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少年は桃太郎と対峙する11(過去編①)
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その夜、朱丸は眠れずにいた。
ふと、祖父の部屋を見ると、祖父はまだ起きていた。
薄い灯りの中、祖父はキラキラした黒い石を持って眺めていた。
「それ何?」
「おお…朱丸…起きておったのか」
「うん。眠れなくて…それは何?」
朱丸は、興味津々という顔で見ていた。
「これはな、神話の時代から伝わる秘術を込めた石じゃ」
「秘術?」
祖父は昔話を始めた。
「昔々、人間に恋をした鬼がおりました。ですが、人間は鬼よりもはるかに早く老いて死んでしまいました。鬼は悲しくて悲しくて、三日三晩泣き続けました。すると、鬼の涙が固まって石になりました。その石を抱いて、どうか人間とずっと一緒にいさせてくださいと、鬼は願いました。死後に人間と鬼は違う場所へ旅立ってしまうのですが、鬼の強い想いを受け入れた神は、死後もずっと一緒にいられるように、鬼の魂を人間の亡骸に入れました。すると、人間の魂と鬼の魂は、共に極楽浄土へ行くことができたのでした」
“めでたしめでたし“と締めくくった祖父を、朱丸は訝しげに見た。
「めでたくないよ。二人とも死んでるもん」
「ははは…昔話じゃからな…。この石はその時鬼が残した石じゃ。
二人の想いが残っている。この石に願いを込め、自分の血を注ぎ、人間の胸に手を当てる。その時自分の血と人間の血を混ぜる。すると、自分の魂を人間の中に入れることが出来る。そうして死んでしまった人間と、一緒に極楽浄土へ行けるという秘術じゃ」
朱丸はその石を大事そうにしまう祖父を見た。
(結局死んでしまうじゃないか)
その秘術をその時は変わった秘術もあるなとしか思わなかった。
ふと、祖父の部屋を見ると、祖父はまだ起きていた。
薄い灯りの中、祖父はキラキラした黒い石を持って眺めていた。
「それ何?」
「おお…朱丸…起きておったのか」
「うん。眠れなくて…それは何?」
朱丸は、興味津々という顔で見ていた。
「これはな、神話の時代から伝わる秘術を込めた石じゃ」
「秘術?」
祖父は昔話を始めた。
「昔々、人間に恋をした鬼がおりました。ですが、人間は鬼よりもはるかに早く老いて死んでしまいました。鬼は悲しくて悲しくて、三日三晩泣き続けました。すると、鬼の涙が固まって石になりました。その石を抱いて、どうか人間とずっと一緒にいさせてくださいと、鬼は願いました。死後に人間と鬼は違う場所へ旅立ってしまうのですが、鬼の強い想いを受け入れた神は、死後もずっと一緒にいられるように、鬼の魂を人間の亡骸に入れました。すると、人間の魂と鬼の魂は、共に極楽浄土へ行くことができたのでした」
“めでたしめでたし“と締めくくった祖父を、朱丸は訝しげに見た。
「めでたくないよ。二人とも死んでるもん」
「ははは…昔話じゃからな…。この石はその時鬼が残した石じゃ。
二人の想いが残っている。この石に願いを込め、自分の血を注ぎ、人間の胸に手を当てる。その時自分の血と人間の血を混ぜる。すると、自分の魂を人間の中に入れることが出来る。そうして死んでしまった人間と、一緒に極楽浄土へ行けるという秘術じゃ」
朱丸はその石を大事そうにしまう祖父を見た。
(結局死んでしまうじゃないか)
その秘術をその時は変わった秘術もあるなとしか思わなかった。
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