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第七章 勇者するより旅行だろ・・・?
第九十六話 ロリコン紳士と鬼の世界
しおりを挟む今日は日が昇る前に起きました。
昨日の失態を思い出して、寝る前に強欲アラームをセットしておいたのだよ。時間になると、強欲の魔手と破壊の黒尾によりペチペチされる。あまりにも起きないと、強烈な打撃が主人を襲う仕組みだ。
さて、今日は朝から動こうと思う。眠くはない。そもそも睡眠欲はないからね。寝るってのは一種の娯楽みたいなものだ。
まずは、問題児の解決だ。そう、強欲から教えられた『アルディウス』がこの世界にいるという事実。これは早急に解決しなければなるまいて。何度も言うが、颯馬さんの愉快な仲間達は本当に常識がないのだ。自覚がないので、自制もしない。アルディウスが悪さする前に止めに行く。
場所はもう割り出してある。
寝込みを襲います。
転移を使って、アルディウスの寝ているベッドの隣に立つ。既に彼の左右には幼女が裸で寝ている。さすが。手が早いぜ・・・。異世界に来て数日で幼女を虜にするとは・・・イケメンってのは便利だな。
魔手と黒尾でアルディウスの顔をペチペチする。
「うぅ・・・なんだよ・・・もうちょっと寝させてよ・・・」
そう言って、また寝息を立てる。
「今すぐに起きなければ、お前の近くにいる幼女全てをババアにする」
「はっ!誰だ!そんな恐ろしいことを考えているやつは!」
起きた。アルディウス達はかなり、頭が弱い。
「・・・ってあれ、楓?なんでこんな所に・・・」
「強欲から話を聞いてないのか?」
「いや、君の力が自我を持ったってのは聞いたけど・・・」
あの野郎・・・説明しとけや。
「まぁいい。んで?糸使いの紳士様がなぜこんな世界に?」
「新たな幼女を見つけ出すためさ。あと、少しばかりババアに用があってね」
ババア=マーリンである。
「問題だけは起こさないでくれよ?」
「さぁてね。それはこの世界の住人次第じゃないかな。僕の愛するものを傷つける輩は生かしてはおけない」
あ・・・これはもう既に何人か殺ってるな。
アルディウスは糸を使って絞め殺すのが得意だ。糸で国一つ落としたこともあるくらいだからな。彼は奴隷が間違っているとは言わないが、彼の目の前で幼女奴隷を殴ってもみろ。次の日には一族揃って首を吊られてるぜ?
ナチュラルサイコパス野郎だからな。
「あ、そうだそうだ。お前とは少し違うが、子供愛好家がいるぞ」
「え、ほんとうに!?」
「おう。流石に性的興奮は覚えてないし、どちらかと言うと孫を見てるような感じだが・・・幼子を大切にする気持ちはお前と似たものがあるかもな」
あいつだよ。ジジイ竜だよ。元気にやってるかな~。
「それは面白いことを聞いたね。ババアの所の次に目指してみようかな」
こいつにとって見た目年齢が20歳を超えた瞬間にババアだ。しかし、自分が育てた幼女がその歳になった時には、拍手と笑顔で送り出している。彼の育てる幼女は優秀で、様々な世界で活躍していたりする。
彼は育てた子ならば、粗末に扱ったり、貶すことはしない。それは過去の自分を冒涜する行為なのだとか。
アホの言うことはよく分からんってハッキリわかるな。
暫しの間情報交換をしていると、裸幼女がのそりとベットから起き上がる。・・・この絵面なかなかにアウトだな・・・。
アダルティックダメダメよ。
・・・まさか行為には及んでないよな?あいて幼女だよ?
「はっ!誰ですかあなた!アルディウス様、お下がりを!」
その幼女が高速で抜刀し、俺に剣を向けてくる。
「いや、なんでやねん」
さっきまで一矢纏わぬ赤子の姿だったじゃん。その剣どっからだした。てか、ベッドの上で「お下がりを!」なんて言っても、アルディウス困ってんじゃん。アルディウスの左腕にはもう一人の幼女が抱きついてんだから。
「アルディウス、殺っていい?」
一応確認をとっておこう。これで後々「許さない」なんて言われたらたまったものではないからな。二日連続で化物相手にするとか考えられないんですけど。
「楓、許してあげてください。ライラ、お下がり。こいつは僕の古くからいる友人だ。害することは許さない。・・・害することも出来ないけどさ・・・」
その通り。幼女の腕力で振るわれた剣なんて可愛いもんよ。俺の体に当たった時点で剣は折れるし、魔手と黒尾に羽交い締めにされるだろうよ。
「しかし!この男はっ!」
「それ以上言わないで。この人は僕より強いんだから。今は味方でも、敵になることもあるんだ」
俺は『強欲王』だからな。気分のままに動くのよ。世界から一人人間が消えるくらい俺にとっては痛手でもないし。
「アルディウス様が最強なんです!貴方が負けるはずありません!」
「・・・それはっ!」
アルディウスの心臓付近を魔手が貫き、心の臓を握り潰す。
糸の鎧も強欲にかかれば紙と変わらん。
「アルディウス様っ!」
俺のことを睨む幼女。
「残念だな。今のはお前が俺的に気に食わない言葉を口にしたから、アルディウスは死んだ。言ったよな?敵になることもあるって」
「あ・・・あぁ・・・」
やっぱし化物相手だと、容赦しなくていいから楽だわ。
「殺す・・・絶対に殺す・・・!!」
「やめなさい。反省しなさい」
暴走直前の幼女を糸がグルグル巻にする。・・・裸の幼女と糸はアカンと思う。特殊な性癖×2とか反応に困るんですけど・・・。
でも本当に容赦ってのが無くなるわ。
生き返るから。
「アルディウス・・・様・・・?」
「うん。生き返ったよ~」
「や、やっぱり!アルディウス様がさいきょ――」
「あ・・・」
またもアルディウスの心臓を魔手が握り潰す。
「癒せ」
「痛いじゃないかー!その短気直した方がいいよ!プンプン!」
「最強の座は渡さーん!」
俺がどれだけの死闘の末今に至っているのか!なんど死にかけたことか!俺の犠牲となった者のためにも俺は最強として君臨し続けなければならない!
俺が絶対に譲れない部分だ。彼らは世界最強によって滅せられたのだと。そう納得してもらえるようにな!
「ライラ、分かったかい?この人は本当に馬鹿げてるんだ。例え僕の為でも、戦うことは許さない。それに、僕は最強じゃない。メンバー内最強は颯馬だしね」
アルディウスが怒れる幼女を宥める。
しかし、これだけあっても起きない左側幼女がとんでもないな。俺だから知れる情報だが・・・ガチ寝だ。今現在、夢の中でアルディウスとチョメってる。
このロリコン紳士・・・もう一回殺してやろうか・・・。
「ん?なんか寒気が・・・」
「大丈夫ですか?アルディウス様・・・」
その人はもう大丈夫じゃないよ。普通の人間にはもう見られることはないだろうから。
「そうだ楓。実はさ、僕達街に行く機会も無ければ、そもそもお金もなくってね。食料とか衣服とか便利品を頂けないかい?」
図々しいな。
「頼むよ。僕の幼女フィギュアを一人捧げることも厭わないよ・・・!!」
いらねぇ・・・!ここまで要らないのはなかなかないぞ。てか、こいつの中で一番高い交換品が幼女フィギュアかよ。
てか、一人て・・・。
「食料とかそんなもんは対価なしでくれてやるよ。その代わり、ある少女が危機に陥った時、助けてやってほしい」
「そんなことでいいならいくらでも。でも、僕は探知系の能力は持ってないよ?」
「感知できる範囲にいたらでいい。他にも何人か頼んでるからな」
「そっか。それなら良かったよ」
この世界の遠く離れた所にいる食料になる魔物を乱獲し、血抜きを終えて、この場に転移させる。あと、地味に異界に隔離していたペットの中から馬を召喚する。一応足になるように、竜種をプレゼント。この世界産ではないが、アルディウスなら問題ない。陽竜ですね。服なんかは原典にある物をいくつか拝借。
「こんなもんでいいか?」
「うん。至れり尽くせりありがとう。これは・・・陽竜かい・・・?」
「おう。とある世界で暴走したところを回収して、調教した。太陽の光を扱う竜だ」
大きいから、テントごと運べるお。・・・アルディウスも異空間収納があるから必要ないけどね。
ポンポンと現れる食料、服、竜に顔を引き攣らせる幼女。あ、やっと力の差が分かりました?
「これで幼女旅が加速するよ」
お前ろくでもねぇな。
「アルディウス様・・・」
「あぁうん。そうだね。目覚めちゃったし、昨晩の続きでもしようか?」
「・・・はい♡」
・・・帰ろう。
次のポイントにすぐに移りたいね。よし、行こうか。こんな所いられるか!俺は億を超える世界を体験したが、それでもなお、DTを崩さなかったエリート戦士だぞ!
俺を目の前に、掛布団でバッとふたりを覆い隠し、チョメ始める。俺の前で喘ぎ声とかやめろ。なんの拷問だ。
・・・次に行くか・・・。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
次に来たのは玉座の間。
「何者だ貴様ァ!」
「侵入者!侵入者だァ!」
鬼騎士が叫ぶ。
ここは鬼の世界。人も動物もいない。食料は野菜と異界の肉だ。
「えぇい!!沈まれぇぇぇ!!」
怒声が響く。その一声で鬼騎士達は全員押し黙る。柱が揺れ、玉座のある建物自体がグラグラと揺らぐ。
そして、玉座から立ち上がる。一人の鬼。この世界における絶対者。
「久しいですな。楓様」
鬼たちの王。鬼王その人である。
「よっす。気になってきちった。迷惑だったか?」
「いえ、そのような事は全く。むしろ準備が整わず、ご迷惑おかけしました」
鬼王は話がわかる。
俺の顔を知ってる鬼神達も頭を下げている。その異様な空気を察して、鬼騎士達も同じく頭を下げる。
「いや、アポ取ってなかった俺も悪いからな。迷惑料を請求していいぜ?」
アルディウスにもさっきあげたからな。
「ではいくつか、宜しいでしょうか」
「ドーンとこい」
「では、まず。本気になって頂いてよろしいですか?」
鬼王のプレッシャーが跳ね上がる。鬼騎士がガタガタと震え、鬼神達も少し苦しそうに唇を噛む。
俺もそのプレッシャーを感じながら、強欲と破壊を纏う。
昨日奏汰と戦った姿になると、鬼騎士はすぐさまひれ伏した。鬼神は俺を崇め始める。
「見たか貴様ら!これが世界最強の力!我らが目指すはこのお方よっ!」
そう声高らかに宣言する。
鬼たちは実力主義だ。そして、己の知る最強を目指す。ここに来る鬼以外の者は必ず試される。尊敬すべき強者か、価値もない弱者か。弱者は鬼の餌になる。それがここでのルールだ。
「楓様。失礼、お許しください」
「いいよいいよ。怒鬼と友好的にしてくれるのは鬼王と血鬼だけだからな」
奏汰が鬼として同等に立てるのは鬼王だけ。ほかの鬼では萎縮してしまう者もいれば、逆に教えを乞うものもいる。
「さて鬼王。この世界の調子は?」
「好調ではありますね。作物の調子も、鬼の強化も。楓様は今は何を?」
「ある世界で遊んでるよ。つい最近昇格した世界でな。世界自体もなかなか面白い」
「ほぉ・・・」
鬼王が目を細める。
「それならば・・・」
「父上ェ!!」
鬼王が話を続けようとした瞬間に、玉座の間の扉が勢いよく開かれる。
一体の鬼とそれを護衛する鬼騎士がズカズカと玉座の間に侵入する。・・・父上って言ってたし、息子か?
「んなっ!父上!なぜ、このような所に人間如きが!!」
鬼王はヤレヤレと頭を抱え、鬼神や元からいた鬼騎士達は顔を真っ青にし、その後目に見えて分かるくらい顔を赤くし、怒っている。
王の反応からして、割とよくあることみたいだな。
「このお方は私の客人だ。下がっておれ」
「いいえなりません!王である父上がこのような下賤のものにそんな口調で話す必要はございません!」
息子の後ろで控える鬼騎士がうんうんと頷いている。・・・アホだ。
「父上もお歳のようだ。こんな雑魚相手に下手に出るなど。鬼としての誇りをお忘れですか!」
「いや、だからな・・・」
「分かりました!私がこの阿呆を断罪してさしあげましょう!」
断罪って・・・俺が何したんだよ。
ホントならお前もう打首だぜ?化物入りしてるわけでもなさそうだし、死ぬぞい?
「強くなった私の力を見せて差し上げましょう!おい!アレをよこせ!」
「はっ、こちらに・・・」
「待て!それを使ってはいかん!!」
取り出されたのは『鬼王のオーブ』。鬼王、怒鬼、血鬼の和平を象徴する印として、俺が作り出したオーブだ。鬼王のオーブは殺戮を好む化物から国を隠す力を持っている。そして、鬼王のオーブは取り込むことで、自分の力を数十倍にはね上げるというものだ。
その時点で自分の力ではないのだが、鬼王が危惧しているのは別のことだ。
鬼王のオーブがもしも、破壊されてしまった場合。鬼の世界に餌を求めた無数の殺戮者が来訪するわけだ。
いくら鬼達が強いとは言っても、化物が大量に来れば、滅亡は必死。
そして、その事は王と鬼神達しか知らない事実だ。
「くっくっく・・・!これだ・・・!この力だ!私は最強だァ!もう何者にも負けねぇ!父上見ててください!私がこの不敬人を滅しましょう!」
うわ・・・。
今日の俺すごく敵をひきつけてる!?悲しいな・・・今日1日、敵を作らないように気をつけないと・・・。
・・・元はと言えば、アルディウスが悪い。
「楓様、申し訳ございません。オーブが・・・」
まぁ取り込まれちまったわな。
これでここを守る結界も消え去って、たった今から化物侵入し放題だ。もともといい餌があるってことで、狙われてたからな~。
「きたぞ。構えろ」
ーーGyaooooooooooo!!
おおー。元気なこって。
現れた神のなり損ないや狂い人達。
「鬼王。何人か死ぬことは覚悟しろよ?」
「分かっております。」
「なんだあれは!私が退治して見せよう!」
お前じゃ無理だバカ息子。てか、俺を倒すんじゃなかったのか・・・。
バカはその場から飛んで虎の神に向かっていく。気性が荒く、肥えた人型が大好きだ。そして、感情を喰らうこともできるので、正義の者や悪に満ちたものがよく狙われる。
バカ息子は・・・いい餌だ。
そういった神やなり損ないは少なくない。
つまりだ。獣の群れに超高級肉が放り出されたわけだ。
奪い合い。
涎を垂らした虎が分身を取り残して、背後からパクリといこうとしたところを神龍がタックル。
「おお!私を助けてくれたのだな!感謝するぞ蛇!」
そんなはずはなく・・・次は大口を開けた蛇を上空から片手に民家を持ったゴリラが急襲する。叩きつけられた神龍は地上に落とされる。
争奪戦から外された虎と龍が咆哮をあげる。
ーーGyaaaaaaaaaasss!!
その咆哮は餌の在り処を示す咆哮。独り占めはさせまいというささやかな嫌がらせである。その叫びは街の破壊を続けていた化物を呼び寄せた。
空飛ぶ鯨や闇の剣を携えた男、5mはある翼を4対持った悪魔。
様々な化物共が、その姿を確認した瞬間から我先にと行動を始める。
「あ・・・あぁぁぁ・・・」
その威圧感たるや。
バカ息子は足を震わせ、意気消沈としていた。
「・・・バカ息子が・・・!!」
「管理が甘いんだよ。これを報いとして、次は気をつけろよ?」
「・・・はい」
助けに行ってやるとするか。
真の姿で空を歩く。
バカ息子に近づいていくと、俺の存在に気付くものが現れ始めた。
「bdpm2:8c1:・・・」
「q5Aegmczp/a?」
「2/iGamc'dgcz」
口々に俺に文句を言ってくる。こいつだけは喰わせてくれと。こいつらからしたら一年に一度しか開かない店の一つ限定スイーツ的な扱いなんだろうな。死にものぐるいで争って、ようやく手に入れる代物。
それをポッと出てきた最強生物に横取りされてはたまったものではないのだ。
「いやでもなぁ・・・」
ここからは翻訳していきます。周りはギャースギャースって言ってるようにしか聞こえない。
『そこをなんとかしてくれよ。最近は他世界への侵入も減らしてたんだ』
『そうだぞ。貴様と世界のいいつけを守って、生活していたんだ』
『一人くらいいいじゃねぇかよ!』
「親友の懇意にしてるとこの息子なんだよなぁ・・・」
『では、こやつの父に会わせて欲しい。なに、貴様の前でアホなことはせん』
俺が来たせいで困ってしまった化物集団。ちなみにこいつらは、原初の世界では生きていけない者達で、弱くはないが、強くもない中途半端な者達なのだ。上位種を喰らうことが出来ないし、かといって一つの世界に入ってしまえば破滅をもたらすことになる。
こいつらも何気に苦労しているのだ。
「・・・交渉次第な」
『感謝する』
ニヤリと笑みを浮かべた翼を持った悪魔。
俺的には誰の味方というのはするつもりないからな~。知り合いは守るが、それ以外は正直ねぇ・・・俺は聖人じゃねぇからな。
「・・・なるほど、そういうことですか」
「あとはお前らで話せ。鬼の言葉を使えるようにしといた」
「すまないな」
そこから先は鬼の王と臨時代表の悪夢が対談することに。
バカ息子に関しては、俺が結界で逃げられないようにしてある。
そして結果は・・・
「息子はあなた方にお譲りしましょう」
王が折れた。
息子を簡単に手放せるのも、鬼の王には多くの子供がいるから。そして、その中にもお気に入りがおり、その子達を育てる上でバカが邪魔だったそうだ。
息子を譲る代わりに、暇な時は世界の守護をすることになった。一応俺がオーブを新たに作ることになっているので、それがまた壊れたり、取り込まれたりといったような非常事態時の守護だ。
そして現在は・・・
「破邪の剣!」
「無剣の盾!」
「泉の紋章!」
「邪眼!」
「永久の種!」
「神龍種の卵!」
「永久宝樹の種!」
オークション実施中だ。
鬼の王が気に入るか、最高級のものが現れれば、落札だ。ちなみに今は肉体のオークション。その後は更なる争奪戦が予想される『魂』だ。
肉体は『永久宝樹の種』に決定した。
俺も驚きの品だ。まさか肉体にここまでかけるとは思わなかった。どんな世界でもどんな土地でも死ぬことなく育ち続ける宝樹で、この樹のある世界は永久的な豊作が約束される。
人のように食べて寝て生きていく種族にとっては必須とも言える。
「さすがは鬼の王様。お目が高い」
「いや、あのバカがこれに代わるとは。礼を言いたいのはこちらだ、漆黒殿」
「我々にとっては食事とはそれほどにかけがえないものなのだよ」
抑圧された生活の中で唯一の娯楽とも言える『食事』。彼らにとってはそれは万の財宝よりも価値あるもの。彼らにとって財宝なんてものは何の役にもたちはしないゴミと同じ。それで最高級が得られるならば是非もない。
「私も交渉人として魂の一割を貰うことになった。本当に王のおかげだよ」
笑いの止まらない二人。悪人が板についてる感じだ。
さて、次は魂のオークションだ。
「鳳凰の羅針盤!」
「混沌の砂時計!」
「破壊呼ぶ神の詩!」
「断罪のスクロール!」
「宿刈りの腕輪!」
「創世の腕輪!」
「・・・王邸の家畜長!!」
『おおおおぉぉぉ!』
歓声が上がる。
神の中でも持つものが少ない王邸の家畜長。これは神の中でも欲しがるものが多数いる一級品。これがある状態で家畜を育てると、一体ずつのオスとメスから最大で百体まで原典の神界でさえ超高級品に当てはまる家畜に育つのだ。とても美味いのだ。オスメス一体ずついればほぼ無限に増殖する家畜セット。
鬼の王はホクホク顔である。
「確かに『永久宝樹の種』と『王邸の家畜長』を頂きました。その者はご自由にどうぞ」
商談がまとまり、お互いが商品を受け渡す。
それだけで上がる大歓声。肉体は最初に見つけた虎の神が。魂は一割が悪魔で、残りの九割を闇を纏う人型生物が獲得した。
「強欲王よ。これらを早速食したい。自由に使ってもいい世界を紹介してくれないだろうか」
虎の神がそういう。
ゆっくりじっくり食べるのだろう。そして、それの匂いだけでも頂こうと虎、闇の人、悪魔に付いていくる。
「分かった。俺もそろそろ元の世界に帰ろうと思ってたからな。鬼王、達者でな。また頃合いを見て来よう」
「はっ。またのお越しを心よりお待ちしております」
鬼王とその下につく鬼神や鬼騎士が膝をつき、頭を垂れる。
それを確認し、世界の門を開ける。せっかくなので、この獣たちに控え室を提供しよう。特定の世界で食事すると迷惑がかかるからここで食えってことだ。
一応緑豊かな世界を作ってやる。
そりの合わない者と鉢合わせしないように、広さもとる。
「おぉ・・・さすがは強欲王。その力、感服だ」
あまり気の長いヤツらは少ないので、とっとと退散。
こいつらのお食事を邪魔するのも悪いしな。
と、いうわけで戻ってきた。
丁度飯の時間だな。廊下で明日香と出会った。
「おはよ、楓」
「あぁ、おはよう」
こういう平和な暮らしが一番だな。
――――――
はたつばです。
そろそろ前章より前から出ていたキャラクターも登場します。敵か味方か、正義か悪か・・・はてさて、どーなる事やら。
新キャラも出ますよよよよよ。
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