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第三章

神の里にて 1

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 深夜をまわったころ、小さなノックの音と共に薄く開いた扉の間からエメラルドの髪が覗いた。

「入っておいで、アマンダ」

 遠慮がちにこちらを見つめるアマンダに、セヴェリが声をかけてやると、アマンダは執務椅子に座るセヴェリに、猫のように擦り寄ってきた。

 アマンダは体の線の透ける夜着姿のままで、目元にはうっすらと涙の跡がある。唇が幾分か腫れぼったい。

「どうしたんだい? 今夜は神子の務めがあっただろう?」

 今夜、アマンダには金回りのいい商人をあてがっていた。ザカリーのように、打つ手なく、神子の癒やしを求めるほど深刻な病を得ているわけではない、極めて健康な男だが、生への執着が強い男だ。初老の域に達し、体力の衰えに恐怖したらしく、テンドウ族の神子の話を聞き、接触してきた男だ。

 ザカリーは病状が悪化し、この神の里へは一度も足を運んでいない。時折レイモンに、内陸部のザカリーの別邸へ赴かせていたが、もはや神子を抱くことができない男から、これ以上金を引き出すのは困難だ。

 そう思っていた矢先、ザカリーに軍の調査が入り、ザカリーは捕まった。

 里の経営には金がいる。

 里にはまだ、金を生み出すようなものはなにもない。農作物を育てるのもこれからで、同胞の食料を調達するのにも金がかかる。

 神殿の補修、同胞の衣食住、農地の開発……。
 数え上げれば切りがない。

 ザカリーという強力な資金源を失った今、積極的に資金集めに奔走する必要が出てきた。

 いつクシラ帝国の軍が攻めてくるとも限らない。そのための準備も必要だ。

 セヴェリは里に落ち着くとすぐに、ダニエラ、アマンダ、レイモンに、金回りのいい商人や貴族を中心に夜の相手をさせ、資金を集めていた。

 大事な務めを途中で放り出してきたのかいとアマンダに問えば、アマンダは頭を振った。

「私、ちゃんとお相手してきました……。ただ、その……」

 よく見るとアマンダの首筋には歯型がくっきりと付いている。
 生への執着が強いあの男のことだ。
 無茶な抱き方をしたのだろう。

「おいで」

 セヴェリが両手を広げると、アマンダはセヴェリの胸に飛び込んできた。

 アマンダが何を求めているのかは一目瞭然だった。

 セヴェリはアマンダを膝に乗せ、頬を優しく撫で、唇を割ってキスを落とした。アマンダは嬉しそうに身を捩り、おずおずと舌を絡めてきた。

 それへ応えてやりながら、セヴェリは指を伸ばすと薄い夜着の上から体の線をなぞり、膝を割って陰唇に触れた。

 アマンダの体には、まだ色濃く男の香が残っている。
 陰唇を割って奥へと指を這わすと、そこはぬかるんでいた。

 セヴェリはそのぬかるみをかき混ぜてやり、指を挿れた。アマンダは体をはねさせ、小さく鳴いた。

 アマンダのよく鳴く箇所はわかっている。

 セヴェリは更に大きくアマンダの膝を開かせると、指を二本に増やし、奥でばらばらに動かし、アマンダの良いところをいじってやる。

 アマンダはすぐに達した。
 ぎゅっとセヴェリのシャツを握りながら体をびくびくと震わせ、キスをせがむように唇を開く。

 セヴェリは再びアマンダに口付け、掬い取るように胸の膨らみをつかみ、突起を刺激する。
 続けざまのセヴェリの愛撫に、アマンダは達した体を更に高められ、腰をセヴェリに押しつけるように動かした。

「まだ足りないのかい?」

 セヴェリがくすりと笑うとアマンダは、
「……だって…」と腰をくねらせた。

 セヴェリは自らのトラウザーズを寛げると、アマンダに足を開いて跨がせた。アマンダは愛しいものにでも触れるようにセヴェリのものを握ると緩急をつけてそれを擦り始めた。

 セヴェリはふっと笑った。

 行為に不慣れだったアマンダも、里に来て、セヴェリが慣らしてやるとすぐに女の顔をし出した。

 セヴェリが神子としての君の努めだ、頼りにしていると諭すと、アマンダは自ら客に足を開いた。

 これくらい、ヨハンナも御しやすければよかったのだが……。

 アマンダの愛撫に硬くなったセヴェリのものを、アマンダは腰を浮かせ、自ら迎え入れた。

 セヴェリの首に腕を回し、自分で腰を上下させ、時折擦り付けるように左右に腰を動かす。

 そのアマンダの行為に酔ったふりをして受け止めながら、冷静な頭でセヴェリはここに来てからの緑龍の様子に思いを馳せた。





 テンドウの里は自然の要塞で、海からは潮の流れが速く、船での接岸はできないと思われているが、一箇所だけ潮の流れが緩やかな海路がある。

 そのことを知っているのは、もうセヴェリとラッセだけかもしれない。

 セヴェリはフェリクス軍への急襲に先立ち、レイモンやヘリなど少数の者だけを連れ、その海路を使って里に侵入していた。

 クシラ帝国が、里に人を入れなかったことが幸いした。
 神殿は、十八年前に打ち捨てられた状態のまま、カルデラ湖を渡る風を受けながら、穏やかに佇んでいた。

 神殿の中は、しかし十八年の歳月を如実に感じるほど、ホコリがたまっていた。クシラ帝国に急襲された混乱のまま、祭壇は倒れ、敷き詰められた絨毯には血がこびりつき、荒れ果てていた。

 セヴェリはまずは真っ直ぐに緑龍の元へと急いだ。

 セヴェリが呼びかけると、美しいエメラルドのうろこを太陽光に金色に光らせながら、緑龍は姿を現した。

 緑龍は、どこか元気がなかった。

 十八年の間、一人きりでカルデラ湖をたゆたっていたのだろう。セヴェリが龍語で話しかけても、セヴェリの顔を見ても、どこかぼんやりとしている。

 十八年前、なぜクシラ帝国から里を守ってくれなかったのか。

 緑龍を久しぶりにその目に収め、セヴェリはずっと考え続けてきたその答えがわかった。

 つい最近、黒龍と赤龍を間近に見たところであったのも、その答えに到達する助けとなった。

 緑龍は、老いていた。

 それまでそんなことを感じたこともなかったが、明らかに緑龍は老いていた……。

 それでもしばらく緑龍に話しかけ続けていると、緑龍は次第にはっきりとセヴェリを認識し、里の出入り口を塞いでほしいという願いを聞きいれてくれた。

 必ず神子を緑龍の元へ戻すという約束のもと―――。

 老いた緑龍は、神子の存在に飢えていた。

 我に必ず神子を寄越せとセヴェリに迫った。

 ヨハンナを取り戻すための布石はすでにうってある。





「………あっ…。んっ……」

 声に、セヴェリの意識は目の前のアマンダへと戻ってきた。

 自分の動きだけでは、思うように達せないのだろう。腰を動かしながらも、潤んだ目でアマンダはセヴェリを見上げてきた。

 セヴェリはアマンダの腰を掴むと、下から力強くアマンダの中をついてやった。




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