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2章
過去④
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「次はあなたの話を聞かせてくれるかしら?」
「…わかりました」
そしてゼノンはリズ先生、アズレ先生に拾われ、ミオ、アルスとともに過ごしたこと。村ではイノシシを倒したり、畑仕事をしていたこと。そして…3人が加護を貰った日のことを話した。
「その日の夜、なぜかは知りませんがいきなり成長魔法成長止めぬ者へというものが発現しました」
「なんの前触れもなく?」
「はい。なんの前触れもなく」
ゼノンは嘘をついた。実際にはあの悪夢を見たことがきっかけで前触れだったのは間違いなかったが、それを話すことだけは何がなんでも避けなければいけないことだった。
しかし、ファナはゼノンの返答を聞いて顎に手を付き、何かを考える素振りを見せたが、すぐに戻った。
「続けて」
「はい。『何になりたい?』と言われたから俺は『魔王になりたい』って答えました。そしたら血液魔法を授かっていました。これでおれのしってる全部です」
「……なるほど。ありがとう」
そうしてしばらくの間、ファナは何かをずっと考えていた。ゼノンはただその様子を黙って見ているだけだった。
「私からも質問させて」
「もちろんです」
「私は…あなたを疑ってる。ギルザ本人じゃないかってね」
「え?どういうことですか?」
「……血液魔法はお父様が持っていたものよ。今まで血液魔法なんて言うものは聞いたことがなかった。でも、突然血液魔法の所持者が現れた。私は「あなたがお父様に関わりがある」ものと思っていたわ。だから、あなたを拘束しようとしたのだけれど…」
(やはり師匠から仕掛けたあの決闘は血液魔法が原因だったのか。まぁ、拘束っていうレベルの攻撃じゃなかったと思ったうんだけどな。確実に死の1歩手前だったんだけど)
「……あなたが血液魔法を使ったことがあるなら分かるでしょ?…それは人の身には余る力よ。その特性故にあなたは私と同じ吸血鬼だと思った。なら、あなたはギルザ本人の可能性が高い。そもそも生きてる吸血鬼なんて聞いたことないもの」
「………なるほど~。そもそも姿を変える魔法なんてあるんですか?それにその話だと俺…っていうかギルザは魔王の魔法を奪ったってことになりますけど?」
「魔法の可能性は無限大よ?姿を変えることなんて私にだってできるわ。なら、アイツが出来てもおかしくないでしょ?」
ファナの考えを聞いて今度はゼノンが考える番だった。その理論で行けばゼノンはどうやってもギルザじゃないと証明する方法がなかった。しかし、証明できない限りゼノンをファナは弟子と認めてくれない上に殺しにかかるかもしれない。
「……あ、加護。俺は無加護ですけど、ギルザも無加護だったんですか?」
「いえ、加護はあったわ」
「じゃあ……これが証拠に………」
ゼノンが自分の右手にはめている薄い無加護ということを隠すためのグローブを取ろうとするが……
「でも、加護の位置なんて変えられるもの」
「……え?」
ファナから教えられた事実にゼノンはかなり驚いた。
「知らないの?加護がある右手の甲が無くなったとするわ。そうなったら加護は別の場所に発現するの。私たち吸血鬼は再生能力が人間とは違うわ。心臓さえ無事ならどんな欠損も治すことが出来る。その際に加護の紋が移動するなんて普通なのよ」
(……普通……なのか?)
吸血鬼が感覚でしゃべられているため、人間のゼノンにはいまいち分からない。ゼノンは腕が欠損したらもう元には戻らないため、普通とは言いがたかった。
(無加護ってことを隠すためのいい手段になるかと思ったけど人間である俺には無理だな)
無加護であることを隠すために右腕を切り落とし、戦力を半減させるのであれば本末転倒もいい所である。
「だから…あなたのものがほしいの…」
潤んだ目でゼノンにそう頼むファナ。少し申し訳なさそうにする姿はとても魅惑的であり、この世のありとあらゆるものを魅了してしまいそうである。
「ふぁ!?!?」
「?何を驚いてるのかしら?」
「い、いやだって…!それってつまり…!」
「当然でしょ?私は吸血鬼だもの」
「関係あります!?それ!?」
「あるわよ。だってあなたの血が欲しいんだもの」
その言葉で一瞬放心状態になってしまう。そしてすぐに現実を理解する。今までの会話を思い返し、確認する。そして出た結論は──
「はぁぁ~」
大きなため息をひとつ付き、机に体を預ける。
(魔性だ…。この吸血鬼。魔性の女…じゃなくて魔性の女吸血鬼だ)
ゼノンの中に残るのは安堵と少しの落胆であった。別にそういうものを望んでいた訳では無いし、今のゼノンならそういうことは精神的そして血液の量が足りないということでできないと分かっているのだが、少し期待してしまったのはやはり男の性であった。
「何してるのか知らないけれど、話を進めていいかしら?」
「…あぁ、どうぞ……」
(天然…天然なのか?怖いわぁ)
少しばかりの恐怖を抱きながらも何とか復活を果たすゼノン。
「血液を吸い取ることが何と関係するんですか?」
「そもそも吸血鬼はその名の通り血を吸って生きてるの。別に血を吸わなくても死なないのだけれどね。同族の血なら飲んだだけで分かるわ。それにどんな魔法でも血液を変えるなんて無理でしょうから」
「…はぁ。分かりました。とにかく俺の血を吸えばいいんですね?」
「えぇ。あなたが本当に人間で、そして無加護であるのか確認させてもらうわ」
ファナが立ち上がり、ゆっくりとゼノンに迫ってくる。ゼノンもそれを拒んだりはしなかった。これで自分の無実が証明出来るなら安いものだと思っているからだ。
ゆっくりとファナはゼノンの膝の上に跨り、対面する。
ゼノンの景色はファナ1色に染まり、体が接触する。
(柔らかッ!!やばい!全然俺と違う!)
思わずファナから顔を背けるゼノン。
「男の血は嫌いなのよね……」
「我慢してください。それに俺は血液魔法を使ってから血液の管理には気をつけてますから結構綺麗なはずですよ?」
「そう。それじゃあ、頂くわ」
そしてファナはゆっくりとゼノンの首筋に顔を埋めて、歯を立てた。
「ヴッ!」
チクッとする一瞬の痛みに思わず驚き、声を上げてしまうが不思議とそのあとは痛みを感じなかった。
「ッ!!」
一方のファナも一瞬驚くがゼノンの血を吸い続ける。
そしてどれぐらい時が進んだだろうか?しばらくしてゼノンがファナの頭をポンポンと叩いた。純粋にこれ以上の体勢は辛かったのだ。…色々と……。加えてゼノン自身にも変化を感じていた。めまいを感じ、若干一時的な貧血症に陥っていたのだ。
ファナもゼノンの合図を受け取ったのかゼノンの首筋からかおを離す。
その顔は先程と違い、少し頬が赤らんでいて高悦とした魅惑的な表情であった。加えて若干肌も潤っているようにも感じた。
「…で、わかりました?俺が人間だって…」
「……………分からなかったわ。だから……もうちょっとだけ吸わせて貰えないかしら?そうすればわかると思うの」
目をうるうるとさせてゼノンにそう頼む姿は魔女のようにも感じるし、餌を目の前にする子犬のようにも感じてしまう。なぜだが、放っておくことの出来ないオーラを感じる。
(この人は魔性の女…魔性の女!耐えろ!ゼノン!)
しかし、さすがのゼノンにも自身の血液量には限界というものがある。
「……俺、貧血っぽいんですけど………」
「大丈夫よ。死ぬ寸前で辞めるから…」
ファナはゼノンの許可をなしに再び食事を続けた。
「えっ!?ちょっ!!?あ、あぁぁーーー!!!!」
……数十分後……。
「美味しかったわ」
「そ、そうですか………」
そこには肌をツヤッツヤに麗せるファナと少し痩せこけ、顔を青くさせるゼノンがいた。結局あの後ファナはゼノンから離れることはなく、かなりの量の血を抜き取られた。おかげで今は指を動かすことでさえ、痺れを感じてしまう。
「で?どうでした?」
「?何が?」
ゼノンの問いに関して頭を傾けるファナ。本当に何も知らず、ただ疑問に感じているようだった。
「なにが、じゃないです。俺が人間だとわかりました?」
「…………あぁ!え、えぇ。分かったわ…。スカーレットくんあなたは間違いなく人間よ。無加護の哀れな人間だったわ」
「哀れは余計です」
ようやく自分の誤解が解けて少し安堵する。
「さて、そこで提案よ。私はあなたを弟子にしてあげるわ。ただし条件付きよ」
「条件?俺が出来ることであれば何でもします」
「言ったわね?じゃあ……その…週に…1…いえ…2回でいいわ。血を……吸わせて…くれないかしら?」
言葉が後ろになるにつれて声の大きさが小さくなっていくがゼノンの耳にははっきりと聞こえていた。
普段とは違い、顔を羞恥で赤らめ、視線も下を向いている。さっきまでとは考えられない姿である。
「…男の血は嫌いなんじゃないんですか?」
「………あなたの血は格別よ。これに比べたら女も男も関係ないわ」
「まぁ、それで教えて貰えるなら……」
「ホント!?本当ね!!約束よ!」
急に笑顔になり、騒ぎ始める。その姿はただの無邪気な少女のようだった。その姿を見てゼノンは少し笑う。
(この人もこんな顔するんだな……)
その姿はゼノンにはかなり印象的な様子だった。
(もっとなんて言うか…冷徹で完璧っぽいイメージだったけど、結構感情豊かなのかもな。だとするとなんで………)
ハッとゼノンに見られていることに気づいたファナは急に取り繕ったように冷静な姿に戻る。
「…え、と…修行は明日からよ。今日はここで存分に体を休めなさい。それじゃあ、私はもう寝るわ」
そう言ってファナは部屋を出ようとした。ゼノンもそれを特に止めることは無かった。
「スカーレットくん……最後に聞かせて。あなたは私の過去を…そして魔王を知ってどう思ったの?」
ドアをあけ、出る寸前のファナの質問にゼノンは静かな声で答えた。
「…先生の過去には…いまいち整理がついてません……。だけど……俺の……俺の考えてた魔王通りだったことは…嬉しかっです。昔からの夢の姿は正しかったと分かったから」
「そう…。それでもあなたは魔王を目指すと言うの?」
「はい。それが俺の使命だと思うから」
「ありがとう…。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
パタンとドアが締まり、部屋にはゼノン1人だけが取り残された。
「…わかりました」
そしてゼノンはリズ先生、アズレ先生に拾われ、ミオ、アルスとともに過ごしたこと。村ではイノシシを倒したり、畑仕事をしていたこと。そして…3人が加護を貰った日のことを話した。
「その日の夜、なぜかは知りませんがいきなり成長魔法成長止めぬ者へというものが発現しました」
「なんの前触れもなく?」
「はい。なんの前触れもなく」
ゼノンは嘘をついた。実際にはあの悪夢を見たことがきっかけで前触れだったのは間違いなかったが、それを話すことだけは何がなんでも避けなければいけないことだった。
しかし、ファナはゼノンの返答を聞いて顎に手を付き、何かを考える素振りを見せたが、すぐに戻った。
「続けて」
「はい。『何になりたい?』と言われたから俺は『魔王になりたい』って答えました。そしたら血液魔法を授かっていました。これでおれのしってる全部です」
「……なるほど。ありがとう」
そうしてしばらくの間、ファナは何かをずっと考えていた。ゼノンはただその様子を黙って見ているだけだった。
「私からも質問させて」
「もちろんです」
「私は…あなたを疑ってる。ギルザ本人じゃないかってね」
「え?どういうことですか?」
「……血液魔法はお父様が持っていたものよ。今まで血液魔法なんて言うものは聞いたことがなかった。でも、突然血液魔法の所持者が現れた。私は「あなたがお父様に関わりがある」ものと思っていたわ。だから、あなたを拘束しようとしたのだけれど…」
(やはり師匠から仕掛けたあの決闘は血液魔法が原因だったのか。まぁ、拘束っていうレベルの攻撃じゃなかったと思ったうんだけどな。確実に死の1歩手前だったんだけど)
「……あなたが血液魔法を使ったことがあるなら分かるでしょ?…それは人の身には余る力よ。その特性故にあなたは私と同じ吸血鬼だと思った。なら、あなたはギルザ本人の可能性が高い。そもそも生きてる吸血鬼なんて聞いたことないもの」
「………なるほど~。そもそも姿を変える魔法なんてあるんですか?それにその話だと俺…っていうかギルザは魔王の魔法を奪ったってことになりますけど?」
「魔法の可能性は無限大よ?姿を変えることなんて私にだってできるわ。なら、アイツが出来てもおかしくないでしょ?」
ファナの考えを聞いて今度はゼノンが考える番だった。その理論で行けばゼノンはどうやってもギルザじゃないと証明する方法がなかった。しかし、証明できない限りゼノンをファナは弟子と認めてくれない上に殺しにかかるかもしれない。
「……あ、加護。俺は無加護ですけど、ギルザも無加護だったんですか?」
「いえ、加護はあったわ」
「じゃあ……これが証拠に………」
ゼノンが自分の右手にはめている薄い無加護ということを隠すためのグローブを取ろうとするが……
「でも、加護の位置なんて変えられるもの」
「……え?」
ファナから教えられた事実にゼノンはかなり驚いた。
「知らないの?加護がある右手の甲が無くなったとするわ。そうなったら加護は別の場所に発現するの。私たち吸血鬼は再生能力が人間とは違うわ。心臓さえ無事ならどんな欠損も治すことが出来る。その際に加護の紋が移動するなんて普通なのよ」
(……普通……なのか?)
吸血鬼が感覚でしゃべられているため、人間のゼノンにはいまいち分からない。ゼノンは腕が欠損したらもう元には戻らないため、普通とは言いがたかった。
(無加護ってことを隠すためのいい手段になるかと思ったけど人間である俺には無理だな)
無加護であることを隠すために右腕を切り落とし、戦力を半減させるのであれば本末転倒もいい所である。
「だから…あなたのものがほしいの…」
潤んだ目でゼノンにそう頼むファナ。少し申し訳なさそうにする姿はとても魅惑的であり、この世のありとあらゆるものを魅了してしまいそうである。
「ふぁ!?!?」
「?何を驚いてるのかしら?」
「い、いやだって…!それってつまり…!」
「当然でしょ?私は吸血鬼だもの」
「関係あります!?それ!?」
「あるわよ。だってあなたの血が欲しいんだもの」
その言葉で一瞬放心状態になってしまう。そしてすぐに現実を理解する。今までの会話を思い返し、確認する。そして出た結論は──
「はぁぁ~」
大きなため息をひとつ付き、机に体を預ける。
(魔性だ…。この吸血鬼。魔性の女…じゃなくて魔性の女吸血鬼だ)
ゼノンの中に残るのは安堵と少しの落胆であった。別にそういうものを望んでいた訳では無いし、今のゼノンならそういうことは精神的そして血液の量が足りないということでできないと分かっているのだが、少し期待してしまったのはやはり男の性であった。
「何してるのか知らないけれど、話を進めていいかしら?」
「…あぁ、どうぞ……」
(天然…天然なのか?怖いわぁ)
少しばかりの恐怖を抱きながらも何とか復活を果たすゼノン。
「血液を吸い取ることが何と関係するんですか?」
「そもそも吸血鬼はその名の通り血を吸って生きてるの。別に血を吸わなくても死なないのだけれどね。同族の血なら飲んだだけで分かるわ。それにどんな魔法でも血液を変えるなんて無理でしょうから」
「…はぁ。分かりました。とにかく俺の血を吸えばいいんですね?」
「えぇ。あなたが本当に人間で、そして無加護であるのか確認させてもらうわ」
ファナが立ち上がり、ゆっくりとゼノンに迫ってくる。ゼノンもそれを拒んだりはしなかった。これで自分の無実が証明出来るなら安いものだと思っているからだ。
ゆっくりとファナはゼノンの膝の上に跨り、対面する。
ゼノンの景色はファナ1色に染まり、体が接触する。
(柔らかッ!!やばい!全然俺と違う!)
思わずファナから顔を背けるゼノン。
「男の血は嫌いなのよね……」
「我慢してください。それに俺は血液魔法を使ってから血液の管理には気をつけてますから結構綺麗なはずですよ?」
「そう。それじゃあ、頂くわ」
そしてファナはゆっくりとゼノンの首筋に顔を埋めて、歯を立てた。
「ヴッ!」
チクッとする一瞬の痛みに思わず驚き、声を上げてしまうが不思議とそのあとは痛みを感じなかった。
「ッ!!」
一方のファナも一瞬驚くがゼノンの血を吸い続ける。
そしてどれぐらい時が進んだだろうか?しばらくしてゼノンがファナの頭をポンポンと叩いた。純粋にこれ以上の体勢は辛かったのだ。…色々と……。加えてゼノン自身にも変化を感じていた。めまいを感じ、若干一時的な貧血症に陥っていたのだ。
ファナもゼノンの合図を受け取ったのかゼノンの首筋からかおを離す。
その顔は先程と違い、少し頬が赤らんでいて高悦とした魅惑的な表情であった。加えて若干肌も潤っているようにも感じた。
「…で、わかりました?俺が人間だって…」
「……………分からなかったわ。だから……もうちょっとだけ吸わせて貰えないかしら?そうすればわかると思うの」
目をうるうるとさせてゼノンにそう頼む姿は魔女のようにも感じるし、餌を目の前にする子犬のようにも感じてしまう。なぜだが、放っておくことの出来ないオーラを感じる。
(この人は魔性の女…魔性の女!耐えろ!ゼノン!)
しかし、さすがのゼノンにも自身の血液量には限界というものがある。
「……俺、貧血っぽいんですけど………」
「大丈夫よ。死ぬ寸前で辞めるから…」
ファナはゼノンの許可をなしに再び食事を続けた。
「えっ!?ちょっ!!?あ、あぁぁーーー!!!!」
……数十分後……。
「美味しかったわ」
「そ、そうですか………」
そこには肌をツヤッツヤに麗せるファナと少し痩せこけ、顔を青くさせるゼノンがいた。結局あの後ファナはゼノンから離れることはなく、かなりの量の血を抜き取られた。おかげで今は指を動かすことでさえ、痺れを感じてしまう。
「で?どうでした?」
「?何が?」
ゼノンの問いに関して頭を傾けるファナ。本当に何も知らず、ただ疑問に感じているようだった。
「なにが、じゃないです。俺が人間だとわかりました?」
「…………あぁ!え、えぇ。分かったわ…。スカーレットくんあなたは間違いなく人間よ。無加護の哀れな人間だったわ」
「哀れは余計です」
ようやく自分の誤解が解けて少し安堵する。
「さて、そこで提案よ。私はあなたを弟子にしてあげるわ。ただし条件付きよ」
「条件?俺が出来ることであれば何でもします」
「言ったわね?じゃあ……その…週に…1…いえ…2回でいいわ。血を……吸わせて…くれないかしら?」
言葉が後ろになるにつれて声の大きさが小さくなっていくがゼノンの耳にははっきりと聞こえていた。
普段とは違い、顔を羞恥で赤らめ、視線も下を向いている。さっきまでとは考えられない姿である。
「…男の血は嫌いなんじゃないんですか?」
「………あなたの血は格別よ。これに比べたら女も男も関係ないわ」
「まぁ、それで教えて貰えるなら……」
「ホント!?本当ね!!約束よ!」
急に笑顔になり、騒ぎ始める。その姿はただの無邪気な少女のようだった。その姿を見てゼノンは少し笑う。
(この人もこんな顔するんだな……)
その姿はゼノンにはかなり印象的な様子だった。
(もっとなんて言うか…冷徹で完璧っぽいイメージだったけど、結構感情豊かなのかもな。だとするとなんで………)
ハッとゼノンに見られていることに気づいたファナは急に取り繕ったように冷静な姿に戻る。
「…え、と…修行は明日からよ。今日はここで存分に体を休めなさい。それじゃあ、私はもう寝るわ」
そう言ってファナは部屋を出ようとした。ゼノンもそれを特に止めることは無かった。
「スカーレットくん……最後に聞かせて。あなたは私の過去を…そして魔王を知ってどう思ったの?」
ドアをあけ、出る寸前のファナの質問にゼノンは静かな声で答えた。
「…先生の過去には…いまいち整理がついてません……。だけど……俺の……俺の考えてた魔王通りだったことは…嬉しかっです。昔からの夢の姿は正しかったと分かったから」
「そう…。それでもあなたは魔王を目指すと言うの?」
「はい。それが俺の使命だと思うから」
「ありがとう…。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
パタンとドアが締まり、部屋にはゼノン1人だけが取り残された。
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