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2章レルス王国編

再会①

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「基本的に俺が右側の魔物を相手する。エマは左側の魔物を倒してくれ。念をおすが出し惜しみするなよ。魔法弾もルアと合流出来たら作れる。」

「わかったわ。」

簡単な作戦会議だけしたら次の層に足を踏み入れる。その瞬間…、

「グゥォォ!!」「ガルル!!」

壁から魔物が大量発生。唯一幸運だったことはラギルダンジョンで見たあの蜘蛛がいないことだな。アイツが相手なら正直厳しい…。攻撃手段がないに等しいからな。

隣を見ると少しエマが怖気付いているように見えた。

「ビビるなよ…エマ。お前の強さは王国の王族だというプライドと誇り…。そして強い精神メンタルだ。それに俺とエマが鍛えたんだ。今更あんな奴らが束になったところで遅れをとるはずがない。それに…何かあったら絶対に助けてやるから…。安心して戦って来い。」

「…!えぇ。そうね!怖気付いてなんかいられないわ!」

「その意気だ!」

そうして戦闘が始まった。

俺はクサナギとシロガネを抜刀して構える。

風斬りかざぎりあらし!!」

ズバズバっ!!!

2本の刀でかまいたちを連続して生み出し、それを空間操作ゾーンでベクトルを強化して魔物に向かって飛ばす!

俺は時空魔法以外の魔法を使えないからどうしても遠距離攻撃が少ない。しかも殺傷能力のある技となればゼロに等しいかった。それを補うためにこの技を生み出したのだ。

「くたばりなさい…!!」

ドンドン!!

2丁の拳銃で魔物をかなりのスピードで倒して行く。時折魔法弾を使っているようだな。

着弾した瞬間に周りの魔物に蛇のように雷が伝わる"雷蛇らいだ"、銃弾が風魔法により思わぬ方向に曲がり相手に襲いかかる"木枯らし"、火魔法により銃弾の貫通力を上昇させ何びきもの魔物を同時に貫く"焔槍"…など。

ありったけの魔法弾を使っているようだな。上手く普通の銃弾との組み合わせも出来ている。知能の低い魔物でもエマを恐れていることが分かる。

この調子なら行ける…!!と思うんだが、問題があるんだよな。

「ねぇ、タイチ!これ減ってるの!?さっきから撃っても撃っても湧いて出てくるんだけど!!?」

「減ってる……のは間違いない。ただ敵の数が多すぎるんだ。」

戦い始めてからかなりの時間が経っていると思うがまだ全体の2分の1も倒せていないだろう…。今で1人400匹ぐらいは倒せていると信じたいところだな…。

クソ。地味にめんどいことになったな…。負けることは絶対にないが数が多すぎるせいでこちらの疲弊が溜まっていく。そうなると俺はともかくエマはキツいかもしれない。集中力もいつまでも続くわけじゃないし、銃弾も無限にある訳じゃないからな。

…腕も痙攣し始めてきた。…。そもそもかまいたちを生み出すのはかなり難しく、とてつもない筋力を必要とする。それを連続して発生させるにはありえないほどの筋力が必要となる。…ステータスにより俺の筋力は大きく上昇したがそれでも連続してうみ出せばいずれ限界は来る。加えて風斬りかざぎりは未だに慣れていない。これも原因のひとつだろう。

だからといって問題がある訳じゃない。むしろ本来は近接戦闘に、特化しているのでそちらの方がやりやすい。それでも遠距離攻撃を選ぶのはエマの為だ。何かあった時にエマの近くにいれば素早く助けることが出来る。なので今も風斬りかざぎりに頼っている訳だが。

まぁ、武器をクサナギとシロガネから鎖に変えればいいだけなんだがな。アレもかなりの射程距離があるし。しかしその分魔物の接近を許してしまうのでエマの危険が高まる。ちなみにだが鎖には"煌縛鎖こうばくさ"という銘を与えた。ダンジョンで暇な時に考えていたのだ。俺的にはすごく気に入っている。

そろそろ討伐数は700を超えたぐらいだろうか?残り3割…。しかし徐々にだが討伐スピードは落ちていた。

「まずいわね…。魔法弾が尽きたわ…。」

「大丈夫だ。エマの武器はそれだけじゃないだろう?」

「分かってるわよ。少しの間頼むわね。」

「任せろ。」

俺は煌縛鎖を取り出して装備する。二本は両足に、残りは胴体に巻き付けてコントロールする。詠唱中のエマに近づかせないように立ち回る。

「空をかける雷鳴よ、我が魔力を糧に 我が身を纏え 我が身を覆え "雷装"!!」

ビリッ!ビリビリ!!バリ!

エマの髪と目が青くなり、全身から雷が発している。これはエマが自分で編み出した魔法…。エマだけのオリジナル雷魔法だ。

雷魔法で自分を覆う。するとエマの反応速度、移動速度が大幅に上がる。そしてそのスピードはおそらく俺とルアの全力スピードに匹敵するほど…。もしかしたら俺達を上回るかもしれない。

これだけでもとんでもない魔法だがこれだけではない。自身に雷の鎧を纏うことで触れると感電してしまう…。つまり無敵の矛にも盾にもなるのだ。

ただし纏っている間は常に魔力を消費し続けることになる。そしてその魔力はかなり大きい。それだけでなく使用したあとはしばらく動けなくなり、使用してる間、本人にもダメージを与えてしまうのがデメリットだな。

エマは雷魔法に関してはかなりの才能があった。雷魔法に関しては無詠唱を覚えたらルアに匹敵するほどに。

「フッ!ハァァ!!」

とんでもないスピードで魔物の群れに突っ込み、銃を乱射。近づく魔物もヤナム流武術で相手を吹っ飛ばし、感電死させる。圧倒的スピードで相手の混乱を招き、その隙を逃さず引き金を引きまくる!まさに無敵状態。

だがそれも長くは続かない。そのあとは俺の助けが必要になるだろう。

さて、ここが踏ん張りどころだな。

そう思っていたら、

「ヒィギャァァァァァ!!!!!」

どこからかルアの声が聞こえてきた…。ただなんだろうか…?そこはかとなく嫌な予感がする。そもそも声の類がおかしいのだ。まるで何かから逃げているような…。

ドンッ!!

そんな大きな音をたてて俺たちが来た通路から天使族特有の翼をはためかせてルアが飛んできた。

「「ルア!!」」

「タイチ!?エマちゃん!!良かった…無事だったんだ…。あ、タイチ!後ろから…!!」

「キシャァァァァァ!!!」

ルアが通ってきた道から嫌な声が聞こえた…。一瞬で地獄のトラウマが蘇る。

「ルア…。まさかとは思うが…」

「逃げてきちゃった…♡」

最悪だ……。助けて欲しいのに助けてもらいに来たのか…。しかも俺でも倒せない魔物を引っ張って来た…。普通にピンチじゃねぇか…。

どうする…どうする…!?何かいい方法は無いのか…!!?このままじゃまた逃亡することになるがここは逃げ場がない…!!

しかしエマはなんのことか分からない様子で首を傾げている。

ん?なんのことか分からない…?そうだ…!!

「エマーー!!"シリウス"でさっきルアが通ってきた通路に向かって1番強力な魔法弾を撃ってくれーー!!」

「えぇ??でもその間は無防備になるわよ…??」

「任せろ!俺が守る!!」

俺の作戦とは何も知らないエマならなんのことか分からないので恐怖もなしに倒せるはず…。ということでエマに倒してもらおうという作戦…。そもそもエマは遠距離攻撃が得意なのだ!引き金を引くだけなら蜘蛛の姿を見ても問題ないだろう!!

エマはアイテムボックスから対巨大魔物用狙撃レールガン、通称"シリウス"を取り出す。大きさは2メートル程とかなり大きいが貫通力、威力は拳銃とは比べ物にならないほど強力。俺でも銃弾を完璧に止める自信はない。避ける自信ならあるけどな。しかし"シリウス"の1番の特徴はそこではない。

前にエマに話したが魔法陣は大きければ大きいほどクラスが高い。しかし拳銃サイズの銃弾の大きさでは中級魔法レベルの魔法陣を描くのが弾丸のサイズ的に限界なのだ。

では上級…、それ以上のクラスの魔法陣を銃弾に描くにはどうしたらいいか?簡単だ。銃弾を大きくすればいい。

そこで生まれたのが"シリウス"だ。銃弾は拳銃の3倍以上のサイズを誇る。

そして雷装により電気を纏った状態のエマのみレールガンである"シリウス"を扱うことが出来る。それ以外のやつが使うと雷魔法を使えても感電死する可能性がある。

「キシャァァァ!!!」

魔力感知と空間感知を合わせて怪物の位置を正確に把握する…。そして…、

「今だ!エマ!放て!!!」

地獄の業火インフェルノ弾!!」

キィィィ…!!ドン!!!というレールガン特有の音を立てて俺が指示した虚空へ真っ直ぐに銃弾が飛んでいく。そして…

「キシャァァァ!!??!」

化け物の断末魔と地獄の業火の遠吠えが聞こえた。

「あ…、雷装の時間切れ…。ごめんなさい…。もう立つことも出来ないわ。」

「いいや、良くやった!!本当に助かったぞ!!」

「うんうん!!エマちゃんが居なかった本当に危なかった!!」

いやマジでな!絶望のデスレースが始まっちまうところだったぜ…。あの姿を見るだけで捕食シーンがよみがえって吐きそうになる。俺もまだまだだな……。

「「あとは…俺(私)達に任せろ(て)!!」」
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