加護なし少年の魔王譚

ジャック

文字の大きさ
上 下
14 / 34
1章

第5話 試験結果

しおりを挟む
「247…248…249……250!!よし!今日の筋トレ終わり!ふぅ。今日は魔力切れになるほど魔法使わなくていいから楽だな」

王都から少し離れたところに草原がある。現在ゼノンはそこにいた。理由単純にお金が無いからである。ホテルに行こうとしてその金額に驚いたのだ。金欠な魔王なのだ。

今では『今日の目標』のトレーニング回数を上がっている。例えば腕立てやスクワット、腹筋などは合計500回程度となっている。しかしゼノンは基本的に目標の回数を超えることがほとんどだ。

今日も腹筋、背筋、スクワット、腕立て伏せを250×3セットこなしている。それだけでなく体幹もランニングも剣の素振りも行った。

時間があるなら筋トレ!それがゼノンの座右の銘になりつつある。
 
そして夜になり、ゼノンは疲れにより睡魔に抗わず眠りに落ちる。

「グッ……!が、ガァァァ!!!」

夢を見れば地獄のような光景に苦しめられると知りながら。最近では自分が死ぬという夢も見た。これもキツいが1番はやはり守りたいものを守れず死んでいくことである。精神力をかなり上げたゼノンであるが、やはりこれはきつい。

金がなくて王都に泊まらなかったのも事情のひとつだが、夢のことも含まれる。

「はぁ…はぁ…!」

そして太陽が目覚め始めるのと同時にゼノンも目を覚ます。

すぐにゼノンは皮袋からあるノートを取り出す。そこには今までゼノンが見たあらゆる未来が書かれていた。

思い出すことはかなりキツイが貴重な情報には変わりない。それを忘れないようにメモしていた。

メモして分かったが見ているのは未来の色々な分岐点なのだ。

例えばミオが死ぬ未来ひとつでも色々なものがある。魔王に殺される…、魔族に殺される…、味方に裏切れられる…など。もちろんこの中には天寿を全うして死ぬというものもある……はずと信じている。少なくともゼノンは今まで見たことは無かった。

それはそうとしてゼノンは今強大なるピンチの状況にあった。それは……

「やばい……。金がねぇ……」

金欠である。

一応ソツ村のみんなから分けてもらったがそもそも向こうでは金を使う機会が少ないため、あまり持っていないのだ。

王都に来てから既に1週間が経つ。今日は試験の結果発表の日なのだが、ゼノンからしてみればもはやそれどころではない。

先日ゼノンにある勧誘が届いた。王都ホームレス協会というものだ。通称ホム協。

食べ物乞いや、ゴミ荒らしなどを行い食糧を確保しみんなで分け合うという人間のプライドを捨てながらも優しさはあるという善心的な組織である。

(~~!!楽しみだなぁ!!こういう感じは初めてだな!)

それはそうとゼノンは今興奮と緊張の渦の中にいた。ドキドキしながら結果を予測する。その顔はどこにでもいる少年の顔だった。

無意識のうちに早歩きへと変わり、学院を目指す。

学院に着くと周りからは嫌な目で見られるが、ゼノンは全く気にしない。

結果が書かれている前にはたくさんの人がいるがゼノンの視力の前ではほとんど意味がなかった。

「362……362……362…!あった!!362!!!!」

362番、そうはっきりと書かれてあった。その隣には(E)とも書いてある。これがなんのことかゼノンには分からなかった。

「~~!!よし!!よっっし!!!」

(長かった…。8年…8年努力したことは無駄じゃなかった…!!この程度で喜んでられないけど……。でも、ここからだ!ここから俺の物語が始まるんだ!!絶対に守ってみせる!)

その場で興奮してしまうゼノン。それはゼノンの8年の努力が報われた瞬間だった。目標は魔王になり、みんなを守ること。そのために努力してきたことが目に見えて現れたことが嬉しかったのだ。

「無加護でも……、入学出来た!!」

少し本当に少しだが、ゼノンの目には涙を浮かんだ。

「おぉ!ハルク、すごいじゃないか!!」「やったわね!!」
「ありがとう!父さん、母さん!」

ゼノンの近くではハルクがいた。それを確認したゼノンは合格者が書かれている番号を再確認する。362番の上には360番の数字があった。

(ハルクも受かったか…。まぁ何となくそうかなって思ってたけど…。話しかけたら悪いし今日は帰るか…)

そしてここからゼノンの過酷なレイシェレム学院での日々が幕を開ける。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...