愛を教えてくれた神は今日も隣で愛をささやく

藤波璃久

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優しい恋人

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「恋人って本当だったんだ」
声のした方を見ると、ドアのそばで顔を赤くした桃華が立っていた。
「お前! 湊人にけがさせて…!」
蓮が桃華に殴りかかりそうな勢いで、向かっていった。
「蓮!」
湊人はベッドを降りて、蓮の背中に抱きついた。
「湊人?」
「蓮、やめてよ? 暴力は…っ…」
湊人は目の前が暗くなり、膝から崩れ落ち倒れた。
「湊人!」
「湊人くん?」
「…っ」
湊人が目を開けると、視界はまだボヤけていた。蓮の顔が良く見えない。
「湊人? 大丈夫か?」
「……れ…ん? みえ…ない」
蓮が驚いているのがなんとなくわかった。
(あ…余計な事言ったかも…)
「中田、保健室の先生は?」
「たぶん、職員室」
「呼んできてくれ! 湊人の様子がおかしい」
「うん」
桃華は足早に保健室を出ていった。
「…ハアッ…れ…ん…ハッ…ちがっ…オレ…ハア…ハア…」
「湊人、苦しいのか? 無理に喋るな」
おそらく、血圧が一時的に低くなって倒れただけだ。息切れもそのせいだが、呼吸がしづらいせいで、うまく喋れない。
「ハアハア…」
「湊人…湊人…」
蓮はまた泣きそうになっている。
(安心させてあげなきゃ)
「ハアッ…れ…ん…」
まだ体が動かない。
「だき…しめて?」
「うん」
蓮はぎゅっと湊人を抱きしめた。
「蓮。あった…かい」
「うん。湊人は少し冷たいな? もう苦しくないのか?」
「ん…。もう平気…」
蓮はホッとしたように息を吐いた。
蓮が湊人を体から離そうと、肩に手をかける。
「蓮…。ごめん、もう少し、このままで…」
「湊人?」
「まだ頭がクラクラして、体に力入らない」
蓮は、湊人を抱きしめたまま、片手を膝下に入れて持ち上げた。
「蓮?」
そのまま、ベッドに湊人を下ろし、横にさせて、布団をかけた。
「いつまでも床にいたら、また体冷えちゃいそうだから」
「…ありがと…」
湊人は恥ずかしそうに、布団を口元まで引き上げた。
「保健の先生遅いね?」
「あ~、実は湊人をここまで運んだ後、各家庭に連絡しないといけないからって、保健室にある電話で、みんなのケータイに登録してある家の電話番号見ながらかけてて…」
「ん?」
「湊人のケータイ、充電切れてて見れないって言った。で…、俺もケータイ忘れたって言って…。家の電話番号覚えてないし…。先生、職員室にある連絡先、確認しに行った」
「…蓮、ケータイ今日忘れてないよね? オレのもちゃんと充電して持ってきたのに…」
「…その、湊人と2人きりになりたくて、嘘を…キスもしたかったし…」
「もう…」
湊人は呆れた。
蓮は湊人のおでこにキスをした。
「病院に行ってちゃんと検査してもらえよ?
頭打ったんだから。いや、正確には、『辞書で殴られた』かな?」
湊人はクスリと笑った。
「早く元気になってくれ」
「うん」
蓮は湊人の頭を優しく撫でる。湊人は蓮の手が気持ちよくて、ウトウトしてきた。
そして、いつのまにか眠ってしまった。
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