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フランツの過去と苦い酒
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前世の話、過去の話が出てきます
※ フランツ視点
ーーーーーーーー
どうも、主人公のフランツです。やさぐれておりますが、ヤケ酒をしようと思う。
そんな俺と一緒に酒場に来てくれたのはトルーデ。
トルーデがあまりに美しすぎて、そのままだと給仕の人が男女問わず挙動不審になってしまうので
街に出る時はカツラと眼鏡で変装。
今、トルーデは金髪を隠し、茶色のボブヘアに銀縁メガネの騎士だ。
それでもダダ漏れる美しさ。案内の子が、ポーーーっとなってる。
ああ、うん、これはしょうがない。(←慣れてる)
ある種酷薄な印象を与える銀縁のメガネが、逆に彼女の魅力をUPしちゃってるような気がしないでもないがまあいいか…。
■■■■■
トルーデの外見に惹かれる人は多い。
だがここまで美しすぎると、告白しても玉砕する未来図しか思い描けないらしく
今は、告白されたりすることはヒジョーに少ないのだそうな。(以前はそりゃあもう色々あったらしい)
トルーデは美しいが、むろん外見だけの人間ではない。その見識、技能、才覚、人格、そのどれもが素晴らしい。
俺はトルーデを、人間として友として尊敬している。
俺は異世界からの転生者。幼い頃に頭を打って、前世を思い出した。
前世 俺は日本に生まれデパートで販売の仕事に就いていた。毎日毎日売り上げと睨めっこし、売り場作りに苦心していただけの勤め人。管理職でもないヒラ。(まだ勤務して数年だったからね)
前世でも平凡だった俺の日々の楽しみは漫画と小説、ドラマに映画。
俺がどんなふうに死んだかって?帰宅時に、信号待ちで心停止したっぽい。あの強烈な痛みだけは、二度と味わいたくない。
ま、どんな死に方をするかなんて、自分じゃ選べないけどよ。
◆◆◆◆◆
こっちの世界で生まれ落ちた家は、庶民の家。
父親は、とある商人の屋敷で働いていた。
清掃、買い出し、馬の世話も担当だし、なんなら御者もやる。人手が足りなくて頼まれれば護衛の真似事も…。
(なんでもやらせすぎな雇い主だな!)
母親は、近所の仕事をあちこち請け負って手間賃を得ていた。
決して裕福ではなかったけれど、家族5人が暮らすには充分だった。
父親は温厚、母親は気が強くてまっすぐ。弟も妹も可愛い。第一子の俺はもう働いていた。交際中の恋人もいた。
だが、そんなささやかな幸せも、開戦までだった。
俺が隣街へ買い出しに行っていた日、予想外に買い物に手間取り、帰路についたのが深夜になってしまった。
その晩、俺の街に敵国の魔法戦闘機が襲来した。その数、30機は下らなかったという。(軍調べ)
奇襲だ。軍事施設でなく、都市部を狙ってなされた攻撃。
魔法戦闘機は、夜の闇のように真っ黒で、音がしない。勿論魔法で操作。
前世のステルス戦闘機や、無人攻撃ドローンの恐ろしさを思わせるシロモノだ。
街に入る峠から、街が真っ赤に燃えているのが見えた。
俺の転生先の家族は、その空襲の時に 全員死んだ。
家族の中で、俺だけが生き残った。
街の住民も多数死んだ。生き残ったのは、半数にも満たなかった。
■■■■■
酒場街のとある店。トルーデが別料金を払ってくれると言い、個室で呑む。クダを巻く俺。
ダンッ 強い酒のグラスをテーブルに打ちつけて、突っ伏す。
「ああああ誰か俺を褒めてくれよおおお あのいけすかない男を殴らなかった俺をよ…」
別にイレーネの前でカッコつけたかったわけじゃない。
殴っても、イレーネが俺の元に戻ってくるわけじゃない。あの赤子が、存在しなかった前に戻るわけじゃない。
…いいや、やっぱり単にカッコつけか。
ショックだった。大体俺は、俺は、アレ?
あれれ?思考がループする。さっきからぐるぐる考えている。
強い酒を煽って、酔っ払っているからか?だな!だな!おうさ、今夜の俺は酔っ払いだぜ。酔っ払って何が悪い!
「まあ飲め」
トルーデが、俺のグラスに原酒のままダバダバと酒を注ぐ。……これで何杯目だ?わからん…
俺に注いだその手で、自分のグラスにも入れて水のようにそれを飲む彼女。彼女は俺よりか酒が強い。
「忘れられんかもしれんが飲んで忘れろ…ってあれ?矛盾してるか」
「ちげえねえ!あ-…イレーネ、なんで俺を待っててくれなかったんだよ-…」
未練がましく妻の名前を呼ぶ俺を、トルーデが切なげに見つめていたことには、俺は気付かなかった。
記憶が、ない。
腹が、減った。
俺、クッソダサい…
ーーーーーーーーーー
お店では、お通しのようなものは出たんですがロクに食べずに いきなり強い酒。そんな飲み方しちゃいけません。せめて水を一緒に飲みましょう。by爺
※ フランツ視点
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どうも、主人公のフランツです。やさぐれておりますが、ヤケ酒をしようと思う。
そんな俺と一緒に酒場に来てくれたのはトルーデ。
トルーデがあまりに美しすぎて、そのままだと給仕の人が男女問わず挙動不審になってしまうので
街に出る時はカツラと眼鏡で変装。
今、トルーデは金髪を隠し、茶色のボブヘアに銀縁メガネの騎士だ。
それでもダダ漏れる美しさ。案内の子が、ポーーーっとなってる。
ああ、うん、これはしょうがない。(←慣れてる)
ある種酷薄な印象を与える銀縁のメガネが、逆に彼女の魅力をUPしちゃってるような気がしないでもないがまあいいか…。
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トルーデの外見に惹かれる人は多い。
だがここまで美しすぎると、告白しても玉砕する未来図しか思い描けないらしく
今は、告白されたりすることはヒジョーに少ないのだそうな。(以前はそりゃあもう色々あったらしい)
トルーデは美しいが、むろん外見だけの人間ではない。その見識、技能、才覚、人格、そのどれもが素晴らしい。
俺はトルーデを、人間として友として尊敬している。
俺は異世界からの転生者。幼い頃に頭を打って、前世を思い出した。
前世 俺は日本に生まれデパートで販売の仕事に就いていた。毎日毎日売り上げと睨めっこし、売り場作りに苦心していただけの勤め人。管理職でもないヒラ。(まだ勤務して数年だったからね)
前世でも平凡だった俺の日々の楽しみは漫画と小説、ドラマに映画。
俺がどんなふうに死んだかって?帰宅時に、信号待ちで心停止したっぽい。あの強烈な痛みだけは、二度と味わいたくない。
ま、どんな死に方をするかなんて、自分じゃ選べないけどよ。
◆◆◆◆◆
こっちの世界で生まれ落ちた家は、庶民の家。
父親は、とある商人の屋敷で働いていた。
清掃、買い出し、馬の世話も担当だし、なんなら御者もやる。人手が足りなくて頼まれれば護衛の真似事も…。
(なんでもやらせすぎな雇い主だな!)
母親は、近所の仕事をあちこち請け負って手間賃を得ていた。
決して裕福ではなかったけれど、家族5人が暮らすには充分だった。
父親は温厚、母親は気が強くてまっすぐ。弟も妹も可愛い。第一子の俺はもう働いていた。交際中の恋人もいた。
だが、そんなささやかな幸せも、開戦までだった。
俺が隣街へ買い出しに行っていた日、予想外に買い物に手間取り、帰路についたのが深夜になってしまった。
その晩、俺の街に敵国の魔法戦闘機が襲来した。その数、30機は下らなかったという。(軍調べ)
奇襲だ。軍事施設でなく、都市部を狙ってなされた攻撃。
魔法戦闘機は、夜の闇のように真っ黒で、音がしない。勿論魔法で操作。
前世のステルス戦闘機や、無人攻撃ドローンの恐ろしさを思わせるシロモノだ。
街に入る峠から、街が真っ赤に燃えているのが見えた。
俺の転生先の家族は、その空襲の時に 全員死んだ。
家族の中で、俺だけが生き残った。
街の住民も多数死んだ。生き残ったのは、半数にも満たなかった。
■■■■■
酒場街のとある店。トルーデが別料金を払ってくれると言い、個室で呑む。クダを巻く俺。
ダンッ 強い酒のグラスをテーブルに打ちつけて、突っ伏す。
「ああああ誰か俺を褒めてくれよおおお あのいけすかない男を殴らなかった俺をよ…」
別にイレーネの前でカッコつけたかったわけじゃない。
殴っても、イレーネが俺の元に戻ってくるわけじゃない。あの赤子が、存在しなかった前に戻るわけじゃない。
…いいや、やっぱり単にカッコつけか。
ショックだった。大体俺は、俺は、アレ?
あれれ?思考がループする。さっきからぐるぐる考えている。
強い酒を煽って、酔っ払っているからか?だな!だな!おうさ、今夜の俺は酔っ払いだぜ。酔っ払って何が悪い!
「まあ飲め」
トルーデが、俺のグラスに原酒のままダバダバと酒を注ぐ。……これで何杯目だ?わからん…
俺に注いだその手で、自分のグラスにも入れて水のようにそれを飲む彼女。彼女は俺よりか酒が強い。
「忘れられんかもしれんが飲んで忘れろ…ってあれ?矛盾してるか」
「ちげえねえ!あ-…イレーネ、なんで俺を待っててくれなかったんだよ-…」
未練がましく妻の名前を呼ぶ俺を、トルーデが切なげに見つめていたことには、俺は気付かなかった。
記憶が、ない。
腹が、減った。
俺、クッソダサい…
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お店では、お通しのようなものは出たんですがロクに食べずに いきなり強い酒。そんな飲み方しちゃいけません。せめて水を一緒に飲みましょう。by爺
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2月3日にアルファポリス様連載分を完結致しました。お読みいただいた皆様、お気に入り登録して下さった皆様、本当にありがとうございます!誠に勝手ながら作者都合で感想欄は閉じております。誤字脱字等が一部にあり大変申し訳ございません。随時直していきます。小説家になろう様にも投稿しております。 https://ncode.syosetu.com/n1893ha/アルファポリス様投稿分とは細部で違いがあります。大筋は変わりません。
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