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第五章 学園祭。この日を待っていたぜ
第六十六話 一日目の終わり
しおりを挟む一日目の午後。
俺達は子供たちのクラスからすぐ近くにある、上級二年のAクラス、つまり勇者のいるクラスの一つへと来ていた。
吉岡や会長のいるクラスだ。
嫌な予感しかしない。いや、店自体はまともだ。だが、さっきから会長とチラチラ目が合うのだ。
「ご主人様、ここでお昼をすませちゃいますか?」
「お、おう」
マリーからの声掛けもぎこちない返ししか出来なかった。
2-Aクラスはお化け屋敷兼飯屋って感じだ。隣の空き教室をお化け屋敷に改造し、2-Aクラスはその様子をモニターで見れるようになっている。メニューも本格的な料理ばかりで、朝昼晩とここで済ますことができるようだ。
勇者も現地の者もみんな楽しそうだ。
仮装も様々で、吉岡は狼男、会長は雪女、伊野は吸血鬼、影宮はデュラハンだ。
能力を使って再現したり、天才の力で完璧に扮装していたりとかなりクオリティは高い。お化け屋敷の方も絶叫が響いている。
「楓・・・また会えたね。これはもう運命としか言いようがない」
あ、俺運命とか信じてないんで。
ついでに言うとここに来たのは君らに会いに来たからだよ。
「雪さん。久しぶりですね」
「・・・えぇ。お久しぶりです、マリーさん」
ヒュゴゴゴゴゴ。
ズザザザザザザ。
一方では吹雪が吹き荒れる音が。もう一方では地面、天井を刻む音が。
やめろよ。隣のお化け屋敷よりよ怖いじゃねぇか。あ、会長の般若が二刀流になってる。マリーの方も阿修羅を取り巻く龍が二匹に増えてる。
ヘルプミー誰か。
「よ、楓」
ありがとう、神様。
「吉岡!助けに来てくれたんだな」
「さすがにこれはな。店が潰れる」
やはりお前は最高の友達だぜ。
彼女と美女と野獣のようなイチャつきをしていて、ぶち殺してやろうかと考えていたが、俺が浅はかだった。お前が俺を見捨てるような真似するはずがねぇよな!
「会長、マリーさん。そろそろ止めておけ。他の人に危害が加われば、楓の気分も悪くなる。な?」
「お、おう。そうだな」
なぜそこで俺にふる。
だが、吉岡隊長のおかげで負傷者ゼロのまま二人の戦争を終わらせることが出来た。
「楓がそういうなら、止める」
「失礼しました、ご主人様」
二人共、言ったの俺じゃない。吉岡だよ。
「ふう。九死に一生を得たぜ」
「だな。一般人が巻き込まれれば死んでたかもしれない」
吉岡が周りに頭を下げて謝罪していく。
その間に俺は床や天井、壁の被害を直していく。あとは吉岡の凍傷と切り傷を直して終わりだな。
『再生』
テーブル一つ一つをまわっていく吉岡からグッジョブされた。どういたしまして。
「楓、楓」
喧嘩をやめた会長が話しかけてくる。
嫌だとは思ってないよ。うん。微塵もね。微塵も。
「私、武道大会にでる。応援してくれると嬉しい」
あー。言ってたなハゲが。勇者も参加する者は参加するって。
会長やら伊野やらが出たら勝てるやつなんていないと思うんだが……。勇者どうしの争いにならないか?
「私は一般部門に出る。光輝も一般部門。貴史と影宮は生徒側で出る。だから、一般部門だけでも見ていって」
いや、さすがに両方見に行くわ。
会長が戦ってるのも久しぶりに見るからな。応援しに行くよ。
学園内の方だと、吉岡と影宮も十分チーターだよ。影宮って影はとんでもなく薄いが、強いんだぞ。
「ご主人様、いかがなされますか?」
「見に行くよ。どうせ警備の方で見に行くことになりそうだし、変わらんよ」
お偉いさんがたは武道大会を非常に楽しみにしているようで、最初から最後まで見ていきたいとのことだった。
とりあえず学園祭二日目は様子見として俺が担当することとなった。
バルザックはどうか分からんがほかの三組はなかなか負けてくれないと思うんだよな~。とくにディスとアルバートな。負けるとは思えねぇ。
「ありがとう楓。嬉しい、当日は私だけを見ていて欲しい」
それは無理かな。
「お前ら、何の話してんだ?」
吉岡が帰ってきた。ありがとう、マイベストフレンド。
「武道大会の話。お前は学園内の方に出るんだろ?」
「あぁ、その話か。そうだな、俺は学内選考の方に出る。くじ引きで負けちまってな」
くじで決めたのかよ。
まぁ勇者なら学内の方でも一般の方でも簡単には負けないだろうがな。
今回お偉いさんを呼んだのも同盟国に勇者の力を見せるためだろうな。いざとなったら勇者と共に助けに行く。だから、貿易してくれってことだろうな。
ロザリアは完全に遊びできてるがな。
「楓、お前は出ないのか?」
「私も楓の勇姿が見たい」
「でるわけねぇだろ」
俺が本気で出たらコウセンと戦争する前に強者たちはみんな死ぬぞ。
そうなったら概念魔法で遊ぶつもりもないからな。
「せっかく強いんだから出ればいいのになー。もったいねぇ。マリーさんは出ないのか?」
マリーが出るわけねぇだろ。
「一般部門で参加いたしますよ」
参加するに決まってるだろ!何言ってんだよ!
「そこで決着を付けるわ。覚悟してくださいね、マリーさん」
「ふふふ。楽しみにしていますよ」
・・・武道大会でもこの修羅場が繰り広げられるのか。
お姉ちゃんたち。儂は胃が爆発しそうやで。
ほら、救世主たる吉岡も少しめんどくさそうな顔しちまってる。すまない、お前にはいつも迷惑をかける。
般若と阿修羅の闘争は置いておこう。
もう忘れるんだ。彼女達はじゃれあってるだけだ。決して命を懸けたりはしない。
そんなことを考えていると、吉岡がポンと手を叩く。
「楓、俺と一緒にエキシビションマッチに出ないか?」
エキシビションマッチ?
〈説明しよぉう!エキシビションマッチとは、武道大会最終日の決勝戦前に行われる決勝を盛り上げるための前座的なものなのだ!〉
・・・世界眼さん。キャラチェン?
〈いかがでしたか?〉
失敗しとるがな。そのキャラヘン失敗しとりますよ。
いやまぁ、エキシビションマッチについては分かったけどね。
「な、どうだ?俺も一般側の人と戦いたいんだよ」
んー。最終日前の一瞬なら別にいいか?
その時だけ絶望竜とかに変わってもらえばいいか?あ、武蔵とかも来てるんだっけ。そっちに頼んでもいいかも。
ま、せっかくのお誘いだからな。乗っとくか。
「分かった。俺も参加するよ。多少本気でやってやるよ」
最近本気で戦ってなくて訛ってるからな。
翔太と戦った時もお互いに遊び入ってたし。やってやるか。
「よし!決まりだな!二対二形式だから仲間がいなくて困ってたんだ!ありがとよ!」
嘘つけ。お前に仲間がいねぇわけねぇだろ。だいたい二人組作る時は俺のために残ってくれるんだよな。ボッチに優しい。
「貴史、私と変わりなさい。一般部門への参加券はあなたに上げるわ。だから、エキシビションマッチは私に出させなさい!」
やめてくれ吉岡。
ヘルプミーっす。
「会長、悪いが今回は俺に戦わせてくれ」
ありがとう、吉岡。マイベストフレンド。
「なっ!貴史!あなたは敵なの!?」
「ちげぇよ。会長、流石にわがままがすぎるぞ。ったく、楓が絡むとすぐこうだ。単に俺が久しぶりに共闘したかったってだけだ」
「むぐぐ・・・」
嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。共闘なんて日本軍時代以来だな。あの時は俺が肉弾戦にガチハマリしてた時だな。偽りなき己の力(俺の体じゃねぇけど)で戦うのが楽しかったんだよね。
「分かったわ・・・。今回は譲るわよ。ごめんなさい貴史、さすがに傲慢すぎたわ」
・・・なんかごめんね会長。
これからは優しく接するよ。少し心苦しくなった。仲のいい二人と少しでも悪い雰囲気になると心が削られてくよ。普通の人とこうして話せる機会なんてあんましないから余計ね。
・・・俺ってメンタル弱いっすか?
「はい、この話終わり。楓はこれからどうすんだ?」
おっけー。切り替えよう。
これからか・・・。あんまし決めてなかったが・・・
「とりあえず昼飯食って、その後はマリーと探索かな~」
せっかくだからな。
たくさん見て回りたいし。
「ほぉ、ここで食ってくか?割引してくぞ」
「ここで食ってくが、割引は遠慮しておくよ。なんだかんだで金持ちなんでな」
金なら腐るほどあるよ。
国王といい勝負してるんじゃないでしょうか。
「そうか。んじゃ、何食ってく?」
「俺は焼きそば」
「私も同じものを」
さっきから匂いがすごい。
うまそうな匂いがな!それに、祭りといえば焼きそばだろ?
「かしこまった。待ってな」
「私も楓の焼きそばを作ってくるわ」
二人共奥へと戻り、数分後にはパックに入った焼きそばを持って出てきた。
「お待たせ」
「ふふふ。楓、あーん」
早かったな。さすがは天才たちで溢れているだけはある。
料理の才能持ちでもいたのかな。・・・学校にはたまにしか行ってなかったので、知らないっす。反省や後悔はない。
あと、あーんはしないっす。
「ありがとな。」
「ありがとうございます。頂きます」
代金を吉岡に手渡し、会長から二人分の焼きそばをもらう。
その後はササッと食べ終えて再び探索に向かった。
次に向かうのは騎士団体験会。
実はそこに武蔵がいるのだ。
今日の朝、起きて即『変身』を使ってやった。
今の武蔵は骨の体に肉をつけた感じの歴戦の名将だ。ほかの骸骨騎士も程よく肉をつけてやってみんな聖騎士ばりの鍛え上げられた肉体を手に入れた。王国の兵士に舐められないようにしてやったのだが、以前から繰り返してきた合同訓練で上位者の地位は確立されていたらしい。
なんてことや。
と、いうわけで来ました闘技場。
一日目は闘技場で騎士団体験会、二日目からは武道大会という使い分けらしい。
マリーが受付の人間に話に行くと、俺達は行列を並ぶことなく中に入ることが出来た。・・・どうなってんのこの子。
「うわぁ沢山いますね!」
「だな、盛況のようで主人としても鼻が高いよ」
闘技場の中では王国の聖騎士や一般兵、武蔵率いる骸骨騎士(人間バージョン)が一般人にマンツーマンで剣術や護身術を教えていた。
かなり充実した内容だな。プロが教えているので、成長も早いようで度々ハイタッチして喜びあっている
俺達がその様子を転移で移動した闘技場の来賓用の席で観ていると・・・
「白騎士!全員正面を!」
ーーザッ!
「楓様!マリー様!よろしくお願いします!」
『よろしくお願いします!』
ーーザッ!
武蔵と骸骨騎士がこちらに向き直り、ザッザッと膝をついて武器を掲げる。
うん。なんで?
「恐らく、ご主人様にこの一瞬を見てもらえることが嬉しいのでしょう」
「・・・わからん」
「忠誠心の現れですよ」
そうか。まぁいいや。
それよりも・・・
「今の客は俺じゃない!早く仕事に戻れ!」
客に背を向けるとは何事か。
前向きに、一体一で話すのが大事なんだろうが。
『はっ!』
そう言って武蔵及び骸骨騎士は先ほどの続きをする。
お客様は大事にね。
「ご主人様、お客様ですよ」
ん?俺に?
「お久しぶりです、楓様」
アルメス兄じゃないか。
このアルメス兄。物凄く有名人だったらしい。いや~びっくりしたよ。国王に「これからこのメンツで商売するからよろピコ」って紹介したら「あ!?『ミセル』じゃねぇか!」と言われた。
あ、兄の本名は『ミセル・アルメス』です。
なんかアレだそうですよ。人脈がすごすぎるらしいですよ。少し普通の人ではないと思っていたが、そこまでだとはねぇ。いいもん手に入れたよ。
「うっす。妹でも見に来たか?」
「はい。可愛い妹に来てくれと言われたら全ての日程をキャンセルしてでも行かないといけませんから」
「相変わらずシスコンだな」
「褒め言葉ですよ。両親がいない分、僕が甘やかしてあげないといけませんから」
「ミセル君ほどほどに、ですよ」
極度のシスコン。
これさえ治れば仕事できる系のモテ男なんだけどね。なんかさ、残念だね。
商売の方もミセルがいるおかげで貴族様達にも好評のようだ。ネメシスだけでなく、他国にもな。
いやぁ、また、儲かっちゃうね。
「はい、分かってますよ。仕事の方もきちんとこなしますって。居心地最高の家、店から離れたくないですから」
現金なヤツめ。・・・俺もか?
「それで?俺達に会いに来た理由は?」
こいつは絶望竜と似ている。用事がある時以外は基本妹のことを観察しているので、学園祭というビックで、合法的に学園へと侵入できるこの日に会いに来たということはよっぽどのことなんだろうよ。
「いや~、凄いもの手に入れちゃいましたよ」
ほんまかいな。
「四つ股の巨人と侵略者の居場所を掴みましたよ」
ほんまや。
〈今すぐに情報が欲しいです。油断している間なら私達の世界の者が接触出来る可能性があります〉
おお・・・。世界眼さんも必死だな。
かなり苦戦しているとみた。なんか色々大変そうだ。
「はぁ。んで?報酬は何がいい?」
情報に関しては報酬がある。そのため以外には動かないからな、こいつ。・・・俺一応主人よ。
んで、毎度毎度俺が有益だと思った情報に関しては先払いで報酬をあげてるわけだ。くだらない情報は聞く前なら返せと言えるが、聞いた後は返還不可ってな感じの契約だ。
何度かうまく騙されたよ。ははは。
「お金は溜まってきたので、妹を守るための短刀かナイフか頂けません?」
ナイフか~。
それぐらいハキンに作ってもらえよ~。
『創造』
作るのはまぁ、普通のナイフでいっか。そんなこだわりもいらんだろ。とりあえず斬れ味抜群くらいでナイフをプレゼントだ。
素材は余ってたミスリルでいいだろ。
「はい、ナイフ」
「ありがとうございます」
はい、情報ください。
そして四つ股の巨人の居場所を聞き出した。
場所は豚帝国の地下。案外近くにありました。七つ目の巨竜の居場所はまだ分かっていないそうだ。狡猾な化物がバックにいる以上そう簡単に会えるとは思ってないけどね。
ま、居場所がわかったからと言って俺は動く気ないんだよね。
あくまでもこの世界の人々で解決する問題だ。勇者の手を借りるのはまだいい。だが、俺達が関わるのは宜しくない。本当はショタ王も表には出したくないんだが、戸塚のことだ認めないだろう。
居場所は分かったが、その目的やらなんやらは未だ掴めないそうだ。
他国の貴族をあたってみても、繋がりがあるようには見えないらしく、資金源も不明。だが、読みの範疇では王族レベルが関わっているとみてるらしい。
それで?世界眼さんよ。どうだ?なにか分かった?
〈申し訳ありません。こちらの世界でも急ぎ手配をしていますが、もう少し時間がかかりそうです。それと、少しの間休暇を頂いてもよろしいでしょうか?〉
ふむ。世界眼さんも大変だね。
頑張ってくれ。前も言ったが、万策尽きた時のみ助けてやる。眷属の願いを叶えるのが俺の生き甲斐なんでな。
〈ありがとうございます。鑑定能力や転移時の座標指定、索敵機能は通常通り使えますので、ご心配なく〉
ありがとさん。
いやぁ。働き者だね。
「ミセルもありがとうな。また楽しくなりそうだ」
「はい。先程の言葉を返すようですが、ほどほどに、ですよ」
「分かってるって。引き続きそちらの方もよろピコ」
ミセルは一つ頷いて、またどこかへと行ってしまった。いや、妹のところか。流石にわかったわ。
絶望竜的ポジションはもう要らないんだけどな~。いやでも、絶望竜みたいに誰でもいいタイプじゃないからマシなのか?……いやいや、妹にぞっこんで、ストーカーまがいのことを日々繰り返しているからまともでは無いことは確か・・・。んー。
なんかさ。最近すごい思うんだよ。俺、従者に振り回されてね?
あ、俺も同じようなもんですか。そうですか。
アルメス妹の方はかなり真面目でいい子なんだ。そう。それはそれはできた子で。お店の看板娘としてせっせと働いてくれてるんだよ。ファンができる程度には。その筆頭が兄であるということが残念だ。
アルメス妹がプラス。アルメス兄がマイナス。プラマイゼロってやつか。
んなアホなことを考えていると、マリーさんが俺の軍服をクイクイっと掴む。
ふむ、その仕草、二百点。
「あのー、ご主人様。四つ股の巨人とは……」
「説明するわ」
カクカクシカジカ。
「えっと・・・悪い人達なのですね・・・?」
「うん、まぁそんな所よ」
偉くまとめたね。いやまぁ間違っては無いっす。はい。
「ご主人様が退治なさるのですか?」
「いや、俺は動かんよ。俺が動く必要も無い気がするしな」
「そうですか。では眷属にもそのように伝えます」
あ、うん。
俺の知らないところで情報経路が生まれてたのかな。世界眼さんの力だとおもうけどな。
その後は適当にぶらぶらと学園内を回り、様々な出し物を体験した。
マリーも俺も大満足の学園祭一日目となった。かなり高評価ですよ、奥さん。
そして、そろそろ帰ろうかと相談していた時、俺の大好きなイベントが起こった。
これだよ!これを待ってたぜ!これこそ異世界だよな!
そう、異世界の定番イベント。なんか前にも見た気がしないでもないが、俺は快く受け入れよう。何度でも受け入れるよ。
「お前達!愚民は道を開けるのだ!なぜ王国は僕のための道を作らないのだろうか!な!マルフォンス!」
「・・・そうっすね」
「そうっすねじゃない!お前が国にその申し出をしに行くんだろうが!この馬鹿が!」
ね?面白くね?
稀に見る馬鹿だよね。隣にいる執事が可愛そうだわ。かなりヤツれてるし、こき使われているのが目に見えてわかる。
マリーと「馬鹿だね~」「ふふふ、そうですね」なんて幸せな会話をして、横を通り過ぎようとすると・・・
「おい待て、貴様」
呼び止められた。
嬉しいけど、嫌な予感しかしない。
「なんだ?」
だが、ここは敢えてテンプレをゆく。学園祭一日目の締めとしては悪くない。イベント好きな俺からしたら見逃せない。ま、俺がキレて終わりな気がするけど・・・。
こう考えると俺ってゴミみたいなやつじゃね?・・・気のせいと言ってくれ。
ちっちゃな傲慢キッズは俺の方を向いて、腕を組んで仁王立ちしている。
なんか見た目はショタ王に似ている。キャラ被ってんだけど。
「分かるだろ!その女を置いてゆけ!この僕が遊んでやる!」
んー。やっぱりムカつくな。
ぶっ殺そ。
「ふっ!」
あばよ、傲慢キッズ。
吹き飛んでいく子供。日本なら虐待で即刻逮捕やね。
しかし、俺は殴っていない。
俺だったら多分首だけ消し飛ぶ。今やったのはマリーだ。
あれ?こういうのって男が殴って「俺の◯◯だ!ぶち殺すぞ!」とかじゃねぇのか。
「私で遊ぶですって・・・?ふざけるな。ご主人様でさえ!私で遊んだことがないのに!性的な意味で!そろそろ遊んでくれてもいいはずなのに!性的な意味で!私のメイド服以下に触れていいのはご主人様か私だけ!性的な意味で!」
マリーさん!公衆の面前で性的な意味でって叫ばないで!そして、俺を指ささないで!
嬉しいお誘いだけど、こんなところで言うことではないわ!街で下ネタ言う彼氏に赤面している女の子の気持ちがすごく伝わってきた!
しかし、傲慢キッズは立ち上がる。
マリーさんの蹴りをくらって生きているだと?
「この!クソ女!僕にこんなことしてパパが黙ってないぞ!」
で、でたー!パパが黙ってないぞ!
これが聞きたかった!傲慢キッズよ、俺の願いを叶えてくれてありがとう。
「あ、あのー。さーせん、うちの坊ちゃんが」
俺の横にコソッと現れ小声で謝ってくる執事の男。たしか、マルフォンス。
高校生くらいの青年。だが、見た目年齢はもっと上だな。声聞いてびっくりしたよ。
「大丈夫、大丈夫。これでも俺、この国の王様よりも偉いから」
「え?」
単純に力で言えばね。
国を助けてやったんだからそれくらいの地位は貰えるよ。
ハゲも俺の気分を害せば国が消えることくらい知ってる。ま、俺もそこまで小さくないけどね。
「君、どこに仕えているの?」
「あ、伯爵様です。『べラード』伯爵様のお屋敷に」
「おーけー。ハゲ王に潰すよう伝えていい?」
「国王様をハゲと呼べるほどのお方でしたか。・・・俺の就職先がなくなるので」
そりゃそうか。
就職先の屋敷を潰すって言われればそうなるわな。
「代わり用意するって言ったら?」
「よろしくお願いします、兄貴。親も子もゴミみたいなやつらで、悪事もかなりしています。その証拠は押さえてあります!お願いします!監禁された女達もいて・・・!俺、その中の一人と結婚したいんですけど・・・」
……。すげぇなこの人。超てのひら返し。この世界の人って寝返りやすいのかな。
しかしそうか、監禁された女と結婚したいのか。うむ、嫌いじゃねぇ。俺そういうのいいと思うよ。意外って言われるけど、俺ってロミジュリみたいな周りに指図されずに頑張る系の恋愛大好きなんだよね。応援したくなる。
「任せろ。君の次の就職先は・・・ハゲに任せるわ。ま、悪いようにはさせねぇよ。応援してるぜ、その恋愛!」
グッジョブポーズでウインク&歯をきらんと見せる。
それを見たマルフォンス君も涙を浮かべるようにしてグッジョブ。
「ありがとうございます!俺、頑張ります!」
「あぁ。ま、その家での仕事もあと少し。すぐに解放してやる。それまで待ってな」
「はい!」
握手を交わして、マリーの方へと向かう。
現状は悲惨だ。
パンツ以外の全ての衣類を切り刻まれ、全身に打撲を負った傲慢キッズ。
しかし、周りの人間は何も言わない。いや、気付いていないようで、見向きもしない。恐ろしきかなマリーさん。建物や人にぶつからないようにボコっている。学園祭でごった返しているこの場でこれは凄まじい。白金みたいなことしてる。
「マリーそろそろ辞めてやれ。無様すぎるわ」
「はい、遊んであげていました。私の心にはまだ遊び心というものが残っていました。久々に童心に帰れましたよ」
そうかそうか。それは良かった(白目)。
「それじゃぁ、帰ろうか」
「はい!ご主人様!」
マリーを連れて家路につく。というか、転移する。
そして、玄関の扉を開けると
「おかえりなさいませ、ご主人様!御夕飯の準備ができましたよ!」
・・・君は化け物かい?
さっきまで隣にいたよね。なんで?いつの間に帰ってきて、いつの間に調理したの?インスタントでも無理だよ。
「お、おう。食べようか」
今日は俺とマリーしか家で飯を食う者はいない。
皆学園祭の方で食べてくるそうだ。武蔵とかも兵士体験会の方で食べてくるとか。
「美味しいですねご主人様」
マリーと小さな明かりの下で食べるカレー。それはとても美味しかった。
大勢でワイワイ食べるのもいいけど、こうして二人で食べる夕飯もたまにはいいかな。というか、マリーが可愛いかな。
「ご主人様、今日は一緒に寝ませんか?」
ぶふっ!
ま、またこの作戦ですかマリーさん。
「いやだからなマリー・・・」
そういうアダルティな展開はまだ早いと思うんだ。
そもそもこの旅行はR15までで行こうとマリーとであった時に心に決めたんだ。童貞卒業?そんなの未来永劫こなくて・・・いいわけじゃないけど、とにかくまだ早いと思うんだ。
「もう、ご主人様、なにを想像してるんですか?ただ、添い寝をさせてくださいって事です」
マリーはしてやったりと笑う。
あ、はい。わたくし黒田楓は寝ると言われたらそういう想像しかできない思春期の終わらない男です。
すみませんでした。
「はぁ、じゃぁ一緒に寝るか。あ、でも少しやることがあるからそのあとな」
「はい!かしこまりました!」
マリーに上手く転がされたね。
なんか、本当に立場が逆転してしまったよ。むかしは「私もう驚きませんから!」みたいな感じだったのに・・・。
「よし!じゃぁ俺はパパッと用事を済ませてくるから、先に風呂でも入っててくれ」
「はい、ご主人様」
行く場所はハゲ王の場所。
『転移』
フッと国王の隣に現れる。
国王は現在他国のお偉いさんとお食事中でした。
世界眼さんがいないとこうなるんだよね。空気読めない系。
「誰だ貴様!無礼者が!」
ほら、側近の皆さんに怒られた。
「あ、こいつなら別にいいぞ。・・・どったの楓」
国王のこういう寛大なところ大好き。
別にいいぞってのは何しても潰されるだろうからって意味だろうけど。
「あぁ、食事中に悪いな国王。いや、割とマジで」
「うん?まぁええよ。公衆の面前でならマズイが、こういう密室でなら構わんだろ」
いや、構うだろ。お偉いさん方が沢山いるぞ。うち二名は知り合いだがな。
「……楓、何してるの」
「あははっ!バカが乱入してきたようだな、ネメシス国王よ」
平常運転のマリアと女帝モードのマーリン。
金かかってそうな飯食いやがって。俺はお前らが泥水を啜っていた時代を知って……無いわ。こいつら最初から天才的だった奴らだわ。くそう、苦労をしれ、苦労を。
「なんだお前、女帝様とも知り合いだったのかよ」
「おう。旅中に出会ってな。何度か遊んだんだよ」
余裕で嘘をかましていく。
マーリン的に異世界人ってのは知られたくないだろうしな。
「楓、マリーちゃんは?マリーちゃんのお菓子食べたい」
「マリーは今頃お風呂タイムだ。お菓子くらいマーリンに頼め」
「私とマリアが食べる専というのは楓も知っているだろう。作れはしないが、その場で自分で食べてしまうよ」
子供かよこの二人。年齢かなりいってるぞ。
「おい楓。早く要件を済ましてくれ。ミステラ国の御三方とジャピンのお二人が混乱してる」
「そうだな。ここに長居するのは良くないか。国王、べラード伯爵って知ってる?」
「そりゃまぁ国王だからな」
ですよね。
「そのべラード伯爵家を潰せるか?」
「あー、悪い噂はかなり耳に入ってくるが、お前にまで手を出したのか」
馬鹿なやつだ。そう言ってヤレヤレと首を振るう。
「俺というよりはマリーにだな」
ーーガタリ
どうした、マリア。
「楓、私がそいつを潰す」
おーい、娘ポジションどうした?何早々にかなぐり捨ててんだよ。
そして、別空間の親衛隊と連絡を取ろうとするな。あいつらまじで歯止めきかねぇから俺たちが動かねぇとならんくなるだろ。
マーリンも魔道の準備をするな。お前まで暴れだしたら星が消える。
「はっはっは。マリアは口が悪いなぁ。女帝の顔に泥を塗る前に直した方がいいぞ」
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怖いわ。
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差し上げよう。
ホイッと資料を手渡す。うむ、これでいいだろう。
「あ、あともう一つ」
「まだあんのかよ」
「これが正真正銘最後だ」
警備に支障をきたすだろうからな!
ほうれん草が重要なんだよ、ほうれん草がな!
「俺、武道大会のエキシビションマッチに出ることになったから。それだけ、じゃーな。あ、さっきの件は俺に一つ貸しってことで処理しといてくれ」
『転移』
いやぁ。本当に失礼なやつだわ、俺。
ミステラと倭国のお偉いさん方がポカーンとしてたわ。多分今頃そのへんの謝罪が行われている頃だろう。
南無。ほんとごめん。
いつも通り家の扉を開ける。
するとやはり……
「おかえりなさいませ、ご主人様」
パジャマ姿のマリーさんが出迎えてくれた。しかもスマイル付き。
やべぇ、かわいい。
俺の息子が大暴……なんでもない。聞かなかったことにしてくれ。
「ただいま、マリー」
「はい!ご主人様!」
ーーーーーーーーーーーーー
その後二人は、アダルティな夜を・・・
迎えてはいないです。
はたつばです。
今回はマリーさんメインでちょこちょこ登場回数の少ないサブキャラを出していった感じですね。
雪さんがちょっと可哀想でしたけど、また雪さんは出ますので、次回登場にご期待ください。
それとですが、楓が普通に強い人ぐらいだったら不敬罪で幾度となく殺されてますよね。首チョンパですよ。
そして、遂に悪が動き出す!
次回更新は二十七日土曜日です。
よろしくお願いします!
マリーさん可愛い
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「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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