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0回目〈7〉side Y
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引越し先の『ときのうみ町』はすごく素敵な町だった。小学校6年生から中学3年生までの四年間、私はここで過ごした。
マンションから海までは徒歩5分だったし、夕暮れになると窓から海に沈む夕陽が見えた。
町の人達もとても優しかった。
引っ越してきて始めの1週間を過ごした宿、『ときのうみ荘』に、同い年の女の子がいた。旅館のオーナーの孫で、『水島 佳穂(みずしま かほ)』ちゃんという子だった。
健康的に日焼けして、手足が長いカッコイイ女の子だ。小さい頃からサーフィンをしているらしい。佳穂ちゃんは学校や町のこと、先生のこと、皆いつもどんな遊びをしているかなど丁寧に教えてくれた。
そして、2人で海に行ってテナガエビを釣ったりした。浅瀬の湾でこの時期になると釣れるらしい。
釣りを教えてくれたのは佳穂ちゃんのお父さん、『ときのうみ荘』の専務だった。
釣ってきた海老は旅館で唐揚げにしてくれた。殻までサクサクでとても美味しかった。パパはビールとの相性が最高だと嬉しそうに食べていた。
一週間ですごく佳穂ちゃんと仲良くなったので、マンションに引っ越したくないくらいだった。
でも、これからは学校も一緒だし沢山遊べるねって笑い合った。
『みらいなか市』では女子に無視されてた私がすぐに女の子の親友が出来た。
パパはママに出産前に心配かけないように私がクラスで虐めにあっていたことは言わなかったようだ。
だけど、佳穂ちゃんと元気に遊んでいる私を見て時々、『よかったなぁ。』と目を潤ませていた。
心配してたんだろうなぁ。
佳穂ちゃんのおかげで、新しいクラスには直ぐに馴染む事ができた。毎日楽しく学校からに通っている。
『ときのうみ小学校』って、給食に沢山シーフードが出るんだよね。流石にお刺身は出ないけど、シーフードカレー、ヒラメのムニエル、ブイヤベース、シラス丼とか。密かに給食も楽しみである。
◇◇◇
2011年8月4日土曜日。
夏休みには春ちゃんと晃人君が遊びに来た。晃人君は前日までサッカー少年団の練習で忙しかったようだ。春ちゃんも塾の夏期講習が終わってすぐに来てくれたとのことだった。
「結ちゃーん!久しぶりっ!元気だった?!」
迎えに行った駅で春ちゃんが飛びついてくる。
相変わらず色白で、水色のワンピースから出ている手足が雪のように白い。
「春ちゃん!!来てくれてありがとう!」
「えへへ。来るに決まってるじゃん。おーい、晃人!何してんのー。早く来なよー!!」
ちょっと離れたところから晃人君がこちらに向かってきているのが見える。春ちゃんの荷物も持ってあげているみたいで少し重そうだ。
前まで同じくらいの目線だったのに、いつの間にか私より背が高くなっていた。
どうしよう。かっこいい。
「…結ちゃん、久しぶり。」
「久しぶり。」
「元気だった?」
「うん。晃人君は?」
「俺も元気だったよ。」
あれ?そういえば。
そういえば私が衝動的に晃人君にキスしてから初めて会うんだった!
どうしよう。勢いでしちゃったけど晃人君がもし本当は嫌だったとしたらもしかして、私がしたことってセクハラってやつなのでは。
思い出して赤くなったり青くなったりしている私を尻目に2人は歩き出した。
「海、めっちゃ綺麗だねー!私、泳ぎたい!水着も持って来た!結ちゃん、お昼ご飯食べたら皆で泳ごうよ!」
「いいね。そうしよっか。パパが近くのコンビニで待っててくれてるから、みんなでご飯行こう。」
ちなみにママは翔と留守番している。
海の食堂で私はあんかけ焼きそば、春ちゃんとパパは日替わりのお魚定食、晃人君は醤油ラーメンを食べた。
お昼ご飯のあとは海で小さなカニやテナガエビを捕まえたり、足跡を付けたりして遊んだ。
夕方になると、日の入りが海に映るのを3人で並んで見ていた。ちなみにパパは少し離れた所でアウトドア用の椅子に座りながらスマホを見ている。
「綺麗だねぇ。」
春ちゃんがほうっとした顔で呟く。
「うん。本当。2人にずっと見せてあげたかったんだ。今日、一緒に見れて嬉しい。」
佳穂ちゃんから一番綺麗に見える場所、教えてもらったもんね。
「もうー!可愛いな、結ちゃんは。晃人もそう思うでしょ?」
「え?!俺に振るの?!」
慌てる晃人君と私を尻目に春ちゃんはお澄まし顔だ。
「うるさい。可愛いと思うよね?」
うっと詰まったような顔をしながら、蚊の鳴くような声で、
「か、可愛いです。」
と晃人君に言われた。
…何これ、めちゃくちゃ照れるんですけど。
1日目はみんなでこの後うちのマンションで焼肉して、3人で和室に布団を敷いて寝た。
何故か晃人君が寝言で「うっ。ま、又吉(またきち)。」
と唸っていた。又吉?
2日目は皆で隣町の温泉に行って、お昼ご飯にみんなでピザを食べて駅まで2人を送って行った。
こうして、2人が滞在した2日間はあっという間に過ぎていった。
マンションから海までは徒歩5分だったし、夕暮れになると窓から海に沈む夕陽が見えた。
町の人達もとても優しかった。
引っ越してきて始めの1週間を過ごした宿、『ときのうみ荘』に、同い年の女の子がいた。旅館のオーナーの孫で、『水島 佳穂(みずしま かほ)』ちゃんという子だった。
健康的に日焼けして、手足が長いカッコイイ女の子だ。小さい頃からサーフィンをしているらしい。佳穂ちゃんは学校や町のこと、先生のこと、皆いつもどんな遊びをしているかなど丁寧に教えてくれた。
そして、2人で海に行ってテナガエビを釣ったりした。浅瀬の湾でこの時期になると釣れるらしい。
釣りを教えてくれたのは佳穂ちゃんのお父さん、『ときのうみ荘』の専務だった。
釣ってきた海老は旅館で唐揚げにしてくれた。殻までサクサクでとても美味しかった。パパはビールとの相性が最高だと嬉しそうに食べていた。
一週間ですごく佳穂ちゃんと仲良くなったので、マンションに引っ越したくないくらいだった。
でも、これからは学校も一緒だし沢山遊べるねって笑い合った。
『みらいなか市』では女子に無視されてた私がすぐに女の子の親友が出来た。
パパはママに出産前に心配かけないように私がクラスで虐めにあっていたことは言わなかったようだ。
だけど、佳穂ちゃんと元気に遊んでいる私を見て時々、『よかったなぁ。』と目を潤ませていた。
心配してたんだろうなぁ。
佳穂ちゃんのおかげで、新しいクラスには直ぐに馴染む事ができた。毎日楽しく学校からに通っている。
『ときのうみ小学校』って、給食に沢山シーフードが出るんだよね。流石にお刺身は出ないけど、シーフードカレー、ヒラメのムニエル、ブイヤベース、シラス丼とか。密かに給食も楽しみである。
◇◇◇
2011年8月4日土曜日。
夏休みには春ちゃんと晃人君が遊びに来た。晃人君は前日までサッカー少年団の練習で忙しかったようだ。春ちゃんも塾の夏期講習が終わってすぐに来てくれたとのことだった。
「結ちゃーん!久しぶりっ!元気だった?!」
迎えに行った駅で春ちゃんが飛びついてくる。
相変わらず色白で、水色のワンピースから出ている手足が雪のように白い。
「春ちゃん!!来てくれてありがとう!」
「えへへ。来るに決まってるじゃん。おーい、晃人!何してんのー。早く来なよー!!」
ちょっと離れたところから晃人君がこちらに向かってきているのが見える。春ちゃんの荷物も持ってあげているみたいで少し重そうだ。
前まで同じくらいの目線だったのに、いつの間にか私より背が高くなっていた。
どうしよう。かっこいい。
「…結ちゃん、久しぶり。」
「久しぶり。」
「元気だった?」
「うん。晃人君は?」
「俺も元気だったよ。」
あれ?そういえば。
そういえば私が衝動的に晃人君にキスしてから初めて会うんだった!
どうしよう。勢いでしちゃったけど晃人君がもし本当は嫌だったとしたらもしかして、私がしたことってセクハラってやつなのでは。
思い出して赤くなったり青くなったりしている私を尻目に2人は歩き出した。
「海、めっちゃ綺麗だねー!私、泳ぎたい!水着も持って来た!結ちゃん、お昼ご飯食べたら皆で泳ごうよ!」
「いいね。そうしよっか。パパが近くのコンビニで待っててくれてるから、みんなでご飯行こう。」
ちなみにママは翔と留守番している。
海の食堂で私はあんかけ焼きそば、春ちゃんとパパは日替わりのお魚定食、晃人君は醤油ラーメンを食べた。
お昼ご飯のあとは海で小さなカニやテナガエビを捕まえたり、足跡を付けたりして遊んだ。
夕方になると、日の入りが海に映るのを3人で並んで見ていた。ちなみにパパは少し離れた所でアウトドア用の椅子に座りながらスマホを見ている。
「綺麗だねぇ。」
春ちゃんがほうっとした顔で呟く。
「うん。本当。2人にずっと見せてあげたかったんだ。今日、一緒に見れて嬉しい。」
佳穂ちゃんから一番綺麗に見える場所、教えてもらったもんね。
「もうー!可愛いな、結ちゃんは。晃人もそう思うでしょ?」
「え?!俺に振るの?!」
慌てる晃人君と私を尻目に春ちゃんはお澄まし顔だ。
「うるさい。可愛いと思うよね?」
うっと詰まったような顔をしながら、蚊の鳴くような声で、
「か、可愛いです。」
と晃人君に言われた。
…何これ、めちゃくちゃ照れるんですけど。
1日目はみんなでこの後うちのマンションで焼肉して、3人で和室に布団を敷いて寝た。
何故か晃人君が寝言で「うっ。ま、又吉(またきち)。」
と唸っていた。又吉?
2日目は皆で隣町の温泉に行って、お昼ご飯にみんなでピザを食べて駅まで2人を送って行った。
こうして、2人が滞在した2日間はあっという間に過ぎていった。
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