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第七章
精霊王は恐妻家
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久しぶりに目覚めたフロールは、目覚めたとたん見たことのない大柄な体躯の男に、ルカと知らぬ名で呼ばれ、あら?と思った。
えっと。これはどういう状況なのかしら。まだぼうっとする頭を巡らせようとすると、ラウが横からフロールを抱きしめてきた。
まぁいたのね。この人も久しぶりだわ。
フロールはぐるりと辺りを見回す。どうやら林の中らしい。側には明らかに絶命しているとわかる年かさの人間の女が、胸に剣を突き立てられた状態で倒れ、横には茶色の髪に黒い目の、男とも女ともつかない人間がいる。
いや、人間のように見えるが少しだけ同胞の血を感じる。フロールがそちらに気を取られている間に、ラウが目の前の大柄な男に、ルカの意識はもう戻ってこないと告げている。
ルカ。大柄な男はフロールのことをそう呼んだ。
思えば、自分の本来の体は行方不明だ。刺された衝撃で魂が体から飛び出し、フロールは咄嗟に魂を硬い殻で覆った。すぐに元の体に戻るつもりだったのに、そのあと自分の体は行方不明になった。そこで仕方なく長い眠りについた。体から飛びだした魂は、それ単体では生きられなかったからだ。
そのうちラウが本来の体を見つけて、元に戻してくれるだろうと思っていたのだけれど。
ラウは本来のフロールの体ではなく、誰か他の入れ物を用意したようだ。それが大柄な男の呼ぶルカだったということだろう。
困ったわね。ということは、この体は元のフロールのものではなく、ルカという子のものだ。
フロールは自分の顔をぺたぺたと触って確かめた。鏡がないのがおしいが、鼻筋が通り、小さな口に小顔でなかなかキュートだ。手足も細くてスタイルも悪くない。
内へ意識を向ければ、この体の持ち主であるルカとやらの魂が、奥深くで温かな光を放って眠っている。
大柄な男は、ルカはもう戻らないと告げられ、驚愕と悲しみをたたえ、フロールを凝視している。こちらに伸ばそうとした手を握り込んだのは、この男の求めるものが、フロールにはないとわかったからだろう。
「ちょっと、ラウ」
フロールはラウを小突いた。
「まさかこの体、本人の了承なしに勝手に使ったわけじゃないでしょうね」
嫌な予感にラウを睨めば、ラウはうっと言葉に詰まった。
「いや、そんなことはない。ルカは、その、いろんなものから逃げたがっていた。これは人助けみたいなものだ」
どうも嘘くさい。そこへミヒルが駆けてきた。周囲をぐるりと見回し、フロールを見て「ああ」と絶望的な声を上げる。
「フロール様。お帰りなさいませ」
震える声でミヒルは言い、痛ましい顔でこちらを見つめてくる。何なのよ。その顔は。全く歓迎されていないようだ。
一体何がどうなっているのだろうか。
久しぶりの外にフロールは状況が飲み込めず、とりあえずこの混乱の現況であろうラウに説明を求めた。
***
精霊王ラウは、どうやら恐妻家らしい。
ユリウスは目の前で繰り広げられる精霊王とルカの姿のフロールとのやり取りを唖然として見ていた。
ラウはすぐにもティルブ山に帰ろうとフロールに言ったが、フロールはラウを睨みつけ、これまでの全ての経緯を洗いざらいラウに吐かせた。
話が長くなりそうなので、ユリウスはひとまず自分の屋敷に来るようにと二人を導いた。それにこのまま二人でティルブ山に帰られても困る。ルカの意識は戻らないと急に言われても、ユリウスも納得できるものではない。
屋敷につくとカレルに、リサをはじめルカを探しに林へ入った者達を呼び戻すよう指示し、ドリカの死体はひとまずモント騎士団に回収を依頼した。フォリスには後で話を聞くとして、屋敷の部屋でディックをつけて休ませた。
リサもカレルも屋敷の面々は、ルカの姿を見て無事に見つかったのかとほっとしたが、すぐに異変に気がついた。姿かたちはどう見てもルカだが、表情や話し方がまるで違う。
屋敷の面々はどういうことなのかと一様にユリウスを見た。ユリウスは、レガリアのことはカレルとノルデン以外には伏せていたので、その辺りの経緯と共に、精霊王ラウの策略により、ルカの体が精霊王の妻であるフロールに乗っ取られたことを簡単に説明した。
「それではルカはどうなるのです? ルカの意識は一体……」
リサは言葉を詰まらせ、他の者達もルカのことを案じ、顔を曇らせた。ユリウスとて思いは同じだ。
一方フロールは怒っていた。勝手にルカの体を使ったラウのことをそれはもう猛然と。ラウは、ルカはつらいことが多く消えたがっていたと主張したが、フロールはラウの言うことは無視してこちらに「どうなの?」と聞いてくる。「そんなことはない」とユリウスははっきり否定した。
ポポが姿を変えたミヒルも、ルカは消えたがっていたわけではないときっぱり否定し、いかにルカがシマリスポポをかわいがるいい子だったか、ユリウスと相思相愛のルカが何よりユリウスと離れることを恐れていたかを語った。
「一体どうしてくれるつもりなの! 私のせいでこの子の魂はユリウスと離れ離れになってしまったのよ! あなたどう責任をとるつもり! それにこんなにたくさんの人を悲しませて、どうしてくれるつもりなの!」
屋敷の者達が沈んでいる姿を見、ユリウスとミヒルの言葉を聞いたフロールが怒りの雷をラウに落とした。ラウはひっと飛び上がり、
「そんなことを言うけれど、フロールだって消えかかっていたんだ。このままだと僕は永遠に君を失うところだったんだ」
「それならどうして本来の私の体を探してくれなかったの? あなたっていっつもそう。本来の解決策から目を背けて、勝手な言い訳ばっかり考えて簡単に物事に決着をつけようとする」
「もちろん探したさ。もう何千年も。だけどどこにも見つからない。どうしようもなかったんだ。それに女の希少種はなかなかいなくて、これでも大変だったんだぞ? しかもこの子はフロールの血をより濃く引いている。精霊の好むエルセの実が大好きなんだ。入れ物としてはうってつけだった」
「言い訳は結構よ。何が私の血よ。つまり希少種と呼ばれるこの子達は私の子供達の子孫ってことよね。自分の子供の体を奪い取って平気な親がどこにいるっていうのよ! それならいっそ消えてしまったほうがよかったわ」
ものすごい剣幕だ。思えばルカはこんなふうに声を荒らげて怒ることがなかった。ルカの怒った顔は新鮮だ。
そんなことを思いながらラウとフロールのやり取りを静観していたユリウスだが、どうやらフロールは我々の味方らしいと確信を得たところで二人の話に割って入った。
「フロール殿。ルカは返していただけるのだろうな」
フロールははたと気がついたように、ラウからユリウスへ顔を向けた。そして心底困ったように「わからないわ」と言った。
「わからない、とは?」
できる、できないではなくわからないとはどういうことなのか。固唾をのんでユリウスは返答を待った。
「私としてはもちろんルカに返したいわ。当然だわ。でもね、私が入った時点でルカの魂は意識の底深くへ沈んでしまった。魂は一つの体に一つしか入れないのに、そこへ私が無理矢理押し入ったものだから、ルカの魂はいられなくなって意識の底に沈んだのよ。一度底に沈んだ魂はもう元には戻れない」
「戻れない、だと? ならばルカはどうなる」
ユリウスは奥歯を噛み締めた。
「ルカは意識の底で眠り続けることになるわ。たとえ私がこの体から出ていったとしても、一度沈んでしまった魂は元には戻らない」
「そんな……!」
リサが悲鳴混じりの声をあげた。ユリウスは爪が食い込むほど強く拳を握った。
「ミヒル……。あなたが言いたかったのはこういうことだったのか…?」
震える声を絞り出すように問うと、ミヒルは「ええ」と頷いた。
「ですから行ってはいけないと言ったのです。こうなることはわかっていましたから。あなたが永遠にルカを失うことになると知っていましたから」
なんと呆気なく、大事な人が指の隙間から滑り落ちてしまったことか。己は最善を尽くしたのか? ミヒルに止められ、精霊王の罠と知っていながら飛び込んでいき、まんまと嵌められた。何もできなかった。何もだ。悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。己は大馬鹿者だ。
「ユリウス様…。血が……」
リサに言われ手の平を開くと、食い込んだ爪が皮膚を破っていた。こんな時にも関わらず、ノルデンが医師としての反射でユリウスの傷の手当をしようとする。それをユリウスは首を振って拒絶した。
フロールはそんなユリウスの手の平を上からそっと包んだ。
「でも聞いてちょうだい。ルカは精霊の血を少なからず引いている。普通の人ならばもう戻れないけれど、もしかしたらルカならば戻ってこれるかもしれない」
「それは、本当か?」
わずかばかりの光明がさし、ユリウスは顔を上げた。ルカの顔をしたフロールは、「可能性の話なのよ」とその光明に縋ったユリウスを牽制するように告げた。
「ルカを戻せるかどうかはルカ次第なの。ルカが完全に心を閉ざし、戻りたくないと思うなら、いくら私の力でもルカは元には戻らない。ということで私、今からちょっとルカを起こしに行ってみるわ。その間、この体をよろしくね」
言うがはやいかフロールはすっと目を閉じ、ついで足元から崩れ落ちるように体が倒れた。ユリウスはルカの体を支え、腕に抱えるとその体を抱きしめた。温もりは、ユリウスのよく知るルカのものだ。
「ルカ……」
ユリウスはルカの頬をそっと撫でた。今の自分にできるのは、ルカの可能性を信じ、その頬に温もりを与えることくらいしかなかった。
えっと。これはどういう状況なのかしら。まだぼうっとする頭を巡らせようとすると、ラウが横からフロールを抱きしめてきた。
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フロールはぐるりと辺りを見回す。どうやら林の中らしい。側には明らかに絶命しているとわかる年かさの人間の女が、胸に剣を突き立てられた状態で倒れ、横には茶色の髪に黒い目の、男とも女ともつかない人間がいる。
いや、人間のように見えるが少しだけ同胞の血を感じる。フロールがそちらに気を取られている間に、ラウが目の前の大柄な男に、ルカの意識はもう戻ってこないと告げている。
ルカ。大柄な男はフロールのことをそう呼んだ。
思えば、自分の本来の体は行方不明だ。刺された衝撃で魂が体から飛び出し、フロールは咄嗟に魂を硬い殻で覆った。すぐに元の体に戻るつもりだったのに、そのあと自分の体は行方不明になった。そこで仕方なく長い眠りについた。体から飛びだした魂は、それ単体では生きられなかったからだ。
そのうちラウが本来の体を見つけて、元に戻してくれるだろうと思っていたのだけれど。
ラウは本来のフロールの体ではなく、誰か他の入れ物を用意したようだ。それが大柄な男の呼ぶルカだったということだろう。
困ったわね。ということは、この体は元のフロールのものではなく、ルカという子のものだ。
フロールは自分の顔をぺたぺたと触って確かめた。鏡がないのがおしいが、鼻筋が通り、小さな口に小顔でなかなかキュートだ。手足も細くてスタイルも悪くない。
内へ意識を向ければ、この体の持ち主であるルカとやらの魂が、奥深くで温かな光を放って眠っている。
大柄な男は、ルカはもう戻らないと告げられ、驚愕と悲しみをたたえ、フロールを凝視している。こちらに伸ばそうとした手を握り込んだのは、この男の求めるものが、フロールにはないとわかったからだろう。
「ちょっと、ラウ」
フロールはラウを小突いた。
「まさかこの体、本人の了承なしに勝手に使ったわけじゃないでしょうね」
嫌な予感にラウを睨めば、ラウはうっと言葉に詰まった。
「いや、そんなことはない。ルカは、その、いろんなものから逃げたがっていた。これは人助けみたいなものだ」
どうも嘘くさい。そこへミヒルが駆けてきた。周囲をぐるりと見回し、フロールを見て「ああ」と絶望的な声を上げる。
「フロール様。お帰りなさいませ」
震える声でミヒルは言い、痛ましい顔でこちらを見つめてくる。何なのよ。その顔は。全く歓迎されていないようだ。
一体何がどうなっているのだろうか。
久しぶりの外にフロールは状況が飲み込めず、とりあえずこの混乱の現況であろうラウに説明を求めた。
***
精霊王ラウは、どうやら恐妻家らしい。
ユリウスは目の前で繰り広げられる精霊王とルカの姿のフロールとのやり取りを唖然として見ていた。
ラウはすぐにもティルブ山に帰ろうとフロールに言ったが、フロールはラウを睨みつけ、これまでの全ての経緯を洗いざらいラウに吐かせた。
話が長くなりそうなので、ユリウスはひとまず自分の屋敷に来るようにと二人を導いた。それにこのまま二人でティルブ山に帰られても困る。ルカの意識は戻らないと急に言われても、ユリウスも納得できるものではない。
屋敷につくとカレルに、リサをはじめルカを探しに林へ入った者達を呼び戻すよう指示し、ドリカの死体はひとまずモント騎士団に回収を依頼した。フォリスには後で話を聞くとして、屋敷の部屋でディックをつけて休ませた。
リサもカレルも屋敷の面々は、ルカの姿を見て無事に見つかったのかとほっとしたが、すぐに異変に気がついた。姿かたちはどう見てもルカだが、表情や話し方がまるで違う。
屋敷の面々はどういうことなのかと一様にユリウスを見た。ユリウスは、レガリアのことはカレルとノルデン以外には伏せていたので、その辺りの経緯と共に、精霊王ラウの策略により、ルカの体が精霊王の妻であるフロールに乗っ取られたことを簡単に説明した。
「それではルカはどうなるのです? ルカの意識は一体……」
リサは言葉を詰まらせ、他の者達もルカのことを案じ、顔を曇らせた。ユリウスとて思いは同じだ。
一方フロールは怒っていた。勝手にルカの体を使ったラウのことをそれはもう猛然と。ラウは、ルカはつらいことが多く消えたがっていたと主張したが、フロールはラウの言うことは無視してこちらに「どうなの?」と聞いてくる。「そんなことはない」とユリウスははっきり否定した。
ポポが姿を変えたミヒルも、ルカは消えたがっていたわけではないときっぱり否定し、いかにルカがシマリスポポをかわいがるいい子だったか、ユリウスと相思相愛のルカが何よりユリウスと離れることを恐れていたかを語った。
「一体どうしてくれるつもりなの! 私のせいでこの子の魂はユリウスと離れ離れになってしまったのよ! あなたどう責任をとるつもり! それにこんなにたくさんの人を悲しませて、どうしてくれるつもりなの!」
屋敷の者達が沈んでいる姿を見、ユリウスとミヒルの言葉を聞いたフロールが怒りの雷をラウに落とした。ラウはひっと飛び上がり、
「そんなことを言うけれど、フロールだって消えかかっていたんだ。このままだと僕は永遠に君を失うところだったんだ」
「それならどうして本来の私の体を探してくれなかったの? あなたっていっつもそう。本来の解決策から目を背けて、勝手な言い訳ばっかり考えて簡単に物事に決着をつけようとする」
「もちろん探したさ。もう何千年も。だけどどこにも見つからない。どうしようもなかったんだ。それに女の希少種はなかなかいなくて、これでも大変だったんだぞ? しかもこの子はフロールの血をより濃く引いている。精霊の好むエルセの実が大好きなんだ。入れ物としてはうってつけだった」
「言い訳は結構よ。何が私の血よ。つまり希少種と呼ばれるこの子達は私の子供達の子孫ってことよね。自分の子供の体を奪い取って平気な親がどこにいるっていうのよ! それならいっそ消えてしまったほうがよかったわ」
ものすごい剣幕だ。思えばルカはこんなふうに声を荒らげて怒ることがなかった。ルカの怒った顔は新鮮だ。
そんなことを思いながらラウとフロールのやり取りを静観していたユリウスだが、どうやらフロールは我々の味方らしいと確信を得たところで二人の話に割って入った。
「フロール殿。ルカは返していただけるのだろうな」
フロールははたと気がついたように、ラウからユリウスへ顔を向けた。そして心底困ったように「わからないわ」と言った。
「わからない、とは?」
できる、できないではなくわからないとはどういうことなのか。固唾をのんでユリウスは返答を待った。
「私としてはもちろんルカに返したいわ。当然だわ。でもね、私が入った時点でルカの魂は意識の底深くへ沈んでしまった。魂は一つの体に一つしか入れないのに、そこへ私が無理矢理押し入ったものだから、ルカの魂はいられなくなって意識の底に沈んだのよ。一度底に沈んだ魂はもう元には戻れない」
「戻れない、だと? ならばルカはどうなる」
ユリウスは奥歯を噛み締めた。
「ルカは意識の底で眠り続けることになるわ。たとえ私がこの体から出ていったとしても、一度沈んでしまった魂は元には戻らない」
「そんな……!」
リサが悲鳴混じりの声をあげた。ユリウスは爪が食い込むほど強く拳を握った。
「ミヒル……。あなたが言いたかったのはこういうことだったのか…?」
震える声を絞り出すように問うと、ミヒルは「ええ」と頷いた。
「ですから行ってはいけないと言ったのです。こうなることはわかっていましたから。あなたが永遠にルカを失うことになると知っていましたから」
なんと呆気なく、大事な人が指の隙間から滑り落ちてしまったことか。己は最善を尽くしたのか? ミヒルに止められ、精霊王の罠と知っていながら飛び込んでいき、まんまと嵌められた。何もできなかった。何もだ。悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。己は大馬鹿者だ。
「ユリウス様…。血が……」
リサに言われ手の平を開くと、食い込んだ爪が皮膚を破っていた。こんな時にも関わらず、ノルデンが医師としての反射でユリウスの傷の手当をしようとする。それをユリウスは首を振って拒絶した。
フロールはそんなユリウスの手の平を上からそっと包んだ。
「でも聞いてちょうだい。ルカは精霊の血を少なからず引いている。普通の人ならばもう戻れないけれど、もしかしたらルカならば戻ってこれるかもしれない」
「それは、本当か?」
わずかばかりの光明がさし、ユリウスは顔を上げた。ルカの顔をしたフロールは、「可能性の話なのよ」とその光明に縋ったユリウスを牽制するように告げた。
「ルカを戻せるかどうかはルカ次第なの。ルカが完全に心を閉ざし、戻りたくないと思うなら、いくら私の力でもルカは元には戻らない。ということで私、今からちょっとルカを起こしに行ってみるわ。その間、この体をよろしくね」
言うがはやいかフロールはすっと目を閉じ、ついで足元から崩れ落ちるように体が倒れた。ユリウスはルカの体を支え、腕に抱えるとその体を抱きしめた。温もりは、ユリウスのよく知るルカのものだ。
「ルカ……」
ユリウスはルカの頬をそっと撫でた。今の自分にできるのは、ルカの可能性を信じ、その頬に温もりを与えることくらいしかなかった。
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