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しかしパメラを守るために前へ出て来られないガイル。
このまま膠着状態が続いて不利になるのはもちろんガイル達である。
そのうちマティアスがやって来るのは間違いない。
どうにか打開策をと焦る気持ちがわずかに剣先を鈍らせる。これまで完全に防いでいた攻撃が後ろへと流れてパメラの体近くの壁を打った。
「きゃっ!」
「済まない!」
「だ、大丈夫よ」
「そこだ!!」
レックスはガイルの防御が崩れた瞬間に鞭を大きく戻して反対側から更に強く振り抜いた。
だがこれは完全に失敗となった。軌道を大きくふくらませた鞭先が窓際のカーテンに引っ掛かってしまったのである。ことごとくガイルに攻撃を躱されたことへの苛立ちと気負いがミスを誘発させたのである。
慌ててカーテンと近くの窓を見たレックスの表情が固まり動きが一瞬止まった。
もちろんガイルが見逃すはずがない。
雄叫びをあげながら前傾姿勢となってレックスを一気に押し倒した。
握った剣を手放すと力任せに顔面を殴りつける。
レックスも王子の側近として、貴族の素養として戦闘訓練を受けていると考えられるのでガイルも一切容赦するつもりはない。ましてやパメラをこんな目に遭わせた奴を許す気もない。
ガイルの体の下からもがいて逃れようとするレックスは仕方なく鞭を手放す。
その鞭にガイルは手を伸ばしてレックスの首へと巻き付けようとした。
ガイルの両腕を掴んで必死に抵抗するレックス。しかし徐々に鞭が首へと近づいて来る。
もともと優男の彼は冒険者として鍛えているガイルとの力比べには勝てなかった。
「や、やめろっ」
「は? どの口が言ってるんだ?」
「たのむ、やめてくれ!」
「パメラもそう言ったと思うが、お前はそれでどうしたんだ?」
「くっ」
「そういうことだ!!」
ガイルはその現場にはもちろんいなかった。しかし身動きできない女の子が乱暴しようとする男に許しを請うことは普通に想像できる。
気まずそうに眉をしかめたレックスの首をガイルは一気に力を込めて鞭で抑え込んだ。
少しの間はジタバタしていたレックスの体がじきに動かなくなる。失神をした口許からだらしなく涎が流れていた。
ガイルの本音では戦いの中で切り殺してしまいたかったが、歓楽街での刃傷沙汰は喧嘩両成敗がルールとなっている。さらに王子の側近が殺されたとなると官憲も黙ってはいないだろうしフィオリナにも迷惑が掛かる。
ガイルは白目をむいたレックスを忌々しそうに一瞥してから床に落ちた細身の剣を鞘へと納める。慣れた手つきで背中に剣を背負ってパメラへ向き直った。
「パ・・・メラ!?」
「ガイル、どうかした?」
何故かガイルが慌てて顔を背ける。視線は落ち着かず、何か言いたそうにしているのだが言葉にならないようだ。
訝しく思ったパメラがふと自分の体を見下ろした。
「・・・い、いやぁーっ!! 見ないでぇーっ!!」
今さらではあるが、パメラは見事な双丘をこれでもかとさらけ出していることに気づいた。腕を動かして隠そうにも鎖で縛られて身動きができない。必死に身をよじると豊かな胸がたわわに揺れて目の毒以外何物でもない。
美貌を誇るパメラの裸体に興味がない男などこの世には多分いないだろう。ガイルもまだまだ男盛りには違いなく、必死に気持ちを抑えてパメラから背を向ける。
彼女が身に羽織れるものはないかと部屋の中を物色したところ、レックスの鞭が置かれていた台の上に布の面積が異常に少ない扇情的な衣装がいくつか置かれている。
ほんの少し気が惹かれたものの、ガイルはそれらに手を伸ばすことはしなかった。
もしそのようなことをしたら、金輪際パメラから侮蔑の視線だけが向けられようになるのは火を見るよりも明らかだった。
気を取り直した彼が次に目を止めたのは、この部屋へ割って入った窓の近くに束ねられていたビロードのカーテン。さきほどレックスの鞭が引っ掛かっていたものの破れることもなく綺麗な状態である。
ガイルはカーテンに近づくと鞘に入ったままの剣をカーテンレールへと伸ばす。剣の先端を使って器用にレールからカーテンを取り外し手にした。
少し暗めの赤色をした分厚い布地を目の前に大きく拡げるとそのままパメラのほうへ真っ直ぐに向かった。
「ガ、ガイル!?」
「これなら何も見えないから安心しろ」
「それはそうだけど――」
「大丈夫だ! 目も瞑っている!!」
「ちょ、ちょっと!!」
ムニュ
「ん?」
「ばかーっ!!」
カーテンによる遮蔽だけでなく、しっかり目を閉じていたガイルは完全に位置を見誤った。
カーテンを握って伸ばした右手がいきなりやわらかい感触に包まれる。伸ばした手の高さには彼女の豊かな双丘がある。
何が起きたかをガイルが理解した瞬間、パメラの罵声が響いた。彼女の手足が自由だったら間違いなくボコボコにされていただろう。
その後は腫れ物に触るよりも慎重にガイルはパメラの体へカーテンを巻き付けた。
パメラの手足に繋がれた鎖の鍵は、鞭のあった台の上に置かれていたので拘束を解くことは容易であった。
このまま膠着状態が続いて不利になるのはもちろんガイル達である。
そのうちマティアスがやって来るのは間違いない。
どうにか打開策をと焦る気持ちがわずかに剣先を鈍らせる。これまで完全に防いでいた攻撃が後ろへと流れてパメラの体近くの壁を打った。
「きゃっ!」
「済まない!」
「だ、大丈夫よ」
「そこだ!!」
レックスはガイルの防御が崩れた瞬間に鞭を大きく戻して反対側から更に強く振り抜いた。
だがこれは完全に失敗となった。軌道を大きくふくらませた鞭先が窓際のカーテンに引っ掛かってしまったのである。ことごとくガイルに攻撃を躱されたことへの苛立ちと気負いがミスを誘発させたのである。
慌ててカーテンと近くの窓を見たレックスの表情が固まり動きが一瞬止まった。
もちろんガイルが見逃すはずがない。
雄叫びをあげながら前傾姿勢となってレックスを一気に押し倒した。
握った剣を手放すと力任せに顔面を殴りつける。
レックスも王子の側近として、貴族の素養として戦闘訓練を受けていると考えられるのでガイルも一切容赦するつもりはない。ましてやパメラをこんな目に遭わせた奴を許す気もない。
ガイルの体の下からもがいて逃れようとするレックスは仕方なく鞭を手放す。
その鞭にガイルは手を伸ばしてレックスの首へと巻き付けようとした。
ガイルの両腕を掴んで必死に抵抗するレックス。しかし徐々に鞭が首へと近づいて来る。
もともと優男の彼は冒険者として鍛えているガイルとの力比べには勝てなかった。
「や、やめろっ」
「は? どの口が言ってるんだ?」
「たのむ、やめてくれ!」
「パメラもそう言ったと思うが、お前はそれでどうしたんだ?」
「くっ」
「そういうことだ!!」
ガイルはその現場にはもちろんいなかった。しかし身動きできない女の子が乱暴しようとする男に許しを請うことは普通に想像できる。
気まずそうに眉をしかめたレックスの首をガイルは一気に力を込めて鞭で抑え込んだ。
少しの間はジタバタしていたレックスの体がじきに動かなくなる。失神をした口許からだらしなく涎が流れていた。
ガイルの本音では戦いの中で切り殺してしまいたかったが、歓楽街での刃傷沙汰は喧嘩両成敗がルールとなっている。さらに王子の側近が殺されたとなると官憲も黙ってはいないだろうしフィオリナにも迷惑が掛かる。
ガイルは白目をむいたレックスを忌々しそうに一瞥してから床に落ちた細身の剣を鞘へと納める。慣れた手つきで背中に剣を背負ってパメラへ向き直った。
「パ・・・メラ!?」
「ガイル、どうかした?」
何故かガイルが慌てて顔を背ける。視線は落ち着かず、何か言いたそうにしているのだが言葉にならないようだ。
訝しく思ったパメラがふと自分の体を見下ろした。
「・・・い、いやぁーっ!! 見ないでぇーっ!!」
今さらではあるが、パメラは見事な双丘をこれでもかとさらけ出していることに気づいた。腕を動かして隠そうにも鎖で縛られて身動きができない。必死に身をよじると豊かな胸がたわわに揺れて目の毒以外何物でもない。
美貌を誇るパメラの裸体に興味がない男などこの世には多分いないだろう。ガイルもまだまだ男盛りには違いなく、必死に気持ちを抑えてパメラから背を向ける。
彼女が身に羽織れるものはないかと部屋の中を物色したところ、レックスの鞭が置かれていた台の上に布の面積が異常に少ない扇情的な衣装がいくつか置かれている。
ほんの少し気が惹かれたものの、ガイルはそれらに手を伸ばすことはしなかった。
もしそのようなことをしたら、金輪際パメラから侮蔑の視線だけが向けられようになるのは火を見るよりも明らかだった。
気を取り直した彼が次に目を止めたのは、この部屋へ割って入った窓の近くに束ねられていたビロードのカーテン。さきほどレックスの鞭が引っ掛かっていたものの破れることもなく綺麗な状態である。
ガイルはカーテンに近づくと鞘に入ったままの剣をカーテンレールへと伸ばす。剣の先端を使って器用にレールからカーテンを取り外し手にした。
少し暗めの赤色をした分厚い布地を目の前に大きく拡げるとそのままパメラのほうへ真っ直ぐに向かった。
「ガ、ガイル!?」
「これなら何も見えないから安心しろ」
「それはそうだけど――」
「大丈夫だ! 目も瞑っている!!」
「ちょ、ちょっと!!」
ムニュ
「ん?」
「ばかーっ!!」
カーテンによる遮蔽だけでなく、しっかり目を閉じていたガイルは完全に位置を見誤った。
カーテンを握って伸ばした右手がいきなりやわらかい感触に包まれる。伸ばした手の高さには彼女の豊かな双丘がある。
何が起きたかをガイルが理解した瞬間、パメラの罵声が響いた。彼女の手足が自由だったら間違いなくボコボコにされていただろう。
その後は腫れ物に触るよりも慎重にガイルはパメラの体へカーテンを巻き付けた。
パメラの手足に繋がれた鎖の鍵は、鞭のあった台の上に置かれていたので拘束を解くことは容易であった。
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