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大会の余波
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大会予選の次の日の朝、いつもどおりに学校へ行って教室へ入る。なんとなくザワついていて見られている気がした。
「ど、同志よ。昨日、大活躍だったと聞きましたが、お疲れではないですか」
「三山でも空手に興味があったのか? 意外だな」
「そ、そういうわけではございませんが、同志がそのようなお方だったと知らず。いや、スポーツ特選の大和殿がたまにクラスへ来られていたので、そうかもとも思わないではなかったですが」
見るからにサブカル好きな雰囲気の漂う三山が、俺が席に着くなり話しかけてきた。俺も三山も言うなれば一般情報の最底辺なので、こいつが知っているならほぼクラス、いや学校中が知っていると思われる。
それほど注目されるとは思えないのにと考えていたら、三山が感心しながら理由を教えてくれた。
「空手部から出た一組は同志と同じ三回戦負け、もう一組は一回戦負けだったらしいじゃないですか。ほとんど一年生だけで三回戦まで進めるなんて、同志は空手もすごかったのですね」
「部活の連中ってそうだったの?」
「知らなかったのですか!?」
「いろいろあってそれどころじゃなかったし、俺の出場は人数合わせのおまけのようなものだから」
最後の成績発表なんて瑞樹のせいで気が気じゃなかった。優勝したところすら実は記憶にない。大活躍も言い過ぎだ。俺の戦績は一勝二敗、褒められたものではない。
「どこのどいつがおまけなんだ? ハーレム王がおまけなんて聞いたこともないぞ」
「朝から珍しいな。どうした?」
寝不足なのかよくわからないが、機嫌の悪そうな大和がいつの間にか側に立っている。まだ登校していない前の席へ腰を下ろした。
こいつが1―Bの教室へ顔を出すのはたいてい昼休み。それも必要に迫られない限り来ることはない。ということは、よほどの用が朝からあるらしい。
「……綾音ちゃんのメッセージ来てたよな?」
「あっ、あれは俺のせいじゃないぞ! 文句があるなら月島本人に言えよ!!」
「お前の側室第二号のおかしな趣味に俺を巻き込むな!」
「バカ言えっ! 月島はお前のほうが好みなんだよ、この腹黒イケメンが!」
「お前こそ観客席に正妻、側室一号、二号、それに年端のいかない将来の側室まで呼び寄せるなんて、光源氏なみのイケメンぶりじゃないか!」
「はあ!?」
「あ、あの、二人とも、お、落ち着いて、暴力はよくないよ、ね」
机を挟んでいがみ合う俺たちを、泣きそうな顔で三山が見ている。
こいつの中の俺の評価は、大和並みに空手をやっている人間に塗り替えられていたのをうっかり忘れていた。
大切なクラスメートを困らせるのは俺の本位じゃない。三山はこの中で唯一の魔法少女好き同志なのだから。
「悪かったな。で、何の用だ?」
「苦情と勧誘だ」
「苦情は月島のこととして、勧誘は空手部か」
「そうだ」
「朝から熱心だな」
「昨日家に帰って、部の先輩から何度も催促が入っている。おかげで寝不足だ。男でもハーレムを作る気か、お前は」
全然笑えない冗談を大和が真顔で口にする。
大会予選の結果は思わぬところに波及しているらしい。
試合は楽しかったし、やってよかったと心から思っている。ならば部活をするかと聞かれれば、そこまでの踏ん切りはまだできていない。
大和もそれがわかっている。だからこんな誘い方しかできないのだろう。
「とりあえず今はまだないな」
「禊はまだ終わっていないのか?」
「あの結果には、とてもじゃないが納得できていない」
「そうだろうな。俺が三年になるまでには必ず済ませておいてくれ」
最後だけイケメンスマイルに戻った大和が去ると、教室にあった微妙は緊張感がなくなり授業開始の予鈴が鳴り響いた。
「ど、同志よ。昨日、大活躍だったと聞きましたが、お疲れではないですか」
「三山でも空手に興味があったのか? 意外だな」
「そ、そういうわけではございませんが、同志がそのようなお方だったと知らず。いや、スポーツ特選の大和殿がたまにクラスへ来られていたので、そうかもとも思わないではなかったですが」
見るからにサブカル好きな雰囲気の漂う三山が、俺が席に着くなり話しかけてきた。俺も三山も言うなれば一般情報の最底辺なので、こいつが知っているならほぼクラス、いや学校中が知っていると思われる。
それほど注目されるとは思えないのにと考えていたら、三山が感心しながら理由を教えてくれた。
「空手部から出た一組は同志と同じ三回戦負け、もう一組は一回戦負けだったらしいじゃないですか。ほとんど一年生だけで三回戦まで進めるなんて、同志は空手もすごかったのですね」
「部活の連中ってそうだったの?」
「知らなかったのですか!?」
「いろいろあってそれどころじゃなかったし、俺の出場は人数合わせのおまけのようなものだから」
最後の成績発表なんて瑞樹のせいで気が気じゃなかった。優勝したところすら実は記憶にない。大活躍も言い過ぎだ。俺の戦績は一勝二敗、褒められたものではない。
「どこのどいつがおまけなんだ? ハーレム王がおまけなんて聞いたこともないぞ」
「朝から珍しいな。どうした?」
寝不足なのかよくわからないが、機嫌の悪そうな大和がいつの間にか側に立っている。まだ登校していない前の席へ腰を下ろした。
こいつが1―Bの教室へ顔を出すのはたいてい昼休み。それも必要に迫られない限り来ることはない。ということは、よほどの用が朝からあるらしい。
「……綾音ちゃんのメッセージ来てたよな?」
「あっ、あれは俺のせいじゃないぞ! 文句があるなら月島本人に言えよ!!」
「お前の側室第二号のおかしな趣味に俺を巻き込むな!」
「バカ言えっ! 月島はお前のほうが好みなんだよ、この腹黒イケメンが!」
「お前こそ観客席に正妻、側室一号、二号、それに年端のいかない将来の側室まで呼び寄せるなんて、光源氏なみのイケメンぶりじゃないか!」
「はあ!?」
「あ、あの、二人とも、お、落ち着いて、暴力はよくないよ、ね」
机を挟んでいがみ合う俺たちを、泣きそうな顔で三山が見ている。
こいつの中の俺の評価は、大和並みに空手をやっている人間に塗り替えられていたのをうっかり忘れていた。
大切なクラスメートを困らせるのは俺の本位じゃない。三山はこの中で唯一の魔法少女好き同志なのだから。
「悪かったな。で、何の用だ?」
「苦情と勧誘だ」
「苦情は月島のこととして、勧誘は空手部か」
「そうだ」
「朝から熱心だな」
「昨日家に帰って、部の先輩から何度も催促が入っている。おかげで寝不足だ。男でもハーレムを作る気か、お前は」
全然笑えない冗談を大和が真顔で口にする。
大会予選の結果は思わぬところに波及しているらしい。
試合は楽しかったし、やってよかったと心から思っている。ならば部活をするかと聞かれれば、そこまでの踏ん切りはまだできていない。
大和もそれがわかっている。だからこんな誘い方しかできないのだろう。
「とりあえず今はまだないな」
「禊はまだ終わっていないのか?」
「あの結果には、とてもじゃないが納得できていない」
「そうだろうな。俺が三年になるまでには必ず済ませておいてくれ」
最後だけイケメンスマイルに戻った大和が去ると、教室にあった微妙は緊張感がなくなり授業開始の予鈴が鳴り響いた。
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