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第一章 召喚されたからって勇者はしない
第十六話 終わりと始まりの一日 part2
しおりを挟む状況は最悪だった。キマイラとの死闘を終え、退避する最中に転移トラップにかかり、ダンジョンの遥か下方に飛ばされてしまった。
「光輝。最悪ってのは連続して起こるもんなんだな」
「そうだね・・・。困ったものだよ。あの化物と同じレベルがここでは普通らしいよ」
「本当に困ったものよ。なにこの化物たちは……」
「……こいつら強い」
四人の青年達が肩で息をしている。彼等はそれぞれ、『拳王』『光帝』『氷河』『暗殺』と呼ばれており、かの軍の最高戦力の一部でもある。そんな彼等なのだかこの階層ではかなり苦労していた。
キマイラ戦は後方のクラスメイトを考えてある程度力を抑えて戦っていた。だがここではそんなことも考えられないらしい。
キマイラのような化物クラスが束となって襲ってきているのだ。無謀とも言える。なぜ逃げずに挑み続けているのか。それには一つの理由がある。
「くっそ!神谷を早く見つけねぇといけねぇってのに!!」
そう。共に飛ばされたはずのクラスメイトの一人がいないのだ。
彼は元より戦闘系の能力を所有しておらず、彼らと同じクラスになれたこと自体奇跡であると言えるほどだ。そんな彼が運悪く別に飛ばされてしまった。
自分達とはまた違う場に飛ばされた彼を助けるためこうして道を阻む敵をバッタバッタと死ぬ気で倒してるのだが……
彼等はとことん運がないらしい。
目の前には一つの大きな扉。つい先程までいた階層でも見た極大な扉。フロアボスへの扉。ここを突破した先に下へと続く階段がある。
「行くしかないよね……?」
「だろうな。神谷を放っておけないし。行くしかないだろう」
「死ぬかもしれないわよ?それでも?」
「勿論だ。俺は行くぞ。いつまでもここにいるわけにもいかないしな」
吉岡が扉に手をかける。
「お前らいいな?開けるぞ……」
そうっと扉を押し開けるとそこに居たのは……
――む?ようやく来たのか貴様ら……。久々の人間だな、暇潰しに付き合ってくれ
グハハと笑う世界最強の一角。王たる五竜の一体。漆黒竜であった。
威圧と殺気。その二つを浴びた五人は早くも戦意を失ってしまった。確実に勝てない。挑めば殺される。だが扉は開けてしまった。簡単には逃がしてくれないだろう。戻ったとしても延々と繰り返されるボスラッシュに戻るだけだ。
吉岡貴司は一度砕かれた覚悟をもう一度固める。そして
「……くそったれが・・・。あぁやってやるよボケコラ!!!」
力一杯にジャンプし、漆黒竜に拳を打つ。
対する漆黒竜も同じく拳を当てる。
初めは拮抗していた力も徐々に漆黒竜が押し始め、遂に漆黒竜が拳を振り切った。宙に浮いていた吉岡も後方に吹き飛ばされ、元居た地面に叩きつけられる。凄まじい衝撃音がする。
それでも動けることが彼が軍に招かれるほどの逸材であることの証明だろう。
「……光輝やばいぞアイツ。マジでやばい。どれくらいやばいかって言うと楓なみにやばい」
「そんなか……。君を跳ね返す時点でそんな気はしていたけれどね。この黒い竜の内蔵魔力は僕ら全員足したよりも遥かに高い。僕らじゃ削りきれないかもね・・・」
「どうするの?このままじゃ私達死ぬわよ?」
漆黒竜の攻撃の尽くをギリギリで躱しつつ、話を進める。全員間一髪で躱すので余裕感がでているが、内心必死である。自分の能力をフルに活用して避けているのだが、勝てる見込みは立たない。
――ムムム。貴様ら余裕だな。ならば……これを受けきってみせよ!!
そういうと漆黒竜が口を開け、魔力を集め、放つ。
不意を突かれなければ戦争を経験した彼等からしたら避けることは難しくない。
しかし戦争を経験していない一般人は別であった。
「……えっ?あれ?」
「……しまっ!!真紀子さんっっ!!!」
放たれたブレスは黒の光線とかし、勇者に向かっていく。
勇者らしい勇者伊野光輝は音才音科真紀子を庇い光の盾を生み出す。極太の黒い光線は伊野光輝の盾によりそこにいる二人を避けていく。やがてブレスは消え去ったのだが……
「っはぁはぁ。もう……魔力が・・・」
「光輝くん!!前!」
「えっ?」
漆黒竜の大きな口が伊野光輝の前で待ち構えていた。
バクり
竜と比べたら本当に小さい彼の体はいとも簡単に漆黒竜の口に収まった。
漆黒竜の牙が伊野の体を貫き、漆黒竜は咀嚼を進める。
「こ、光輝くーん!!!!!」
音科の絶叫がフロアに響き、木霊する。
勇者の戦力が大きく減った。他の勇者も呆然としている。
「はは・・・こりゃ終わったかもせんぞ会長」
「……楓……助けて……!!」
氷姫はここにいない最強に助けを求める。先日自分たちを置いて旅に出てしまった彼を。
「会長現実逃避はよせ!!とにかく光輝を助けるぞ。扉の奥がやけに騒がしい。扉の外にあいつらが大量にいるかもしれんが、あの竜よりはましだ!!」
「っ!分かってるわよ!!」
――ドゴンッッ!!!
「うわっいってぇ!!壁壊れたっ!?まずい奴らがっっ!!って、なっ!楓!?お前なんでこんなところに。旅に出た……ってそんなことよりもすまん助けてくれ!」
壁から出てきたのは大量の魔物ではなく、氷姫が待ち望んだ一体の化物だった。
「でか……。あ、お前らお久しぶりっ子~」
この非常時になんとも軽い化物であった。しかし今この時から、勇者達の防衛戦は終わりを迎え、反撃の時間が訪れた。
ーーーーーーーー
はたつばです。
勇者の緊迫感を出したかったのになぁ・・・。あっれれーおっかしいぞ~。めっちゃ短いですよね。
本当はもうちょっと頑張ろうとしたんですよ。でも閑話って難しいんですよ?(言い訳)
文章力つけないと……(白目)
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