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第2章-耐久テスト編-
第27話:電撃耐久試験(6)
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叶海はスーツの動作原理などの詳しいことを理解していない。
これほどまでの性能を示すスーツでも、動力源が無くなればただの布切れになってしまうのでは?
性能が高ければ、逆に従来スーツよりも稼働時間が短かったりするのではないか。
湧き上がる疑問が叶海の心に恐怖を生む。
これほどの電撃だ、スーツが無力化されれば叶海など一瞬すら耐えられず消し炭になる。
鼻をつく肉の焼ける匂いが、着々と近づく死の匂いに感じる。
(エネルギーが切れたら…私、どうなる…の)
《仮に現状でエネルギー切れとなった場合、装着者の生命維持に支障をきたします》
(それって、死ぬってこと…だよね)
《肯定です》
(―――――ッ!!)
淡々とした機械的な回答に絶句。
口から漏れ続ける悲鳴もしばらく止まったほどだ。
人食い魚が下を漂う薄氷の上に立っているような恐怖に、自然と膀胱が緩む。
「ああっ…………ああ゛あ゛あ゛あ゛―――!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーッ!!」
――ちょろちょろちょろ
大きく目を見開いて絶叫。
緩んだ股間から僅かな水分がまた失われていく。
身体が自由になれば、今すぐに逃げ出そうと暴れまわっていただろう。
だが、流れる電気に神経を荒らされ、既にこれでもかと全身の筋肉が暴れまわっている今、叶海にできることは何もない。
そもそも叶海の拘束は彼女一人の力で解けるほどゆるくはなく、体が自由になったとしても何もできない。
《なお、現在のエネルギー残量は100%です》
(――――えっ?!)
聞き間違えかと思うが、脳内に直接響く声を間違えるわけがない。
《加えられている電撃の一部の、エネルギー変換に成功しました。既に満タンまでエネルギー充填が完了しています》
(っていう、ことは……!)
《現状であれば、このままいつまでも耐え続けることが可能です》
(よか……ったけど、嬉しくないいいいいぃぃぃぃ!!!)
「ひぎいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーッ!!んお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛――――――――――――ン!!あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁ!!んぎぎぎぎぎぎひ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁーーーー!!」
心の叫びと同時に、ひときわ大きな嬌声が上がる。
(無限にイカされ続けるってことじゃないいぃ!!!無理無理無理いぃぃ、ああぁぁぁもう無理いいいいぃぃーーーーーーー!!)
《攻撃開始から約5分が経過しています。敵性体ガイアスの発言を信じれば、後25分でこの攻撃が終了します》
(まっ、まだ5分!?無理無理無理だってばぁぁぁイキすぎて狂ううぅう、狂い死ぬうううぅぅぅーー!!)
《精神保護機能が働くため、装着者が狂い死ぬことはありません》
(何…それぇ、つまり…正気のまま――)
《精神保護機能は、常に平常な心で作戦行動に挑むための補助機能です》
これも、戦士のための有用な機能。だが、叶海にとってはある種の拷問具。
――いっそ狂ってしまえば楽になれるのに。
延々と続けられるこの快楽実験に、そう思う心が無いわけがない。
気絶ができれば楽になる、だがそれはスーツの性能が許さない。
快楽に流され精神が狂ってしまえば楽になる、だがそれもスーツの性能が許さない。
叶海は、襲いくる刺激を全て受け止め、耐えきるしかない。
生きて脱出、生還するために、スーツの性能がそれを強いる。
安易な逃げ道を塞がれた叶海に、スーツのAIが無慈悲に続ける。
《なお、本スーツは従来よりもエネルギー効率が飛躍的に向上しており、現状程度の攻撃であればエネルギー供給無しに160時間の耐久が可能です》
エネルギー変換可能な電撃でなくてもほぼ7日、1週間近く耐え続けられる。
否、耐え続けさせられる。
正気を保ったまま、これだけの刺激を受け続けるなど死刑以上に苦しい拷問刑だ。
(もういっそ……)
殺してよ、その言葉が頭に浮かびあがる。
だがそれを遮り、ふと幼馴染の顔がよぎる。
(ゆぅ……た……!)
そうだ、ここで諦めるわけにはいかない。
叶海が生きて帰らなければ、スーツの製作者である雄太は深い悲しみと絶望に襲われる。
私が死んだら悲しんでくれるかな、なんて悲劇のヒロインぶったことを言うまでもなく、幼馴染がどうなるかなど手に取るように分かる。
彼は強く、死など選ばない。
復讐に囚われ、研究に没頭し、彼の人生を使い潰す。
延々と、憎しみと後悔に苛まれ、苦しみ、壊れてしまう。
そもそも、彼は叶海がいなければまともな生活など送れない。
学校生活だって、青春することなんてできやしないのだ。
叶海がいなければ、雄太が一人になってしまえば。
次々とゆーたに対する心配が湧き上がる。
(違う…そうじゃない)
それは言い訳のような思いだ。
本当に重要なのはそれじゃない。
(ゆーた、ゆーた…!)
彼を悲しませたくない、彼の悲しむ顔など見たくない。
彼の世話をやき、学校へ行って青春したい。
彼と一緒に、生きていきたい。
どれもこれも、叶海がしたい、叶海の願い。
(ゆーたともっと一緒にいたい。一緒にしたいこと、言いたいことが山程ある。なのに、まだ私は何もしていない)
思いの丈も、まだ伝えていない。
(私は…帰る!絶対に、帰らない……と!)
こんなところで人生が終わるなどまっぴらごめんだ。
湧き上がる生への執念。
折れかけた心を蘇らせる乙女の思い。
それは、間違いなく叶海の心から生まれた彼女の思い。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーック、ぐぐぐぎぎがああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!うあ゛あ゛あ゛、アアアアアアアアアアァアァァァァァァァァァァァァァア!!」
これにより、彼女は30分もの苛烈な電気責めに耐えきる。
もはや何度イったのかも分からない、頭の中も、股間も、お腹もぐちゃぐちゃで、全身汗まみれのアヘ顔を晒しながらも、電撃が止まるその時まで叶海は全て受け止め耐えきった。
少女の心を守った、奇跡のような強い思い。
不死鳥の如く叶海の精神を蘇らせたそのプロセスを、スーツのAIは学習する。
より、効率的な精神保護を実現するため。
スーツは学習し、装着者に最適化される。
そのためのAI、そのためのスーツ機能。
全ては装着者のためを思ってつけられた、従来を遥かに超える高性能。
無駄に優秀すぎるそれは、純真な乙女の思いすらも利用する。
これほどまでの性能を示すスーツでも、動力源が無くなればただの布切れになってしまうのでは?
性能が高ければ、逆に従来スーツよりも稼働時間が短かったりするのではないか。
湧き上がる疑問が叶海の心に恐怖を生む。
これほどの電撃だ、スーツが無力化されれば叶海など一瞬すら耐えられず消し炭になる。
鼻をつく肉の焼ける匂いが、着々と近づく死の匂いに感じる。
(エネルギーが切れたら…私、どうなる…の)
《仮に現状でエネルギー切れとなった場合、装着者の生命維持に支障をきたします》
(それって、死ぬってこと…だよね)
《肯定です》
(―――――ッ!!)
淡々とした機械的な回答に絶句。
口から漏れ続ける悲鳴もしばらく止まったほどだ。
人食い魚が下を漂う薄氷の上に立っているような恐怖に、自然と膀胱が緩む。
「ああっ…………ああ゛あ゛あ゛あ゛―――!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーッ!!」
――ちょろちょろちょろ
大きく目を見開いて絶叫。
緩んだ股間から僅かな水分がまた失われていく。
身体が自由になれば、今すぐに逃げ出そうと暴れまわっていただろう。
だが、流れる電気に神経を荒らされ、既にこれでもかと全身の筋肉が暴れまわっている今、叶海にできることは何もない。
そもそも叶海の拘束は彼女一人の力で解けるほどゆるくはなく、体が自由になったとしても何もできない。
《なお、現在のエネルギー残量は100%です》
(――――えっ?!)
聞き間違えかと思うが、脳内に直接響く声を間違えるわけがない。
《加えられている電撃の一部の、エネルギー変換に成功しました。既に満タンまでエネルギー充填が完了しています》
(っていう、ことは……!)
《現状であれば、このままいつまでも耐え続けることが可能です》
(よか……ったけど、嬉しくないいいいいぃぃぃぃ!!!)
「ひぎいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーッ!!んお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛――――――――――――ン!!あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁ!!んぎぎぎぎぎぎひ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁーーーー!!」
心の叫びと同時に、ひときわ大きな嬌声が上がる。
(無限にイカされ続けるってことじゃないいぃ!!!無理無理無理いぃぃ、ああぁぁぁもう無理いいいいぃぃーーーーーーー!!)
《攻撃開始から約5分が経過しています。敵性体ガイアスの発言を信じれば、後25分でこの攻撃が終了します》
(まっ、まだ5分!?無理無理無理だってばぁぁぁイキすぎて狂ううぅう、狂い死ぬうううぅぅぅーー!!)
《精神保護機能が働くため、装着者が狂い死ぬことはありません》
(何…それぇ、つまり…正気のまま――)
《精神保護機能は、常に平常な心で作戦行動に挑むための補助機能です》
これも、戦士のための有用な機能。だが、叶海にとってはある種の拷問具。
――いっそ狂ってしまえば楽になれるのに。
延々と続けられるこの快楽実験に、そう思う心が無いわけがない。
気絶ができれば楽になる、だがそれはスーツの性能が許さない。
快楽に流され精神が狂ってしまえば楽になる、だがそれもスーツの性能が許さない。
叶海は、襲いくる刺激を全て受け止め、耐えきるしかない。
生きて脱出、生還するために、スーツの性能がそれを強いる。
安易な逃げ道を塞がれた叶海に、スーツのAIが無慈悲に続ける。
《なお、本スーツは従来よりもエネルギー効率が飛躍的に向上しており、現状程度の攻撃であればエネルギー供給無しに160時間の耐久が可能です》
エネルギー変換可能な電撃でなくてもほぼ7日、1週間近く耐え続けられる。
否、耐え続けさせられる。
正気を保ったまま、これだけの刺激を受け続けるなど死刑以上に苦しい拷問刑だ。
(もういっそ……)
殺してよ、その言葉が頭に浮かびあがる。
だがそれを遮り、ふと幼馴染の顔がよぎる。
(ゆぅ……た……!)
そうだ、ここで諦めるわけにはいかない。
叶海が生きて帰らなければ、スーツの製作者である雄太は深い悲しみと絶望に襲われる。
私が死んだら悲しんでくれるかな、なんて悲劇のヒロインぶったことを言うまでもなく、幼馴染がどうなるかなど手に取るように分かる。
彼は強く、死など選ばない。
復讐に囚われ、研究に没頭し、彼の人生を使い潰す。
延々と、憎しみと後悔に苛まれ、苦しみ、壊れてしまう。
そもそも、彼は叶海がいなければまともな生活など送れない。
学校生活だって、青春することなんてできやしないのだ。
叶海がいなければ、雄太が一人になってしまえば。
次々とゆーたに対する心配が湧き上がる。
(違う…そうじゃない)
それは言い訳のような思いだ。
本当に重要なのはそれじゃない。
(ゆーた、ゆーた…!)
彼を悲しませたくない、彼の悲しむ顔など見たくない。
彼の世話をやき、学校へ行って青春したい。
彼と一緒に、生きていきたい。
どれもこれも、叶海がしたい、叶海の願い。
(ゆーたともっと一緒にいたい。一緒にしたいこと、言いたいことが山程ある。なのに、まだ私は何もしていない)
思いの丈も、まだ伝えていない。
(私は…帰る!絶対に、帰らない……と!)
こんなところで人生が終わるなどまっぴらごめんだ。
湧き上がる生への執念。
折れかけた心を蘇らせる乙女の思い。
それは、間違いなく叶海の心から生まれた彼女の思い。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーック、ぐぐぐぎぎがああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!うあ゛あ゛あ゛、アアアアアアアアアアァアァァァァァァァァァァァァァア!!」
これにより、彼女は30分もの苛烈な電気責めに耐えきる。
もはや何度イったのかも分からない、頭の中も、股間も、お腹もぐちゃぐちゃで、全身汗まみれのアヘ顔を晒しながらも、電撃が止まるその時まで叶海は全て受け止め耐えきった。
少女の心を守った、奇跡のような強い思い。
不死鳥の如く叶海の精神を蘇らせたそのプロセスを、スーツのAIは学習する。
より、効率的な精神保護を実現するため。
スーツは学習し、装着者に最適化される。
そのためのAI、そのためのスーツ機能。
全ては装着者のためを思ってつけられた、従来を遥かに超える高性能。
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