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第1章-出撃編-

遭遇、怪人四天王

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「あぁん?」

 怪人が声を上げ、視線を叶海に向けた瞬間、彼女は無意識のうちに一歩後ろへ下がっていた。

《警告!!!敵性体から膨大なエネルギー量を検知!単身での対処は不可能です。速やかな撤退を推奨します!!》

 AIの警告が大音量で頭にガンガン響き渡るが、恐怖に凍りついた足が動かない。

「おう、てめぇが噂の人間どもの主戦力か」
「―――ッ!!」

 怪人の発した声に叶海の硬直が解け、背中を向けて一目散に逃げ出そうとする。

「ちょっと、待てよ」

 だが、対する怪人のほうが圧倒的に早い。
 一瞬で距離を詰められ、背後から頭を捕まれ地面に叩きつけられる。

「ひぎゃっ!!?」

 衝撃にビルのコンクリートが耐えきれず、陥没。3層ほど階を貫き、叶海の身体がビルの中へと落ちていく。

「おっと」

 落下の衝撃で、怪人の手が叶海から離れた。
 落ちた先でビルの床に叩きつけられながらも、AIの警告にほぼ無意識で従いその場から逃げ出す。

「たく、人間どもの作る物は柔くていけねぇや」

 怪人が砕けた穴に飛び込み、叶海の落ちた層に降りてくるのと、叶海が窓ガラスを破ってビル外へ逃げ出すのはほぼ同時だった。
 飛び降りた叶海は、肩から地面を転げるように衝撃を殺しながら着地する。
 落下の速度を前方向の加速へ変換し、その勢いのままに走り出す。

「痛…くはなかったけど、何なのあれ!?」

《体表面への衝撃は、スーツが代替して全て緩和しました。スーツ破損率13%、修復まで約120秒。戦闘継続には支障ありません》

 言われて身につけたスーツを見ると、ところどころ破けていた。胸や股間など、人に見せられないようなところは無事だったのは幸いか。

(あれだけの衝撃で怪我一つ無いのはすごいけど、スーツは破けるんだ…)

《肯定。本スーツの衝撃緩和機能です。装着者の体表面への衝撃は、スーツが代替して受け流します。衝撃に応じてスーツが破損し、修復には一定の時間がかかります》

(バリアみたいなものなのかな?)

《肯定》

(そっか、それであの距離から落ちても平気だったんだ…)

《否定。ビルからの落下で生じた衝撃には、スーツの衝撃緩和機能は使用されておりません。適切な着地行動による衝撃緩和により、強化人体の強度のみで対処可能でした》

(きょ、強化人体って何!?えっ、どういうこと?じゃぁなんでスーツが破けたの?)

《強化人体とは、スーツの装着により一時的に強化された装着者本人の人体を指します。主に筋肉強度が増し、20階ビルからの落下程度で傷を負うことはありません》

(なにそれすごい!?)

《スーツが破けたのは、敵性体の攻撃によるものです》

(えっ…それってまさか、あの怪人の叩きつけがビルから飛び降りるよりも強力だったってこと!?)

《肯定。落下の衝撃とは比較にならない威力を有しています。故に速やかな撤退を推奨――警告!!敵性体接近!!》

 AIが解説の途中で、大声で警告を発する。

「逃ーげんなって!」

 ドシーンと音を立て、地面を円形に凹ませながら叶海が走る駅前道路の先に怪人が着地。
 走る叶海は急ブレーキをかけて停止。

《警告!現状戦力で当該敵性体との戦闘は危険です、速やかに撤退してください》

 叶海の右斜め後ろの路地を抜ける逃走ルートがナビゲートされる。
 だが、叶海が動くよりも早く、怪人が迫る。

「せっかく元気なやつを見つけたんだ、ちょっとは楽しませろっての!」

 とっさに召喚したエネルギー銃を発砲する。
 だが怪人は払いのけるように片手でエネルギー弾をかき消してしまう。

「効かねぇ、なぁ!!」

 ――ドゴーン!!

 怪人の右ストレートが叶海の腹に直撃した。
 吹き飛ばされ、街路樹をへし折り、商店街の一階部分を突き破り、更にその奥の建物を何個も破って叶海の身体が飛んでいく。
 最後に、公園の樹にめり込むようにぶつかり、その身体が止まる。

 ゆっくりと、叶海を受け止めた樹がへし折れた。
 あまりの衝撃。体内にまで及んだそれで、叶海の息は止められていた。

「……ぐはっ!!げほっ、げほっ」

 大きく咳き込み、なんとか呼吸を再開する。
 それほど痛みは無く、すぐに立ち上がることはできたが、自分の身体が空けてきた建物の穴を見やり、叶海の中に恐怖が芽生える。

《一部の衝撃緩和に失敗。スーツ破損率58%。修復まで約600秒》

「おっ、やりすぎちまったと思ったら、まだ生きてるじゃねぇか」

 逃げ出そうと数歩動いた所で、またも空から降ってきて、叶海の眼前に着地する怪人。

「俺らの知ってるやつらとは別モンの硬さだな。お前、なにもんだ?」

 顔を歪ませ、威嚇するように問いかける怪人に、叶海が答える。

「友達を助けに来た、ただの一般人よ…!あんたこそ、一体何者なの!!」

 まともに会話が成り立つレベルの知能、これまで確認された怪人の中でも最上位の個体だろうと推測される。

「あぁん?俺サマか?俺サマはなぁ、怪人王直属の衛士が一人、怪人四天王の一角、イービルガイ様よォ!」
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