クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える

ジャック

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2章レルス王国編

魔物の祭り

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「ん~、おはよう…。タイチぃ…。」

「おー、おはよう。よく眠れたようで何よりだ。」

外は朝か知らないけどな。まだエマは目を擦っている。完璧には醒めていない様子だ。

「とりあえず水で顔を洗ったらどうだ?スッキリすると思うぜ。」
 
「ん~、そうする……。」

さてと…、エマを待っている間に朝ごはんの用意でもするか…。昨日は肉が中心だったから今日は野菜を多くするか…。

ゆっくりと朝の献立でも考えていたら、テントで顔を洗っていたエマがフラフラとした歩きで戻ってきた。顔を見ると目は覚めているようだ。しかしなんというか…少し表情が怖いというか…威圧感を感じてしまう。

「どうした?ちょうど朝ごはんができたぞ。」

「………わ…れ…な……い」

「なんて言ったんだ?」

ガシッと肩を捕まれるがエマがなんと言ったか聞き取れない。

「……昨日のこと…忘れなさい…!!」

顔を真っ赤にして俺に昨日のことを忘れるようお願いしてきた。

昨日…。昨日の夜のことか…。

「無理だ。バッチリと覚えるからな。何だっけ?ルアが羨ましい……、だったよな?なぁ?」

「うわぁぁ~!!やめて!聞きたくない~!!」

顔をさらに真っ赤にして自分の顔を隠すように手で覆い、そのままテントに戻って行った。どうやら効果抜群のようだ。

「うっ、うっ…。どうして私はあんなこと言っちゃったの…?」

「あぁ、それなんだがな…、実は原因が分かったんだ。ほれ。」

俺はエマのテントの前に昨日の夜、エマがご飯と一緒に飲んでいたが入っていた缶を置く。

くんくんと、エマはそれを手に取って匂う。

「うっ…!なにこれ…。臭いわね…。水じゃない…。」

「あぁ、その通りだ。それは水じゃなくてお酒なんだよ。つまりアルコールが入ってるんだ。」

「なんてものを飲ませてるのよ!!だいたいなんでそんなものが私のアイテムボックスの中にあるのよ!!!」

エマは缶を地面に投げ捨てて怒り心頭という感じで俺に迫ってくる。

「待て。これには訳があるんだ。」

「どんな訳か知らないけど許されないわよ!私は王族よ!本来なら犯罪なんだからね!!」

とうとうエマは銃まで持ち出してきた。

……商売をする上で俺の世界の商品を作るのがいいと考えた俺は簡単に作れそうなものから作ってみる事にした。そのひとつがお酒である。お酒は発酵することが出来たら作ることが出来る。しかし発酵にはかなりの時間がかかる。だが俺には時間を操ることが出来る。

そこで俺は手始めにぶどうに時間魔法をかけて発酵してみることにした。結果は成功…。1日で完璧なぶどう酒ができた。この調子でどんどん色々なものを発酵して作っていたら沢山できてしまった。その結果間違えてエマのところに俺が発酵させたお酒が入っていたというわけだ。

そしてエマはそれを飲んでしまい、酔ってつい本音や弱音が出たのではないかと思われる。

これを説明したいんだが、今のエマは聞く耳を持ってくれそうにない。

ちなみにどうして気づけたのかと言うとエマが寝た後に俺もゆっくり過ごしていたら俺のアイテムボックスにも同じくお酒が入っていたのだ。昨日の夜にエマと一緒に飲んだやつも多分酒だったんだろうな。だから俺も変なことを言ってしまったのだ。意外と酒って飲んだだけで分からないんだな。多分舌が壊れているんだろう。

「本当は私を酔わすつもりだったんでしょ!!この変態!」

「そんなことして俺にメリットがあるかよ。」

むしろデメリットしか無いだろ。エマが酔いつぶれたら俺が困る。

まぁ、エマが元気になってよかったということにしよう。 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふんっ!」

「俺が悪かった。だから機嫌をなおしたらどうだ?」

今は次の階層に降りる階段の途中である。

あの後も少しからかったのが悪かったのか、朝食を食べてなお機嫌が悪かった。ルアならご飯で一発で解決するところなんだけどなぁ。

「エマの反応が可愛かったからついからかったんだよ。悪かったって。」

「ふ、ふん!そんなこと言ったって許さないんだからね!!」

う~ん。ダメかぁ。次はどうしよう……っ!?!

「エマ、ストップだ…。」

「えっ?」

俺とエマは次の層に降りる直前で動きを止める。


「……これはちょっとピンチか…?」

「ねぇ、タイチ…?何がピンチなのよ?」

「魔力感知を使ってみろ。すぐにわかるぞ。」

「……っ!!?これって……。」

次の層は一見するといつもと同じように迷路みたいに見える。しかし魔力感知で分かったが降りた先の広場みたいなところの周りの壁には大量の魔物がいる。つまりはトラップだ。

ラギルダンジョンでも似たようなことがあったが今回は規模が違う。前は100匹程度だったと思うが今回は1000匹ぐらい入ると思う。それに今はルアがいない。なので大規模な魔法はないのだ。

強い相手との1VS1なら経験したことはあるが多対一はまだ経験したことが無い。雑魚が集まったところで負けるなんて思わないけど万が一があるからなぁ。

魔物の祭りモンスターパレードじゃない…。」

魔物の祭りモンスターパレード…。簡単に説明すると魔物が沢山溢れる状態のことだ。何十年に1回ぐらいの確率で起こるらしい。しかも起こる原因は毎回違う。

「今回は私一人じゃ無理よ……?」

「それぐらい分かってる。俺も殺る。」

ボス戦を前にあんまり魔力を使うような戦闘はしたくなかったんだが…。こうなっては仕方ない。それにしてもラギルダンジョンの時も思ったが、ダンジョンを作った人は結構いやらしいな…。人が嫌がることを平然とやってきやがる。

「準備しろよ。多分下に降りた瞬間飛び出して来るだろうからな。」

「分かったわ……。」

……それにしてもルアは本当にどこにいるんだ?下に降りても誰かが戦った形跡が無かった。つまりルアはここまで来ていないということだ。ということはルアの現在地は俺より上の層にいると予想してたんだが。それにしては合流までが少し遅い気がする。戦闘に関してはともかくトラップには気づかずにハマってそうな気がするな…。

「準備できたわ!」

エマは両手に銃を構えている。腰にはアイテムボックスの袋がかけられている。そこに銃弾や他の銃が入っていたりするのだ。

「そうか。予め言っておくが魔法弾も遠慮なく使えよ。もったいないからと言って使わずに負けたら元も子もないからな。」

「もちろんよ!それぐらいは分かってるわ!危なくなったらタイチが助けてちょうだいね!」

「……場合による…。まぁ可能な限り自分でなんとかしてくれ。」

「何よそれ!ルアなら助けるでしょ!」

「ルアなら自分で何とかすると思うぞ?」

「私はか弱い女の子なのよ!」

「……か弱い……ねぇ。どこの世界にエマを見てか弱いというやつがいるのか…」

今のエマのステータスは人間離れ級になっている。そこら辺の人間はもちろん最上位の冒険者でもステータスではエマが勝るだろう。経験の差はまだまだ低いかもしれないが。

「私はか弱いわよ!」

「まぁ、安心しろ。本当にヤバいと思ったらすぐに呼べ。絶対に助けてやる。俺がヤバいと判断したら呼ばなくても助けてやるから。」

「……何よそれ……。反則だわ……。」

?声が小さすぎて何を言っているのかよく分からなかった。

「ほら、行くぞ。」

「分かったわ…。その…危なくなったら助けてね…?」

…これがデレなのか…?…不覚にも可愛いと思ってしまった。

「任せろ。それで昨日のことはチャラだ。」

そして魔物の祭りモンスターパレードが始まる…。
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