魔の森の奥深く

咲木乃律

文字の大きさ
上 下
48 / 55
第七章 心を残さないで

夜空の下で

しおりを挟む
「待ってセスト」

 夕食が終わり部屋に二人きりになったとたんベッドに押し倒された。そのまま夜着の袷から手を入れ、キスをしようとしてくるセストの口元を、手の平でばってんを作り押し戻した。

「なんだ?」

 止められてセストは不服そうにロザリアの両手をどかした。

「また明日コルトにでも乗るのか?」

「そういうわけじゃないんだけど……」

「ならいいだろ? 我慢できない」

「そう言って昨日もその前の日もずっとしてるよね……?」

「だめなのか?」

「だめってわけじゃないけど。たまにはセストとゆっくり話がしたいの。だめ?」

 この数日で自分の体はすっかりセストに作り替えられた気がする。セストの触れていく箇所全てに反応してしまうし、初めはきつくて痛かったのに今では挿れられるたび気持ちよくて仕方がない。セストも満足そうだし、それはそれでいいのだけれど……。
 昼間はセストはずっといないし、夜に帰ってきても長くは話せない。聞きたいことがたくさんあった。昼間チェチーリアに言われたことが気になっている。
 自分がセストの将来の王妃として認められたこともまだ夢のようだし、具体的にセストの妻となればどうなるのか。何もわからないままだ。トリエスタで仕事を続けるのは無理だとはっきりチェチーリアに否定されたこともひっかかっている。
 たまにはゆっくり夜の魔の森を眺めながら過ごしたい。そう言うと、セストは「わかった」と頷くやロザリアを抱き上げた。

「この屋敷の屋根にちょっとしたテラスがあってな。そこで酒でも飲もう」

「あの、わたしお酒は…」

「なら果実水だ」

 一体どこから屋根に上るのだろうと思っていると、セストは近くにあった蔦紋様の入ったローブを掴むとロザリアを抱いたまま玄関から外へと出ていく。そこで軽く跳躍するとあっという間に屋根のテラスへと降り立った。

「やっぱり魔法ってつくづく便利ね…」

 せっかく魔法のある世界に転生したのに、自分が使えないなんて残念だ。そう思っていると、いつの間にか側にはラーラがいて、据え付けられていた小卓にワイングラスとデキャンタ、果実水の入っていると思われるビンと、ちょっとしたカナッペなどを並べている。

「それでは私は失礼いたします」

 ラーラはてきぱきとそれらを並べ終えるとさっさとテラスから出ていった。

 セストはロザリアをソファに下ろすと、掴んでいたローブをかけてくれた。風がびゅうびゅうと吹いている。かけてもらったローブの端が風になびくのを、ロザリアは両手でしっかりとおさえた。

「セストは? 寒くないの?」

「ああ」

 セストは慣れた様子でそれぞれのグラスにワインと果実水とをつぐと、ロザリアに差し出してくれる。

「ありがと」

 なんだかいつになくドキドキする。セストとはもっとすごいことをしているのに、こうして向き合う方が緊張するなんて思いもしなかった。

 セストはロザリアの横に腰掛けると、風になびくローブごと肩を抱き寄せた。するとさっきまで吹き荒れていた風が、ピタリと止む。不思議に思って顔を上げると、セストがにやりと笑う。

「便利だろう?」

 なるほど。これもセストの魔力らしい。再度いいなぁと羨ましくなり、ふいっと横を向き杯を傾けようとするとグラスを持つ手をつかまれた。
 と思った途端、セストの唇が落ちてきて重なった。ロザリアとしては、手に持つグラスの中身がこぼれやしないかとそちらにばかり気を取られたが、セストは思うさまロザリアの唇を貪り、幾分か腫れぼったくなるまで堪能するとやっと離れていった。

「……もうっ…。こぼれそうだったんだよ」

 さすがに苦言を呈すると、セストは

「でもこぼれなかったろう?」という。結果良ければ全て良しとでも言いたげだ。

 なんだか得意そうでもあるセストを横目に、ロザリアは気を取り直し、ラーラの用意してくれたカナッペをひとつ摘んだ。口元へ持っていくと横からセストが顔を近づけぱくりと食べてしまった。

「もうっ」

 セストはにやりと笑うとそのままロザリアの指を口に含み、それがつまみだというようにワインを飲むとまた指を舐めてくる。くすぐったくてふふっと笑うと、セストは持っていたワイングラスを小卓に置き、ロザリアのグラスを取ると果実水を口に含んだ。

「それわたしの…」

 セストは構わず豪快な飲みっぷりで中身を干した。と思ったらロザリアを抱き寄せ、口づけた。

「……っ…」

 とたんに果実水が喉に流れてきた。舌を絡められながら流し込まれる果実水を必死になって飲んだ。そちらに夢中になっていると、気がつけばセストの指がシュミーズの下へと忍び込んでいて、突起をつままれた。

「………セストっ…」

 これではいつもと変わらない。抗議の意味で肩を叩いたが、セストは気にした様子もなく、ロザリアを膝に抱き上げると内股に指を伸ばし、蜜口に触れてきた。瞬間、クチュリと恥ずかしいほどの水音がたつ。

「こっちは喜んでるみたいだぞ?」

「……ばかっ!」

 ぽかりと胸を叩いたが、セストの指は蜜をまとって侵入を果たし、いつもよく感じるところを擦られると我慢できない声が漏れた。

「……んっ………あっ……」

 セストはトラウザーズの前を寛げるとロザリアの両膝を開いて跨がせ、腰を引き寄せてくる。すでに蕩けていたそこは、セストの猛ったものをするりと受け入れ、その熱さにロザリアは完全に陥落した。

 セストはロザリアの腰を持って揺らし、あとはいつものように散々泣かされた。
 セストの首に腕を回して感じながら見上げた夜空の星は、とてもきれいだった。




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

媚薬を飲まされたので、好きな人の部屋に行きました。

入海月子
恋愛
女騎士エリカは同僚のダンケルトのことが好きなのに素直になれない。あるとき、媚薬を飲まされて襲われそうになったエリカは返り討ちにして、ダンケルトの部屋に逃げ込んだ。二人は──。

国王陛下は悪役令嬢の子宮で溺れる

一ノ瀬 彩音
恋愛
「俺様」なイケメン国王陛下。彼は自分の婚約者である悪役令嬢・エリザベッタを愛していた。 そんな時、謎の男から『エリザベッタを妊娠させる薬』を受け取る。 それを使って彼女を孕ませる事に成功したのだが──まさかの展開!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

離縁を申し出たら溺愛されるようになりました!? ~将軍閣下は年下妻にご執心~

姫 沙羅(き さら)
恋愛
タイトル通りのお話です。 少しだけじれじれ・切ない系は入りますが、全11話ですのですぐに甘くなります。(+番外編) えっち率は高め。 他サイト様にも公開しております。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

伏して君に愛を冀(こいねが)う

鳩子
恋愛
貧乏皇帝×黄金姫の、すれ違いラブストーリー。 堋《ほう》国王女・燕琇華(えん・しゅうか)は、隣国、游《ゆう》帝国の皇帝から熱烈な求愛を受けて皇后として入宮する。 しかし、皇帝には既に想い人との間に、皇子まで居るという。 「皇帝陛下は、黄金の為に、意に沿わぬ結婚をすることになったのよ」 女官達の言葉で、真実を知る琇華。 祖国から遠く離れた後宮に取り残された琇華の恋の行方は?

【第二部完結】レティと魔法のキッチンカー

矢口愛留
恋愛
魔の森には、恐ろしい魔法使いが住んでいるという。 ドラゴンをも使役し、皆に畏怖される彼の者は、『凍れる炎帝』アデルバート。 レティシアは、ある出来事をきっかけに『凍れる炎帝』に拾われる。訳あって元いた村に戻れないレティは、アデルバートと共に魔の森で暮らすことに。 だが―― 聞いていた噂と違って、アデルは全然怖くなくてむしろレティを甘やかして溺愛してくるし、ドラゴンは可愛い妖精さんだし、魔の森は精霊の恵みに満ちた豊かな森だった! レティは、村にいた頃からの夢だったレストランを、森の妖精相手に開業する。 けれど、植物の恵みだけが豊かなこの森では、手に入らない食材も多数。さらに今後のためには、自給自足だけではなく、まとまった資金が必要だ。 足りない食材を求めて、また、森から出られないアデルに代わって資金を調達するために、レティは魔法のキッチンカーで、人の住む街や妖精の住処を巡ることに。 ドラゴンの妖精をお供につけて、レティのキッチンカーは今日も空飛び世界各地を巡るのだった! *カクヨム、小説家になろうでも公開しております。 * 作者の別作品(色のない虹は透明な空を彩る)と同一世界観の作品ではありますが、全く異なる時代設定(数百年前のお話)です。  一部の妖精が両作品で登場するほか、地名などが共通していますが、それぞれ単体でお楽しみいただける内容となっております。  世界観の説明も都度記載していますので、どちらの作品からお読み下さってもお楽しみいただけます!

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

処理中です...