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1章
第12話 英雄と無加護②Sideファナ=ディアナ
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「理事長…。私は次の授業も空くので少し休憩しようと思います。よろしいですか?」
「はい!もちろんですよ!さ、みんなも教室に戻りなさい!今日見たことを生かした頑張るようにね!!」
「「「「はーい」」」」」
グラウンドに集まっていた生徒達がぞろぞろと校舎へと戻っていく。
私はそれを見てから保健室へと向かう。多分後で彼も送られることになるだろう。
それにしても不思議ね……。
彼はなぜ回復しないの?
私と同族ならミオ=ハートフィリアさんの回復なんて必要ないはずなのに。
私はチラリと彼…、名前は知らないから無加護の方を見る。無加護だと言うのにあれほどとは…。同族だからといえど感嘆せざるを得ないわね。
名前……聞いてあげれば良かったわ…。
そう思いながらチラリと右腕を見る。
右手を引きずるような感覚で歩く。
最後の一撃………。
私は状態を確認しながら無加護との最後の衝突を振り返る。
「なっ!?」
「グッ…!!」
私の死突をわざとくらった!?
彼は真っ直ぐに私との間合いを詰めた。死突を一切避けないまま。そのせいで死突本来の貫通力を出せなかった!?
まさかそれを狙って!!なんて胆力!
でも、これで決定ね……。やっぱりこいつは私と同じ……。
ふ、ならこのまま真っ二つにしてやる!!!
「捕まえたぜ」
な!?うごかせない!?
無加護は私の剣を左手でがっちりと握っていた。その手からは私の愛剣を掴んだことで血が溢れ出ている。
でもここからどう足掻いても無加護に逆転の目はない。これで終わり……
「フッ…!!」
!!?
何をされたのか分からなかった。
彼は残った右手の指で私の右手を突いた。けど外傷はない。そもそもそんな攻撃私には効かないわ。
そのままスカーレットは意識を落とした。
あの時は何をしたのか分からなかった。今も分からないけど。ひとつ確かなのは彼は私に攻撃したということ。……勇者とはいえ、アルス君からも一撃も貰わなかったのに。
証拠に…私の右手が動かない。まるでそこに右手がないみたいに。
目立った外傷はない。……って言うことは神経を攻撃した?
どこでそんなものを覚えたのかは知らないけどそんな技術が3年やそこらで身につくとは思えない。相当磨いたようね。
「失礼するわ」
ガラッとドアを開けて入ったのはレイシェルム学院の保健室。
「先生っ!」
「久しぶりね…。ニムさん。いえ、今はニム先生…かしら?」
私の元教え子で今は同僚のニム先生。昔から回復魔法が得意な女の子だったわ。
「お久しぶりです。今も変わらず若いですねー。羨ましいです」
「……ありがとう。ニム先生は最近結婚したみたいですね。おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます…。結婚式はぜひ来てくださいね!っと雑談はこの程度にして例の無加護ですか?」
「はい…」
「先程、運ばれてきましたよ。結果から言いますと命に別状はありませんでした」
「そうですか」
何となく…ではなく間違いなくそうだと思っていた。私の同族がこの程度で死ぬはずがないのだから……。
「これもハートフィリアさんのおかげですよ…。彼女の治療が遅ければ間違いなく死んでいたでしょうから……。ハァ。全くいくら無加護だからと言ってもやりすぎですよ」
「……え?」
私は驚きのあまり素っ頓狂な声をあげてしまう。こんな声何十年ぶりに出たんだろうかってぐらいに驚いた。
「え?なんですか?まさかそんなにやりすぎたつもりはなかったって言いたんですか?」
「いえ、そうじゃないわ。その前よ…。もう一度言ってくれるかしら?」
「はい?ハートフィリアさんの治療が遅かったら死んでたってことですか?あれは私でも治せませんでしたよ。やっぱり加護の力ってすごいんですねー」
ニムさんでも……治せない?確かに彼女の回復魔法は国でもトップクラスの使い手…だけど………そんな彼女でも治せないことだってある。でも……。
「ニム先生…。例の無加護のを見させて貰えないかしら?」
「別に構いませんが……。今は眠っています。くれぐれも殺そうなんて思わないでくださいね?」
「……わかってますよ」
私をなんだと思っているのでしょうか?確かに鬼かも知れませんが常に殺人衝動に駆られるような殺人鬼じゃないんですけど……。
私は再び無加護の少年を『鑑定』する。
……やっぱり『血液魔法』を持っている……。それは私の父が使っていたはずなのに………。どうしてこの少年が?
そして再び『鑑定』する。
こうすることで相手の種族まで調べることができる。
でも……そこに移る文字は私の予想を裏切るものだった。
「人…間……!?」
どういうこと!?ありえないわ!!!色々とありえない!
ただの無加護の人間がどうして血液魔法を持ってるの!?
それだけじゃない。ただの人間以下の無加護の人間が本気では無いとはいえ私と張り合えたと言うの!?ありえない……!!
ステータスを見たけどどのステータスも私より低い。確かに人間の平均よりはたかいけど……。いやそもそも、無加護が人間の平均より高い時点でおかしい。いくら…成長魔法があるとはいえ……。
どれだけレベルが高くても種族の差というものは必ずある。ステータスだって私より低いのに……。
先の戦いでは現に私の圧勝だった。でも、Eクラスの生徒が彼を庇ってから少し変わった。最後の最後……。死にかけだったはずの彼から信じられない強さを見た。
結局最後まで自分が死ぬかもしれないというのに剣を抜くことはなかった。
この人間………一体どうなってるの??
あぁ…、憎悪が消え失せて興味が湧いてくる。こんな感覚はいつぶりだろうか?
彼の名前は……ゼノン=スカーレット……。
「ニム先生…。彼が目覚めたらすぐに私に報告してください。すぐにこちらに向かいますので」
「わ、分かりました……。でも、目を覚ますのは少なくとも1週間はかかると思いますけど……」
「構いません。よろしくお願いします」
私は久しぶりの興奮と興味を持ちながらその場を離れた。…彼が目覚めたあとのことを考えながら…。
「はい!もちろんですよ!さ、みんなも教室に戻りなさい!今日見たことを生かした頑張るようにね!!」
「「「「はーい」」」」」
グラウンドに集まっていた生徒達がぞろぞろと校舎へと戻っていく。
私はそれを見てから保健室へと向かう。多分後で彼も送られることになるだろう。
それにしても不思議ね……。
彼はなぜ回復しないの?
私と同族ならミオ=ハートフィリアさんの回復なんて必要ないはずなのに。
私はチラリと彼…、名前は知らないから無加護の方を見る。無加護だと言うのにあれほどとは…。同族だからといえど感嘆せざるを得ないわね。
名前……聞いてあげれば良かったわ…。
そう思いながらチラリと右腕を見る。
右手を引きずるような感覚で歩く。
最後の一撃………。
私は状態を確認しながら無加護との最後の衝突を振り返る。
「なっ!?」
「グッ…!!」
私の死突をわざとくらった!?
彼は真っ直ぐに私との間合いを詰めた。死突を一切避けないまま。そのせいで死突本来の貫通力を出せなかった!?
まさかそれを狙って!!なんて胆力!
でも、これで決定ね……。やっぱりこいつは私と同じ……。
ふ、ならこのまま真っ二つにしてやる!!!
「捕まえたぜ」
な!?うごかせない!?
無加護は私の剣を左手でがっちりと握っていた。その手からは私の愛剣を掴んだことで血が溢れ出ている。
でもここからどう足掻いても無加護に逆転の目はない。これで終わり……
「フッ…!!」
!!?
何をされたのか分からなかった。
彼は残った右手の指で私の右手を突いた。けど外傷はない。そもそもそんな攻撃私には効かないわ。
そのままスカーレットは意識を落とした。
あの時は何をしたのか分からなかった。今も分からないけど。ひとつ確かなのは彼は私に攻撃したということ。……勇者とはいえ、アルス君からも一撃も貰わなかったのに。
証拠に…私の右手が動かない。まるでそこに右手がないみたいに。
目立った外傷はない。……って言うことは神経を攻撃した?
どこでそんなものを覚えたのかは知らないけどそんな技術が3年やそこらで身につくとは思えない。相当磨いたようね。
「失礼するわ」
ガラッとドアを開けて入ったのはレイシェルム学院の保健室。
「先生っ!」
「久しぶりね…。ニムさん。いえ、今はニム先生…かしら?」
私の元教え子で今は同僚のニム先生。昔から回復魔法が得意な女の子だったわ。
「お久しぶりです。今も変わらず若いですねー。羨ましいです」
「……ありがとう。ニム先生は最近結婚したみたいですね。おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます…。結婚式はぜひ来てくださいね!っと雑談はこの程度にして例の無加護ですか?」
「はい…」
「先程、運ばれてきましたよ。結果から言いますと命に別状はありませんでした」
「そうですか」
何となく…ではなく間違いなくそうだと思っていた。私の同族がこの程度で死ぬはずがないのだから……。
「これもハートフィリアさんのおかげですよ…。彼女の治療が遅ければ間違いなく死んでいたでしょうから……。ハァ。全くいくら無加護だからと言ってもやりすぎですよ」
「……え?」
私は驚きのあまり素っ頓狂な声をあげてしまう。こんな声何十年ぶりに出たんだろうかってぐらいに驚いた。
「え?なんですか?まさかそんなにやりすぎたつもりはなかったって言いたんですか?」
「いえ、そうじゃないわ。その前よ…。もう一度言ってくれるかしら?」
「はい?ハートフィリアさんの治療が遅かったら死んでたってことですか?あれは私でも治せませんでしたよ。やっぱり加護の力ってすごいんですねー」
ニムさんでも……治せない?確かに彼女の回復魔法は国でもトップクラスの使い手…だけど………そんな彼女でも治せないことだってある。でも……。
「ニム先生…。例の無加護のを見させて貰えないかしら?」
「別に構いませんが……。今は眠っています。くれぐれも殺そうなんて思わないでくださいね?」
「……わかってますよ」
私をなんだと思っているのでしょうか?確かに鬼かも知れませんが常に殺人衝動に駆られるような殺人鬼じゃないんですけど……。
私は再び無加護の少年を『鑑定』する。
……やっぱり『血液魔法』を持っている……。それは私の父が使っていたはずなのに………。どうしてこの少年が?
そして再び『鑑定』する。
こうすることで相手の種族まで調べることができる。
でも……そこに移る文字は私の予想を裏切るものだった。
「人…間……!?」
どういうこと!?ありえないわ!!!色々とありえない!
ただの無加護の人間がどうして血液魔法を持ってるの!?
それだけじゃない。ただの人間以下の無加護の人間が本気では無いとはいえ私と張り合えたと言うの!?ありえない……!!
ステータスを見たけどどのステータスも私より低い。確かに人間の平均よりはたかいけど……。いやそもそも、無加護が人間の平均より高い時点でおかしい。いくら…成長魔法があるとはいえ……。
どれだけレベルが高くても種族の差というものは必ずある。ステータスだって私より低いのに……。
先の戦いでは現に私の圧勝だった。でも、Eクラスの生徒が彼を庇ってから少し変わった。最後の最後……。死にかけだったはずの彼から信じられない強さを見た。
結局最後まで自分が死ぬかもしれないというのに剣を抜くことはなかった。
この人間………一体どうなってるの??
あぁ…、憎悪が消え失せて興味が湧いてくる。こんな感覚はいつぶりだろうか?
彼の名前は……ゼノン=スカーレット……。
「ニム先生…。彼が目覚めたらすぐに私に報告してください。すぐにこちらに向かいますので」
「わ、分かりました……。でも、目を覚ますのは少なくとも1週間はかかると思いますけど……」
「構いません。よろしくお願いします」
私は久しぶりの興奮と興味を持ちながらその場を離れた。…彼が目覚めたあとのことを考えながら…。
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