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旅立ち3(過去編②)
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村への道を歩く。
(小太郎が妖怪を抵抗なく倒して、食べれるようにしないと)
朱丸は考えた。
夕焼けの道を歩いていると、朱丸は気がついた。
《妖力だいぶ減ってる。まずいな。オイラ苦しくなってきた》
『え? 大丈夫? 朱丸』
《オイラだけじゃないよ。小太郎だって…。オイラの動きが鈍くなるってことだから、小太郎の心臓にも影響が…》
「う…ぐっ…」
小太郎は胸を押さえて倒れた。
《小太郎!》
「う…あ…痛い…! 痛い…ハアッ…ハアッ」
(苦しい。力入らない…。あれ…目の前が暗く…)
小太郎が意識を失ってしまったので、朱丸は焦った。
《小太郎! 起きて! 小太郎!》
そこに一人の男が近づく。
「あれ? 正太郎んとこの坊主じゃないか? おい、どうした?」
男は小太郎の顔を覗き込む。
「大変だ。こりゃ」
男は小太郎を抱っこすると、すぐ小太郎の家に走った。
「正太郎大変だ! 小太郎が!」
運ばれてきた小太郎を見て、母は悲鳴をあげた。
顔色は紙のように白く、唇も青い。
正太郎はすぐに医者を呼びに行き、母は次男の正雄に布団を敷くように言う。
細い息をする小太郎を診察した医者は、首を横に振った。
「心臓の動きがだいぶ弱い。残念ですが、今夜が峠かと…」
「そんな…。先生、せめて何か…お願いします」
「…わかりました。強心剤でも処方しておきましょう」
薬の入った袋を母に渡すと、医者は帰っていった。
「小太郎、あんなに元気だったのに」
正太郎は項垂れた。
「兄ちゃん」
弟の正雄は涙を浮かべ、まだ10ヶ月ほどの妹のハナは、家族の様子にグズっている。
《ハア…小太郎…くっ…》
朱丸は、力を振り絞って、腕を振り下ろした。
「ぐっ!」
小太郎が、呻いて目を開けた。
「ゲホッゲホッ」
「小太郎!」
母が小太郎の手を握る。
「ハアッ…オレ…う…痛い…! ああ…!」
「小太郎…どこが痛いの?」
「ハアッ…胸が…」
母は薬を出した。
「先生に薬出してもらったから、飲んで」
力が入らない小太郎は、支えてもらいながら薬を飲んだ。
「ゲホッ…ゲホッ…」
『朱丸』
《小太郎、オイラ、もう限界…》
【ぐるる】
突然、猛獣のような鳴き声が聞こえた。
見ると、小太郎の枕元に猫又のような風貌の大きな妖怪が座っていた。
《火車?》
朱丸が呟く。
『かしゃ?』
《人間の死体を食べる妖怪だ。小太郎を狙いにきたのかも》
『オレ…やっぱり、死ぬ…のか?』
問いかけたその時、朱丸が苦しそうに呻いた。
「う…ぐっ! ああ!」
同時に小太郎も、悲鳴をあげる。
《う…小太…郎…火車を…食べ…て》
『体…動か…ない』
「小太郎!」
母が叫び声をあげた小太郎を覗き込む。目に涙を浮かべている。
その涙が小太郎の口元に落ち、小太郎は舐めた。
(あれ? 少し痛みが和らいだ?)
《小太郎、少し動けそう?》
『うん』
《あのね、火車って妖怪は、葬式を襲ったりして遺体を持ち去るんだって。
家族が亡くなって、悲しみに追い討ちかけるようなことする。
悪い事する妖怪をこらしめるためなら、小太郎も食べれるんじゃない?》
小太郎は少し考える素振りを見せた。
『……うん。そうだね』
小太郎は意を決して、鬼の爪を出し、火車に攻撃する。
火車は、叫び声をあげて倒れた。肉体を持たない妖怪は、死ぬと粒子となって消えてしまう。小太郎は、その粒子を吸い込む。
『はあ。苦しいの治った』
《よかった。妖力も充分回復したよ》
「小太郎? 急に動いて…どうしたの?」
母は小太郎の肩に手を置いた。
「母ちゃん、オレもう大丈夫だよ」
「本当? よかった」
母は小太郎を抱きしめた。
「医者の薬よく効くんだな」
正太郎は、薬のおかげで小太郎が元気になったのだと思っているようだ。
「あーん! あーん!」
妹のハナが大声で泣いた。
「ハナ? 大丈夫よ。よしよし。お兄ちゃんもう大丈夫だからね」
《大人や少し大きい子供には、妖怪は見えないけど、まだ赤ちゃんのハナちゃんは見えたのかも。怖かっただろうね》
『オレが妖怪を殺すところ見ちゃったかな? 心の傷にならなきゃいいけど』
(小太郎が妖怪を抵抗なく倒して、食べれるようにしないと)
朱丸は考えた。
夕焼けの道を歩いていると、朱丸は気がついた。
《妖力だいぶ減ってる。まずいな。オイラ苦しくなってきた》
『え? 大丈夫? 朱丸』
《オイラだけじゃないよ。小太郎だって…。オイラの動きが鈍くなるってことだから、小太郎の心臓にも影響が…》
「う…ぐっ…」
小太郎は胸を押さえて倒れた。
《小太郎!》
「う…あ…痛い…! 痛い…ハアッ…ハアッ」
(苦しい。力入らない…。あれ…目の前が暗く…)
小太郎が意識を失ってしまったので、朱丸は焦った。
《小太郎! 起きて! 小太郎!》
そこに一人の男が近づく。
「あれ? 正太郎んとこの坊主じゃないか? おい、どうした?」
男は小太郎の顔を覗き込む。
「大変だ。こりゃ」
男は小太郎を抱っこすると、すぐ小太郎の家に走った。
「正太郎大変だ! 小太郎が!」
運ばれてきた小太郎を見て、母は悲鳴をあげた。
顔色は紙のように白く、唇も青い。
正太郎はすぐに医者を呼びに行き、母は次男の正雄に布団を敷くように言う。
細い息をする小太郎を診察した医者は、首を横に振った。
「心臓の動きがだいぶ弱い。残念ですが、今夜が峠かと…」
「そんな…。先生、せめて何か…お願いします」
「…わかりました。強心剤でも処方しておきましょう」
薬の入った袋を母に渡すと、医者は帰っていった。
「小太郎、あんなに元気だったのに」
正太郎は項垂れた。
「兄ちゃん」
弟の正雄は涙を浮かべ、まだ10ヶ月ほどの妹のハナは、家族の様子にグズっている。
《ハア…小太郎…くっ…》
朱丸は、力を振り絞って、腕を振り下ろした。
「ぐっ!」
小太郎が、呻いて目を開けた。
「ゲホッゲホッ」
「小太郎!」
母が小太郎の手を握る。
「ハアッ…オレ…う…痛い…! ああ…!」
「小太郎…どこが痛いの?」
「ハアッ…胸が…」
母は薬を出した。
「先生に薬出してもらったから、飲んで」
力が入らない小太郎は、支えてもらいながら薬を飲んだ。
「ゲホッ…ゲホッ…」
『朱丸』
《小太郎、オイラ、もう限界…》
【ぐるる】
突然、猛獣のような鳴き声が聞こえた。
見ると、小太郎の枕元に猫又のような風貌の大きな妖怪が座っていた。
《火車?》
朱丸が呟く。
『かしゃ?』
《人間の死体を食べる妖怪だ。小太郎を狙いにきたのかも》
『オレ…やっぱり、死ぬ…のか?』
問いかけたその時、朱丸が苦しそうに呻いた。
「う…ぐっ! ああ!」
同時に小太郎も、悲鳴をあげる。
《う…小太…郎…火車を…食べ…て》
『体…動か…ない』
「小太郎!」
母が叫び声をあげた小太郎を覗き込む。目に涙を浮かべている。
その涙が小太郎の口元に落ち、小太郎は舐めた。
(あれ? 少し痛みが和らいだ?)
《小太郎、少し動けそう?》
『うん』
《あのね、火車って妖怪は、葬式を襲ったりして遺体を持ち去るんだって。
家族が亡くなって、悲しみに追い討ちかけるようなことする。
悪い事する妖怪をこらしめるためなら、小太郎も食べれるんじゃない?》
小太郎は少し考える素振りを見せた。
『……うん。そうだね』
小太郎は意を決して、鬼の爪を出し、火車に攻撃する。
火車は、叫び声をあげて倒れた。肉体を持たない妖怪は、死ぬと粒子となって消えてしまう。小太郎は、その粒子を吸い込む。
『はあ。苦しいの治った』
《よかった。妖力も充分回復したよ》
「小太郎? 急に動いて…どうしたの?」
母は小太郎の肩に手を置いた。
「母ちゃん、オレもう大丈夫だよ」
「本当? よかった」
母は小太郎を抱きしめた。
「医者の薬よく効くんだな」
正太郎は、薬のおかげで小太郎が元気になったのだと思っているようだ。
「あーん! あーん!」
妹のハナが大声で泣いた。
「ハナ? 大丈夫よ。よしよし。お兄ちゃんもう大丈夫だからね」
《大人や少し大きい子供には、妖怪は見えないけど、まだ赤ちゃんのハナちゃんは見えたのかも。怖かっただろうね》
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