上 下
117 / 138
第七章 勇者するより旅行だろ・・・?

第百十一話 触らぬメイドに祟りなし

しおりを挟む
短いね!

―――


◇とある神の視点

  なんというか、これはまた・・・予想のできない展開になったものだよ。

  この世界に異変が起きつつあることは理解していたが・・・ここまでとは思わなかった。創造神様はなにをされているのだろうか。化物共の侵略に気付いていないはずがない。なにをしているんだ?

  化物共はかなり多い。

  この世界を守ってくれている彼女らは私よりも数段強いから、死ぬことはないだろうけど・・・。全ての侵入者を妨害することは不可能だろう。証拠に、既に何匹かこの世界に降り立った者もいる。ずる賢い奴らが多く地上に降りてるはずだ。
  まさかとは思うが・・・この世界の神々も支配されたわけではないだろうね。私を幽閉した奴らがボコられたとなると、あの子たちも危険だ。

  いち早く、生き返る。

  すぐにでもここを抜けて、あの子を助けに行かないと。
  私の話を聞いて、賛同してくれたあの子を。助けに行かないと。

  焦りを感じつつ、私がジタバタあばれていると、過去一度だけ出会った白い少年が現れた。

「助けてあげようか?」

  そう言うと、私の手足についていた枷が破壊され、体の半分を取り込んでいた闇も、苦労する様子を見せることもなく消してしまった。

  こいつは

「世界・・・」

  神出鬼没。
  楽しさを求めている快楽者だ。私が神を追われることになる前に出会った世界最高権力者。

「それは若干違うかな」

  このように、平気で心をのぞき込んでくるやつだ。味方としてならば心強いが、敵になれば勝ち目はない。どんな小細工を使い、どんな手段を用いたとしても、倒せはしない。

「あいつがいる間は僕の出番なんてないしね。こういう所でいるってことをアピールしとかないといけないんだよ」

  ヤレヤレと頭をふる世界。
  こんな大物が私を助けに来るとは思いもしなかったが・・・

「ま、半分はこっちの責任だからね。腐れ神共がこの世界から僕の世界を侵略する準備をしているのがとてつもなく気に食わないけど、それもまた、いずれ現実を教えてあげてればいい」

  この世界という生物はなかなかにおしゃべりだな。化物たちにありがちな傾向だ。上位者ほどのんびりで、適当な生活を送ってる。野心があるのは下位の化物たちだけだ。そして、この世界に侵入してきてる化物たちはそんな下級のもの。多少上位者もいるが、単なる遊びだろう。

  なにせ、この世界には・・・

「強欲王がいる。虚無王も、覇王も。死神が混ざればそれこそ彼らの侵略は時間の無駄だ」

  力の差を忘れていなければ、挑むことはないがね。

「どうだろうね~。意外と挑みに行ってたりね~。魔導王と惰王に正面から挑めない時点で、勝てるはずもないのにね」

  強欲王、虚無王、覇王。

  化物の中では頂点に位置する者。

  あの三人がこの世界を守ってくれればとても楽なんだけど。そうもいかないだろうね。彼らは気分屋だから。

「そゆこと。今回僕がここに来たのは、君の封印された権能の一部を解放するため。君の支配下にある子達もそろそろテコ入れが必要でしょう?」

  確かにね。
  ここ十年で私の力は飛躍的に向上していると思うけど、全盛期に比べたら1%も戻っていない。
  あの子が必死になって力を掻き集めているのは理解してるが、やはり足りない。

「んじゃ、さっそく」

  世界が両手に白い光を浮かべ、私に向かって一歩二歩と近付いてくる。改めてみると、やはり強くみえる。見た目が幼い少年なので、なめられがちだが、この少年は正真正銘世界を統べる絶対的強者だ。

  私の外見上変化は見られないが、中身には変化があった。

「さっき言ったとおり、君の権能の一部を復活させた。これで君の加護を持つ彼も少しは強化されると思うよ」

  なんとも簡単に言うんだね。

「そりゃもちろん。君ら神とは格が違うからね」

  一瞬ムッとしてしまったけど、納得はできる。創造神様ですら、この少年には頭が上がらない。それどころか、話しかけることさえできない高位な存在。私たち神ですら正装をして膝をつく雑多の一つに成り下がる。

  しかし、これであの子は死なずに済む。

  今回だけは感謝しておこうかな。

「僕はまだ仕事があるから、これで失礼するよ。完全無敵な女神様」

  余計な言葉を残していきやがった。
  昔の話はあまりされたくないんだけどな~。黒歴史ってやつ。

  って、そんなことはどうでもいいんだったね。
  すぐにでもあの子の加護を強化して、他の陣営に負けないようにしてあげないとね。


◇◆◇◆◇


  化物のメイド。

  化物界では有名なフレーズで、顔は知られずとも、名前やその噂は下位の化物の耳にも入っている。隠そうとも隠せない新参者。

  そのメイドが化物として戦う姿は誰にも見られていない。

  それだけに、彼女が実力あるものなのか試そうとする者も多い。
  しかし、それがうまくいった試しはない。なにせ彼女を狙っていた化物たちは計画を立てたその日に姿を消すからだ。昨日まで飲みあかしていた暴力の塊たちが次の日にはまるで存在していなかったようにいなくなる。
  いまや一種の都市伝説的なものに発展していたりする。

  そして、化物たちの間で権力を持つ一部の統率者達は自分の配下に向けてある報せを出した。それは単純ではあるが、一化物を警戒するには過剰だと思われるような内容だった。


一つ、その主人を貶すことを赦さぬ
一つ、その者に挑むことは赦さぬ
一つ、時を悪用することを赦さぬ

一つ、決してその姿を見てはならぬ

※コレを破りし者は地獄の最下層行きとなる


  理不尽の王や自由組の各王達とほぼ同列の扱い。
  姿を見てはならぬ、これに至っては自由組すらも凌駕する規則。

  権力者たちはそれほどまでにこのメイドを恐れているのだ。

  現れてたった数年しか経っていない化物相手になぜそこまで怯えるのか。疑問を持つものは多いが、権力者たちはその理由について一切語ろうとしない。派閥、コミュニティを持たない古参の化物達も誰ひとりとして口を割らないのだ。

  唯一口をすべらせたのは楽園の王『ヤマ』。

  地獄と楽園、二つを支配下に置く化物界でもかなりの権力者である彼は言っていた。

「あの娘は我ですら手に余る。・・・誰に似たんだかな」

  その時のヤマは頭を抱えるような仕草をとったという。

  最上位の『世界』ですら、不干渉の契約を結ばざるおえなかった化物。その化物の手に余る存在。
  理解できるものは戦慄し、恐れることとなった。だが、馬鹿の大馬鹿を加速させてしまった。

  その結果、世界から化物が消えていった。

  様々な事件を経て、化物殺しのメイドの噂は世界中に広まっている。有りもしない憶測が飛び交うこともしばしば。
  神々はノータッチ。化物の上位者たちも見て見ぬ振り。

  そんな恐ろしいメイド様は今、とある世界で主の帰りを待っている。・・・・・・恋敵とともに。



「マリーさん、どこに行ってたの?」
「少しばかり、狩りお掃除に行っていました」

  ちょっぴり危険な二人は物騒な毎日を過ごしている。

「あ、ケーキ作ってみたんだけど、あとで食べてみてくれる?」
「分かりました。ふふ、楽しみです」
「・・・私も少しはうまくなったんだから・・・!」

  二人の花嫁修業に終わりは来るのだろうか・・・・・・。




―――――

はたつばです。

ごめんなさい。主人公は次回です!
今回はバランス調整と少しばかりの説明を。

メイドの戦う姿が見たいです。


最近投稿する時間に間に合ってませんな・・・
ごめんなさい・・・!次こそは間に合わせる(白目)
しおりを挟む
感想 173

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...