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第一章 死霊術師編
助けを求める声
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ロゼッタの元から旅立って早数日。
リオンは、見知らぬ森の中を彷徨っていた。
あれから山を越え、谷を越え、道中魔物を倒しながら目的地を目指していた。
しかし、険しい道を進んできたにもかかわらず、誰一人として人と会うことなく今日を迎えてしまった。
「くそ……やっぱり昔の地図なんか当てにするんじゃなかったな。全然地形が違うじゃねえか」
最初の内は、地図を頼りに目的地の王都を目指していたが、やはりそれは無謀だった。
すっかり地形も変わってしまい、ロゼッタから渡された地図はまるで役に立っていなかった。
「はあ……しかたない。霊にでも訊いてみるか? 《霊視》」
最後の手段に取っていた死霊術を発動した。
この魔法を発動することで幽霊を視認することができるようになる。
前世で持っていた能力とまるっきり同じだが、いちいち魔法を使用しなくては視ることができないため前世のときと比べてなにかと不便に感じていた。
「……いた」
周りを見渡すと、さっそく森をうろうろと徘徊している幽霊の姿が視えた。
狩人のような風貌の若い男の幽霊でその他には誰もいない様子だった。
「あれにしよう」
道を尋ねようと、その幽霊に声を掛ける。
「オイ、お前」
『っ!? な、なんだあんた? オレが見えるのか?』
「……ああ。それより俺は旅の者で近くの街に行きたいんだが、どっちに行けばいい?」
『申し訳ないが、記憶が曖昧で……自分がどうしてここにいるのかすら、まったく分からないんだよ……』
(なるほど。記憶が混濁しているタイプか)
幽霊にも様々なタイプが存在する。
生前の記憶を保持したまま霊体となっているものや、この男のように記憶を失くした状態で彷徨う霊もいる。
しかしこれでは、道を尋ねることは難しいようだ。
リオンは、早々に諦めてその場から立ち去ろうとすると、
『……あっ、そういえば、向こうで人を見かけたんだが、その人に聞いたらどうだい?』
「なんだ、近くに人がいるのか?」
思いがけない情報を手に入れることができた。
リオンは、幽霊に別れを告げ、教えてもらった人のいる場所へ駆け出した。
森の中を縦横無尽に移動し、数分突き進んでいると、どこからか女性の悲鳴のような声が聞こえてきた。
リオンは足を止め、どの方角から聞こえてくるのか、聞き耳を立てていた。
「……あっちか」
声の出所を察知したリオンは、再び走り出した。
「……いた」
声の主は、ほんの少し走ったところで意外と簡単に見つけることができた。
しかしよく見てみると、なにやら様子がおかしいとリオンは感じた。
「なんだ、あれ?」
声の主と思われる女性を見つけたまではいいが、なぜか屈強な男どもに囲まれ、今にも襲われそうになっている。
どうやら、厄介な現場に立ち会ってしまったようだ。
「……ちょうどいいか。助ければあの女に恩を売れるし……なにより俺の力が奴らに通用するのか、知ることもできるしな」
リオンは、自分の強さを測れる相手を見つけることができたとむしろこの状況を喜んでいた。
「さぁて、楽しませてくれよ」
腰に下げた刀を抜き、脚に力を入れた瞬間、リオンの姿が消えてしまった。
「ぎゃああああっ!」
そしてそのすぐ後、女性に襲い掛かろうとしていた男の胴体を一閃。
一瞬にして女性のところまで移動しただけでなく、男の体を横に真っ二つにしてしまった。
「な、なんだ!? てめえは!」
喚き散らしている奴らを無視して、リオンは女性に向けて一言、安心させるように言った。
「もう、大丈夫ですよ」
リオンは、見知らぬ森の中を彷徨っていた。
あれから山を越え、谷を越え、道中魔物を倒しながら目的地を目指していた。
しかし、険しい道を進んできたにもかかわらず、誰一人として人と会うことなく今日を迎えてしまった。
「くそ……やっぱり昔の地図なんか当てにするんじゃなかったな。全然地形が違うじゃねえか」
最初の内は、地図を頼りに目的地の王都を目指していたが、やはりそれは無謀だった。
すっかり地形も変わってしまい、ロゼッタから渡された地図はまるで役に立っていなかった。
「はあ……しかたない。霊にでも訊いてみるか? 《霊視》」
最後の手段に取っていた死霊術を発動した。
この魔法を発動することで幽霊を視認することができるようになる。
前世で持っていた能力とまるっきり同じだが、いちいち魔法を使用しなくては視ることができないため前世のときと比べてなにかと不便に感じていた。
「……いた」
周りを見渡すと、さっそく森をうろうろと徘徊している幽霊の姿が視えた。
狩人のような風貌の若い男の幽霊でその他には誰もいない様子だった。
「あれにしよう」
道を尋ねようと、その幽霊に声を掛ける。
「オイ、お前」
『っ!? な、なんだあんた? オレが見えるのか?』
「……ああ。それより俺は旅の者で近くの街に行きたいんだが、どっちに行けばいい?」
『申し訳ないが、記憶が曖昧で……自分がどうしてここにいるのかすら、まったく分からないんだよ……』
(なるほど。記憶が混濁しているタイプか)
幽霊にも様々なタイプが存在する。
生前の記憶を保持したまま霊体となっているものや、この男のように記憶を失くした状態で彷徨う霊もいる。
しかしこれでは、道を尋ねることは難しいようだ。
リオンは、早々に諦めてその場から立ち去ろうとすると、
『……あっ、そういえば、向こうで人を見かけたんだが、その人に聞いたらどうだい?』
「なんだ、近くに人がいるのか?」
思いがけない情報を手に入れることができた。
リオンは、幽霊に別れを告げ、教えてもらった人のいる場所へ駆け出した。
森の中を縦横無尽に移動し、数分突き進んでいると、どこからか女性の悲鳴のような声が聞こえてきた。
リオンは足を止め、どの方角から聞こえてくるのか、聞き耳を立てていた。
「……あっちか」
声の出所を察知したリオンは、再び走り出した。
「……いた」
声の主は、ほんの少し走ったところで意外と簡単に見つけることができた。
しかしよく見てみると、なにやら様子がおかしいとリオンは感じた。
「なんだ、あれ?」
声の主と思われる女性を見つけたまではいいが、なぜか屈強な男どもに囲まれ、今にも襲われそうになっている。
どうやら、厄介な現場に立ち会ってしまったようだ。
「……ちょうどいいか。助ければあの女に恩を売れるし……なにより俺の力が奴らに通用するのか、知ることもできるしな」
リオンは、自分の強さを測れる相手を見つけることができたとむしろこの状況を喜んでいた。
「さぁて、楽しませてくれよ」
腰に下げた刀を抜き、脚に力を入れた瞬間、リオンの姿が消えてしまった。
「ぎゃああああっ!」
そしてそのすぐ後、女性に襲い掛かろうとしていた男の胴体を一閃。
一瞬にして女性のところまで移動しただけでなく、男の体を横に真っ二つにしてしまった。
「な、なんだ!? てめえは!」
喚き散らしている奴らを無視して、リオンは女性に向けて一言、安心させるように言った。
「もう、大丈夫ですよ」
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