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第2章 亜人国建国編
満たされる幸福
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しばらくの間、紫音は森妖精が作ったという家の中を探索していた。
そしてそれを終えると、ここに来た目的を果たすため再びフィリアに訊いてみることにする。
「あ、そうだ。そろそろこの世界のことについてもっと教えてくれないか?」
「それはいいけど、食事しながらでいいかしら。私、あなたを食べ損ねてお腹空いているのよ」
皮肉じみた言い方をしていて本来ならイラつく発言だが、紫音もお腹が空いていたため今回に限っては反論はしないことにした。
今日一日、紫音はまともな食事をとっておらず、それに加えてフィリアとの戦闘もあったためいつも以上にお腹が空いていることにフィリアの言葉によって今さらながら気が付いた。
「確かにお腹が空いたが……いったいなにを食べさせてくれるんだ?」
「そうね。生憎、私たち竜人族は肉食だからお肉しか出せないけどそれでもいいかしら?」
「こっちはわがまま言える立場じゃないし、それでお願いします」
「少し待っていなさい」
そう言いながらフィリアは部屋の奥へと進んでいった。おそらく向こうに食料庫があるのだろう。
フィリアが戻って来るまでの間、紫音はそわそわしていた。
「まともなメシなんて久しぶりだな……。そういえば、この世界の肉っていったいなんなんだ?」
いつも貧しい食生活を送っていた紫音にとって肉という食材に魅力を感じていたが、同時に不安も感じていた。ここは異世界。おそらく紫音が知っているような肉が出ることは限りなく低いはず。喜び半分、不安半分の気持ちのまましばらく待っていると、フィリアが戻ってきた。
「おまたせ、紫音。はい、これがあなたの分よ」
そう言い、ドンとテーブルの上に大きな皿とフォークが置かれ、その上には予想通りステーキのような極厚の肉が山のように積んであった。
「おお、これは……ってこれ全部、生肉じゃねえか!」
一瞬、喜んでしまったが、よくよく見るとそれはどれも火を通していない生肉ばかりであった。
フィリアはそのまま何の問題もなく、かぶりつくように食べている。おそらく竜人族は生でも食べられるようだが、紫音としてはもう少しその辺のことも配慮してほしかった。
「流石にこれは勘弁してくれよ。このままじゃ食えないからせめて火を通してくれないか?」
「なに? 生のままじゃ食べられないの。ごめんなさいね、私たちはいつも生で食べていたから。人間って不便なのね」
「不便で悪かったな。人間はお前ほど丈夫にできていないんでね。肉なんて普通は火を通さなきゃ食べられないんだよ。だからコンロでも貸してくれないか?」
「こんろ……? なに、それ?」
フィリアは紫音の口から発した聞き慣れない単語に不思議そうに小首を傾げる。
「あぁ、悪い。火を貸してくれないかって言ったんだ」
この世界にはないのかと理解した紫音は慌てて別の言い方で頼んだ。
「なんだ、火が欲しいのね。だったらほら」
おもむろに人差し指を立てると、次の瞬間、フィリアの指先からサッカーボールほどの大きさの火球が現れた。
「うおぉっ!? なんだそれ!?」
「これは初級魔法の《ファイア・ボール》よ。さっき言ってた魔法だけど……忘れたの?」
「それは聞いていたけどてっきりドラゴンの姿のときにしか使えないと思っていたよ」
紫音の驚くさまを見たフィリアは嬉しそうにフンと鼻を鳴らし。
「残念だったわね、どっちでも使えるわよ。人型のときほうは、魔力が抑えられている分、魔法の威力は小さいけど生活するにはこっちの姿のほうがなにかと便利なのよ。竜化状態だと維持するためにかなり体力は使うし体が大きい分、森に降りる際に植物とか傷つけてしまうからやめろってディアナに怒られて以来、普通に生活しているときはこの姿でいるのよ」
「へえ、そうなのか」
「竜化するのは紫音のときみたいにこの森に侵入してきたものに対して撃退する意味もあって竜化するのよ」
「……なるほどな。ドラゴンに変身するのも大変なんだな。あっ、それじゃあ火もらえるか?」
フィリアのことについて新たにわかったことが増えたが、残念ながら今の紫音は目の前に置かれた大量の肉に釘付けだった。
先ほどまで不安に感じていたが、それよりも空腹が勝っており、もう何の肉でも構わないといった様子であった。
「どうぞ」
「肉が黒焦げになったらもったいないからじっとしてろよ」
「……さっきから注文が多いわね」
文句を言いながらも紫音の要望通り、その場でじっとしながら肉が焼けるのをおとなしく待っていた。
紫音は焦げないように肉を焼いていると、次第に肉に焼き目が付き始める。
「焼けたかな? ……それじゃあ、いただきます!」
生焼けになっていないことを確認し、紫音はフォークで焼けた極厚の肉を突き刺し、ガブリと獣のように食らいついた。
噛んだ瞬間、肉汁が口の中いっぱいに溢れ出し、肉の旨味が飛び出してくる。噛めば噛むほど旨味は増し、今まで食べたことのない旨い肉だと紫音は絶賛した。
本来ならなにか調味料などを足して味付けする必要があるが、それを差し引いても肉本来の素材の味だけで満足できるほど美味しい肉であった。
「う、うまい……」
思わず言葉が漏れてしまうほどの旨さだった。
それから紫音は焼いては食べ、焼いては食べを繰り返していた。
久しぶりの満足した食事に紫音は生きてきた中で長い間忘れかけていた幸福な感情を思い出していた。
前の世界ではすっかり抜け落ちていた感情をこの世界でようやく取り戻すことができた。
紫音はこの喜びを噛み締めながら今日という日を忘れないようにしようと、深く胸の奥に刻み込んだ。
そしてそれを終えると、ここに来た目的を果たすため再びフィリアに訊いてみることにする。
「あ、そうだ。そろそろこの世界のことについてもっと教えてくれないか?」
「それはいいけど、食事しながらでいいかしら。私、あなたを食べ損ねてお腹空いているのよ」
皮肉じみた言い方をしていて本来ならイラつく発言だが、紫音もお腹が空いていたため今回に限っては反論はしないことにした。
今日一日、紫音はまともな食事をとっておらず、それに加えてフィリアとの戦闘もあったためいつも以上にお腹が空いていることにフィリアの言葉によって今さらながら気が付いた。
「確かにお腹が空いたが……いったいなにを食べさせてくれるんだ?」
「そうね。生憎、私たち竜人族は肉食だからお肉しか出せないけどそれでもいいかしら?」
「こっちはわがまま言える立場じゃないし、それでお願いします」
「少し待っていなさい」
そう言いながらフィリアは部屋の奥へと進んでいった。おそらく向こうに食料庫があるのだろう。
フィリアが戻って来るまでの間、紫音はそわそわしていた。
「まともなメシなんて久しぶりだな……。そういえば、この世界の肉っていったいなんなんだ?」
いつも貧しい食生活を送っていた紫音にとって肉という食材に魅力を感じていたが、同時に不安も感じていた。ここは異世界。おそらく紫音が知っているような肉が出ることは限りなく低いはず。喜び半分、不安半分の気持ちのまましばらく待っていると、フィリアが戻ってきた。
「おまたせ、紫音。はい、これがあなたの分よ」
そう言い、ドンとテーブルの上に大きな皿とフォークが置かれ、その上には予想通りステーキのような極厚の肉が山のように積んであった。
「おお、これは……ってこれ全部、生肉じゃねえか!」
一瞬、喜んでしまったが、よくよく見るとそれはどれも火を通していない生肉ばかりであった。
フィリアはそのまま何の問題もなく、かぶりつくように食べている。おそらく竜人族は生でも食べられるようだが、紫音としてはもう少しその辺のことも配慮してほしかった。
「流石にこれは勘弁してくれよ。このままじゃ食えないからせめて火を通してくれないか?」
「なに? 生のままじゃ食べられないの。ごめんなさいね、私たちはいつも生で食べていたから。人間って不便なのね」
「不便で悪かったな。人間はお前ほど丈夫にできていないんでね。肉なんて普通は火を通さなきゃ食べられないんだよ。だからコンロでも貸してくれないか?」
「こんろ……? なに、それ?」
フィリアは紫音の口から発した聞き慣れない単語に不思議そうに小首を傾げる。
「あぁ、悪い。火を貸してくれないかって言ったんだ」
この世界にはないのかと理解した紫音は慌てて別の言い方で頼んだ。
「なんだ、火が欲しいのね。だったらほら」
おもむろに人差し指を立てると、次の瞬間、フィリアの指先からサッカーボールほどの大きさの火球が現れた。
「うおぉっ!? なんだそれ!?」
「これは初級魔法の《ファイア・ボール》よ。さっき言ってた魔法だけど……忘れたの?」
「それは聞いていたけどてっきりドラゴンの姿のときにしか使えないと思っていたよ」
紫音の驚くさまを見たフィリアは嬉しそうにフンと鼻を鳴らし。
「残念だったわね、どっちでも使えるわよ。人型のときほうは、魔力が抑えられている分、魔法の威力は小さいけど生活するにはこっちの姿のほうがなにかと便利なのよ。竜化状態だと維持するためにかなり体力は使うし体が大きい分、森に降りる際に植物とか傷つけてしまうからやめろってディアナに怒られて以来、普通に生活しているときはこの姿でいるのよ」
「へえ、そうなのか」
「竜化するのは紫音のときみたいにこの森に侵入してきたものに対して撃退する意味もあって竜化するのよ」
「……なるほどな。ドラゴンに変身するのも大変なんだな。あっ、それじゃあ火もらえるか?」
フィリアのことについて新たにわかったことが増えたが、残念ながら今の紫音は目の前に置かれた大量の肉に釘付けだった。
先ほどまで不安に感じていたが、それよりも空腹が勝っており、もう何の肉でも構わないといった様子であった。
「どうぞ」
「肉が黒焦げになったらもったいないからじっとしてろよ」
「……さっきから注文が多いわね」
文句を言いながらも紫音の要望通り、その場でじっとしながら肉が焼けるのをおとなしく待っていた。
紫音は焦げないように肉を焼いていると、次第に肉に焼き目が付き始める。
「焼けたかな? ……それじゃあ、いただきます!」
生焼けになっていないことを確認し、紫音はフォークで焼けた極厚の肉を突き刺し、ガブリと獣のように食らいついた。
噛んだ瞬間、肉汁が口の中いっぱいに溢れ出し、肉の旨味が飛び出してくる。噛めば噛むほど旨味は増し、今まで食べたことのない旨い肉だと紫音は絶賛した。
本来ならなにか調味料などを足して味付けする必要があるが、それを差し引いても肉本来の素材の味だけで満足できるほど美味しい肉であった。
「う、うまい……」
思わず言葉が漏れてしまうほどの旨さだった。
それから紫音は焼いては食べ、焼いては食べを繰り返していた。
久しぶりの満足した食事に紫音は生きてきた中で長い間忘れかけていた幸福な感情を思い出していた。
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