防御特化変身スーツを着た正義のヒロインが残念硬い特殊性能でリョナられまくる!

濡れ雑巾と絞りカス

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第2章-耐久テスト編-

実験開始、鉄球衝突耐久試験(1)

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「これから行うのは、貴様のスーツの性能チェックである」

「性能チェックって、何を…」

 少女に近づくイービルガイを片手で制し、ガイアスが続ける。

「イービルガイ殿が言う、特殊な性能、その異様なまでの強靭さとやらを、怪人王様に献上する前にチェックしておく必要があるのでな」

「俺ぁ必要ねぇって言ったんだけどな。俺サマ全力の拳を受けて形を保っている頑丈さってだけで十分じゃねぇか、ってな」

「技術責任者としてはそうも言っておられんのだよ。お主を疑うわけではないが、怪人王様に外見は堅くても中身がゆるゆるの半端な生贄を捧げるわけにもいかぬであろうしな」

 ガイアスが新しいメモを取り出し、机の上の機材を操作する。
 すると天井が開き巨大な鉄球が現れ、叶海の前に固定された。
 その様子を、イービルガイは腕を組んで仁王立ちで見守っていた。

「そういうこと…無駄よ、その程度の鉄球をぶつけても、わたしのスーツには効かないわ」

 効かないで欲しい、という願望も込めて言い放つ。

「スーツの衝撃緩和機能、であったか。その効果は知っておるよ。お主が気を失っている間に少し調べさせてもらったわい。前に捕まえてきた貴様らの仲間でも散々と実験、検証を行ったが…貴様のスーツは、たしかに他の連中とは比べ物にならない防御性能であったわい」
「なっ…そんな!!」

「しかし、肉体強化機能であったか?貴様本体はどれほどのものか、調べてみねばならんじゃろうて」
「……馬鹿ね、調べたのに知らないの?このスーツがある限り、わたしにはダメージが通らないのよ!」

「イィッヒッヒッ!必死じゃのう。恐怖に震えて可愛らしい限りじゃ」
「う、うるさい…だまりなさい!」

(ほ、ほんとに大丈夫よね…??)
《条件付き肯定。鉄球の質量から、600km/h以下での衝突を1秒に1回までならば、スーツの衝撃緩和機能で耐え続けられます。その場合、着用者本体へのダメージは0です》

(数字が大きすぎてわかんないんだけど…)
《目の前の鉄球がほぼ音速の半分以下の速度で飛んできても、耐えられます》
(始めっからそう言ってよ!!)


「まぁこうして言い合っていても仕方あるまい。試してみればすぐに分かるわい」

 そう言って、ガイアスは一番手前のボタンを押す。

「まずはレベル1じゃ、ほれ」

 鉄球が叶海の反対側へ引かれ、勢いをつけて叶海の腹部、胸の下あたりにぶつかる。

 ――ドーン!

「うっぐぅ……ッ!?」

(うそっ…身体の中に、衝撃が…)
《警告。衝撃の緩和に失敗、全ての衝撃が体内へ貫通しました》
「げふっ、ごほっ、おっ……!」

「ほれ、この通りじゃ。痛みは通っておろう。まぁレベル1では人間程度しか殺せはせぬて。次へ行くぞ、レベル2じゃ」
「ちょっ、まっ!」

 ――ドーーン!

「おぶうっ!!げぶっ、ごほッ…おぉ!」

「ふむ、まだまだ余裕じゃの。ではレベル3じゃ」

 ――ドーーーン!

「ふおっ、んぶうぅぅ!!んぐっ、ごっほ、ごほおぉ……」

「少しは効いてきたようじゃの」

 レベルが上がるごとに、倍以上のダメージがスーツを貫通して叶海の身体に加えられる。鉄球の向かってくる速さは変わらないのに、衝突時の音が大きくなり威力が上がっている。

「うぐっ…どう…して、スーツの…衝撃緩和、がぁ……」

「イッヒッヒ!貴様の仲間で実験したと言ったろう。我らとて日々研究を進めておるのじゃ、実戦投入はまだでも研究室レベルで貴様らのスーツを貫通する攻撃くらい実現できるんじゃよ!」

「そん…なっ!あぐ…うぅぅ………」

「貴様のスーツは、性能は上がっているようじゃがダメージを受け流す方式は変わっとらんじゃろう。ダメージが完全に貫通しておるのが分かるぞ。ほれ、次はレベル4じゃ」

「クッ…やめ、やめなさッ――」

 ――ドーーーン!!

「おっぐううううぅぅぅ!!えぶっ、おごっ、げごおおぉぉぉ……」

「このあたりから貴様らの仲間でもひ弱なやつは泣き叫び初めておったが、流石に耐えるのぉ」

(体の中に、響いてくる…痛い、けど耐えられないほどじゃない……!)

《強化人体へのダメージは軽微、回復モードの対応可能範囲内です。衝撃緩和機能を適応するため、座標位置計算を中断して敵攻撃の解析を行いますか?》

(それって、すぐに終わるの?)

《予想解析時間は不明です》

(だめじゃない!?なんとか耐えるから、早く脱出できるようにして…!!)

《了解しました、座標位置計算を続行します》

 叶海は心の中でスーツと会話しながら、弱みを見せまいと恐怖を押し殺しガイアスを睨む。

「ぐぶっ、おふっ、ふぅ…ふぅ…っ!このくらい…っ…大したこと、ふぅ…無いわよ」

「言うのぉ、次はレベル5じゃが、このあたりからはそうも言っておれんぞ」

「ふぅっ…ふうぅっ…!」

 叶海は大したこと無いと言わんばかりに反骨心剥き出しで、唇を噛み次に備える。

 ――ドーーーーーン!!!

「ほぶうううぅぅうううぅぅッ!!?おげっ、うげえぇぇぇ…うぶえっ!」

 予想以上の威力に、叶海の目が見開いた。衝撃に肺が押しつぶされ、胃がキリキリする。

「うげっ、ふぅっ、ふうううぅっ…うっぷ、はぁっ、ふうぅ、はぁ…はぁ…ッ」

《警告。装着者の苦痛を感知。人体への損傷が通常(ノーマル)回復モードの対応可能範囲を超えつつあります》

 鉄球は正確に、毎回同じところへぶつかってくる。そのうえで確実に威力をあげていて、どこまで叶海の身体が耐えられるかを試しているのがよく分かる。

(痛い…こんなの、何回も耐えられないよ…。脱出の計算、まだ終わらないの!?)

《計算終了時刻は不明です》

(お願いよぉ……最新型だって言うのになんでこんなに計算遅いの!?)

《本スーツがスタンドアロンで起動しているためです。本スーツの演算装置は戦闘計算に特化されています。その他の援護的処理は、本部との通信によるクラウド型を想定し、シンクライアント方式端末として実現するよう設計されています。現在計算中の座標位置計算も本部マザーコンピュータとのリンクが確立できれば、約600秒で終了すると予測されます》

 叶海にはところどころ用語がわからなかったが、とにかく今のままでは時間がかかるようだ。

(うぅ…もうちょっとゆーたみたいに分かるように説明してよぉ…。わけ解んないけど、とにかくだめだめだってことは分かったわ)

 とにかく今は耐えるしか無いのだが、今回はかなりの痛みがあった。このまま威力をあげられたらまずい。一体レベルはいくつまであるのだろうか。

「ほほぅ、雑魚怪人では耐えられぬほどの威力なのじゃが…。息は乱れておるがダメージも然程無いようじゃな。これは楽しみな実験体じゃ」
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