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第七章 勇者するより旅行だろ・・・?
第百二十八話 お仕置きの時間です
しおりを挟む◇第三者視点
自然を操る特殊な異能を持った神谷瞬。その男は今、キャラも忘れて殺戮を進めていた。消えた仲間の捜索と亜人の救出を請け負った彼。化物として新たに誕生した彼は、本来ならばこの世界の戦争へと参加する権利を持ち合わせてはいなかったのだが・・・
「ラッキーだね。まさか、他の化物が参戦してくるなんてっ!」
適当に地割れを起こし、雷を落とし、竜巻を発生させる。自然災害の権能をその身に纏った化物はこの世界に敵などいない、と人間、魔族を殺していく。かつて日本で怪物と呼ばれていた王の兵士も彼の能力を見て、その場から撤退した。
自然災害を操る彼を相手取るには、それに耐えられる身体が必要で、例え怪物であったとしても体が人間では相手にならないのだ。それへの耐性か、それに対抗出来る能力を持っていなければならない。
故に、神谷瞬はこの場で無双ができた。
矛盾王や覇王のように一対一で無類の強さを誇る人物とは真逆の一対多を得意とする能力。弱き者が群れを成す戦争では敵無しなのだ。
しかし、そんな彼を止める力がそこにいた。
化物には化物を。
超越した力には超越した力を。
「・・・・・・本当は戦うつもりなど無かったのだけれど」
高校生にも見える気だるそうな青年はそう言った。
彼が戦場に足を踏み入れた瞬間、ありとあらゆる生物はその場から消え去り、着ていた防具や年季の入った武器たちは消滅した。消え去った兵士たちをいじめていた天災すらも、足跡すらも消されてしまった。
戦場にあるのは荒れ果てた大地だけ。
至って普通の、どこにでもいそうな青年はただ腕を凪いだだけだ。
「・・・・・・誰ですかね?」
「そんなことはどうでもいい。君も僕らと同種なのだと言うならば、あまり手を煩わせないでくれ」
「同種?」
「君もまた化物の一人だというのならば、他人の呪いに手を突っ込まない方がいい」
「呪い・・・心当たりないですね。僕が貴方の呪いに手を加えたと?」
「もういい。若輩者には分かってもらえないのはいつもの事だからね」
「若いって・・・同じくらいにしか見えませんが・・・・・・」
化物二人。
片方は新参者、もう片方は最恐。
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「・・・じゃぁ、流星」
瞬が軽い口調で放ったその一言により、空から巨大な隕石が姿を見せた。どこから呼び寄せた、などという話は意味をなさない。自然現象全てを操る瞬にとっては何かを出現させることなど造作もない。
その巨体を覗かせた隕石は大気圏を越え、炎を纏って落ちてくる。尋常ではない速度で落下してくるその隕石は、一つではない。上空のあらゆる方位から敵対者に向かって進んでくる。
青年は上空を見上げる。
しかし、その表情に焦りの色はない。
「・・・・・・期待はずれだな。失せろ」
呟いた。
その瞬間、あれだけ迫っていた星の圧迫感は消え去り、青い空だけが残された。超質量の物体が消えた余波も感じない。それすらも、消えてしまった。
天災製造機と化している瞬も唖然とし、声が出なかった。
流石に予想外だったのだ。
破壊や焼失、その辺りは考えていた。敵が同じ化物ならば、その程度ならばいとも簡単にやり遂げてみせるだろう、と。
しかし、今回ばかりは相手が悪い。
瞬とて、化物の中ではそれなりに優秀な能力を持っている。その不死性と自然を操る能力は化物に相応しい力だ。
ただしそれは敵が同じクラスの化物だった時の話。
目の前にいるのは『虚無王』だ。
あらゆるものを無に還す存在。
黒田と覇王に同格であると認められた最強の一人。対能力者に絶対的な力を誇る敵に回してはいけない類の人だ。
ようは、喧嘩を売る相手を間違えたのだ。
たとえそれが、相手からのお誘いであったとしても、すぐさま逃げるべきだった。
「君は調子に乗りすぎた。少し反省するといい」
「くっ、僕はまだ負けてない!!」
「いや、終わりだよ。『虚無の世界』」
瞬と虚無王の空間だけが変わる。
何者であっても逆らえない世界。あらゆる異能が封印された能力者殺しの空間だ。虚無王だけが能力の使用を許された理不尽極まった世界だ。
「なんで!?操れないッ!」
「無駄だ。君がいくら頑張ったとしてもこの世界を破ることは出来ない」
この世界を打ち破ろうと考えても、打ち破るための能力が使えないのでは意味が無い。
無駄な足掻きだ。
何をしても、どれだけ能力に力を送ったとしても、無駄。その努力も虚無の前では一切の利を生み出すこともできない。
「不可視の結界を張った。その空間で暫く頭を冷やすといい」
「くっ!!待てっ!僕はまだ負けてなんかないっ!」
結界とやらに向かって殴る蹴るを試すが、それら全てが空を切る。だが、その場から動くことも適わない。
ジタバタするだけで、全てが無駄に終わった。
聞こえているはずの瞬の悲痛な訴えも全て無視し、虚無王は踵を返す。
普通に生きるために行動を選ぶこの青年。ここに来たのは小僧にお仕置きをするため。ただそれだけだ。しかし、滅多に行動しないこの男がわざわざ出向いたということは、それほど危険と判断したのか・・・それとも、これからに期待しているのか・・・。消さなかったことから、後者なのかもしれない。
「はぁ・・・これは一つ、貸しにしておこうか」
閉じ込めた化物を生み出したかの最強に向けて、誰にも聞こえないような声でそう告げた。
最恐の愛妻家は愛する妻の待つ戦争のない地へと消えた。
―――――――
はたつばです。
今回はダブルよ
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