加護なし少年の魔王譚

ジャック

文字の大きさ
上 下
16 / 34
1章

第7話 自己紹介と学院の始まり

しおりを挟む
ゼノンはミオに教えられた通りの道を歩きながらEクラスへと向かう。

(……危なかった……。いつも夢ん中で見てたからついキリルさん達の名前も呼んでしまったけど…気をつけないとな)

夢の中で出てきたアルスの勇者パーティーのうちの2人が彼らなのだ。よく夢の中で会話していた。……基本は悪口を言われ、暴力を振るわれ続けたが。

(それにしても…ミオ……可愛くなってたな…)

先程のミオの姿がチラつく。 

夢の中で見た時とは違い、髪はショートになっている。それにより年相応の元気さや明るさがよくわかる。ゼノンの夢の中のミオは髪も長く服装もしっかりとしたものだったので、神聖的なイメージがあった。正しく聖女という感じだ。

はっ!と思い、!頭をブンブンと振り、邪念を払ってクラスの扉の前に立つ。

(違う!違う!!そんなためにここに来たんじゃないって!!)

フゥ~っ!とひとつ大きな深呼吸をしてから不安と緊張、そして微かな興奮を抱いて扉を開ける。

ガラガラ!バッシャァ!!

不意に水球がゼノンを襲った。

ゼノンは全身がびしょ濡れになり、髪から水滴がピチョリピチョリと滴り落ちる。  

「「「「ギャハハハハハ!!!」」」」

その瞬間Eクラスは大きな笑いが飛び交った。

「見たか!?今の!!」「傑作だったな!!」

全員がゼノンを指さして笑う。ゼノンはその場にただたち続けた。

「は、は~い。席についてくださーい」

すると反対のドアから先生が入ってきた。その言葉をきっかけにゼノンから離れ、全員が席に着く。

先生はびしょ濡れのゼノンを見ても何も言わなかった。いや、知りながら見てすらいなかった。

「何かこの部屋は下民で無加護臭いですね~」

それどころか煽ってくる。しかし、ゼノンはその挑発に乗ることはなく、自分の席で大人しく席に着く。

「はじめまして…。Eクラス担任のブラムです。よろしく…」

ブラムと名乗った男はここの教師にしては珍しく少し細かった。強さの覇気もあまり感じられない。魔法師団に所属していたようだが、そこでもあまりいい地位ではなかったんだろうとEクラスのみんなは考察していた。


実力に応じてSクラスからEクラスまで割り振られる学院の中で、ここにいるのは最底辺のEクラス。それにふさわしい先生だと思った。  

「あ、あはは…。それじゃあ、順番に自己紹介でもしてもらおうかな…?」

ブラムの発案により順番に自己紹介することになった。そして1番最後のゼノンの元へと回ってきた。

が…、

「さて、これで終わりかな?」

ゼノンの1つ前でブラムはそういった。しかし─

「ゼノン=スカーレットです」

ゼノンはおもむろに立ち上がり、自らの名前を名乗る。全員から睨まれることになったが、ゼノンは気にもしていなかった。

ブラムは驚きのあまり、持っていたペンを地面に落としてしまう。

「忘れていたよ……。それで君の名前は……くんだっけ?」

=スカーレットです。よろしく」

「噂通り…傲慢なんですね」

「そりゃどうも」


ゼノンは不敵な笑みを浮かべてブラムを見つめた。

こうしてゼノンの波乱に満ちた学校生活が幕を開ける。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...