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第2章-耐久テスト編-
囚われの変身少女
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「くそおっ…!!あんなに強い怪人がいるなんて、どの国の情報にも無かったぞ…しかもそれが叶海のデビュー戦で出てくるなんて、予想外だ!!」
ドクターKは悔しげに何度も机を叩き、叶海が最後に映っていたディスプレイを見つめ続けていた。
既に協力関係にある軍や研究機関に連絡は済ませ、今できることを全て終わらせた彼は、幼馴染が連れ去られた現実を改めて直視し、自分の無力さに打ちひしがれていた。
「いいや、でも大丈夫だ。叶海がアースガーディアンを装着している限り、簡単に死にはしない!きっと、異世界の怪人基地に囚われたんだ。時間はかかるけれど、アースガーディアンの座標解析が完了すれば隙を見てテレポートで帰還できるはず…!!」
これまで、怪人に連れ去られて生きて帰ってきたものはいない。
叶海拉致の報を受け全ての関係者が生存を絶望視する中、彼女の装着スーツの開発者であり、幼馴染でもあるドクターKだけは諦めずに救出のための策を練り続けるのであった。
……
………
…………
一方イービルガイに連れ去られた叶海は、怪人王の城の地下室に囚われていた。牢獄のような部屋ではなく、広さがあり人を痛めつけるための凶悪な道具が溢れた拷問部屋だ。
その部屋の中心で、叶海は天井から伸びた鎖に両手を縛られ、宙に吊られている。両足にも石畳の床から生えた鎖が繋がれ、X字に拘束されて動けない。
変身スーツは装着したまま。自動修復機能が働き、元の綺麗な状態に戻っていた。
本人の傷も全快している。
意識を失った状態だが、全体重を手首で支える痛みは感じていないのか、穏やかな顔をしている。
よく見てみれば強化された肉体のおかげか、瑞々しい綺麗な肌には鎖では傷もつかず、食い込んですらいなかった。
その叶海の様子を具に観察しながら、ふむふむとメモをとる男が一人。
イービルガイと同じように、耳が長い以外は人間と変わらない見た目の怪人。こちらは几帳面で神経質そう。色白で、頭皮は禿げ上がり光を反射しそうなほどツルツル。学者…というか中年のザ・研究員といった見た目だ。
その中年研究員が、スーツ越しに叶海の全身を満遍なく触っていく。胸をもみ股間を弄り太ももを撫で、その度にメモを取り全身チェックが終わったところでタイミングよく叶海が目を覚ます。
「……ぁ……ぅ、ここ……は」
ぼんやりとした視界が、すぐにはっきりしてくる。
(そうだ…わたし、怪人にやられて………ッ!?)
部屋中に溢れた拷問器具に背筋がゾクリ。手足を拘束されていることにもすぐに気づき、何があったのかを思い出す。
(連れ去られちゃったのかな…ここどこだろう)
《怪人の本拠地と推測されます。敵性体、個体名イービルガイの空間転移により移動したため、正確な座標は不明です。空気の構成元素から地球外、異世界だと推測されます。また、現在敵に拘束されています。正確な敵戦力は不明です》
変身スーツ、アースガーディアンのAIから返答が帰ってくる。
怪人の本拠地、地球外の異世界、敵に拘束、戦力は不明と不安を煽る言葉のオンパレード。
(最悪の状況じゃない…スーツの機能は?平気?この拘束、解けないのかな)
《全機能問題ありません。スーツ損害率0%、残存エネルギー量95%。状態は良好です。ですが、当スーツの出力で拘束を強制解除することは不可能です。
テレポートにより拘束具外へ転移することは可能ですが、座標位置情報の不足により転移可能位置はこの室内に限られます。装着者を監視する敵性体2体、名称不明人型怪人1、人型怪人・個体名イービルガイにより、拘束解除直後に再拘束される恐れがあります》
(テレポート、全然使えないじゃない…。うぅ…ほんとだ、部屋の出入り口近くにあの怪人四天王って人もいるし、逃げられないかぁ)
《現在、座標位置情報の解析を進めています。解析終了後、十分な準備時間とエネルギーが確保できれば地球圏へ転移可能になります》
(なにそれ、耐えて時間を稼げば逃げられるってこと?)
《肯定。ただし所要時間は現在不明です》
(はぁ…だめじゃん。でも今の所それで逃げる以外なさそう…。うぅー今頃ゆーた、心配してるよね。っていうか、絶対に徹夜で助ける準備してくれてるよぉ…ごめんゆーたぁ…。わたし、頑張って耐えるから!)
不安だが、今は耐えるしか無いかと諦め、叶海が改めて室内を見回す。すると、入口付近の椅子に足を組んで腰掛け、こちらを見ているイービルガイと目が合った。
「よう、起きたみたいだな」
その声に、メモを取っていた中年怪人も顔を上げて叶海を見る。
「おぉ、ちょうどよいタイミングである。そろそろ起こそうかと思っていたのだ」
イービルガイはひとまず無視し、叶海は近づいてくる中年研究員に問いかける。
「あなた、何者?わたしをどうするつもり……?」
「私はプロフェッサー・ガイアス、怪人城の技術責任者のような者じゃ」
カツカツと石畳を叩く音を響かせ、叶海の眼前、息がかかるほど近づきガイアスが答える。
(技術責任者ってことは、そんなに強くないのかな…?)
《肯定。体捌き、体内エネルギー量等の情報から推定される、敵性体・プロフェッサー・ガイアスとの直接戦闘の勝率は86%です。ただし知性が高く、特殊装備や能力を持っていた場合は高確率での敗北が予想されます。そのため、現時点での戦闘行動は推奨されません》
(だよねぇ…それにイービルガイって四天王の人も明らかに見張りっぽい感じだし…わたしこれからどうなっちゃうんだろう)
「イッヒッヒ、まぁワシの名前などはどうでも良かろう。気になるのは貴様の身にこれから何が起こるかじゃろうて」
心でも読まれたかのように言い当てられた。だがこれは単純に表情豊かな叶海の思考が読みやす過ぎるだけだ。
「そう思うなら、取ってつけたような気持ち悪い笑い方してないで…早く教えなさいよ!」
「ヒャッヒャッヒャ、イービルガイ殿が言う通り、活きが良いのぉ。これなら怪人王様もお喜びになりそうじゃ」
イービルガイが立ち上がり、少し興奮気味に、苛立ちも混じった声をかける。
「だろう?だからとっとと続きを始めろよ。俺サマだって暇じゃねぇんだ。そいつだって早くしてほしそうだぜ、ケケッ」
どうにも見た目や態度がカマセっぽいのだが、彼の実力は本物だ。
「だから…いったいなにを、するつもりなの……!?」
叶海の声に、怯えが交じる。
手足を拘束された状態で、逃げることもできずにボコボコにされて負けた怪人が目の前で嗜虐的な笑みを浮かべているのだ、素人の少女に怯えるなという方が無理がある。
それを見て楽しそうな顔でガイアスが一言。
「貴様のスーツの、性能チェックである」
ドクターKは悔しげに何度も机を叩き、叶海が最後に映っていたディスプレイを見つめ続けていた。
既に協力関係にある軍や研究機関に連絡は済ませ、今できることを全て終わらせた彼は、幼馴染が連れ去られた現実を改めて直視し、自分の無力さに打ちひしがれていた。
「いいや、でも大丈夫だ。叶海がアースガーディアンを装着している限り、簡単に死にはしない!きっと、異世界の怪人基地に囚われたんだ。時間はかかるけれど、アースガーディアンの座標解析が完了すれば隙を見てテレポートで帰還できるはず…!!」
これまで、怪人に連れ去られて生きて帰ってきたものはいない。
叶海拉致の報を受け全ての関係者が生存を絶望視する中、彼女の装着スーツの開発者であり、幼馴染でもあるドクターKだけは諦めずに救出のための策を練り続けるのであった。
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一方イービルガイに連れ去られた叶海は、怪人王の城の地下室に囚われていた。牢獄のような部屋ではなく、広さがあり人を痛めつけるための凶悪な道具が溢れた拷問部屋だ。
その部屋の中心で、叶海は天井から伸びた鎖に両手を縛られ、宙に吊られている。両足にも石畳の床から生えた鎖が繋がれ、X字に拘束されて動けない。
変身スーツは装着したまま。自動修復機能が働き、元の綺麗な状態に戻っていた。
本人の傷も全快している。
意識を失った状態だが、全体重を手首で支える痛みは感じていないのか、穏やかな顔をしている。
よく見てみれば強化された肉体のおかげか、瑞々しい綺麗な肌には鎖では傷もつかず、食い込んですらいなかった。
その叶海の様子を具に観察しながら、ふむふむとメモをとる男が一人。
イービルガイと同じように、耳が長い以外は人間と変わらない見た目の怪人。こちらは几帳面で神経質そう。色白で、頭皮は禿げ上がり光を反射しそうなほどツルツル。学者…というか中年のザ・研究員といった見た目だ。
その中年研究員が、スーツ越しに叶海の全身を満遍なく触っていく。胸をもみ股間を弄り太ももを撫で、その度にメモを取り全身チェックが終わったところでタイミングよく叶海が目を覚ます。
「……ぁ……ぅ、ここ……は」
ぼんやりとした視界が、すぐにはっきりしてくる。
(そうだ…わたし、怪人にやられて………ッ!?)
部屋中に溢れた拷問器具に背筋がゾクリ。手足を拘束されていることにもすぐに気づき、何があったのかを思い出す。
(連れ去られちゃったのかな…ここどこだろう)
《怪人の本拠地と推測されます。敵性体、個体名イービルガイの空間転移により移動したため、正確な座標は不明です。空気の構成元素から地球外、異世界だと推測されます。また、現在敵に拘束されています。正確な敵戦力は不明です》
変身スーツ、アースガーディアンのAIから返答が帰ってくる。
怪人の本拠地、地球外の異世界、敵に拘束、戦力は不明と不安を煽る言葉のオンパレード。
(最悪の状況じゃない…スーツの機能は?平気?この拘束、解けないのかな)
《全機能問題ありません。スーツ損害率0%、残存エネルギー量95%。状態は良好です。ですが、当スーツの出力で拘束を強制解除することは不可能です。
テレポートにより拘束具外へ転移することは可能ですが、座標位置情報の不足により転移可能位置はこの室内に限られます。装着者を監視する敵性体2体、名称不明人型怪人1、人型怪人・個体名イービルガイにより、拘束解除直後に再拘束される恐れがあります》
(テレポート、全然使えないじゃない…。うぅ…ほんとだ、部屋の出入り口近くにあの怪人四天王って人もいるし、逃げられないかぁ)
《現在、座標位置情報の解析を進めています。解析終了後、十分な準備時間とエネルギーが確保できれば地球圏へ転移可能になります》
(なにそれ、耐えて時間を稼げば逃げられるってこと?)
《肯定。ただし所要時間は現在不明です》
(はぁ…だめじゃん。でも今の所それで逃げる以外なさそう…。うぅー今頃ゆーた、心配してるよね。っていうか、絶対に徹夜で助ける準備してくれてるよぉ…ごめんゆーたぁ…。わたし、頑張って耐えるから!)
不安だが、今は耐えるしか無いかと諦め、叶海が改めて室内を見回す。すると、入口付近の椅子に足を組んで腰掛け、こちらを見ているイービルガイと目が合った。
「よう、起きたみたいだな」
その声に、メモを取っていた中年怪人も顔を上げて叶海を見る。
「おぉ、ちょうどよいタイミングである。そろそろ起こそうかと思っていたのだ」
イービルガイはひとまず無視し、叶海は近づいてくる中年研究員に問いかける。
「あなた、何者?わたしをどうするつもり……?」
「私はプロフェッサー・ガイアス、怪人城の技術責任者のような者じゃ」
カツカツと石畳を叩く音を響かせ、叶海の眼前、息がかかるほど近づきガイアスが答える。
(技術責任者ってことは、そんなに強くないのかな…?)
《肯定。体捌き、体内エネルギー量等の情報から推定される、敵性体・プロフェッサー・ガイアスとの直接戦闘の勝率は86%です。ただし知性が高く、特殊装備や能力を持っていた場合は高確率での敗北が予想されます。そのため、現時点での戦闘行動は推奨されません》
(だよねぇ…それにイービルガイって四天王の人も明らかに見張りっぽい感じだし…わたしこれからどうなっちゃうんだろう)
「イッヒッヒ、まぁワシの名前などはどうでも良かろう。気になるのは貴様の身にこれから何が起こるかじゃろうて」
心でも読まれたかのように言い当てられた。だがこれは単純に表情豊かな叶海の思考が読みやす過ぎるだけだ。
「そう思うなら、取ってつけたような気持ち悪い笑い方してないで…早く教えなさいよ!」
「ヒャッヒャッヒャ、イービルガイ殿が言う通り、活きが良いのぉ。これなら怪人王様もお喜びになりそうじゃ」
イービルガイが立ち上がり、少し興奮気味に、苛立ちも混じった声をかける。
「だろう?だからとっとと続きを始めろよ。俺サマだって暇じゃねぇんだ。そいつだって早くしてほしそうだぜ、ケケッ」
どうにも見た目や態度がカマセっぽいのだが、彼の実力は本物だ。
「だから…いったいなにを、するつもりなの……!?」
叶海の声に、怯えが交じる。
手足を拘束された状態で、逃げることもできずにボコボコにされて負けた怪人が目の前で嗜虐的な笑みを浮かべているのだ、素人の少女に怯えるなという方が無理がある。
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