愛を教えてくれた神は今日も隣で愛をささやく

藤波璃久

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湊人の異変

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 2人は駅に着いて、電車に揺られ、桜山町の駅で降りた。

「ここから少しバスに乗る」

バスに乗ってしばらくすると、蓮がブザーを押した。
『桜山神社前』と書いてある。

バスを降りると、周りは商店街だったが、だいぶシャッターが下りていて、閑散としていた。人通りもなかった。

「最近はあまり参拝客来ないんだよな。昔はたくさんの人が来て、この商店街も賑わってたんだけど…」

「そう…」

蓮は湊人の手を握って、山道に入った。

「この坂を登った所にあるんだ」

周りは、木々が生い茂り、初夏の風が吹いていた。
蓮に手を引かれ歩く湊人は、しだいに遅れ始めている。

「ハアッ…ハアッ…」

「湊人? 大丈夫か」

「蓮…くる…し…」

湊人の膝が折れ、倒れた。

「湊人!」

「う…」

湊人は、胸のあたりを鷲掴みにして、苦しそうに呻いていた。

「おい! 湊人!」

蓮は慌てて駆け寄るも、どうしていいかわからない。

「はっ…う…心臓…痛い…はっ…息…できな…」

蓮は、ハッとしてケータイを出すと湊人に確認をとった。

「湊人、救急車呼ぶから」

「呼ば…ないで…はっ…う…」

「でも、死んじゃう…」

蓮は涙目になっている。

「蓮…背中…さすって…」

蓮は湊人を抱きおこし、ギュッと抱きしめて背中をさすった。

「ハアッ…ハアッ…」

「湊人…」

そこに、一台のワゴン車が通りかかった。
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