鬼の心臓は闇夜に疼く

藤波璃久

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協力者2(現在編②)

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秋空の中、川沿いを歩く小太郎の目に、高校生くらいの少女が映った。
少女は、土手から川をじっと眺めている。
「よし!」
気合いを入れた少女が、ざぶざぶと川の中に入っていく。
「え? ちょっと」
小太郎は思わず声をかけた。
「うーん。見つからない…でも、絶対に諦めないんだから!」
気づいていないのか、少女は必死で手を動かす。
「キャ⁉︎ここ深い⁉︎やばっ!」
川の中に少女の頭が沈む。小太郎は慌てて少女の体をつかむと、岸に上げた。
「ゲホッゲホッ」
「大丈夫?」
「あ…ありがとうございます」
少女が無事でホッとする。
「何か探していたの?」
「はい」
「教えて。オレも手伝うから」
「そんな…申し訳ないですよ」
彼女は手をブンブン振った。
「遠慮しないで。オレももうずぶ濡れだしさ」
「あ…すみません」
「それで? 何を探してたの?」
「ペンダントを…お母さんの形見なの…」
「そっか、わかった」

二人でペンダントを探す。
「ないなぁ…」
少女が寂しそうに呟く。
小太郎が何か硬い物を手にとった。
「あ、もしかしてこれ?」
広げた手には、青い石のついたネックレスがあった。
「あ! あった! ありがとうございます」
「綺麗な宝石だね?」
「イミテーションですよ」
「いみて…?」
「本物の宝石じゃないって事です。でも、お母さんがいつも首につけていて、私にとっては宝物だから」
「…そっか」
「探してくれてありがとうございました」
「見つかってよかったよ」
「クシュン!」
少女がくしゃみをした。
「風邪ひいちゃうよ。家どこ? 送ってく」
「え? でも…」
「送らせてよ」
「…はい」
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