16 / 31
一章 忌子、転生者。出会いは運命か、それとも 15話
しおりを挟む
人の形をとっていたとしても、彼らは私たちとは違う。思考がいくら穏やかでも、同じにはなれない。そもそもの性質が、全くの別物なのだ。
なるべく伝わるように、言葉を尽くす。
彼らに向けられる感情は、悪意だ。私に向けられるものと一緒。
「……RPGとか、特に意識しないでやってたけどさ。敵キャラってこんな気持ちだったのかな」
よくわからないことを言って、ハルトは自分の頭を叩いた。
「ま、考えてもしゃーねーわ。いくら考えてもさ、人殺すとか決断できねぇし」
そうだろ? と他の四人を見渡すと、それぞれが控えめに頷いてみせた。
そして私に向いた。
「ありがとな、色々教えてくれて。けどまあ俺らあんま頭よくねぇからさ。正しい方法とか思いつかない。死ぬのは怖いけど、殺す決断も、少なくとも今はできない。後悔するかもしれないけど」
そこには逃避の意味もあったかもしれないし、希望的観測は強く含まれていただろう。先のことを考えずに先延ばしにしただけだ。だけど私はそれを咎める気にはなれなかった。だってそれは、彼らの優しさを否定することになる。だから私は諦観の念を込めて首を振ってみせた。
……だけどやっぱり、甘いことには変わりない。こっちである程度の準備はさせてもらえるだろうか。生まれてこのかた何の役に立つのかわからない知識は山程溜め込んできた。それが役に立つ日が来たかもしれなかった。
そんなことを考えているうちに、五人にどこかぎこちなくも、出会ったばかりの頃の賑やかさを取り戻したようだった。
「と、とりあえずさ! くーちゃんの歓迎会しようよ!」
「そうだな! あ、そうそう。楽器のたぐいも見つかったぞ」
「お、そりゃいいな。なんか一曲くらいやるか」
「いいねー。楽しいのがいいな」
「それならさ――」
きゃいきゃいと音が溢れる空間は暖かで、やっぱり、失いたくはない。
例え家族を殺すことになったとしても。
なるべく伝わるように、言葉を尽くす。
彼らに向けられる感情は、悪意だ。私に向けられるものと一緒。
「……RPGとか、特に意識しないでやってたけどさ。敵キャラってこんな気持ちだったのかな」
よくわからないことを言って、ハルトは自分の頭を叩いた。
「ま、考えてもしゃーねーわ。いくら考えてもさ、人殺すとか決断できねぇし」
そうだろ? と他の四人を見渡すと、それぞれが控えめに頷いてみせた。
そして私に向いた。
「ありがとな、色々教えてくれて。けどまあ俺らあんま頭よくねぇからさ。正しい方法とか思いつかない。死ぬのは怖いけど、殺す決断も、少なくとも今はできない。後悔するかもしれないけど」
そこには逃避の意味もあったかもしれないし、希望的観測は強く含まれていただろう。先のことを考えずに先延ばしにしただけだ。だけど私はそれを咎める気にはなれなかった。だってそれは、彼らの優しさを否定することになる。だから私は諦観の念を込めて首を振ってみせた。
……だけどやっぱり、甘いことには変わりない。こっちである程度の準備はさせてもらえるだろうか。生まれてこのかた何の役に立つのかわからない知識は山程溜め込んできた。それが役に立つ日が来たかもしれなかった。
そんなことを考えているうちに、五人にどこかぎこちなくも、出会ったばかりの頃の賑やかさを取り戻したようだった。
「と、とりあえずさ! くーちゃんの歓迎会しようよ!」
「そうだな! あ、そうそう。楽器のたぐいも見つかったぞ」
「お、そりゃいいな。なんか一曲くらいやるか」
「いいねー。楽しいのがいいな」
「それならさ――」
きゃいきゃいと音が溢れる空間は暖かで、やっぱり、失いたくはない。
例え家族を殺すことになったとしても。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
灰色の冒険者
水室二人
ファンタジー
異世界にに召喚された主人公達、
1年間過ごす間に、色々と教えて欲しいと頼まれ、特に危険は無いと思いそのまま異世界に。
だが、次々と消えていく異世界人。
1年後、のこったのは二人だけ。
刈谷正義(かりやまさよし)は、残った一人だったが、最後の最後で殺されてしまう。
ただ、彼は、1年過ごすその裏で、殺されないための準備をしていた。
正義と言う名前だけど正義は、嫌い。
そんな彼の、異世界での物語り。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
黒銀の狼と男装の騎士【改稿版】
藤夜
ファンタジー
母と双子の兄を魔獣フェンリルに殺され、呪いの刻印を刻まれたエルディアは、男として騎士団副団長ロイゼルドの従騎士となる。
刻印の力で不死に近い身体をもち、国を守るため戦場に飛び込むエルと、彼女をその過酷な運命から守ろうとするロイの師弟のじれじれ恋愛ファンタジー!
現在改稿中で部分的に削除しています。
改稿版ができ次第アップしていきます。
あらすじはかわりありませんのでご注意下さい。
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる