46 / 138
第三章 御一行様は冒険者になるようです
第四十三話 突然の修行
しおりを挟む◇ノア視点
僕の拘束を一瞬で解いた覚醒デュラハン。
本気を見せてやると言わんばかりに、馬から降りると、馬は黒い霧となり、デュラハンの剣となって彼の空いた片手に握られる。
二刀流のデュラハンなんて初めて見たよ。
「やべぇぞ、ノア!回復薬は一人一つまでしかねぇし、今の攻撃で回復せざるをえんくなった!」
「くっ!もう一度やりたいところですが、今のデュラハンに僕の拘束が効くとは思えません」
僕らが話している間に、デュラハンはイーバの近くに現れ、イーバに向かって、二つの剣を振るう。
何とかして躱し、回復薬を飲んで再び『炎腕』を発動。炎を固めて二刀流を受け止めているが、厳しそうだ。
冬華も斬りかかっているが、まるで効いていなさそうだ。
「ノア!俺と冬華だけでは長くはもたん!何とかならないかッ!」
どうする……?
挑んだことを後悔している場合ではないぞ。
「なるほどのぅ……。仕方あるまい……」
ーードッガン!!
絶望竜さんの蹴りがデュラハンの鎧にめり込み、デュラハンを軽く吹き飛ばした。
「『黒の堅牢』。ふむ、これで良いじゃろう」
デュラハンを黒い檻が取り囲み、閉じ込めた。
「やはりまだ早かったようじゃのう。なに、恥じることは無い。今から儂等が君達に新しい戦い方を教えてやる。難しいことは無いから安心せい」
絶望竜さん達が僕らに戦い方を?
「魔法は翡翠に聞けば全ての答えを教えてくれる。強化魔法は儂が教える。
そこの刀を持った少女はマリーに師事してもらうといい」
翡翠さんって確か闘技場で大穴を作った人だったはず……。
火焰系魔法師じゃないのだろうか。まさか翡翠さんも多重魔法師とか?
「デュラハンはひとまず閉じ込めてあるから大丈夫じゃよ。試し撃ちにでも使えばよい」
……贅沢な使い方ですね。
戦闘中に教えを受けることになるなんてなぁ……。もしかしたら楓さんのパーティーは皆お人好しな人達なのかもしれない。
僕らは戦闘中であることはひとまず置いておいて、別れて師事してもらうこととなった。
「翡翠さん宜しくお願いします」
「宜しくお願いします!」
「お、お願いします……!」
「……三人は魔法についてどこまで知っている?魔法における威力の初期値についてって分かる?」
しょ、初期値?
魔法に初期値も何もあるのか。
「初期値っていうのは、魔法発動に必要なMPの最低値を使った威力のこと。君達は多くのMPを使っても初期値の威力しか出せてない。無駄が多いんだ」
なるほど……。
つまり、今の威力をだすのに今程のMPを使わなくても済むって事かな?
となるとたしかに無駄だ。回復薬の効果でMP残高を気にしていなかったけど、実践ではそうも言ってられない。この講義はかなり有意義なものになりそうだ。
「では翡翠さん。僕らの使った魔法の消費MPはどれ位までに減らせるんでしょうか」
「ざっと、百分の一くらい。勿論、初期値を覚えてそれ以上を重ねようと思えば威力も高くなる」
「百分の一ですか!?」
百分の一……。それは僕達がとんでもない量を無駄にしていたことになるね……。
翡翠さんからしたらかなり僕達が滑稽に見えただろう。
「大丈夫。この世界に居る魔法師の一割が気付いてない。マスター出来てるのはその中の一パーセントくらい」
……そこに違いがあったのか。
この世界の魔法師の中の格差。才能や道具の力だけかと思っていたが、気づいたか気づいていないかの問題だったわけか。
「習得は簡単。固有魔法で『魔力操作』を覚えられればマスター。スキルで『魔力感知』が出てくれば、自然と分かるようになってくる」
簡単ではないね。スキル習得にも歳月をかけるし、固有魔法なんて一人一つあれば奇跡のレベル。二つ以上持っている人なんて最低でも聖騎士以上でなければ無理だ。
「翡翠さん。私に魔力操作を手に入れる方法を教えてください。私にはそれが必要なんです!」
サイカ……。
「……わ、わたしもお願いしま……す」
アーシャ……。
「……僕もお願いします。教えてください!」
僕ら三人が頭を下げると、僕ら一人一人の頭を撫でて、翡翠さんは言った。
「わかった。教える。といっても、魔力感知を極めれば自然と魔力操作が手に入るんだけどな」
魔力感知。
ここに何日もいるわけにはいかない。短期間で覚えなければならない。
「さっき頭を撫でた時に、君たちの体内にめぐる魔力に熱を与えた。体の中で動く熱のあるものを感知すれば魔力感知は取得できる。血液よりも熱量があるからわかりやすいはず」
もう修行は始まっていたらしい。
体内で動き回る暖かい何かを探す。
確かに何かあるが、それの場所を特定することが出来ない。
むずかしいな……。
「ノア……クリア」
!?ええ!?もう!?
「翡翠さん!?僕まだ感じれただけで、特定なんて出来ませんよ!?」
「特定できたら魔力感知はマスターできてるはず。スキルを手に入れるだけなら感じ取れるだけでいい」
必死になって修行するのが馬鹿らしくなってきた……。
「あとはひたすら魔力を追うだけ。一度見つければ、熱が戻っても心配ない。これを日常的に繰り返せば魔力操作はすぐに手に入る。魔力操作を手に入れたら『魔法操作』の習得を目指すといい」
サイカもアーシャも無事習得出来たようだ。
僕もどんどんスキルレベルが上がっていくので、面白くて仕方が無い。
「そろそろ向こうと合流しようか」
……いよいよだ。
デュラハンへのリベンジ戦が始まる。
「ノア!俺はめちゃくちゃ強くなったぜ!絶対に勝つぜぇ!!」
イーバがブンブンと力強い腕を回している。
「僕らもですよ。負ける気がしません」
「私もかなり鍛えて貰った。以前の私と同じだと思うなよ?」
冬華も自信満々だ。
何をしてもらったのだろうか。二人共体がボロボロだ。
そんなにハードだったのかな。
「フフン!私もよ!翡翠様の教えにより数段階成長した私を見なさい!」
サイカの中で翡翠さんは『様』扱いするまでレベルアップしたらしい。
「よし、勝ちましょう!作戦はさっきと同じでいきます!ふたりが抑えて、その隙に詠唱。その後全員で最大火力です」
穴だらけの作戦かもしれないが、先程からの成長を知りたい。
勝てる。御三方の教えに従えば必ず勝てる。冬華の言うことを聞いて、楓さんに手伝いを頼んで本当によかった。
「グハハハハ。それではデュラハンを解放するぞ。怒り狂っとるじゃろうが、今の五人なら余裕じゃろ。……解除!」
絶望竜さんが暴れ回るデュラハンを解放する。
二つの剣を構えた黒い鎧が迫ってくるが、僕らの前にイーバが立つ。
ただただ立っているだけで、構えたりはしていない。自信満々な笑顔を浮かべているだけだ。
その様に余計イラついたのか、思いっきり振りかぶった剣でイーバに斬り掛かる。
ーーブオンッッ!
速く、強い一撃は空を斬る。イーバの体を中央から切り裂かんとする刃はかすりもしなかった。
半身を下げただけで剣をかわしたイーバはニヤリと笑みを浮かべて、五本指でデュラハンの冑を押し返す。力を込めているとは思えないくらい滑らかな動きにデュラハンは押し戻される。
すぐさま体制を整え直し、剣を再び構えて突進せんとするデュラハンだが、いつの間にかその背後に居た冬華により阻止されることとなった。
「刻め……!」
冬華が刀を振るうと、デュラハンの鎧が見事に解体された。
地面に落ちたバラバラの鎧が修復を始める。けど、終わりだ。
「……〉『魔帝炎雷』!!」
「……〉『聖魔消滅波』!!」
「無属性魔法『核融合爆発』!!」
「はっ!くらえぇ!!『強靭なる炎帝 バースト』!」
「独創魔法『虚無光線』!!」
五人で最大火力を出す。リベンジバージョンだ。
ーーズドォォォォン……
ダンジョンの壁を壊し、次層への門も破壊した僕らの攻撃により、デュラハンは倒すことが出来た。
絶望竜さんも、翡翠さんも、マリーさんも満足気な顔だ。……あの三人も巻き込まれていたと思うんだけど……。
「……勝ったぞぉぉぉ!!」
「遂にやったな!」
「当然ね!」
「はぁ…はぁ……。やったね皆……」
みんな満身創痍で、安心感から床に倒れ込む。
「ははは……。やっと勝てましたね……」
全力を出したおかげで魔力欠乏症になりましたね……。MPが底をついてる。……ははは。このまま少し眠ってしまおう……。デュラハンが復活しても御三方がなんとかしてくれるでしょうし………………。
ーーーーーーーー
はたつばです。
デュラハンが惨めです。せっかく無双できると思ったらボコられるという……。
今回は短いのでもう一話上げます。そちらも宜しくお願いします!
0
お気に入りに追加
2,577
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
1514億4000万円を失った自衛隊、派遣支援す
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一箇月。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
これは、「1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す(https://ncode.syosetu.com/n3570fj/)」の言わば海上自衛隊版です。アルファポリスにおいても公開させていただいております。
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈りいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる