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第十九話 これからに向けて考えよう
しおりを挟む颯馬が魔人のほとんどを狩り、金髪の魔人との激闘を終えたあと。僕らパーティーや生き残った冒険者たちが街の復興のためにせっせと瓦礫の撤去を行っていた。一般市民は街の中心地で炊き出しをやってくれたり、怪我人の手当てをしてくれたりしている。街のみんなで危機のさったこの地を再び盛り上げようと努力していた。
当初は何日もかかると思っていたんだけど、王都からの支援隊が来てくれたおかげで撤去作業は思いのほか早く終わった。
僕ら冒険者は力仕事以外ほとんど出来ないので、これからは通常通りに動くことになる。慈善活動が好きな冒険者は街から出て魔物を狩って食料として提供したりしている。もちろん、それを仕事として提供してる人もいる。僕らも最初は無償で魔物を提供しようかなどと考えていたのだけど、
「稼ぎの邪魔をするべきじゃない。復興時期は気持ちが爆発しやすいからな。あまり刺激しない方がいい」
という颯馬のありがたいお言葉により僕らも考えを改め、無償での提供はやめて、大量に狩ることも控えておいた。
というわけで、僕達がやれることは少ない。
まだ街のみんなの役に立ちたい、と思ったけど、邪魔するわけにもいかないので大人しく家に帰ることにした。
そして僕達の家は・・・
「・・・あれ?あんまり壊れてない・・・」
そう、予想に反して多少削れた程度に収まっていたのだ。
半壊は当たり前、全壊も覚悟はしていたんだけど・・・ラッキー・・・だったって事でいいのかな?
颯馬もこれは意外そうにしていた。さっきまでお金の計算をして、渋い顔をしていたのが嘘のように晴れやかな顔だ。消費するお金の中で大部分を占めていた修繕費がかなり減ったとか。
「キアラと白金でこの家の魔改造、ルシウスとシアンはランルカを連れて魔物を狩ってきてくれ。トロルさんは俺とともに出張だ」
家のリビングにて颯馬による指示がなされる。
僕はこの家の修繕が主になるかな。ひとまずこの家を直しちゃわないとね。雨風を凌ぐために屋根は今日中に作ろうと思う。そこらにある土でもキアラの魔法で硬質化出来ると思う。それが出来ればあとは僕の仕事だ。地下室は無傷だし新作工具を出すのも手かな。
ん?でも、魔改造って・・・どうすればいいんだろ?
「理想は迎撃システムをつけることだな。今はまだ簡易的なもので構わないが、段々とグレードを上げていって貰いたい」
ふむふむ。
自動迎撃システム。僕達のいた高校には僕がいくつか取り付けたんだよね。ミサイルとか、連射機とか、火炎放射器とかね。
まぁ、そのくらいなら魔法を織り混ぜればできる・・・かな。
あ、そうだそうだ。
「飛竜の時も言ったけど、後で僕の工房に来てね颯馬。いくつか見せたいものがあるんだ」
魔法と科学が絡み合うと化けるって言うのがわかったよ。
まったく、僕の中で産業革命が起こってるよ。
◇◆◇◆◇◆
各々任された仕事に向かい、颯馬と僕は地下にある工房に来ていた。
「お前が成果を見せるってことは余程のものが出来たと期待していいんだろうな?」
もちろん。
自信作さ。
僕が案内した先で待っていたのは・・・
「なんだ、こりゃ・・・?」
巨大な機械。
防音設備が完璧なこの部屋。その完全な防音部屋に響き渡る爆発音。一秒間に何千何万とその音が出ているので、爆音をひたすらに垂れ流す機械になっていた。
これが僕の作り上げたもの。
過去最高といってもおかしくはない。
「魔力を使った衝突型加速器だよ」
「なるほど、全くわからん」
颯馬の口から貴重な言葉が漏れたね。天才ゆえに何もかも理解出来てきた颯馬にとってこういった新次元の話は苦手だ。既存の知識と既存の知識を混ぜて解答することは颯馬にとって難しいことではないが、未知数の知識が絡んでくると颯馬は可能性を導き出しすぎて結論に辿り着けなくなる。
「陽子力や光の力を使って円型の衝突型加速器を作ろうとしたのが始め。でも、何度かやったんだけど、小規模なブラックホールが出来て終わり。しかも理想的な数値は出ないし、新次元についてもデータが取れないほど極々短い一瞬の出来事。早々に切り上げたよ。んで、次に考えたのがいくつかのエネルギーを無理やり押さえつけて、それが反発する力を使って力を生もうって話。まぁ、これも失敗だよね。初期の対価として使うエネルギーが膨大っていうのと、生まれたエネルギーを制御するのが非常に難しかった。器を作ってもそれからも逃げようとしちゃってね。結局消滅させるしかなかった。見事な失敗だよ」
「・・・・・・次に目をつけたのが魔力か」
「うん。正直僕も颯馬も把握出来れていない力だから怖かったんだけど・・・秒間に生み出すエネルギーは光よりも遥かに小さかった。つまりは、扱いやすかった。エネルギーを生み出す瞬間をしっかりと確認できたのも大きい。魔力を使ったエネルギーのリサイクルは案外簡単に出来たよ。そのおかげで、『=』で止まっていたエネルギー開発がプラスに傾いた。いくつか運が良かった箇所もあったけど、それらの改造を施して形にするまでに持っていけたってわけ」
「・・・他のものに転用できるのか?」
「そう、そこだよ。僕が目指していたのはね」
なにかに使えなければ作る意味などない。この世界にはオーバーテクノロジーが過ぎる話だが、これは念のための秘策とでもいったところ。実際、使わないに越したことはないんだけどね。
「これは、今のところは君専用だよ」
「あ?俺?」
「まだ完全とは言いきれなくてね。超人専用。体がある一定以上丈夫じゃないと体はおろか魂ごと吹き飛ばされかねない。僕の中で最低基準が颯馬だった。君以上、被験者に適任なのは存在しないからね」
そう言って僕は加速器に近づく。魔力の衝突は内部の奥で行われているため、機械自体に触れても問題は無い。
暴発の心配が少ないってのもこの装置の魅力だよね。
「まだまだ、だけどね」
「というと?」
「大きすぎるんだよね、コレ。理想としてはこの循環器を体内に埋め込みたい。血中回路、魔力回路に埋め込むか、新たに回路を追加するか。現実的なのは前者かな」
そう伝えると、颯馬は顎に手を当てて考え始めた。未知の存在である魔力を使った新装置。国を潰す兵器とも言えるけどね。
「俺の体内にこれが入ればどうなる?」
それだ。
僕が目指したのは。
これを埋め込んだ時、
「君は人間の領域を越え、君以降の黒田もまた人外になる」
黒田の体ならばこの超技術にも対応できるはずだ。人間と同じ力を持っている、とはもう言えない。黒田は既に人類の型から外れた存在だと認め無ければならなくなる。
僕としても、これを颯馬に打ち込めばどうなるか・・・想像もつかない。そして、危険な賭けで、失敗した時の代償がどうなるかも想像出来ない。
だが、颯馬は・・・
「・・・面白ぇ。いいじゃねぇか。久々に楽しくなりそうだ」
この男は実は僕よりも馬鹿なのではないか、そう考える時がある。
いや、もとよりこの男はそういう化物だったか。出会った時から何も変わらない。僕もこいつも貪欲で目の前に餌があれば何だって取りに行く。罠があるならばくぐりぬければいい、破壊すればいい。
それを積み重ねた結果最高に面白いファンタジーに出逢えているのだから、間違っていなかったのだろう。
「とっとと完成させて実験しようぜ。頼んだぞ、白金」
口の端を吊り上げてニヤリと笑う。いつも通り、仕掛けた悪戯を披露する子供のような、まるで裏面を感じさせない笑みだ。
「任せといてよ!」
僕もそれに乗っかっていつも通り、笑ってみせた。
―――――
はたつばです。
謎の白金チート回
・・・需要あるんでしょうかね。・・・ないか
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