愛を教えてくれた神は今日も隣で愛をささやく

藤波璃久

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逆行転生?

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 (何か聞こえる。赤ちゃん? 泣いてる…)
美奈子は目を開けた。よく見えない。
今、大声で泣いているのは、自分自身だった。
(私、赤ちゃんになってる)
美奈子は思った。自分は生まれ変わったのだと。けれど、前世の記憶がある。こんなパターンもあるんだ。
今世こそ幸せになりたい。美奈子の心は希望に満ち溢れていた。

「おめでとうございます。逢沢さん。頑張りましたね?」
看護士の声に耳を疑った。
(逢沢? 確かに今、逢沢と言った。まさか…)
産まれたばかりの赤ん坊の目は、ほとんど見えない。だが、母に抱っこされ、その顔が間近に迫った時、疑惑は確信に変わる。
ぼやけてはいるが、見覚えのある目、鼻、口、顔の輪郭。その全てが前世で母であった逢沢美沙子みさこだと物語っている。

美奈子は、絶望に打ちひしがれた。何故よりによって、もう一度自分に生まれ変わらなければならないのか。

「かわいい男の子が産まれて良かったな」
父らしき人物の声。
(男? 今男の子が産まれて…って言った?)
美奈子は、自分がもう一度同じ両親から、今度は男として生まれたのかと、自分の体を確認したいと思った。だが、産まれたばかりの体では、手足も自由に動かせない。決定的な証拠が見たいのだが…。

しばらくして、母と自分がいる病室に祖父がやってきた。
「男の子が産まれたか。でかしたぞ、美沙子さん」
美奈子は確信した。やはり自分は男として生まれ直したのだ。祖父が自分にむけた満面の笑みは、前世では見たことがなかった。

 自分の名前は、前世での『美奈子』から、湊人みなとに変わった。
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