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悪意を喰らう3(現在編①)
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夜8時頃。小太郎はバイト終わりのマミを迎えにきた。
冬が近づく季節。すでに辺りは暗い。
マミのバイトはファミレスの接客だった。
「迎えきてくれてありがとう」
「うん」
「鬼山くんて、彼女いるの?」
「いない」
「だよね。いたらアタシのボディガード引き受けないよね。怒られちゃうもん」
マミは、ミニスカートの裾を摘まむと、クルッと回って見せた。
「ねえ、このスカートかわいいでしょ? 今日おろしたんだ!」
「…短すぎると思う」
「鬼山くんは長い方が好きなんだね…」
なるほど…とマミは呟いた。
二人は、裏通りを通っていた。
「鬼山くん。この道、暗くない?」
「近道…」
小太郎がさっさと歩いて行くので、マミは仕方なくついていった。
後ろから誰かが走ってくる気配に振り向くと、昼間のストーカー男子生徒だった。
「マ、マミちゃんは僕のだ! おまえがマミちゃんの彼氏なんて認めない!」
男子生徒はナイフを持っていて、小太郎に向かって突進してきた。
「キャアア!!」
悲鳴をあげたマミを後ろにかばいつつ、男子生徒の腕を捻ってナイフを落とす。そして、彼の背中を壁へと押さえつけた。
「う!」
肩を押さえつけられ、呻く彼の額に小太郎は人差し指を置いた。
「へ…?」
小太郎の目は赤く光り、それを見た彼は大人しくなった。
ちょうど人差し指を置いたあたりから、霧のようなモヤのようなものが出てきた。それは、鬼のような形を作ると、小太郎の口に吸い込まれていった。
「はあ…」
小太郎は大きくため息をつくと、恍惚とした表情を浮かべ、美味しいものを食べた時のように舌なめずりをした。
小太郎が男子生徒を解放すると、彼はそのままズルズルと座り込んだ。
「あれ?…僕は…」
彼は呆けたように呟くと、何事もなかったかのように立ち上がり、その場を去ってしまった。
冬が近づく季節。すでに辺りは暗い。
マミのバイトはファミレスの接客だった。
「迎えきてくれてありがとう」
「うん」
「鬼山くんて、彼女いるの?」
「いない」
「だよね。いたらアタシのボディガード引き受けないよね。怒られちゃうもん」
マミは、ミニスカートの裾を摘まむと、クルッと回って見せた。
「ねえ、このスカートかわいいでしょ? 今日おろしたんだ!」
「…短すぎると思う」
「鬼山くんは長い方が好きなんだね…」
なるほど…とマミは呟いた。
二人は、裏通りを通っていた。
「鬼山くん。この道、暗くない?」
「近道…」
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後ろから誰かが走ってくる気配に振り向くと、昼間のストーカー男子生徒だった。
「マ、マミちゃんは僕のだ! おまえがマミちゃんの彼氏なんて認めない!」
男子生徒はナイフを持っていて、小太郎に向かって突進してきた。
「キャアア!!」
悲鳴をあげたマミを後ろにかばいつつ、男子生徒の腕を捻ってナイフを落とす。そして、彼の背中を壁へと押さえつけた。
「う!」
肩を押さえつけられ、呻く彼の額に小太郎は人差し指を置いた。
「へ…?」
小太郎の目は赤く光り、それを見た彼は大人しくなった。
ちょうど人差し指を置いたあたりから、霧のようなモヤのようなものが出てきた。それは、鬼のような形を作ると、小太郎の口に吸い込まれていった。
「はあ…」
小太郎は大きくため息をつくと、恍惚とした表情を浮かべ、美味しいものを食べた時のように舌なめずりをした。
小太郎が男子生徒を解放すると、彼はそのままズルズルと座り込んだ。
「あれ?…僕は…」
彼は呆けたように呟くと、何事もなかったかのように立ち上がり、その場を去ってしまった。
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