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第2章-耐久テスト編-

第19話:電撃、酸、熱耐久試験(1)

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(わたし、死んでない…耐えた、の……?)

「フヒヒヒヒッ、まさか機械の方が先に音を上げるとはのぉ…いやはや、予想以上の耐久力である」

 ガイアスの声が耳に響く。回復した叶海は、今度は何を言っているのかすぐに理解する。

「わたしの、勝ちみたい…ね。これ以上実験しても、無駄でしょ…はやく、この拘束を、外して…よ」

 どうすればいいのかよくわからない素人少女が、できるだけ敵に弱みを見せないようにと考えての強気な発言。
 だがそんな強がりは、百戦錬磨の怪人には単なるスパイスにしかならない。

「フハハハッ!然り然り、この実験機ではこれ以上の実験は行えまいて。だがまだ開放はできぬよ、さぁ元気そうじゃしこのまま次の実験と行こうではないか」
「あっ…うそ、ちょっと…まってよ、嘘でしょ…?」

 去勢を張ってはいるが、所詮は素人の少女。
 先程の強気な態度は一瞬で崩れ、無駄だと分かっていても助けを求めて懇願せずにはいられない。

「嘘などつかぬよ。貴様の異様な耐久性は無視できぬ。本来の予定では、今の耐久実験で合格がでたら怪人王様の贄、失格ならば人型怪人の孕み袋に堕としてやるはずだったのじゃが…今後の戦いに備えその硬さの限界、弱点を確かめるまでは実験を繰り返さねばならぬ。さぁて、次はどれを使おうか……」
「待って、お願い、もう止めて!せめて…少し休ませて、辛いの、もう辛いのよおぉ……!」

 スーツは叶海の身体を守り、加えられる衝撃にもなんとか耐え、快楽に溺れかけた精神すらも回復した。
 ガイアスからしてみれば、これほど優秀な実験体(モルモット)は無い。

「やはり次はこれかのぅ、まずは体表面からか」
「なんだよ、根性ねぇなぁ。まぁ雌らしい良い顔になってきたとは思うがな」

 ガイアスは叶海の懇願など気にもせず道具の選定を始め、イービルガイはニヤニヤしながらカマセっぽい事を言う。
 怪人に捕まった変身ヒロインはただただ耐えるしかない。

 ガイアスが、手下のゴブリンに命じて持ってこさせた道具。
 使い方も分かりやすい、原始的な拷問具。
 ここまでその熱気が伝わってくる、赤熱した鉄の棒。

 焼けた石の詰まったバケツに2本、その先端は長細い楕円形になっており、底の部分は判子のように平らだ。
 押し付けてもよし、丸い部分をぐるぐると転がしてもよし。

「ひっ…あぁ……ひぃっ……」

 あからさまな火責め道具を前に、叶海の息が止まる。

「フヒヒッ、そそられる良い表情ではないか」
「なんだよビビりまくりじゃねぇか」
「そんな顔をされるといきなりきついのを行きたくなるんじゃが、順を追って実験していかねばな」

 ガイアスはバケツから灼熱の鉄棒一本を取り出し、叶海に見せつける。
 熱気がすごく、少し近づけられただけでも伝わってくる。

「やっ…やめ……」
「なぁに、最初はたいしたことないじゃろうよ」

 軽い口調で言いながら、溜めも躊躇いも無く棒の先端を叶海に押し付ける。

 ――ジュジュッ

「くうううぅ……あ、つい……」

 叶海の腹から焼ける音。スーツの上から押し付けられ、叶海の口から声が漏れる。

(熱いけど、これくらいなら大丈夫…!)

 《肯定。スーツの耐熱範囲内です》

「ふむ、やはりスーツの上からではそれほど熱も伝わらないようじゃなぁ」

「ふうぅぅ…ふぅっ、ふうっ」

 楕円の側部を押し付け腹の上を転がす。スーツとの接触部分から焼けるような音が上がるがスーツにも叶海の身体にも変化はない。

「こうやって、同じところに当て続ければ、少しは効くかのぅ?」

「ぁぅ……こんなの、無駄よ、効かないわ!」

 痛みはない。焼けるような音も、スーツが焼け焦げるのではなく、鉄の温度が下がって出ているようだ。
 叶海自身には、熱めのホッカイロを当てられている程度の刺激しか無い。

「ふむふむ、前面は効果無しか。では後ろはどうじゃ」

 温度の下がった鉄の棒をバケツに戻し、熱々のもう一本を取り出す。
 叶海の後ろへ回ったガイアスは、その先端を叶海の尻の、スーツに覆われている部分に押し当てた。

「ひっ…ぅ………く、無駄、よ!!」

 見えない所に焼け付くような熱さの凶器。背中スーツがX字にあいた、素肌が剥き出しのところからは鉄の熱さを感じている気がする。
 その生肌に押し当てられるのでは、と思うと恐ろしい。
 見えないせいで余計に恐怖感が増す。

「そのようじゃ、この程度の温度では効かぬな」

 押し当てるのを止め、鉄の棒をバケツへ戻す。

「ふむ、念の為、両手両足のスーツにも当てておこうかの」

 右手、左手、右足、左足と順に押し当てられるが、胴体のときと変わらない。
 それでも圧倒的熱量からくる恐怖に、叶海は押し当てられる瞬間だけ一瞬怯えるが、何事もなく耐えた。

「ふぅっ、ふぅ…ふぅ…っ、無駄だって、言ってるでしょ」
「そのようじゃのぅ。貴様が思った以上に怯えるので、効果があるものかとも疑ったが…」
「おっ、怯えてなんてないわよ!」

 明らかに嘘だ。鉄の棒を近づけられる度に、へっぴり腰になりそうな勢いで怯えていた。

「貴様らの仲間とはまるで性能が違うのぅ。これが新型というやつか。どれ、では生身の肌はどうかのぅ」

「ひっ……!?」

 ――ジュワー!

(熱ッ…く、ない?)

 カットがきつく剥き出しの鼠径部から太ももにかけて、ゆっくりと熱した鉄の棒を押し付けられるが、スーツの上から当てられたときと大差がない。

 《スーツの衝撃緩和機能が有効な限り、装着者の体表面全体が特殊フィールドによって一様に保護されます》

(なにそれっ、すごい!?完全にバリアじゃん!)

「やはりスーツを着ている部分と変わらぬか、全く奇妙な機構なのである」

 まったく様子の変わらない叶海に、ガイアスもあっさりと諦める。
 すぐに次の用意が始められていた。
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