【完結】戦争から帰ったら妻は別の男に取られていましたが 上官だった美貌の伯爵令嬢と恋をする俺の話

スコブル

文字の大きさ
上 下
3 / 52

フランツの過去と苦い酒

しおりを挟む
 前世の話、過去の話が出てきます


※ フランツ視点


ーーーーーーーー



 どうも、主人公のフランツです。やさぐれておりますが、ヤケ酒をしようと思う。

 そんな俺と一緒に酒場に来てくれたのはトルーデ。


 トルーデがあまりに美しすぎて、そのままだと給仕の人が男女問わず挙動不審になってしまうので
 街に出る時はカツラと眼鏡で変装。

 今、トルーデは金髪を隠し、茶色のボブヘアに銀縁メガネの騎士だ。

 それでもダダ漏れる美しさ。案内の子が、ポーーーっとなってる。
 ああ、うん、これはしょうがない。(←慣れてる)

 ある種酷薄な印象を与える銀縁のメガネが、逆に彼女の魅力をUPしちゃってるような気がしないでもないがまあいいか…。



■■■■■



 トルーデの外見に惹かれる人は多い。

 だがここまで美しすぎると、告白しても玉砕する未来図しか思い描けないらしく

 今は、告白されたりすることはヒジョーに少ないのだそうな。(以前はそりゃあもう色々あったらしい)

 トルーデは美しいが、むろん外見だけの人間ではない。その見識、技能、才覚、人格、そのどれもが素晴らしい。

 俺はトルーデを、人間として友として尊敬している。

 俺は異世界からの転生者。幼い頃に頭を打って、前世を思い出した。

 前世 俺は日本に生まれデパートで販売の仕事に就いていた。毎日毎日売り上げと睨めっこし、売り場作りに苦心していただけの勤め人。管理職でもないヒラ。(まだ勤務して数年だったからね)

 前世でも平凡だった俺の日々の楽しみは漫画と小説、ドラマに映画。

 俺がどんなふうに死んだかって?帰宅時に、信号待ちで心停止したっぽい。あの強烈な痛みだけは、二度と味わいたくない。

 ま、どんな死に方をするかなんて、自分じゃ選べないけどよ。



◆◆◆◆◆



 こっちの世界で生まれ落ちた家は、庶民の家。

 父親は、とある商人の屋敷で働いていた。

 清掃、買い出し、馬の世話も担当だし、なんなら御者もやる。人手が足りなくて頼まれれば護衛の真似事も…。
(なんでもやらせすぎな雇い主だな!)

 母親は、近所の仕事をあちこち請け負って手間賃を得ていた。

 決して裕福ではなかったけれど、家族5人が暮らすには充分だった。

 父親は温厚、母親は気が強くてまっすぐ。弟も妹も可愛い。第一子の俺はもう働いていた。交際中の恋人もいた。

 だが、そんなささやかな幸せも、開戦までだった。

 俺が隣街へ買い出しに行っていた日、予想外に買い物に手間取り、帰路についたのが深夜になってしまった。

 その晩、俺の街に敵国の魔法戦闘機が襲来した。その数、30機は下らなかったという。(軍調べ)

 奇襲だ。軍事施設でなく、都市部を狙ってなされた攻撃。

 魔法戦闘機は、夜の闇のように真っ黒で、音がしない。勿論魔法で操作。

 前世のステルス戦闘機や、無人攻撃ドローンの恐ろしさを思わせるシロモノだ。

 街に入る峠から、街が真っ赤に燃えているのが見えた。

 俺の転生先の家族は、その空襲の時に 全員死んだ。

 家族の中で、俺だけが生き残った。

 街の住民も多数死んだ。生き残ったのは、半数にも満たなかった。





■■■■■




 酒場街のとある店。トルーデが別料金を払ってくれると言い、個室で呑む。クダを巻く俺。

 ダンッ 強い酒のグラスをテーブルに打ちつけて、突っ伏す。

「ああああ誰か俺を褒めてくれよおおお あのいけすかない男を殴らなかった俺をよ…」




 別にイレーネの前でカッコつけたかったわけじゃない。

 殴っても、イレーネが俺の元に戻ってくるわけじゃない。あの赤子が、存在しなかった前に戻るわけじゃない。

 …いいや、やっぱり単にカッコつけか。

 ショックだった。大体俺は、俺は、アレ?

 あれれ?思考がループする。さっきからぐるぐる考えている。

 強い酒を煽って、酔っ払っているからか?だな!だな!おうさ、今夜の俺は酔っ払いだぜ。酔っ払って何が悪い!

 「まあ飲め」

 トルーデが、俺のグラスに原酒のままダバダバと酒を注ぐ。……これで何杯目だ?わからん…

 俺に注いだその手で、自分のグラスにも入れて水のようにそれを飲む彼女。彼女は俺よりか酒が強い。

「忘れられんかもしれんが飲んで忘れろ…ってあれ?矛盾してるか」



「ちげえねえ!あ-…イレーネ、なんで俺を待っててくれなかったんだよ-…」

 未練がましく妻の名前を呼ぶ俺を、トルーデが切なげに見つめていたことには、俺は気付かなかった。



 記憶が、ない。

 腹が、減った。

 俺、クッソダサい…


ーーーーーーーーーー

お店では、お通しのようなものは出たんですがロクに食べずに いきなり強い酒。そんな飲み方しちゃいけません。せめて水を一緒に飲みましょう。by爺
しおりを挟む
2月3日にアルファポリス様連載分を完結致しました。お読みいただいた皆様、お気に入り登録して下さった皆様、本当にありがとうございます!誠に勝手ながら作者都合で感想欄は閉じております。誤字脱字等が一部にあり大変申し訳ございません。随時直していきます。小説家になろう様にも投稿しております。 https://ncode.syosetu.com/n1893ha/アルファポリス様投稿分とは細部で違いがあります。大筋は変わりません。

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...