錬金魔導師、魔法少女を奴隷調教する

濡れ雑巾と絞りカス

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第1章

幕間―松崎征司という少年―

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 これはとある魔法の天才が劇的な出会いもなく、ただ復讐のために戦い、神にも匹敵せんほどの最強の力を得るに至った、物語の前日譚である。

 人間界にも、極少数だが魔法を始め特殊な能力を持つ者が存在する。西洋における魔術師や錬金術師などがそれに該当する。日本でも古来より祈祷師や陰陽師が、時には時代の表に立ち、時には権力者の影に暗躍してきた。彼らは現代に至るまで、一族単位で技を伝え存続し続けていた。
 松崎征司は、日本における陰陽師の家系として生を受ける。父親は古来より日本を支え続けた由緒ある陰陽師の分家、母親は大航海時代に西洋から渡来した錬金術師の末裔だった。
 生粋の魔法一家に生まれた征司は、幼少期から陰陽術と錬金術を両親から学んでいた。一族の中でも才能に恵まれていた彼は、この頃から天才と呼ばれる実力の片鱗を見せ、9歳にして魔獣を一人で倒すほどになっていた。このまま成長すれば、魔法少女に匹敵する力を手に入れるのではないかと、分家の子ながらも一族から期待されていた。
 魔界に比べて、魔の力を持つ者が少ない人間界では、天然の能力者はそれほど大きな力を持たないのが常である。神々から力を与えられた魔法少女に匹敵する者など、数十年に一人しか生まれない。征司の両親も、魔法的な能力では一般的な魔法少女の足元にも及ばなかった。

 そんな中、彼ら天然の能力者は、日本国内ではいくつかの一族を中心に魔法少女達を支える形で協力体制を築いていた。突発的に神々から選ばれ魔法少女となった者たちを、一族代々と魔法や魔界に関する知識を受け継いできた天然の能力者がサポートする。それにより、人間界で活動する魔界の住人を社会の裏側のうちに対処し、平和な日常が保たれていた。征司の両親も、魔法少女達をそれぞれの能力、陰陽術と錬金術でサポートする天然の能力者だった。

 征司が11歳になったある日、魔界から魔神族による大規模な侵攻事案が発生する。魔神族と壮絶な戦闘を繰り広げる事になった魔法少女達をサポートするべく、征司の両親も最前線に近いところで活動していた。そして運命の日、魔法少女の主力部隊が予想外の襲撃を受け、征司の両親共々全滅してしまう。一報を聞いた征司は、周りの制止も振り切り襲撃現場へと急行する。そこで見たのは、惨殺された両親と仲間の魔法少女達。そして襲撃した魔神族のリーダーと思しき男と共に佇む、数人の魔法少女の姿だった。
  仲間の裏切りにより両親を殺されたことを知った征司は、激昂し彼らに挑みかかるが、数人の魔神族と魔法少女を倒したところで重症を負ってしまう。辛うじてその場から逃げ出した征司は、両親を失ったことに強い悲しみと怒りを抱き、一人復讐を決意する。

 彼は、幼いながらも自分の能力を的確に把握し、復讐のための牙を研いだ。父親から学んだ陰陽術を中心に、東洋魔術や魔法少女の魔法までも研究し、母親から学んだ錬金術を組み合わせ、確実に魔人を、魔法少女を殺すための力を身につけた。
 征司の両親の死から一ヶ月、主戦力を失った魔法少女達は厳しい防戦を強いられていた。人間界側の戦力が辛うじて持ちこたえられている、ギリギリのこの時期に征司は一人行動を起こす。他の誰に頼ることもなく、まずは人間界を裏切った魔法少女を一人ひとり狩っていった。彼女らに裏切りの理由など問いただすこともせず、ただ着実に、数日のうちに全ての殺害を実行した。同時に、彼女たちの周りにいた有力な魔人族も殺害することとなる。これにより統制を失った魔界側勢力は、人間界側勢力に押し返され魔界へと撤退することとなる。

 辛うじて魔界側勢力を退けた人間界側勢力には、彼らを追撃することなどできるはずもなく、次の襲撃に備え破壊された防衛網や戦力の補強に注力する事となる。
 しかし復讐に燃える征司は違った。単身魔界へ乗り込み、さらなる追撃を敢行する。然しもの彼も、人間界よりも濃厚な魔力に満ちた魔界ではすぐに十全に動くことは難しかった。だが、持ち前の天性の才能と復讐に燃える精神力が次第に劣悪な環境への適応を可能とするのみならず、その環境を自身の力へと変えていった。過酷な魔界の環境と、周りにいるのは魔人と魔獣、己以外は全て敵という状況が彼の才能を開花させ、肉体すらも変貌させる。
 征司は半年のうちに、歴戦の魔法少女を有に超える力を手にし、両親を奪う原因となった魔人族の組織を壊滅させる。その間に魔界の社会構造を知った彼は、敵と定めた組織が魔界においてはごく一部のせいぜい中規模の存在でしかないことを知る。

 両親の死、魔法少女の裏切り、これまで自身を支えていたものを一度に失い、その代償として力を得た彼は、そこで立ち止まることをしなかった。魔人族を統べる魔王の存在を知った征司は、これを打倒するためさらなる力を求め、修羅の道を行く。魔術を、体術を磨き上げ、魔界の住民ですら立ち入ることもないダンジョンをいくつも攻略し、集めた素材と錬金術により神々の作り出した神代の宝具にも相当するアイテムをいくつも作り出す。


 両親の死から一年後、彼は一人魔王城の前にいた。10万にも及ぶ魔王軍を相手に、一時も休むことなく戦闘を繰り広げる。作り出した数々の宝具が敵を打ち砕き、手足が千切れ飛ぶ程の傷や疲労も、用意した千を超える最上位霊薬エリクサーで治し戦い続けた。
 激戦は10日間に渡り、ついに征司は魔王の首に刃を突きつける。死を幾度も超えた連戦の中、ある種悟りの境地に達していた彼は、自身に対し全ての魔界住民が敵対しないことなどいくつかの条件を引き換えに、魔王の命を助ける。
 敵対するものは容赦なく、利用できるものは全て利用し、人も魔人も分け隔てなく容赦しない。こうして、傍若無人な錬金魔術師、松崎征司が完成した。

 その後彼は人間界へ戻り、魔界で身につけた技術や集めた素材を使い、錬金道具の売買を行う【中立の万能屋】となる。その目的は、残りの人生を謳歌すること。ひとまずの目標を両親から受け継いだ魔導を極めることと定め、そのために必要な多額の資金を集め始めた。この頃から、征司は魔の導を行く者、魔導師と名乗り始める。

 魔人族や魔法少女はもとより、人間社会の裏側の存在にまで幅広く商売の手を広げた彼は、同時に多くの敵を作っていた。そのことごとくを完膚なきまでに叩き潰してきたが、同時にこれまでの環境、両親の残してくれた家や錬金術のアトリエではこの先の生活を続けていくことが難しいことにも気づく。そこで、最上位霊薬を主力に富裕層からかき集めた資金を元に、現在彼が住む自宅兼アトリエを構えるに至った。このとき松崎征司14歳、中学2年生、魔法少女プリズマシャインこと輝山茉莉香と出会う数年前の話である。
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