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第3章

戦闘 ―テンネブリス対オーク戦(4)―

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 オークに骨を折られ、完全にグロッキー状態のテンネブリス。

 だが、魔獣の暴虐はこの程度では終わらない。
 今度は肘と手首の間を掴み直すと、ゴム製の筋トレ器具を引くようにテンネブリスの腕を左右に引き裂き始めた。

「ガアアアァァァァァァッ!!なにっ、をおぉ……あ゛あ゛ぁ゛!!やめっ、おねがっ、ああああ゛!!腕がぁぁっ!!!ギギギ、イイ゛イ゛イ゛ィィィィ゛!!」

 メキメキと再び体内から骨の軋む音。
 今度はソレに加えて、ブチブチと筋繊維の切れる音も聞こえてくる。
 それが少女の精神に金ヤスリでもかけているかのように、正気を削る。

 恐怖の上塗り。

 これ以上でないと思っていた声が、押しつぶされ絞り出され勝手に漏れる。

「あ゛あ゛あ゛……ッ!!!や゛めてっ、や゛めてっ、いたっ、いいいいぃい!!いたいいいいぃ!!ぐひっ、ぐひっ、ひいいいぃぃぃ!やめてっ、ひぐっ、いぐぇっ、ゃめ…てくらしゃいいませぇぇぇぇぇ!!!」

 涙を流し、泣き、嗚咽を漏らしながら懇願する。

「ぐびっ、ひっぐ…あ゛ぁ゛っ!だめっ、あ゛あ゛ッ!!助けてッ!裂けるッ!腕ッ、裂けッて゛ぇ!!わたくぢッ、裂゛け゛てしまいまずのおぉぉぉぉ!!」

 だがしかし、人間など獲物としか思っていない魔獣にそんなものが通じるはずもない。

「お゛お゛お゛ぉ!!ぢぬっ、ぢぬぅぅ!!死゛んでぢまいますぅぅ、お゛お゛!!離してぇ!!離してぇぇぇぇ!!このまま、ぐひっ、でわぁぁぁ……あぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!」

(痛い痛い痛いですわぁ!!助けてぇ!!痛い痛い痛い!引き裂かれて、死゛んでぢまいますのおおぉ!!お゛ッ!お゛ォ゛ッ!お゛お゛お゛ッ!)

 少女の両腕が限界まで引き伸ばされる。

「ひぎぐおおお――――――――ッ!!アーーーーーーッ!!アーーーーーーッ!!ーーーーーーッ!!」

 恐怖と激痛に、息をする余裕もない。
 あまりにも辛い。
 身を裂かれるような思いという慣用句を、身を持って体験している魔法少女。
 強力な身体能力と特殊な力を持っているとはいえ、中身は年頃の少女だ。

 戦いに身を投じる以上は覚悟を持て。相手を殺すのだから自分にも相応の覚悟を。
 常日頃から周りに言われて分かっているつもりでも、年端も行かない少女に本当の意味での覚悟などできてはいない。

「無理無理無理無理無理っ!!無理ですのおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!助けてえぇぇぇぇぇぇ、殺さっ、ないでえぇぇぇ!!殺さないでえぇぇぇーーー!!!お姉しゃまあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁア゛ア゛ァ!!お姉ぢゃまあぁぁぁぁぁぁ!!!助けてくださいましいいいぃぃぃぃぃいぃぃぃぃ!!!!」

(いやいやいやいやいやいや、いやですわ!!死にたくない!死にたくない!!死ぬのはいやですのぉぉぉぉ!!!お願い誰かぁぁぁ、誰かあぁぁぁぁぁ!!!)

「グギイイィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 ついに、少女の肉体に限界が訪れた。

「――――――――――――――――――――――――――ツ゛ツ゛ツ゛ッッッ!!」

 ――ボキン!ボキン!

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛―――――――――――――――――――――――――――、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!」

 両腕の関節が音を立てて外れる。

 ――ボキッ!ボキッ!

 さらにそのまま腕の骨も砕かれた。

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーツ!!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーツ゛!!ーーーーーーーッ!!ーーーーーーッ!!ーーーーッ!!」

 少女の脳では処理しきれない激痛。頭の中を無数の星が飛び散り埋め尽くす。
 あまりの痛みに脳のブレーカーが落ちた。

 泡を吹き痙攣し、そのまま白目をむいて気絶するテンネブリス。
 その様子に気づいたのか、オークが一度腕を引く力を抜いた。

 テンネブリスはだらりと腕を垂らしている。オークに持ち上げられた両手はY字に。
 何度か身体を揺さぶられるが、少女から能動的な反応はない。頭がグラグラ揺れ口の端から泡に混じって唾液が垂れるだけだ。

 そのまま打ち捨てられ、開放されるかと思いきや。

 ――ボキボキボキッ!

 少女は再びオークによって一文字に開かれる。

「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ーーーーーーーーーッ!!お゛お゛お゛お゛ん゛ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!おんぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!ひぎあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 激痛の上塗りで無理やり意識を呼び戻された。
 外れた関節がさらに引き伸ばされ、少女の骨がボキボキに折られていく。

 気絶をしようがお構いなしに続く粉骨拷問。
 両腕の骨がすり潰され、指先一つ動かせなくなってやっとテンネブリスはオークの拘束から開放された。
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