鬼の心臓は闇夜に疼く

藤波璃久

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少年は桃太郎と対峙する12(過去編①)

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次の日、朱丸は待ち合わせ場所に行った。

だが約束の時間になっても小太郎は現れない。
しびれを切らした朱丸は、村の入り口からそっと伺った。
だが、いるのは大人ばかりで、朱丸は仕方ないと、また山の中へ入っていった。
その後、小太郎がすぐ現れた。
「遅いよ」
「ごめん。妹がぐずりだして、母ちゃん手が離せなくってさ、オレがオムツ替えたりしてたから」
「そっか。なら仕方ないね」
朱丸は小太郎の家で見た、まだ赤ちゃんの小太郎の妹を思い出した。
「それより、ここ待ち合わせ場所よりだいぶ下の方じゃん。どうした?」
「小太郎が遅いから、見に行った」
「村に来たのか?」
「でも、入り口のところまでだよ。周りに人いなかったもん」
「なら、大丈夫か」
「うん」

 しかし、そんな朱丸の姿を目撃していた人物がいた。
村長の孫娘、チヨだ。チヨは最近長男を出産したばかりだった。
「お爺ちゃん。さっき、あの子いたよ。赤い髪の…。やっぱり、隣村じゃなくて、山から来てた。お爺ちゃんの言う通り、山に住んでる鬼なのかも…」
「やはりな。隣村に赤毛の子がいるか確認したが、赤毛の子など生まれたことはないと報告を受けた。鬼という事を隠そうと、小太郎がウソをついていたのかもしれん」
村長は、小太郎の家へ行くと、そのことも含め正太郎に問いつめた。
「あの赤毛の子はやはり鬼じゃないのか? 正太郎、おまえ何か知っておるな?」
「し、知りませんよ」
正太郎はそそくさと、家へ引っ込んだ。
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