久々に実家に連絡を取った
↓
『あの件は許すから、いったん家に帰ってこい』と父親が言っていると知って
↓
『君とルディのことも話して、すぐ帰ってくるから』と出掛けていった
↓
帰ってこない
↓
1週間経った
↓
もちろん実家にも行ってみた
↓
門前払いされる
↓
イレーネは、父親も既に亡くなっており親族も遠方、誰にも相談出来ない
↓
生活が困窮してきた、ルディの世話もある
↓
「このままガベーレが帰ってこなかったらどうしよう…」という不安に陥る
↓
イレーネ、教会に行き、無理を言ってフランツの住所を教えてもらう
↓
今
むーん……、だからって、俺んとこに来る?別れた夫だよ?俺。
「ごめんなさい…いまさらあなたにこんな相談出来た立場じゃないことは重々分かってるんだけど…」
そうだな。
「他に誰も、相談出来る人がいなくて…お父さんももう亡くなって、叔母さんも遠くにいるの」
「そっか…、彼の実家が言ってた『あの件はもう許すから』ってのはなんのこと?」
「ーーーー…ガベーレには、親が決めた婚約者がいたの…」
頭が痛くなってきた。
…お互いに相手がいる同士がくっついたってわけかよ。
「ごめんなさい…ごめんなさい…わたしっ…あなたに、謝っても謝りきれないことをしたのに…あなたを頼るなんて…」
イレーネが大粒の涙をポロポロ溢す。あーーーー、泣くの反則…いやまあ、この状況、泣きたくもなるか…
手でぬぐうも、その緑の瞳から涙はとめどなく流れ続ける。
「どうしよ… 止まらなっ…わたしが強くいなくちゃならないのにッ、ルディのっ……ためにも…わたし、母親だから…」
俺は黙ってハンカチを差し出す。さすがに、拭いてやることはしない。
俺からハンカチを受け取ったイレーネが、ありがとう、と薄く笑む。
なんだ、この状況。
==========
部屋には執事、執事見習い、メイド数人がおり、みな部屋の壁側でフランツとその客人たちの話を一緒に聞いていた。
(まあ この元奥様が、フランツ様をこっそり外に呼び出したりしなかったのはよかったかもしれぬ…もし2人だけで会ったりしたら旧情を呼び起こされてフラッといっていた可能性はある。この屋敷の中であっても決して2人きりにならないようにしないとならん…)
執事のエトムントはしばし考え、あることを思い付いた。いったん中座すると、「爺」とその部下らにラウターバッハ男爵家の調査を命じた。
フランツ様の元奥様は、かなり憔悴しておられる。少々業腹ではあるが、赤ん坊を抱えた女性が困窮しているのは助けなければ。
そして出来るだけ早く、そのガベーレとやらの安否と、裏に隠された事情を調べねばならない。
トルーデお嬢様は、オリガに見張らせて決してここに来ないように言ってある。お嬢様が従うとは限らんが…。
執事は、面倒なことに巻き込まれそうな予感に、こめかみを抑えた。
※ フランツ視点
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赤ん坊(ルディという名の男の子)を抱いてやってきた元妻の説明によると……
イレーネと『デキて』から実家の男爵家とは絶縁状態だったというあのガベーレという男は、教会からの離婚完了通知を見て、子供のこともあってイレーネとちゃんと結婚しようと思い立ったらしく
(平民と貴族の婚姻は可能。)
知人を通じて久々に実家に連絡を取った
↓
『あの件は許すから、いったん家に帰ってこい』と父親が言っていると知って
↓
『君とルディのことも話して、すぐ帰ってくるから』と出掛けていった
↓
帰ってこない
↓
1週間経った
↓
もちろん実家にも行ってみた
↓
門前払いされる
↓
イレーネは、父親も既に亡くなっており親族も遠方、誰にも相談出来ない
↓
生活が困窮してきた、ルディの世話もある
↓
「このままガベーレが帰ってこなかったらどうしよう…」という不安に陥る
↓
イレーネ、教会に行き、無理を言ってフランツの住所を教えてもらう
↓
今
むーん……、だからって、俺んとこに来る?別れた夫だよ?俺。
「ごめんなさい…いまさらあなたにこんな相談出来た立場じゃないことは重々分かってるんだけど…」
そうだな。
「他に誰も、相談出来る人がいなくて…お父さんももう亡くなって、叔母さんも遠くにいるの」
「そっか…、彼の実家が言ってた『あの件はもう許すから』ってのはなんのこと?」
「ーーーー…ガベーレには、親が決めた婚約者がいたの…」
頭が痛くなってきた。
…お互いに相手がいる同士がくっついたってわけかよ。
「ごめんなさい…ごめんなさい…わたしっ…あなたに、謝っても謝りきれないことをしたのに…あなたを頼るなんて…」
イレーネが大粒の涙をポロポロ溢す。あーーーー、泣くの反則…いやまあ、この状況、泣きたくもなるか…
手でぬぐうも、その緑の瞳から涙はとめどなく流れ続ける。
「どうしよ… 止まらなっ…わたしが強くいなくちゃならないのにッ、ルディのっ……ためにも…わたし、母親だから…」
俺は黙ってハンカチを差し出す。さすがに、拭いてやることはしない。
俺からハンカチを受け取ったイレーネが、ありがとう、と薄く笑む。
なんだ、この状況。
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部屋には執事、執事見習い、メイド数人がおり、みな部屋の壁側でフランツとその客人たちの話を一緒に聞いていた。
(まあ この元奥様が、フランツ様をこっそり外に呼び出したりしなかったのはよかったかもしれぬ…もし2人だけで会ったりしたら旧情を呼び起こされてフラッといっていた可能性はある。この屋敷の中であっても決して2人きりにならないようにしないとならん…)
執事のエトムントはしばし考え、あることを思い付いた。いったん中座すると、「爺」とその部下らにラウターバッハ男爵家の調査を命じた。
フランツ様の元奥様は、かなり憔悴しておられる。少々業腹ではあるが、赤ん坊を抱えた女性が困窮しているのは助けなければ。
そして出来るだけ早く、そのガベーレとやらの安否と、裏に隠された事情を調べねばならない。
トルーデお嬢様は、オリガに見張らせて決してここに来ないように言ってある。お嬢様が従うとは限らんが…。
執事は、面倒なことに巻き込まれそうな予感に、こめかみを抑えた。
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