『私』の願いとその代償。

ブー横丁

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0回目〈10〉side Y

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 入学式は、クラスごとにあいうえお順に横に並んで出席する。私の前は柚月なので並んで座った。

 新入生代表の男の子が壇上に上がる。

「あ、あいつうちと同中(おなちゅう)だ。いい奴だよ。後で結にも紹介するね。」
 柚月が小声で私に囁いてきたので私も
「ありがとう。」と言っておいた。

「桜の花が鮮やか舞う本日、私達はこの『みらいなか高校』に入学致します。本日は、新入生の為にこのような式を挙げて頂き誠にありがとうございます!」

黒髪で短髪の聡明そうな男子生徒だ。実際新入生代表に選ばれたんだから、入試の成績が一番だったってことだよね。カリスマ性もあるし、顔もなかなかカッコいいのでモテそうだなぁ。

 もし、柚月に紹介してもらって仲良くなれたら勉強のコツを教えてもらおうっと。
 そんなことを考えているうちに、いつの間にか結びの言葉になっていた。

「私はこの学校で日々精進することを誓います。ご清聴、ありがとうございました。新入生代表、一年五組 一条 光(いちじょう ひかる)。」
なんだか、平安時代に栄華を極めていそうな名前である。

 五組なら村永君と同じクラスだ!あとでもしかしたら会えるかな。

◇◇◇
 入学式が終わり、ゾロゾロと生徒は各教室に帰った。教科書が配られて、担任の先生から簡単な明日からのカリキュラムなどの説明のあと解散した。
 ちなみに担任の先生は古文担当の30代くらいの綺麗な女性だった。若い先生だと話しやすくて嬉しいな。
 
「結、五組に遊びに行こっ。うち、一条のこと紹介するわ。噛んでたからいじってやろーっと。ひひひ。」
「ありがと、仲良かったんだね。」
「うん、割と。同じ部活だった。」
「そうなんだ、何部だったの?」
「剣道部ー。」
何それ、カッコいい!
「柚月剣道出来るなんてスゴイ!私、なんとなく柚月のリュックがサウスフェイスだったから、アウトドア系の部活だったのかなって思ってた。」
すると柚月が照れ臭そうに笑った。
「アウトドアも好きなんだよね。結構家族でグランピングとかキャンプ行くよー。」
「グランピング!行った事ない。いーなー。今度行った時写真撮ってきて!」
「いいよー。」
そんな事を話しているうちに五組に着いた。

 教室の入り口で手を振りながら柚月が叫ぶ。

「おーい、一条!お疲れー。」
五組の残っている人達が一斉にこっちを見る。うわ、ちょっと恥ずかしい。
 あ、晃人君がいる!小さく手を振ったら笑ってくれた。

「おお、槇村!生きていたか!」
柚月の呼びかけに、一条君が奥の方から出てきてくれた。
「当たり前じゃーん。九州から無事帰還したよ。」
「おおお!…ん?その子は誰だ?」
一条君が目をカッと開いた。おおお、、目力が。一条君の眼力がすごい、、。

「さっき友達になった結だよー。」
「こんにちは。三組の松川 結(まつかわ ゆい)です。さっき、柚月と友達になりました。」
慌てて挨拶する。

「おおお、よ、宜しくな。」
ちょっと照れてる?意外にシャイなのかな。。
「へへへ。可愛いでしょー。うちが先にナンパしたんだからね!」
2人がじゃれあってるのを微笑ましく見ていたら、

「結っ!」
と突然晃人君に呼ばれた。
 え、よ、呼び捨て?あ、ちゃん付けが恥ずかしかったのかな?高校生になったし。
「こんにちは、結の幼馴染の村永 晃人(むらなが あきと)です。」
幼馴染、、?まぁ、小学校一緒だから幼馴染って言えばそうなのかな?
 何故か、柚月がニヤニヤしている。

「こんにちはぁ~。うちは三組の槇村 柚月ですっ。宜しくね。」
「おお、君、松川さんと友達だったのか。宜しくな。村永。」
突然話しかけられてビックリしたのか一条君が少ししどろもどろになっている。

「すんません、俺達今日2人でちょっと約束してるので。また話しましょ。」
そう言って手を掴まれた。
 や、約束?確かに会えたらいいなーとは思っていたけれど、してないよね?

「おお、いってらっしゃ~い。またねん、2人とも。」
そう言って柚月が面白そうな顔をして送り出してくれた。

 まぁ、いっか。会いたかったし。
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