14 / 72
優しい恋人
しおりを挟む
「恋人って本当だったんだ」
声のした方を見ると、ドアのそばで顔を赤くした桃華が立っていた。
「お前! 湊人にけがさせて…!」
蓮が桃華に殴りかかりそうな勢いで、向かっていった。
「蓮!」
湊人はベッドを降りて、蓮の背中に抱きついた。
「湊人?」
「蓮、やめてよ? 暴力は…っ…」
湊人は目の前が暗くなり、膝から崩れ落ち倒れた。
「湊人!」
「湊人くん?」
「…っ」
湊人が目を開けると、視界はまだボヤけていた。蓮の顔が良く見えない。
「湊人? 大丈夫か?」
「……れ…ん? みえ…ない」
蓮が驚いているのがなんとなくわかった。
(あ…余計な事言ったかも…)
「中田、保健室の先生は?」
「たぶん、職員室」
「呼んできてくれ! 湊人の様子がおかしい」
「うん」
桃華は足早に保健室を出ていった。
「…ハアッ…れ…ん…ハッ…ちがっ…オレ…ハア…ハア…」
「湊人、苦しいのか? 無理に喋るな」
おそらく、血圧が一時的に低くなって倒れただけだ。息切れもそのせいだが、呼吸がしづらいせいで、うまく喋れない。
「ハアハア…」
「湊人…湊人…」
蓮はまた泣きそうになっている。
(安心させてあげなきゃ)
「ハアッ…れ…ん…」
まだ体が動かない。
「だき…しめて?」
「うん」
蓮はぎゅっと湊人を抱きしめた。
「蓮。あった…かい」
「うん。湊人は少し冷たいな? もう苦しくないのか?」
「ん…。もう平気…」
蓮はホッとしたように息を吐いた。
蓮が湊人を体から離そうと、肩に手をかける。
「蓮…。ごめん、もう少し、このままで…」
「湊人?」
「まだ頭がクラクラして、体に力入らない」
蓮は、湊人を抱きしめたまま、片手を膝下に入れて持ち上げた。
「蓮?」
そのまま、ベッドに湊人を下ろし、横にさせて、布団をかけた。
「いつまでも床にいたら、また体冷えちゃいそうだから」
「…ありがと…」
湊人は恥ずかしそうに、布団を口元まで引き上げた。
「保健の先生遅いね?」
「あ~、実は湊人をここまで運んだ後、各家庭に連絡しないといけないからって、保健室にある電話で、みんなのケータイに登録してある家の電話番号見ながらかけてて…」
「ん?」
「湊人のケータイ、充電切れてて見れないって言った。で…、俺もケータイ忘れたって言って…。家の電話番号覚えてないし…。先生、職員室にある連絡先、確認しに行った」
「…蓮、ケータイ今日忘れてないよね? オレのもちゃんと充電して持ってきたのに…」
「…その、湊人と2人きりになりたくて、嘘を…キスもしたかったし…」
「もう…」
湊人は呆れた。
蓮は湊人のおでこにキスをした。
「病院に行ってちゃんと検査してもらえよ?
頭打ったんだから。いや、正確には、『辞書で殴られた』かな?」
湊人はクスリと笑った。
「早く元気になってくれ」
「うん」
蓮は湊人の頭を優しく撫でる。湊人は蓮の手が気持ちよくて、ウトウトしてきた。
そして、いつのまにか眠ってしまった。
声のした方を見ると、ドアのそばで顔を赤くした桃華が立っていた。
「お前! 湊人にけがさせて…!」
蓮が桃華に殴りかかりそうな勢いで、向かっていった。
「蓮!」
湊人はベッドを降りて、蓮の背中に抱きついた。
「湊人?」
「蓮、やめてよ? 暴力は…っ…」
湊人は目の前が暗くなり、膝から崩れ落ち倒れた。
「湊人!」
「湊人くん?」
「…っ」
湊人が目を開けると、視界はまだボヤけていた。蓮の顔が良く見えない。
「湊人? 大丈夫か?」
「……れ…ん? みえ…ない」
蓮が驚いているのがなんとなくわかった。
(あ…余計な事言ったかも…)
「中田、保健室の先生は?」
「たぶん、職員室」
「呼んできてくれ! 湊人の様子がおかしい」
「うん」
桃華は足早に保健室を出ていった。
「…ハアッ…れ…ん…ハッ…ちがっ…オレ…ハア…ハア…」
「湊人、苦しいのか? 無理に喋るな」
おそらく、血圧が一時的に低くなって倒れただけだ。息切れもそのせいだが、呼吸がしづらいせいで、うまく喋れない。
「ハアハア…」
「湊人…湊人…」
蓮はまた泣きそうになっている。
(安心させてあげなきゃ)
「ハアッ…れ…ん…」
まだ体が動かない。
「だき…しめて?」
「うん」
蓮はぎゅっと湊人を抱きしめた。
「蓮。あった…かい」
「うん。湊人は少し冷たいな? もう苦しくないのか?」
「ん…。もう平気…」
蓮はホッとしたように息を吐いた。
蓮が湊人を体から離そうと、肩に手をかける。
「蓮…。ごめん、もう少し、このままで…」
「湊人?」
「まだ頭がクラクラして、体に力入らない」
蓮は、湊人を抱きしめたまま、片手を膝下に入れて持ち上げた。
「蓮?」
そのまま、ベッドに湊人を下ろし、横にさせて、布団をかけた。
「いつまでも床にいたら、また体冷えちゃいそうだから」
「…ありがと…」
湊人は恥ずかしそうに、布団を口元まで引き上げた。
「保健の先生遅いね?」
「あ~、実は湊人をここまで運んだ後、各家庭に連絡しないといけないからって、保健室にある電話で、みんなのケータイに登録してある家の電話番号見ながらかけてて…」
「ん?」
「湊人のケータイ、充電切れてて見れないって言った。で…、俺もケータイ忘れたって言って…。家の電話番号覚えてないし…。先生、職員室にある連絡先、確認しに行った」
「…蓮、ケータイ今日忘れてないよね? オレのもちゃんと充電して持ってきたのに…」
「…その、湊人と2人きりになりたくて、嘘を…キスもしたかったし…」
「もう…」
湊人は呆れた。
蓮は湊人のおでこにキスをした。
「病院に行ってちゃんと検査してもらえよ?
頭打ったんだから。いや、正確には、『辞書で殴られた』かな?」
湊人はクスリと笑った。
「早く元気になってくれ」
「うん」
蓮は湊人の頭を優しく撫でる。湊人は蓮の手が気持ちよくて、ウトウトしてきた。
そして、いつのまにか眠ってしまった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

勇者召喚されて召喚先で人生終えたら、召喚前の人生に勇者能力引き継いでたんだけど!?
にゃんこ
BL
平凡で人見知りのどこにでもいる、橋本光一は、部活の試合へと向かう時に突然の光に包まれ勇者として異世界に召喚された。
世界の平和の為に魔王を倒して欲しいと頼まれて、帰ることも出来ないと知り、異世界で召喚後からの生涯を終えると……!?
そこから、始まる新たな出会いと運命の交差。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる