愛を教えてくれた神は今日も隣で愛をささやく

藤波璃久

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いじめ

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放課後。帰るため、湊人と蓮は昇降口に向かった。
「あ、ごめん蓮。オレ教室に忘れ物した。先行ってて。すぐとってくる」
「ああ」
湊人が教室に着くと、中から女子の言い争う声が聞こえた。
そっと中を覗くと、桃華とクラスの女子の3人で、姫乃を追いつめていた。

「昼休みのあれなに? なんであんたが湊人くんにおぶられてるのよ?」
「…足痛くて…」
「桃華が仕掛けた画鋲踏んで、おいしい思いするなんて…」
湊人は、納得した。
やはり、画鋲の件は桃華の仕業だった。
前世でいじめられていた湊人の代わりに、大人しい姫乃がターゲットになっている。
 今世で自分がいじめられない代わりに、誰かがいじめられるなんて、そんなのは許せなかった。
「ムカつくのよ。あんた見てると」
桃華が姫乃の髪を引っ張り始める。
「やめろ」
湊人は、3人の間を抜けて姫乃の前に立ち塞がる。
「湊人くん」
姫乃が消え入りそうな声で言う。
「大丈夫だよ」
湊人は優しい声をかける。
「湊人くん、邪魔しないで」
湊人は深呼吸してから言った。
「弱いやつをいじめるなんて、最低だよ。山田さんが何かしたの? 気に入らないからいじめるなんて、人間として最悪の行為だ」
湊人は、前世で言いたかった事を思い切り声に出した。
心の奥にあった黒いモヤが晴れたような、すっきりした気持ちになった。
(前世でこんな風に言えたなら、自殺なんてしなかったんだろうな)
「オレ、いじめをするヤツって大嫌いなんだ。中田さんとは付き合えない」
「そんな事言って、ホントは山田と付き合うことになったんでしょう? 絶対、許さない」
「違うって! オレの恋人は蓮だって言ったろ?」
「男同士で恋人になる人なんていないもん。山田のせいなんでしょう? 他人ひとの彼氏盗るなんて、許せない」

桃華は、そばにあるロッカーに誰かが置いていた、重い辞書を手にとると、湊人を押し退け、姫乃にむけて振り下ろした。姫乃は俯いている。
「っ!」
湊人はとっさに姫乃をかばう。自分よりも頭一つ分小さい姫乃に覆いかぶさる。
ーゴッ!
重い音がして、湊人の後頭部に辞書が直撃した。
「うっ!」
湊人は気を失った。
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