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第3章

魔法少女テンネブリス

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「うちに侵入しようとするとは、一体どこの馬鹿だ」

 応接スペースの端っこ、テーブルを挟んで向い合せのソファーに陣取り、征司は長細いガラス製のアイテムを取り出した。
 テーブルに置いたガラスが光りだし、ホログラムのようにリビング前のテラスの画像が映し出される。向かい合わせに座った征司と梨姫の両方から同じように見える、不思議魔道具だ。

「こいつは、魔法少女か?」

 そこには、露出度の高い衣装を身にまとい窓を開けようとする少女の姿が映っていた。画像がいくつかに分割され、様々な角度から撮った少女の姿が映し出される。

 肩甲骨の下まで伸びた艶のあるストレートな栗色、ダークブラウンに近い髪。前髪にはバッテン印しにヘアピンが付けられていて、髪の間からおでこが覗く。やや堀の深い、西洋人の雰囲気が交じる顔立ちで、身長は梨姫よりも低い。年の頃も征司達よりも2、3は下だろうか。胸の大きさは梨姫と同じか少し小さいくらい、膨らみかけの蕾といったところだ。成長しきっていない分まだ期待が持てる。

 魔法少女衣装は黒に近い紺色のスポーツビキニをベースとした衣装。ビキニを上下で3分割するように、2本のバンドが伸び少女の腰を締め付けている。また、ビキニの上には短めのスカートを穿いている。いくつもの羽を合わせたようなスカート、それの側面と後ろ側はミニスカートといって差し支えない程度の長さだ。スカートの前側中央に近づくほど短くなり、股間部分には布がない。

 ビキニは一般的なスポーツブルマよりも切れ込みがきつく、スカートの生地が無い部分と重なってVゾーンではかなりの肌色を晒している。背中には中央で2つに別れた短めのマント。脚にはミニスカートにかかるくらいの位置まである黒色のソックス。太ももに食い込みずり落ちないように止めている上部には黒色の金属製バンド、側面には羽のような装飾がある。両手には肘のあたりまである、ソックスと同色のぴっちりとしたグローブ。こちらも金属製のバンドで止められ、羽のような装飾がついている。

「うむ、この絶妙に中二臭い装飾に変態じみた露出狂のような服装、魔法少女に間違いないな」

 少女の姿をまじまじと観察した征司が、納得した表情で何度も頷く。

「あなたの中の魔法少女認定の仕方、ひどすぎない?」

 トイレから戻ってきた茉莉香が、征司のあんまりな発言に突っ込みを入れる。

 突っ込む声は平静だが、顔はわずかに上気し時折股間をこすりながら尻を気にしていた。
 いつもであれば排泄絶頂の後に征司に散々嬲られイカされるているので、それがなくイキたりない身体で物足りなさを感じている茉莉香だった。だがもちろん、イキ足りないからと征司の容赦ない陵辱を浴びたいと思うほどにはまだ堕ちておらず、身体の火照りを極力表に出さないようにしながら、征司の対面側のソファー、梨姫の隣に腰を下ろす。

「って、あれ、この…

 ガラス型の魔法具によって映し出された少女の姿を見て、茉莉香がつぶやく。

「なんだ、知り合いか?」
「ぁ…いや、その……」

 目の前の極悪非道な主に言って良いものか、一瞬ためらい言いよどむ。
 だが、奴隷に堕ちた輝山茉莉香に情報を隠すという選択肢など取れるはずもなく。

「知っていることを話せ」

 少年の魔力を込めた一言で無理やり口を開かされる。

「学園の後輩で、魔法少女…です。中等部2年で、名前は京藤きょうとう・ローズ・クロエ、魔法少女名はテンネブリスです。イギリス人のクオーターだって聞いてます」

「お前との関係は?」
「少し前に魔獣から逃げていたところを助けて、知り合いました。それからよく声をかけてくれるようになった、仲の良い後輩…です」

「魔獣から逃げていたってことは、実力はそこまででもないのか?」
「戦うのは、多分そんなに得意じゃないと思います。偵察のような裏方が得意で、普段は不意打ちで魔獣を倒すって、言っていました」

 隠形が得意なタイプのようだ。征司が窓に仕掛けた対侵入者用の魔法に引っかからないよう、道具を使って解錠を試みている姿は、忍者というよりはシーフの雰囲気に近い。

「なるほど。で、その後輩がなんでうちに侵入しようとしているんだ?」
「わかりません…」

「検討もつかないのか?」
「もしかしたら、私を助けに来た…とかかも」
「ほう」

 面白そうだと言わんばかりに征司の口角が釣り上がる。

「でもその…ほんとに、もしかしたらだから…」

 ――カチャリ

 二人が話している間に、スポーツビキニの魔法少女、テンネブリスがベランダの鍵の解錠に成功した。

「やっと開きました!もうなんなんですのこの家、ガードが硬すぎますの!!」

 悪態をつきながらも、嬉しそうに窓を開く。
 征司がその侵入手腕に、素直に驚きの声をあげる。

「ほほぅ、この短時間で捕縛用の防犯魔法に引っかからずにうちの鍵を開けるとはやるなぁ」

 征司の自宅は奥に、アトリエに近くなるほど守りが固くなっており、リビングのテラス側の防犯などはさほどのものではない。とはいえ常軌を逸した錬金術を駆使する征司が自宅に施した防犯魔法は、、魔法少女であっても簡単に突破できるものではない。それを回避し、鍵を開けたのは大した腕だ。
 今回は帰宅した征司が直接侵入に気づいたのだが、そうでなければ、例えば彼らが学園でのプレイに勤しんで未だ帰宅していなければ、この時点ではテンネブリスの侵入に気づけていなかったことを意味している。

「待っていてください、茉莉香先輩!必ず助け出してみせますの!」

 鼻息荒く、両方の拳を握りガッツポーズ。
 やはり茉莉香の予想通り、この魔法少女は彼女を助けに来たようだ。
 誰も居ない征司宅に侵入しようと試みるあたり、アトリエに侵入し呪印の解除手段を探るのが目的だろうか。いや、今のうちにバックドアを仕掛けて怪盗よろしく夜寝静まってから茉莉香を拐いに来る、とかだろうか。

 (まだ茉莉香の状態、呪印の効果を正確に把握していないだろうしどちらの可能性もあるな)

 などと考えながら征司が顔を上げると、嬉しいような困ったような複雑な表情をしている茉莉香が目に映る。どちらかといえば困り顔か、後輩が助けに来てくれたことは嬉しいが、こんなことをしてただで済むはずながく、彼女に降りかかるであろう災難を回避できる手段など茉莉香には思いつかない。

 テンネブリスが映る画面へ視線を戻す。
 彼女は部屋に入る前に、少しだけカーテンをずらし慎重に中の様子を探っているところだった。
 しばらくして危険はないと判断した魔法少女が室内へ脚を踏み入れる。

 その直前、征司は口元を歪ませニヤリと笑った。
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